通貨システムに関する考え方の違い 主流派経済学者 vs リフレ派経済学者 vs MMT派経済学者

 下に小黒一正さんの《利上げが日銀財務に与える影響 異次元緩和後に備えより踏み込んだ検討を》をという記事を張り付けさせていただいた。この記事を題材に、主流派の経済学者が考えている日銀や銀行による通貨システムについて、考えてみたい。

この小黒さんなのだが、学部こそ理学部出身のようだが大蔵省で勤務された後、経済学者へと転身された主流派経済学を信奉する学者だと思われる。

この方が書かれた論考(一番下に掲げた。)で、「日銀当座預金に、0.1%の付利をしている、日銀当座預金は庶民から集めたお金だ」という記述が出てくる。ここのところが、主流派経済学者が間違っているところである。 つまり、日銀当座預金というのは、日銀、政府と市中銀行などのための口座であり、基本的に庶民のお金はここには入っていない。

次の《日本銀行当座預金とは何ですか?》は、日銀のHPに書かれた日銀当座預金の説明である。その説明では次のようになっている。

1番目は、金融機関、他の金融機関、日銀と国の間の決済手段と書かれている。これは、A銀行からB銀行へ送金された際、この日銀の中の当座預金をB銀行で増やし、A銀行の残高を減らして決済しているという意味である。つまり、金融機関同士の決済であり、国民に関係ない。

2番目は、金融機関の現金通貨の支払い準備と書かれている。これは、金融機関が現金紙幣(1万円札)が必要になり、日銀に用立ててもらうためのものである。金融機関が紙幣を必要な時に、日銀へ渡すためにのお金である。

3番目は、準備預金制度の対象となっている金融機関の準備預金と書かれている。この意味は、金融機関が預金者から預金を集めた際、その額の1%程度(2022年4月の率は、0.8%)を準備預金として、日銀当座預金に積む義務がある。この準備金は、黒田日銀が異次元の量的緩和を行う前までは、ずっと少なく100兆円以下で推移してきたのだが、日銀が国債を大量に買うので、これが金融機関の当座預金の残高を過去にないほど増やした。このため、準備制度の意味が有名無実化したと言われる。(下の《マネーと名目GDPの推移》表の黒破線参照。)

つまり、日銀当座預金は、庶民のお金が出入りするところではない。

おそらく、小黒さんはこの0.8%のことを預金者からのお金だと、言っているのではなく、銀行預金の原資自体が国民からで、当座預金もそうだと考えているように思える。 もしそうであれば、銀行制度や貨幣制度の理解がMMTの考えと違っているという話である。

日銀のHPから

また、この論では、「563兆円もの日銀当座預金が存在している。この日銀当座預金は民間銀行などがお互いの決済を行うために日銀に預けている口座で、その一部に「付利」と呼ばれる金利を付け、一定の利子を金融機関に支払っている。いま市場金利は概ねゼロのため、この付利は0.1%という低い金利だが、市場金利が上昇してくれば、日銀もそれ相応の付利をつけないといけない状況に追い込まれるシナリオもある。」と書かれているが、これもおかしい。

そもそも、この日銀当座預金の0.1%の付利は、金融機関へのゼロ金利に対する救済策として日銀が始めたことで、当座預金は本来が利子をつけない口座である。現状ゼロ金利のため、金融機関を経営支援するために一部に利子をつけているが、金利が上がってくれば、もとのように利子をつけるのを止める性質の口座である。

黒の破線が日銀の通貨供給、マネタリーベース

付利のことについては、昨日(7月21日)に配信された次の動画でトピックになっている。かなり長いのだが、元日銀の審議委員をされていた原田泰氏(リフレ派の経済学者)、ひろゆき氏が、本音で語っているのでけっこう面白い。

この動画の中身を要約すると、「付利は止めればよかった。」という原田氏の思いのほかに、日銀はこのアベノミクス以来やれることはすべてやってきたが、それ以前の時代に比べるとほんのわずかしか経済が改善しなかった。ただ、この状態で、金融政策を元に戻すと、元のもっと悪い不況へ戻ってしまうだろう。ひろゆき氏が挑発的な言い方をするので、原田氏が本音を言い始めるという感じで、結構盛り上がる。

これまでの失敗の原因は、原田氏は消費増税だと考えている。日銀にできることはもうない。後は、財政の出番だということになる。さらに、話は欧米のインフレ率が10%に近いところまで行っているという話になり、欧米では金融緩和も財政出動も日本以上にやったからで、効果はあった、やりすぎたという分析である。

長いし、原田氏が最初のうちはモゴモゴ分かりにくい表現をされ「じれったい感」があったが、ひろゆき氏のいうことももっともで、最後はベーシックインカムの話になる。これを聞いていると、つくづく日本経済もいよいよ終わりを実感する。誰か経助けてくれーー-!!

次回、何とか、MMT貨幣論のスタートである国債による通貨発行のところを説明したい。

おしまい

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以下は、引用した小黒さんの論考です。

《利上げが日銀財務に与える影響 異次元緩和後に備えより踏み込んだ検討を 小黒 一正》

月刊金融ジャーナル(2022年6月号)から

https://cigs.canon/article/20220624_6806.html ← こちら記事へのリンクです。

  • 「この日銀当座預金は民間銀行などがお互いの決済を行うために日銀に預けている口座で、その一部に「付利」と呼ばれる金利を付け、一定の利子を金融機関に支払っている。いま市場金利は概ねゼロのため、この付利は0.1%という低い金利だが、市場金利が上昇してくれば、日銀もそれ相応の付利をつけないといけない状況に追い込まれるシナリオもある。
  • 「仮にそれ相応の付利をつけない場合、何が起こるのか。そもそも、民間銀行などが日銀に預ける当座預金の原資は、我々が民間銀行に預けている預金であり、日銀が市場金利との見合いで付利を引き上げない場合、理論的に我々の預金金利の一部がカットされることを意味する。」

投稿者: brasileiro365

 ジジイ(時事)ネタも取り上げています。ここ数年、YOUTUBEをよく見るようになって、世の中の見方がすっかり変わってしまいました。   好きな音楽:完全にカナダ人クラシック・ピアニスト、グレン・グールドのおたくです。他はあまり聴かないのですが、クラシック全般とジャズ、ブラジル音楽を聴きます。  2002年から4年間ブラジルに住み、2013年から2年間パプア・ニューギニアに住んでいました。これがブログ名の由来です。  アイコンの写真は、パプア・ニューギニアにいた時、ゴロカという県都で行われた部族の踊りを意味する≪シンシン(Sing Sing)≫のショーで、マッドマン(Mad Man)のお面を被っているところです。  

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