【グレン・グールドシークレットライフ】マイケル・クラークスン著 岩田佳代子訳 道出版 (3200円税抜)
この本は、デタラメだ。あまりにひどい。しっかり訳していないということもあるし、段落単位で翻訳していないところがある!
ひととおり読んだところで、意味が全く分からない部分がこの本にはあった。54ページ5行目に「興奮した『ゼクエンツ』」と書かれた部分がそうだ。『ゼクエンツ』」とは、なんなのか? 意味が分からなかったので、GOOGLEなどで検索してみたが該当するものがなかった。このため誤植かタイプミスなのだろうかと、その時は思っていた。
その後、原書(英語版)を手に入れ、この部分を日本語版と比べてみた。該当部分がある章は分かっているので、章の頭から比べていった。そうすると、びっくりするような脱落を発見する。段落丸ごと、何十行も翻訳されていない段落があるのだ。原書の28ページ、2番目の段落(16行ある)、29ページの2番目の段落(29行ある)も同様だ。びっくりする!!!!
この章は主に最初のグールドの恋人フラニー・(バッチェン)バローについてページを割いて書かれている。翻訳されていない段落は、トロント音楽院の2歳年上、ソウルメイトのアンジェラ・アディソンについての記述だ。全体の流れを損なわないと考えたのだろうか、バッサリと削られている。
意味が分からなかった「興奮した『ゼクエンツ』」がでてくるところは、原文では、”the jacked-up sequence…”だった。『ゼクエンツ』って何だろうか?と考えてみた。ふと思いついたのが、”sequence”の意味が取れずにカタカナ読みし『ゼクエンツ』と訳したのではないか? と思い至る。
“sequence”を『ゼクエンツ』と訳すのもひどいが、段落を飛ばして販売する、これはあまりに読者を馬鹿にした行為ではないか。グレングールドを聴く人は多いが、さらに踏み込んで書籍を買おうとする人たちは、かなりグールドにハマっている。オタクというのは語弊があろうが、マニアと言ってもいいのではないか。そういう信者たちを騙す、正しい情報が欲しい読者を騙したといわれても仕方ないだろう。
ところが、消息通にいわせると翻訳書にはこうしたことが結構あるそうだ。日本語版を買って、さらに原書にあたろうという人は稀だ。原書で読めるなら、原書を買うからだ。脱力。とほほだ(;一_一)
また、出版社は翻訳の版権を海外から買っているので、他の会社が同じ書籍の翻訳本を出すのは難しいらしい。ますます読者は取り残される。グールドの没後32年、未だに人気の衰えないグールドならではの現象だろう。
訳者の岩田佳代子さんは音楽の全くの素人で、誤訳だらけです。不適任な翻訳家ですね。また、出版社の道出版も成人ものの出版社、松文館が一般書出版のために設立したダミー会社で、音楽書出版には不適切です。こんな出版社が版権を取得、音楽は素人の翻訳家に依頼したから、ひどい本が出てしまいました。
今、私の手で新訳を完成、エージェントに連絡を取っています。まだ、出版実現までには時間がかかりますが、はっきりしましたらお知らせいたします。
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ちょっと、驚きましたが、嬉しいコメントをありがとうございました!そうしていただけましたら、こんなに嬉しいことはありません。楽しみに待っております。グールドファンの方々もそうだと思います。
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ゼクエンツって音楽用語で反復進行って意味ですよ。
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ご指摘ありがとうございます。音楽用語辞典によりますとゼクエンツには、旋律的反復進行と和声的反復進行の2種類があるそうですね。それはともかく、この本の翻訳はひどいです。このゼンクエンツが出てくるところは日本語の意味が分かりませんし、他の多くの部分でもそうです。何より、バッサリ段落が飛ばされて、存在しないところも非常に多く、めちゃくちゃです。新しい版をだして完全なものにする責任が、出版社にはあると思います。
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