アベノミクスが始まって約2年、この経済政策は成果が上がっているといって良いだろう。長年のデフレから抜け出せるかもしれない。アベノミクスのブレーンは、政府で参与をされている浜田宏一氏だ。この先生は、アメリカのコロンビア大学で研究し、金融論(マネタリスト)の分野で最先端を行く研究者だ。
民主党と政権を争った2012年末、安倍晋三が「輪転機をぐるぐる回して、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう」(2012年11月20日朝日新聞)と発言した。主はこの発言を知ったとき、裏にはきっとブレーンがいると感じ、何十年も読んでいない経済学書を改めて読みたいと思った。わかってきたことは、日本の経済学者は世界の先端理論からすでに取り残されており、数学的に考えない昔ながらの観念論主体、旧態依然とした御用学者の集まりになっているということだ。世界の経済学は、ノーベル賞も受賞したクルーグマンやスティグリッツなどアメリカの経済学者が先頭を走っていた。(もちろん、彼らも日本同様、アメリカでもいつまでたっても過ちを認めようとしない学者たちの存在に苛立っている)
クルーグマンは10年以上前に、ちょっと難しい表現だが「日本は『流動性の罠』に嵌っている」といい、その処方箋を述べていた。「流動性の罠」と言うのは、不況の時に政府は景気刺激策として金利を徐々に下げていくのだが、金利は当たり前のことながらゼロ以下にすることができない。日本はその時デフレだったのだが、デフレ下では金利がゼロでも、実質的に手持ちの現金の価値は上昇していくことになる。そのような状態では、お金を使うより、時間が経てば価値を増していく手元の現金を持っている方が有利な判断となる。そのような時(『流動性の罠』の状態)には、通貨の供給量を増やせと言ったのだ。そうすることにより、供給量が増えた通貨のために通貨安(円安)になり、日本の産業が国際競争力を回復し、緩やかなインフレ(インフレ期待)により負のスパイラルから抜け出せるというものだ。
反対論者は、この方法はハイパーインフレが起こり、国債は暴落、金利が急上昇するといって警告することが常である。しかし、こんなことは起こらない。太平洋戦争の時にそうなったからといって、現在の状況は全く違う。通貨供給量も金利も政府が決定することができるのだ。
やがて、浜田宏一氏を知ることになった。安倍首相のブレーンとして金融の量的緩和を主張した人物である。日本銀行総裁候補にも上がったが、高齢を理由に固辞された。この浜田氏が、今年4月の消費増税の時に、当然ながら反対論を唱えられていた。消費増税は「風邪で熱のある選手に、体を鍛えるために運動場を走ってこいと言うようなものだ」と主張していた。一方、先のクルーグマンは、もし景気にマイナスの影響を与えず増税したというのであれば、毎年1%ずつ上げる方法もあるともいっていた。しかし、世論は1%ずつ上げるのは技術的に困難といい、税率は5%から8%にあげられた。そして、現在の状況は、今年3月末の駆け込み需要の前の状態に戻らず、あきらかに増税の悪影響が出ている。しかし、マスコミは消費増税だけではなく、夏の気候不順を理由にしたりする始末だ。
この停滞状況で谷垣副総裁をはじめ多くの人が、来年の消費増税の容認発言を始めている。彼らの主張は「日本が増税しないことは、財政再建をしようとしない姿勢であり世界から信用を失う」「求められる社会福祉が実行できなくなる」というものだが、これらはほとんど脅しであり、既得権益を持つ財務省の刷り込み、マスコミの間違ったプロパガンダだ。政府の借金を、家計や企業の赤字と同じように例えるのは間違っている。財政再建は景気が回復してからじっくり取り組めばよいのだ。景気が回復すれば、税収の自然増(実際に2013年度は自然増がかなりあった)があり、緩やかなインフレが起これば過去の借金はその分軽くなるのだから。 過去20年の不況を考えれば、日本政府、日銀は景気を冷やす方法ならいくらでも知っている。(これは皮肉です)