日本でガラパゴス化しているセクターの一つに刑事司法制度がある。
よく言われるのは、刑事事件で警察に取り調べる際に、諸外国では弁護士が同席できるらしい。それで、日本の制度は海外から「中世のようだ」と言われる。刑事事件で起訴されると有罪率が99%以上あり、検察は有罪にならないと自分の能力を否定されると感じ、何としても有罪に持ち込もうとする。「推定無罪の原則」はない。これは逆に言うと、有罪に持ち込めないかも知れない案件は起訴しないことを意味する。巨悪が懸念されていても有罪の確証が得られないものは起訴したがらない。最近では伊藤詩織さんがレイプされたとTBS記者の山口敬之氏を訴えたことに対し、検察審査会が「不起訴相当」にしたのだが、他の力学の存在も疑わせるものの、典型的な例だ。結局日本の司法は、江戸時代以前の自白主義のままで、「自白が証拠の王」との考えが依然として変わっていない。これでは、取り調べ段階で何日も拘束し、睡眠も与えずに取り調べをすれば、取り調べに耐え切れずに、自白を強要される場合があるだろう。だから、99%の有罪の中には、えん罪が結構あるはずだ。
大体、裁判官が思いっきり上から目線で、事件を反省しない被告には量刑を重くして説教を垂れ、裁判の過程でも事実認定を争うより、自白を前提にして、どれだけ反省をしているかで、量刑が争点になっていることが多い。
結局は、法の作りが前近代的なのではないか。主のサラリーマン時代は、官庁系業務で経理畑が長かったが、こちらも国の会計法が様々な制約を加えているのだが、こちらも明治の制定以来、根本的な改正がされず、ボトルネックになっている。
実刑判決で2年半刑務所暮らしをしたホリエモンが、YOUTUBEでゴーンの裁判プロセスを予想していた。日本の司法に従事する、検察と判事の人事異動のコースを踏まえた説明をする。また、裁判記録を閲覧できないし、していないという前提だが「裁判は間違いなく地裁で有罪判決が出て、高裁、最高裁へと争うと結審までに10年かかり、判決は少なくとも5年の実刑になるだろう。65歳のゴーンさんは80才になるのではないか。検察は、日本で初めて導入された司法取引を使ってみたかったんでしょうね。ただ、日本の司法取引には問題があり、アメリカでは被告にも対抗措置がとれるイーブンな制度だが、日本の被告にはそれがない制度になっている。」というのが彼の見立てだった。
こちら公判前整理と保釈について詳しい解説を聞ける。↓
おかげで、ゴーンを内部告発した西川前社長は、その後、役員報酬を不正受領したことが発覚した際、社長を辞任するのだが、検察の取り調べを受けることがなく、ゴーン側の弘中弁護士が「この違いは何なのか!?」と言うことになる。
下は、12月30日のYOUTUBEである。日本脱出のホリエモンの推理は当たっている。どうやらゴーン事件はうやむやにされそうだ、というのがホリエモンの見立てだ。
——-2020.1.11追記———-
ところで行っちゃったゴーンさんだが、日本側はICPO(国際刑事警察機構)をつうじてレバノン側に引渡しを要求したが、両国の間に犯罪人引渡し条約がないので引渡しは困難だろうといわれる。これは、日本はこの条約を締結している国が、米国と韓国のみしかないのだが、普通の国は、数十か国あるのが普通だ。これは、日本に「死刑制度」が残っているからだといわれる。特に、欧米諸国は死刑制度を廃止しており、死刑制度を残している国には、引渡し条約を締結しようとしないということだ。アジア諸国には、「死刑制度」が残っている国が多いのだが、日本が世界の趨勢から、遅れている感は否めず、先進国を標榜するのは止めた方がよい。
また日本の検察は、ゴーンさんの会見の前日に、キャロル夫人に逮捕状を出した。これに対し、夫人は
“I find this a belittling act from an alleged great democracy.”
と発言し、新聞社などは、「キャロル容疑者は『立派な民主主義と自称する国が、ささいなことをしている』とも発言した」と伝えている。しかし、正確に訳せば、「立派な民主主義と自称する(言いつのる)国が、価値を下げる振る舞いをしている」という感じだと思う。
ここで、注意してほしいのは、「立派な民主主義の国」ではなく、「自称」と皮肉を言っているところだ。言外で「民主主義でない国」と言っているのだ。大体外国人は、日本人のようにストレートな批判をしない。スマートな皮肉で、痛烈な批判をする。その皮肉が分からない日本人もいる。
おしまい