グールドの人間性はどこから来たか 両親のBPDの可能性

ここのところ境界性パーソナリティー障害やアスペルガー症候群などの精神疾患に関する本をけっこう読んできた。

そこで思うようになった。グールドは不安症や薬物依存といった症状に苦しむのだが、背景に母フローラ、父バートの影響がある。

グールドは一人っ子で溺愛され過保護に育ったと言っているが、フローラ、バートともに境界性パーソナリティー障害(BPD Boarderline Personality Disorder)だろう。この障害によるプレッシャーが、グールドという天才を生んだのだ。もちろんこれは、主の憶測でしかない。だが、グールドが音楽で成功したにもかかわらず、私生活では心気症や不安症が生涯解決できなかったことを考えると、親の代からのBPDが天才を生み、同時にその子を追い詰めたからだと思う。

過保護で心配性の母親フローラは、自分の価値観を、必要以上にグールドに押し付けながら育てた。価値観の中で大きなウエイトを占める「音楽」をグールドに伝えることには成功したが、子供の成長に必要な社会性を育てることはまったくできなかった。

父バートは、妻フローラのコントロールの中から出ようとせず、息子グールドを見る時間が少なく、勤勉に仕事に励むのみで父親としての役割を果たせなかった。10歳以降のグールドにピアノを教えたチリ人ピアニストのゲレーロが、父親代わりの存在になり本物の父バートは影が薄い。

境界性パーソナリティー障害を持つ母親を持つ子供は、「ダメな子供」か「完璧な子供」のいずれかになりがちだが、いずれの場合も子供時代の抑圧が原因で、大人になっても心が引き裂かれており、不安から逃れられない。同じことだが、母親の不安感や混乱が子供に投影され、子供の成長を妨げてしまい、大人になってもこの不安が親子の間で拮抗、葛藤するのだが、解決には長い時間がかかる。解決しないこともある。

ところがだ、10歳を過ぎたグールドは「完璧な子供」となり、音楽の分野では親の希望を凌駕、突き抜けてしまう。また、グールド自身が親の価値観を否定し、親を乗り越え始める。だがそれは、音楽の世界での話。人間全体を見渡すと、普通の子供のように精神的な安定を獲得しているわけではなく、きわめて不安定なところがずっと抜けない。

この音楽の世界にかぎっては、世界が完結しているので、ここでは自己を超越し、解放するすることができた。同時に、周囲から称賛されることが当たり前になったグールドは、自己愛性パーソナリティ障害になったのだろう。

ここで、似たような症状を示すアスペルガー症候群との関係を考えたい。アスペルガー症候群とパーソナリティー障害との一番大きな差は、アスペルガー症候群が生まれながらの先天性であるのに対し、パーソナリティー障害は後天的であり、ある段階でパーソナリティー障害になるというところにある。また、アスペルガー症候群の特徴には、常人とは違い一つのことに高い集中を続けることができるという性質があるが、グールドの場合は、対位法的人間であり、複数のことに同時に高い集中力を見せていた。このため、生まれながらのアスペルガー症候群というより、自己愛性パーソナリティ障害が良く合致すると思う。

以下で、グールドの性格が垣間見れる関係者の発言を取り上げる。

「どんな形であれ音楽家を自認するなら、独創性がなければならない。オリジナリティが前提だ。音楽のない生活など考えられない。音楽は私を世俗から守ってくれる。現代の芸術家に与えられた唯一の特権は世俗から距離をおけることだ。私の活動はメディアのない19世紀では難しかった。」(映画「グレン・グールド天才ピアニストの愛と孤独」:グールド)

「こうして僕はハワード・ヒューズのように、神秘的な存在でいたい、という夢にたどり着く。僕はとても私的な人間で、ほとんど独りで時を過ごす。だからスタジオには音楽を生み出す雰囲気を必要とするのだ。僕の私生活を、スタジオとスタジオの行列的な安全さから引き離すことは不可能だ。僕は夜通し起きていて、朝6時前に眠りにつくことは珍しい。コンサート活動をしていた頃は、コンサートの前日には早く寝ることに、そしてコンサートの後ならば夜更かしをしていた。こうして僕は夜型の人間になった。」

「グレンは孤独だった。電話をかける相手ならたくさんいた。だが、真の友人となると別だ。彼は自分の見せたい一面を、あるいは、見せられる面を相手に見せた。だが、他人に見せない面を彼は確かに持っていたと思う。本人も気づいていた。」(映画「グレン・グールド天才ピアニストの愛と孤独」:P.L.ロバーツ)

グールドは私生活を明らかにせず、何か秘密があるのではないかと思わせた。禁欲的なイメージが持たれるようになった。彼はそのイメージを誇張した。しかし、現実には彼は女性関係においてはごく普通の男だった。」(同:ケヴィン・バザーナ)

 

投稿者: brasileiro365

 ジジイ(時事)ネタも取り上げています。ここ数年、YOUTUBEをよく見るようになって、世の中の見方がすっかり変わってしまいました。   好きな音楽:完全にカナダ人クラシック・ピアニスト、グレン・グールドのおたくです。他はあまり聴かないのですが、クラシック全般とジャズ、ブラジル音楽を聴きます。  2002年から4年間ブラジルに住み、2013年から2年間パプア・ニューギニアに住んでいました。これがブログ名の由来です。  アイコンの写真は、パプア・ニューギニアにいた時、ゴロカという県都で行われた部族の踊りを意味する≪シンシン(Sing Sing)≫のショーで、マッドマン(Mad Man)のお面を被っているところです。  

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