主、60才を過ぎやっとわかることがある。
われわれは間違った価値観や先入観をさまざまな角度から刷り込まれている。世間に流れている情報を、そのまま鵜呑みにしてはならない。自分の頭で本当かどうかしっかり考えなくてはだめだ。以下、経済ネタが多く恐縮だが、誤った都市伝説をざっと見ていこう。
①「日本の財政赤字は危機的だ。子孫に赤字のツケを回してはならない」ーー これは、財務省の宣伝である。日本で宣伝されているほど、世界の誰も日本の財政赤字を心配していない。赤字は経済が成長すれば自然に解消に向かう。まず優先すべきは、経済成長だ。財務官僚は法学部出身者が多く、経済をわかっていない。国の赤字を我が家の赤字と同じように思って心配している。ところで、赤字がこれほど巨額になったのは、デフレ不況が続く中で、財政出動(公共投資)を積み重ねたのが原因だ。結果的にこれまでの財政出動が、効果がなかったことを見て、財政政策は効果がないという論も出てくる。(民主党の「コンクリートから人へ」というスローガンがそうだ)赤字がこのように大きくなったのは、デフレが20年も続いたからだ。まずはデフレを脱却することが重要だ。デフレを脱する局面になれば、財政政策は景気を素早く上向かせる効果がある。
②「円高になることは、円の値打ちが上がることなので悪いことではない」ーー 日経新聞は、円高になることを「円が伸びた」、円安になることを「落ちた」と表現する。「落ちる」より「伸びる」のほうがよさそうに聞こえる。だが、日本全体を見た時に、輸入より輸出のほうが経済に対する好影響が大きく、そのためには為替レートが安いほうが有利だ。マスコミの論調には、円高は円の国際評価が上がることなので望ましいといったことが言われるが、為替の決定要因には需給や金利などさまざまあり、円の値打ちが上がったと単純に喜ぶのは間違いだ。むしろ、世界の主要な通貨は、供給量を増やし通貨安競争の状態である。ここでこの競争に加わらないと、円高になり競争力が失われる事態を引き起こす。
③「みんなが株を買うから株価は上がっていく」ーーー 日経新聞などでは、個人投資家へのセミナーなどを開き、個人が株を買えば株価が上がっていくようなことを言っている。しかし、日本の株は残高で4割、日々の売買量の6割が外人投資家が握っている。外人投資家といっても個人というより、ファンドだ。このため、彼らの売買が株価の上下に直結する。外人は、さまざまな世界中の投資の中で日本の株を一定の割合(これをポートフォリオという)保有しようとするのが基本的なスタンスだ。日本の株価に値動きがなくとも、為替が円高になればその分儲かるので、株を売ることになる。逆に為替が円安になると外貨で見たポートフォリオが下がるので、彼らは日本株を買い、株価は上昇するのだ。しかも、彼らは投機目的なので、ちょっとしたことで直ちに株を売買し、株価は乱高下することになる。こうしたことがわかってくると、日本の為替レートの変化の重要性に気付く。円は相対的に安全資産と考えられており、海外で経済不安が生じると安全とされる円が買われる。(株安の原因だ)ドルとの金利差も影響を与える。イエレンFRB議長は年内にアメリカの金利を上げると言っているが、これにより円安が進むことになる。(株高の原因だ)話を戻すと、日本人の個人投資家が株を買ったくらいでは、日経平均株価を上げるほどの力はないだろう。問題は外人の動きだ。
つづく