PCオーディオ その2(日本オーディオメーカーの衰退)

2014年10月現在、大手メーカーのソニーやテクニクスなどのハイレゾ参入など、事情がかなり変わってきました。以下の記事は、2013/12/20に書かれたものですので、ご承知ください。

プアニューギニアから日本へ休暇一時帰国している。相変らずカナダ人ピアニストのグレン・グールド(1932-1982)ばかりを繰り返し聴いている。向こうでは仕方なく手軽な機器で聴いているので、自宅のPCオーZODIAC.jpgディオの音の良さを改めて再発見することになった。 自宅にはオーディオセットが3組!(女房が使っている物を入れると4組!)あり、どの部屋もネットワーク経由でハードディスクに入った音楽データを再生することが出来る。そのうちメインに使っている機器は、100万円以上費用ががかかっている! 左が50万円以上するDAC(デジタルアナログコンバーター。アメリカ製)写真の右側が電源部、左側が本体である。右側は単なる電源アダプターなのだが、低ノイズを謳っておりこれだけで10万円!する。オーディオの世界は、値段の高いものがいくらでも売られているので、これより高いDACもあるが、この値段は高額な部類に入ると言っていいだろう。さすがに我が家にある他のDACとは全く違うレベルで、原音を忠実に再現する。グレン・グールドはマイクをいろんな距離において、ピアノの音を録音をしている。今回我が家に帰って気づいたのだが、近くに置いたマイクと遠くに置いたマイクを違うチャンネルに録音している!この両方の音が聞こえるのだ。かなり静かな曲のインベンションとシンフォニアを聴いてその二つの音を聴き分けれることに気付いた。この現象はヘッドホンの場合に気付くことができた。

下はスピーカーとアンプ。こちらは、両方で50万円ほど。この値段くらいだとマニアックとまでいかないだろう。スピーカーはイギリスのB&Wという会社の製品。

B&W遙か昔のブログの主の青春時代、40年前は広くオーディオブームだった。若い男は決まってオーディオマニアだった。どこのスピーカーが良いとか、レコードのターンテーブルがいかに正確に回転するとか性能に皆うるさかった。当然ながら、オーディオ分野に多くの日本のメーカーが存在した。スピーカーに限ると、タンノイやJBLの海外スピーカーがジャズ喫茶(おー、何と懐かしい響き!!)で名声を馳せていた。しかし、部屋で聴くスピーカーは日本製品だった。 ところが時間がたつにつれオーディオはじり貧になり、死語になったかというくらいに売り上げが落ちていく。ウオークマンがヒットし、その後iPodなどに取って代わられるが、高級アンプやスピーカーを部屋に置いて音楽をじっくり聴くというスタイルは、限りなくマイナーな存在となる。

40年前、履歴書に無難な趣味として「音楽鑑賞」と書いたものだが、今は音楽を「鑑賞」すると表現しないのではないか。「鑑賞」という言葉には、対象を幾分有難く思う雰囲気がある。突然だが、ピアノもそうだろう。高度成長期、猫も杓子もピアノの存在が教養の証のように思われ、有難がってピアノが売れた時期があった。時代は変わったのだ。生活が貧しくなった、余裕がなくなったと解釈することもできるだろう。そうではなく、「音楽鑑賞」やピアノの向こうに有難いものなどないのだと化けの皮がはがれたのかもしれない。

オーディオは特殊な存在となり、いつの間にやらミニコンポに取って代わられた。ミニコンポは、中学生、高校生あたりをターゲットにした値段の安い値段のものが中心で、大人向けに少し高級志向の製品が僅かに並んでいるばかりだ。 

こうした凋落の歴史があり、高級オーディオの分野は、今では欧米の製品がほとんどを占めている。スピーカーは、欧米メーカーの名前で売られているが、実際の組立は中国でやっており、コストパフォーマンスが非常に高い。海外には特長のあるメーカーがたくさんあり、昔と比べるとコストパーフォーマンスが上がっている。小さなスピーカーでさえ、びっくりするほど良い音がする。スピーカの形もずいぶん変わったものが出ている。

