「グレン・グールドとの対話」ジャナサン・コット(晶文社 高島誠訳)と「グレン・グールドシークレットライフ」再出版の願望

グレン・グールドの本は何でも読みたい思っているため、カバーの絵を見てこれは初めてだ!と思って買ったのが、「グレン・グールドとの対話」ジョナサン・コット(訳:高島誠 晶文社)だ。だが、下に掲げた「グレン・グールドは語る」(ちくま学芸文庫)と同じ本だった。下の方は、訳者と出版社が異なり、グールドの翻訳を多数手がけておられる宮澤淳一さんが訳されている。

ちなみに、ちくま学芸文庫の「グレン・グールドは語る」は、2010年に出版されたものだが、今回紹介する晶文社の「グレン・グールドとの対話」は、1990年出版で、主が古本で購入したものは1998年の第8刷だった。

こんな風に時間が経過して同じ本が違う出版社から出版されるのであれば、「グレン・グールドシークレットライフ」マイケル・クラークスン(訳:岩田佳代子 道出版)も改めて再出版してもらえないのだろうかと強く思う。

というのは、この本は、原書(英語版)のかなりの部分を翻訳しないまま販売されている。主は、日本版、英語原書とキンドル版の3種類を購入したが、この日本版は段落単位で翻訳されないままに出版されており、こんなことがあるのかというくらいいい加減だ。おそらく全部を翻訳すると、もっと分厚い本になってしまうので、適当な分量になるように調整したのではないか。おかげで、翻訳されたものを読んでいるとどうも意味が通じない。これはもう無茶苦茶で、大勢いるグールドマニアは浮かばれない。アマゾンの書評にこの苦情を書いていることもあり、音楽関係者の方からこのブログへ賛同のコメントをいただいたこともある。

仕方がないので、主は、キンドル版をPC上にペーストしたものをGoogle翻訳を使って、少しづつ自分で翻訳している。これはこれで、「自動翻訳もこんなに実用になっているのか」という面白い発見があるので、また別に書きたい。(翻訳家の皆さんに対する批判ではないので、是非翻訳・出版してください)

感想は前に書いた下のとおりだが、あらためて本書の感想を書くなら、やはり6時間もの時間をかけた電話インタビューなので、グールドの個性が良く表れていると感じる。グールドは対面して話すのが苦手だった。このため真夜中に相手の迷惑を顧みず長電話をしたことで有名だ。それも相互に話をするというより、グールドが思っていることをずっと喋りまくったらしい。その分、本心がよく出ているのではないかと思う。例えば、テレビなどのメディアのインタビューや自分の番組では、批評家の批判を嫌ったために、晩年になると必ず入念な原稿を用意し、ユーモアや才気煥発さが出るように準備していた。(原稿を用意することで、インタビューが昔と比べてつまらなくなったと言われる)このインタビューでもそうだと思うが、やはり好きな電話ということで面と向かった対談よりは、彼ののびのびした一面を感じることができる。

  • 以下は、以前に書評を書いたちくま学芸文庫の方のコピーである。
  • 【グレン・グールドは語る】(訳:宮澤淳一)ちくま学芸文庫

【著者のジョナサン・コットは、1942年ニューヨーク生まれのノンフィクション作家。グールドの10歳年下である。グールドとの関わりを本書の中で語ってているが、デビュー作「ゴールドベルグ変奏曲」を13歳の時に聴いて以来ファンとなり、ニューヨークで行われる公演をすべて聴きに行く。ファンレターも書いて、返信を貰うこともあったと書いている。コットは、その後「ローリング・ストーン」誌の中心的なライターになり、1974年に3日間6時間にわたる電話インタビューをもとにして、同誌へ2回にわたって記事を連載する。グールドの映画を見ていると、長電話、それも明け方や深夜の普通でない時刻にもグールドは話をする相手がいたことがわかるが、コットも生涯にわたって、その一人だった。

【個人的には、ジョージセルによるグールドの良く知られた逸話がでっち上げだったこと、ワーグナーの「マイスタージンガー」前奏曲、ベートーヴェン「第5番交響曲」(ピアノ版)で多重録音していることを知った。

【ジョージ・セルの逸話というのは、1957年(グールド25才)にクリーヴランド管弦楽団との共演のリハーサルの際に、準備万端の楽団員の前で、グールドが生涯持運びつづけた特製の椅子(座面が床から35センチしか離れていない!)の調整に時間を費やし、苛立ったセルが「君のお尻を16分の1インチ削ったら、リハーサルを始められるのだがね。」「あいつは変人だが天才だよ。」と言ったと言うものだ。この記事は、雑誌『タイム』に載ったものだが、記者にもっとユーモアのある逸話がないかと聞かれたセル自身が創作したものだった。 他に主が感心した点は、椅子をこれ以上に低くすると無理な姿勢になってしまうため、自宅で実証済みの方法、ピアノを持ち上げるというグールドのこだわりだ。映像を見ていると、実際彼のピアノは何センチか持ち上げられている。

【本書は、コットが「ローリング・ストーン」誌のインタビュー記事にジョージセル事件を付け加えたかたちで1984年に出版され、邦訳が晶文社から1990年に「グレン・グールドとの対話」として出版されていた。2010年にそれを出版社と訳者が変わり出版されたものだ。最後に訳者の宮澤淳一の分かりやすい「解説」に、「付録」としてレーパートリーなどのデータが載っている。

【グールドの書籍の中では、昔から刊行されているもので、定番と言える書籍だろう。「ローリング・ストーン」誌は、その名の通りクラシック愛好者向けの雑誌ではない。ロックや、政治を取り上げる雑誌で、日本でも翻訳が売られているほどのメジャーな雑誌だ。この本で、彼のインタビュアーへの(ユーモアのある)真剣な回答、彼らしさが多面的に分かるし、読者層を意識してかビートルズに対するネガティブな評価なども語っている。クラシックを聴かない層にもインパクトを与えた。◎だ。

brasileiro365 について

 ジジイ(時事)ネタも取り上げています。ここ1年、YOUTUBEをよく見るようになって、世の中の見方がすっかり変わってしまいました。   好きな音楽:完全にカナダ人クラシック・ピアニスト、グレン・グールドのおたくです。他はあまり聴かないのですが、クラシック全般とジャズ、ブラジル音楽を聴きます。  2002年から4年間ブラジルに住み、2013年から2年間パプア・ニューギニアに住んでいました。これがブログ名の由来です。  アイコンの写真は、パプア・ニューギニアにいた時、ゴロカという県都で行われた部族の踊りを意味する≪シンシン(Sing Sing)≫のショーで、マッドマン(Mad Man)のお面を被っているところです。  
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