2020/12/17に書いたものを、2021/10/8に、シフのYOUTUBEが聴けなかった点を修正しました。
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バッハの時代はピアノがなかった。そのため、バッハは、チェンバロで協奏曲を多数作っていて、WIKIPEDEAによると、チェンバロ1台用が8曲(1曲は断片)、2台用3曲、3台用2曲、4台用1曲の計14曲も作ったらしい。
ところが、チェンバロ協奏曲、チェンバロは大きな音が出ないために、他のバイオリンやチェロと合奏すると、音量的に完全に負けてしまう。バッハの時代の協奏曲は、大オーケストラというわけではなく、バイオリン、チェロ、コントラバスあたりの弦楽器だけの編成になっており、次に貼り付けたYOUTUBEがそうだ。チェンバロを使ったトン・コープマンという有名な奏者のものだが、オーケストラとチェンバロの音量比は、こういう感じで、どうもチェンバロの存在感は埋没的と言わざるを得ない。
ところが、グレン・グールド。チェンバロ曲をピアノで弾くのはタブーだった時代に、「バッハの時代にピアノがなかったからといって、ピアノで弾かないというのはおかしい。もしあったら、バッハはピアノを使っただろう。」と言って、作曲家の生きた時代に使われた楽器を使う古楽器ブームに轟然と逆らって、表現力が豊かなピアノで弾き、結局、それ以降、バッハを大勢の演奏家がピアノで弾くようになった。
グールドが、バッハのゴルトベルク変奏曲をピアノで弾いてデビューした後、それこそ星の数ほどの演奏家が、この曲をピアノで演奏している。つまり、チェンバロは音量が小さいだけでなく、打鍵の強弱で音量を調節できない。音色が非常に美しいのが魅力だが、表現力ははっきりピアノの方がある。
そこでグールドが《バッハのチェンバロ協奏曲》をピアノで弾き、チェンバロと区別するため《ピアノ協奏曲》と言われる。ところが、この曲のシリーズは、グールドの表現力が圧倒的で、有名なピアニストもあまり弾いていないように思える。
つまり、24歳のグールドが、ロシアツアーを行ったとき、ゴルトベルク変奏曲をモスクワで聴いたスヴァトスラフ・リヒテルという大ピアニストは「この曲を二度と自分のレパートリーに入れまいと決心した」(グレン・グールド神秘の探訪:ケヴィン・バザーナ 255頁)と書かれている。これと同じことが《バッハのピアノ協奏曲》でも起こっていると、主は信じている。グールドの演奏が余りに素晴らしく、圧倒的に説得力があり、とても楽しめる曲にもかかわらず多くのピアニストが避けているとしか思えない。
なにしろ、リズムが、定規で測ったか、コンピューターかのように圧倒的に正確で、聴いていて気持ちよくハラハラし、音量の出し入れも最高だし、また、緩徐楽章の右手一本で旋律を弾く際など、これはこれはもう完璧なロマンチックさで、うっとり拍動が激しくなるほどだ。
ことろで、YOUTUBEの字幕機能について、すでにご存じの方も多いと思うが、この動画、冒頭部分でけっこう長くしゃべるバーンスタインの解説を、日本語字幕で出すことがでる。上の写真の赤い矢印の歯車をクリックすると、設定画面が出る。そこで、「字幕オフ」になっているのを「オン」にし、「英語自動生成」をクリックすると「自動翻訳」が出てくる。スクロールして一番下にある「日本語」をクリックするとできるはずだ。
このバーンスタイン大先生は、演劇同様に、バッハの書いた楽譜にはほとんど指示らしい指示が書かれていないので、演奏者が自分で考えなければならないという意味のことを言っている。演奏が始まると、グールドの指が細いのに驚く。女性でもこんなに細くないだろう。ほぼ骨が浮き出て、骸骨のようだ。
(こちらの動画は、残念ながら第1楽章しか入っていない。次のURLのは全楽章入っている。→ https://www.youtube.com/watch?v=JUBYGfjx_54&ab_channel=DeucalionProject)
ところで、ポリーナ・オセチンスカヤというピアニストをYOUTUBE(400万回弱再生されている)で見つけた。この人の演奏は、主は結構好きだ。ちょっとした狂気が感じられるし、とても大きな表現力を感じる。第3楽章は、アレグロ(快速に)なのだが異常に速く、プレストかプレスティッシモ(極めて速く)というスピードである。この人の演奏には、グールドと同じくスイング感、グルーヴ感があり、さすがにもっと現代的なところがあり、楽団を圧倒して背負い投げするような感じがする。グールドには、楽団を圧倒するところはない。主は、第二楽章のアダージョは、グールドの方が好きだけど・・。
最後に、アカン人。ハンガリー出身のアンドラーシュ・シフ。「グールド以来のバッハ解釈者」と形容され、グールドを尊敬しているというような意味のことをテレビで聞いた記憶がある。それできっとシフ・ファンの方がけっこうおられると思う。しかし、申し訳ないが、主はこの人の演奏を聴くと、音が耳に刺さって、耳が痛くなる。原因は、この人の鍵盤の弾き方にある。グールドは、手の甲をむしろ下げ、指を平らにして、指だけで弾くのだが、シフは腕全体を鍵盤に落下させて、鍵盤をガンガン叩いている。手の動きを見ていただければわかるかと思う。こちらは、第3番の協奏曲だ。
おしまい
もうすぐ、グレン・グールド 若き日の記 録第1集、第2集、が発売されます。
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貴重なコメントをありがとうございます!!調べてみると、デビュー前の演奏を、今年デジタルリマスターしてもうすぐ発売されるようですね (^^)。これまで1950年代のCBCの演奏はラジオの音質でした。これは期待できますね。グールドの今なお新しい & すばらしい演奏をみんなに聴いてもらいたいばかりです。
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