グレン・グールド(1932-1982) の生誕90年、没後40年を記念して、かなりの数の録音物と映像が発売されている。親爺はうかつにも昨年の暮れに、渋谷のタワレコで見ていたのだが、知らなかった。これを見ると結構な分量のCDなどが発売されている。
https://tower.jp/site/artist/glenngould ←タワーレコードのリンク

グレン・グールドは、1982年に亡くなっており、ほぼほぼ彼はアナログのレコードの時代を生きた演奏家だった。ほぼほぼというのは、彼が2回目に録音した、《ゴルトベルク変奏曲》の録音は、デジタルによるCD録音の始まった時期にあたっていた。このため、現在、発売されている彼のCDなどは、当時のアナログテープをデジタルに変換したものが売られている。しかし、録音技術は進歩しているので、昔に変換されたものは、現在と比べると音質がいまいち良くない。
そのため、過去に人気のあった演奏者の演奏は、当時のアナログテープを、現在の最高水準の技術であるハイレゾでリマスターされている。グールドも例外ではなく、ソニー(もとは、コロンビアレコード)から発売されている正規録音のレコードは、すべてが基本、リマスターされてCDで発売されている。このリマスター技術は、CDの規格を超えているため、CDの規格に収まらないものを、インターネットでダウンロードする方法と、SACD(Super Audio CD)というメディア(ハードの盤)で購入するの2つ方法がある。SACDは、高規格のCDにあたるのだが、CDと互換性のない専用の再生装置でしか聴くことが出来ない難点がある。
ソニーは、このリマスターを正規版のアナログレコードすべてに対して最高水準の技術で行ったのだが、全部をその品質で発売している訳ではなかった。つまり、その品質をダウングレードして、従来の再生装置で再生できるリマスター版のCDとして売ってきた。それを今回、その品質のままの製品を一部売り出したということだ。(これでも、1980年頃に、アナログレコードをデジタルCDへ焼き直した録音と比べると、音質はずっと良くなっている。)
余談だが、グールドおたくの親爺は、ソニーのインターネット配信のサイトに何度か、「早くリマスター品質のSACDを売るか、その品質のままのものをダウンロードできるようにして、発売して欲しい。」と要望していた。
ところで、今回の親父のおすすめは何といってもこれです。
これは、ブルーレイディスクの映像作品です。プロデューサーは、ブリュノ・モンサンジョンで、2人の魅力的なバッハ談義を挟みながら、グールドの演奏を聴くことが出来ます。
日本語の字幕があるようですので、これがとても良いと思います。日本語のない安価なものも発売されているのですが、二人の会話が分かると非常に楽しいです。
これをお勧めする理由の大きなところは、ピアノで演奏する「フーガの技法」が入っていることです。全曲ではなく、このシリーズには、第1曲、第2曲、第4曲、終曲である第15曲(未完ですが、ハイライトであり大曲です。)しか入っていないのですが、どれも素晴らしい!!
グールドは、この「フーガの技法」を最高の曲だと認めていたようですが、ミヒャエル・シュテーゲマンというグールド研究家が解説書で書いているところでは、どうやら、どのように演奏すれば良いのか大いに悩んでおり、録音する勇気をなかなか出せなかったようです。それで、オルガン版の「フーガの技法」は、あっさりした演奏で前半半分ですが、1962年にさっさと正規版を出しました。しかし、ピアノ版は、コンサートツアーで好んで弾いていたようですが、レコード録音は断片的にしか残しておらず、正規録音はありません。
この映像では非常に素晴らしい演奏を残しています。
ちなみに親爺は、こちらを予約しました。値段が4万円とお高いし、半分は既に発売されているSACDを持っているのですが、残り半分は初めてSACDで発売されるものだからです。
水を差すことを言うのかも知れませんが、SACDやハイレゾは、再生装置のスペックを要求すると思います。(おすすめは、高級なヘッドホンを使うことだと思います。)
というのは、ちゃんとした再生装置で再生すると、グールドの鼻歌や、生涯使い続けた父親が作った椅子のきしむ音が録音されているのが分かりますが、普通の再生装置では、なかなか聞き分けることは難しいと思います。
知人に、「鼻歌や椅子の軋みを聞いて喜んでいるようじゃあ。音楽そのものを聴きなさい。」と言われたことがありますが・・・(苦笑)