MMTを批判する人たちが見ようとしない点 その3 反論編 《供給力と日本円海外流出》

(2022/7/30 長かったので、反論の部分を2つに分けました。)

《供給力と日本円海外流出の問題》

田内学さん著 情報工学専攻だが、経済学専攻よりよほど核心をついている

不況が続く日本ではほとんど生産できていないように見える。例えば、100円均一ショップに行けば、ほとんどが中国製などで日本製はほぼない。衣料品もそうだ。スーパーでもユニクロ、GUでも、ゾゾタウンでも、売っているのは日本の会社でも、生産国は中国やバングラデシュ、ベトナム製などで日本製ではない。

もちろん一部で、自動車や工作機械などに国際競争力があって、日本国内で生産しているものがある。しかし、生産拠点が海外にあり、財務諸表上だけ連結決算により、日本企業の利益として計上されている場合には、そうした企業の利益の多くは、生産国の中国などで再投資され、地理的な日本にメリットがほぼないという状況もある。

MMTは、「変動通貨制で、自国通貨建てで国債を発行する場合、供給力を超えなければインフレにならず、なんの問題もない。むしろ、2%のインフレを起こすほどに国債発行して、財政支出をするとほどよく経済成長する。」と言っている。

つまり、日本が供給力や生産力を失ってしまうと、かりに消費税をなくして国民の所得を上げたり、給付金を配って需要を喚起しようとしても、買うものがなければインフレになる。もし、大阪万博の会場を日本のゼネコンが作れなくて、中国企業が建設を請け負えば、国債を発行して資金を調達しても、海外流出してしまうので日本国民には裨益しない。つまり、最初に戻るのだが、日本で売られている多くの財(=商品)は、中国製などの外国製であれば、円が流出する。

最近では、投資信託やREITなどの投資資金も、日本国内のファンドより、過去の利回り実績が海外のファンドの方が大きいので、かなり海外へ流出している。持ち主は日本人とはいえ、そのお金は海外で運用されることになり、少なくとも機会損失は生じている。

こうしたことで、MMTの理論は正しいのだが、供給力に制約があると、その範囲内でしか通貨供給を増やした財政支出はできない制限がある。今のように海外製品をどんどん輸入している状況は、日本の生産力をアップしないし、昔は日本で生産したものを生産しなくなっているので、行きづまる状況が来ようとしている。

つまり、どの国も成長している間は、どんどん通貨供給量を増やしても問題ない。むしろ、ある程度通貨供給量を増やし、マイルドなインフレになっている方が、所得(=需要)も生産(=供給)も伸び、国民は豊かになれる。これをうまくやったのが、何といっても中国であり、年率二桁の成長を続けてきた。そこそこ成長してきたのが、欧米などである。日本は、財政赤字を恐れ、国債発行して通貨供給量を増やさず、ほぼゼロ成長である。

あと1点、《有効需要》と《潜在需要》を混同している人がいる。「良いものを作れば売れる」、「すごく良いものを作れば高くても売れる」とかいう人がいる。しかし、財布にお金の入っていない人が「欲しい」と思うのは需要ではない。《潜在需要》でしか過ぎないので、どんだけよいもので買いたくても売れない。

例えば、日本人の6人に一人が貧困で、生理になってもナプキンを買えない女性が6人に一人いるとする。ナプキンは必需品である。しかし、貧困な女性は買いたいという気持ちを持っていても、財布にお金がなければ、《潜在需要》にしか過ぎない。つまり、この6人に一人の女性の貧困が解消されたときに初めて、必需品のナプキンが《有効需要》になり、購入される。つまり、現状のナプキンの販売は6分の1、需要が減っている状態で、貧困が解消されれば、その分販売が増える性質のものだ。このとき、ナプキンの製造会社に生産余力があれば、単純に販売額が増えるのだが、生産が限界であれば、ナプキンの販売価格は上昇する。

この点も、新古典派は供給重視なので、よいものを安く提供すれば需要を喚起するというような言い方をするが、所詮ない袖は振れないのである。そこを日本人は勘違いして、国民全員が良くて安いものを作ろうと強迫観念にかられ必死であるが、この作戦は間違っている。

《コロナと戦争による最近の高率の欧米のインフレ》

最近の欧米の高いインフレ率が良く報道される。アメリカでは10%近いインフレ率で、ヨーロッパも同じようなものだ。これに対して、日本では2%程度である。

このインフレの原因は、コロナに対する財政支出とウクライナ戦争によるエネルギー価格の上昇が主な原因である。だが、欧米と日本では財政支出の規模がまったく違う。

アメリカでは、コロナが始まってから400兆円とも言われる財政支出をしたとも言われ、失業した労働者に月4,000ドル(その時点のレートで44万円)を支給したという。このため、職に就いている者が職をやめて給付金を貰ったという。その結果、労働者不足が顕著になり、レストランで働く大学生の時給がチップを入れると50ドル(6,500円)、ウォルマートの大卒初任給が年収で20万ドル(2,600万円)、アマゾンの基本給の年収上限が35万ドル(4,000万円)に達したという。

ところが、日本の場合は、こうした政府の国民に対する真水と言われる一般会計からの財政支出は、安倍政権の時にまずまずやったものの、菅総理、岸田総理と代わるにつれ、ほとんど出していない。そのため、日本の場合は、エネルギーや穀物価格、円安の影響による2%ほどのインフレになっている。

そして、欧米や中国はコロナ前の水準の経済成長に戻っているのだが、日本だけがコロナ前の水準に戻っていない。ところが、日本のマスコミはこうした海外の賃金の上昇は一切報道せず、物価の上昇すなわち、インフレ率だけを取り上げ「海外は10%、日本は2%でよくやっている」報道し、賃金上昇については触れない。その結果、国民は「海外より日本はマシ。」と思っている。

ここで、思うのは欧米などは、コロナや戦争という緊急事態が生じたため財政規律を棚上げにして財政支出をしたということだ。つまり、MMTの政策理論を採用して、実施したその結果、高率のインフレ率をひき起こしたが、今のところ多くの国民の賃金は上昇した。「経済は失速せずにソフトランディングできるか、ハードランディングになるかという事態になっている」というような報道になっているが、これは違う。イエレンさんはそんな見方ではない。

つまり、サンダースやオカシオコルテスが主導するMMTによる社会実験は、やりすぎたかもしれないが、効果は確認された。ドルの信用もユーロ、ポンドの信用も失われていない。今後、やり方を上手に工夫し、勉強する余地は大いにある。

オカシオコルテス

ビビり虫の日本、あるいは、東大法学部出身者が実権を握る経済オンチで石頭の財務省に逆らえない国民は、何もせず沈没を続けている。

おしまい

投稿者: brasileiro365

 ジジイ(時事)ネタも取り上げています。ここ数年、YOUTUBEをよく見るようになって、世の中の見方がすっかり変わってしまいました。   好きな音楽:完全にカナダ人クラシック・ピアニスト、グレン・グールドのおたくです。他はあまり聴かないのですが、クラシック全般とジャズ、ブラジル音楽を聴きます。  2002年から4年間ブラジルに住み、2013年から2年間パプア・ニューギニアに住んでいました。これがブログ名の由来です。  アイコンの写真は、パプア・ニューギニアにいた時、ゴロカという県都で行われた部族の踊りを意味する≪シンシン(Sing Sing)≫のショーで、マッドマン(Mad Man)のお面を被っているところです。  

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