パプアニューギニアは、世界中から文化人類学者が集まる場所だ。アマゾンの奥地と並んで現代の今でも石器時代の暮らしが残っているためだ。
パプアニューギニアの公用語は英語だが、共通語としてピジン語が使われる。ピジン語はもともとからある現地語と思われがちだが、ソロモンやバヌアツなど太平洋州で広く話されており、現地の言葉と欧米の言語が接触した際に生まれた混成語だ。
パプアニューギニアは、もともと800とも1,000ともいわれる部族があり部族ごとに違う言葉を使っていた。大航海時代、1526年にポルトガル人がパプアニューギニアへ到来し、その後、オランダ、ドイツ、英国の植民地を経てオーストラリアに承継される。その間も多部族が乱立した石器時代の状態だった。1930年代にオーストラリア人が金鉱床を求めてハイランド(高地)にやってくるのだがのが、当時ハイランドに人は住んでいないと思われていた。ところが実際は百万人が住んでいた。これがハイランダーにとっての「ファーストコンタクト」だ。だが、そこは統一された国家ではなく、部族はさまざまに乱立しており、違う言語を話していた。
下の写真は、映画「ファーストコンタクト」から。映画は1982年に作られたものだが、過去を回想しながら進むので1930年代の様子が実写されている。最初の写真は、「蓄音機」。2枚目と3枚目は、初めて金属を目にし「これは宝物だ!」と直感したパプアニューギニア人が自分の飾りにしたものだ。
https://www.youtube.com/watch?v=2Y5rC7kDx3o ← YOU TUBE
この地ででフィールドワークを行い「銃、病原菌、鉄」など多くの優れた著作を書いた進化生物学者のジャレド・ダイアモンドは、文明の発展段階を、移動生活をする「小規模血縁集団」、定住生活をする「部族社会」、「首長社会」、「(中央集権)国家」の4段階に分類した。パプアニューギニアでは農耕は行われていたものの、「部族社会」の発展段階で現代社会に遭遇したことになる。鉄器も銅器もなく、身に付けている物は森林や海から取った自然のもので、人工的な繊維もない。部族が統一されていず、言葉も違った。
欧米人がパプアニューギニア人を労役に使おうとすると、部族が違う場合、彼らは戦いを始めてしまう。こうした状態を引き起こさないようにピジン語を共通語にしたのだ。
大航海時代の西暦1500年以降、欧米人に多くの文明が滅ぼされる中、なぜパプアニューギニア人が現代まで生き延びtたのかということは大きな疑問だが、この回答を知りたい人はジャレド・ダイアモンド「文明崩壊」を読んでくださいね。(^^)
こうして現代文明に遭遇したパプアニューギニアだが、文化人類学者が大勢やってくるだけあって、興味深いことがさまざまある。最近、シニアボランティアをされている方からお話を伺うことができた。このシニアボランティアは、現地の大学生を対象に教員養成をされている。日本の高校で数学を教えられていたので、時間があるときには、数学の問題を持って行き、その問題を考えていればいくらでも時間をすごせるそうだ。このシニアによると、学生たちの出身の村では必ずしも10進法が使われているとは限らず、5進法、2進法の部族もあるとのことだった。また、ココポと言うラバウルに近い町のトーライ族は、もとは5進法で、(正確には5か6か分からないが)5で桁上がりをするということを聞いたことがある。
余談だが、コンピュータは「ゼロ」「1」で表される2進法だが、2進法だと桁が非常に多くなるため「0000」から「1111(10進法で16)」までの4ビット単位の16進法で「0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,a,b,c,d,e,f」を使って表現する。
村で必ずしも10進法が使われていなかった生徒もいる。「出来はどうですか?」と質問すると、やはり日本の学生とは比べようもないようだ。割り算は相当の生徒が正確にできない。割り算が出来るためには引き算が正確にできる必要があり、引き算が怪しいのだ。違う場所で高校生の理数科教師として活動している青年ボランティアの話も聞くことができ、4ケタの引き算を次のようにするものがかなりいるという。
7234 -5368 _______ 2134
要するに上の数字と下の数字を比べて大きい方から引いているだけだ。ところが、彼らはこの国のトップレベルの教育を受けているエリートたちだ。ゴールへの道は近くない。
面白いことに、引き算は、桁ごとにマイナス表記させると、10進数の定義により正しくなります。
7234
-5368
———
2(-1)(-3)(-4)
= 2*(10**3) – 1*(10**2) – 3*(10**1) – 4*(10**0) (*は積、**は累乗を表します)
= 2000 – 100 – 30 – 4
= 2000 – 134
= 1866
これは、引き算の結果を1つの式で表したことになります。
とはいえ、同じ数をさまざまに表記できるので、日常生活では別の問題が起こるでしょう。
以下に感想を簡単に述べます。
計算は数を言い表すことから始まる。言語が数を言い表すことができなければ計算を教えられない。生徒は数の読み方から学び始め る。日本語は10進数の位を表す語(一、十、百、千など)で数を読むので授業では違和感なく計算に取り組むことができる。しかし、仏語は素直な10進数の位で数を読まないの で、算数の授業はやりにくいと聞いたことがある。
一般にn進数と言うなら、桁の繰り上がりが表記されなければならない。2進数なら2が2つ集まれば桁が繰り上がる。現地には1と2とそれ以上とい う概念をもつ言語があるというが、2をひとつの単位として、その単位がさらに2つ集まった数を言い表すことができれば、2進数の概念があるといえる。どうだろう。ちなみに2進数は(0,1)で表記する。(0,1,2)で表記する数があれば3進数である。0の概念も重要だ。
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コメントありがとうございました。確かに不確かな表現をしてしまいました。高校数学の先生が2進法、5進法とおっしゃったので、その通り書きましたが、桁上がりをしないということも含まれていると思います。つまり、部族によっては、数の概念が2まで、あるいは5までしかないということだと思います。ただ、コンピュータが2進法で動いたりするように、十進法だけではなく、5進法で表現する部族がいれば、それはまた面白いですね。ちなみに、アナログ時計の文字盤を彼らに理解させるのも困難な場合があるそうです。
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パプアニューギニアのココポと言う町(日本軍が基地を構えていたラバウルの近く。)にトーライ族がいるのですが、彼らは5進法で数を数え、実際に桁上がりして数えるそうです。あいにくゼロを含むのかなど、詳しいことは分かりませんでしたが、5でお終いという事はないそうです。謹んで訂正します。
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