日本メーカーはテクニクス、ダイヤトーンがなくなり、残っているのはONKYO、パイオニア、ビクター、ヤマハといったところで、幅広くオーディオ製品を作っているのはONKYOだろう。だが、このONKYOも買いやすい値段の商品を主流にしている。国内市場の縮小が原因で、日本メーカーは技術開発で海外勢に後れを取っていると感じる。また、コスト競争もまずいが、何より魅力のある品が日本製品には少ないことが、一番大きな問題点だろう。

アンプも同様だ。日本製はONKYOなどが頑張っているが、多く売れるところを狙っているのLUXMAN_thumb.jpgで、高級品の定番製品はない。高級品では、ラックスマンやアキュフェーズといったマニアックなメーカーが従来の路線で支持されている。日本製は重さで勝負(これまでの常識では、高級品には電源に余裕を持たせるために大きなコンデンサーを使ったりヒートシンクも巨大になるので、必然的に高級品は重かった)、真空管方式もありますぜといったスタンス。

ところが、近年海外勢はユニークなデジタルアンプを次々発表している。時代の先端を行くユニークな高級デジタル製品が出ているのだ。日本製は少ない。

主は結局のところ、日本製で評価の高いアンプ、ラックスマン。ラックスマンは昔ながらの重量(30KG)があり、この重さで音質を稼いでいるアンプだ。

このデジタルの技術革新に伴い、PCオーディオのブームがやってきた。パソコンとネットワークを使うとCDプレイヤーのような回転装置が不要になる。というより、何十万円もする超高級CDプレイヤーと同等のレベルの音質で聴くことが出来る。また、CDの規格は30年以上前に作られたもので、今は高品質で録音をしたものを、わざわざダウンサンプリング(品質を落と)してCDが作られている。この矛盾をインターネット経由でPCへとデータを取り込むことで解消し、品質の高い音楽データが手に入る。また、DAC(デジタルアナログコンバーター)とヘッドホンさえあれば、最高の音質をコストをかけずに楽しめる。昔は、アナログ接続が基本で、高級パーツを揃えてもたった1本のケーブルがボトルネックになったのだが、今や接続方法に無線や光などという手段もあり、事情が変わってきた。

これがきっかけで、主の「音楽鑑賞」の趣味が復活した。安い値段の装置でも、アナログと比べると非常にいい音で再生できるのだ。主は、古い録音(1950年~1960年代に録音されたCDなど)は、音質が悪く、いくら演奏が優れていても感動を呼び起こさないものと諦めていた。しかし、PCオーディでは昔の録音が、その当時の最高級アナログ再生装置を使ったかの如くリアルに再生できるのだ。

手軽に昔のCDを高音質で聴けることが、皮肉な現象を引き起こしている。主と同じようなオールドファンは、昔の巨匠の演奏ばかり聴き、タワーレコードなどのショップでも現代の演奏家より昔の演奏家のCDが多く並んでいる。理由の一つは、現代の演奏家の新譜は値段が高いことだ。また、現代の演奏家の新譜にどの程度価値があるのかわからず、冒険しづらいというのも理由だろう。片や若者は、レンタルやYOUTUBE、iTUNESなどで曲を手に入れており、CDはまったく売れなくなっている。

演奏のレベルは時代の経過に必ずしも比例しないのだ。今や録音技術が進歩していても、コンテンツのレベルが上がっている訳ではない。昔の方がハイレベルな場合も十分にあるのだ。こうして埋もれていた音源(ソース)が生き返えったのだ。

 

投稿者: brasileiro365

 ジジイ(時事)ネタも取り上げています。ここ数年、YOUTUBEをよく見るようになって、世の中の見方がすっかり変わってしまいました。   好きな音楽:完全にカナダ人クラシック・ピアニスト、グレン・グールドのおたくです。他はあまり聴かないのですが、クラシック全般とジャズ、ブラジル音楽を聴きます。  2002年から4年間ブラジルに住み、2013年から2年間パプア・ニューギニアに住んでいました。これがブログ名の由来です。  アイコンの写真は、パプア・ニューギニアにいた時、ゴロカという県都で行われた部族の踊りを意味する≪シンシン(Sing Sing)≫のショーで、マッドマン(Mad Man)のお面を被っているところです。  

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