「医者に殺されない47の心得」 近藤誠さん死去

医療界から総スカンを食らっていた近藤誠さんが8月13日、虚血性心不全で亡くなられた。ほっとした医者も多いと思う。ご冥福をお祈りする。

近藤誠さんが、有名なのは乳ガンの温存療法だろう。アメリカにも留学して、日本のガン治療に疑問をもつ。つまり、欧米ではすでに病巣だけを取る「乳房温存療法」が当たり前だったが、日本では治癒率が同じなのに無残にも乳房が丸ごと切り取られていた。これを1988年、月刊『文芸春秋』に発表、日本は十何年か遅れて全摘をやめ温存するようになったという話だ。

じじいは、氏の本を何冊も読むファンだった。ガン放置療法は、近藤さんも言うように誰にでも適合するものではないかもしれない。しかし、実際問題として、多くの医者がガンを見つけるとすぐに切ってしまうので、切らなくても良いガン(ガンもどき)まで切っているという感じは非常にする。欧米でガンの死亡率は下がっていると言われるのに、日本はそうでないのは、健康診断やら人間ドックでガンをせっせと見つけ出すのが主因だろうと思う。

とくに高齢になると自然と体力が衰えるので、手術や抗がん剤治療などをすると、延命したとしても、QOL(生活の質)は確実に低下する。

医者は基本的に患者が死なず、延命さえできれば治療は成功だと考えているが、患者は元の健康状態に回復するのが成功だと考えているので、両者の思いの間にはそもそも大きな隔たりがある。 

本当のガンでも、高齢者は「知らぬが仏」で医者へ行かず生活し、具合が悪くなってはじめて医者へ行って「病を得た」ことを知り、もしそのとき痛みが激しく出るなら、緩和療法でモルヒネなどで痛みを取ってもらいながら、のこりの普段の生活を続けるのが、最後まで人間本来の暮らしをする道のような気がするし、本を読んでいると、最後まで痛みが出ず、枯れるように自然死することも多いと書かれている。なまじ治療をするから、生体反応で痛い思いをするというのはアルアルな気がする。

加えて問題は、高齢者の治療費は原則1割負担だが、のこり9割は公的なお金が投入されている。医者の方は簡単に治療しましょうと言うが、患者の方は、もし10割負担であれば、簡単に「治療します」とは言わないだろう。自分の懐は痛まないが、国民の懐は確実に痛んでいる。

日本の医療は民間病院が中心で、公的な病院も独立採算制で、儲けを出さないと存続できない仕組みになっている以上、医者の方には患者をどんどん捌きたいという動機がつねに働いている。今の健康保険制度が、医者にとっていくら薄利で提供されるとしても、多売で儲けを出すことで、国全体で見た無駄は減らないだろう。

MMT的観点から言えば、こうした高齢の患者は1割の負担で気軽に医療を受けられ、医者にとっては、9割の公的負担と合わせた10割のお金が入ることは、医療業界の需要を拡大し繁栄につながっているという良い面はたしかにある。だが、患者にガマンを強いる治療はアダ花だとしか言いようがない。医療分野とは違う、もっと他の分野で公的なお金を投入すべき分野はたくさんあると思う。

以下の二つは、じじいが過去に近藤誠さんに触れたブログだ。よかったら、読んでもらえれば嬉しい。

おしまい(合掌)

「第三次世界大戦はもう始まっている」エマニュエル・トッド

やっぱりそうか、と思わせるこのタイトル、エマニュエル・トッドの新刊が出ている。じじいは、エマニュエル・トッドの炯眼にかねがね感服しており、文春新書で出版されている氏のシリーズのファンである。おそらく彼の本は7~8冊あるかと思う。

アマゾンから

それらの本のうち、ムハンマドの風刺画を掲載してイスラム教徒の原理主義者に襲撃された新聞社シャルリ・エブド事件をテーマにした「シャルリとは誰か?人種差別と没落する西欧」(2016年)だけが、エマニュエル・トッドが、実際にフランス語で書いた本の翻訳で、この本は字も小さく、内容も濃く骨が折れる。そのためじじいは読むのを挫折した。

じじいが氏を最初に知った「グローバリズムが世界を滅ぼす」(2014年)は、じじいが非常に共感した本であり、藤井聡、中野剛志、柴山圭太、ハジュン・チャン、堀茂樹の座談会の発言を取りまとめた本である。「『ドイツ帝国』が世界を破滅させる」、「グローバリズム以後」、「問題は英国ではない、EUなのだ」、「トランプは世界をどう変えるか?」、「老人支配国家日本の危機」は何れも、対談や聞き書きである。このため、スラスラ読める。

「第三次世界大戦はもう始まっている」は、ウクライナ戦争が始まった今年、3月下旬に文芸春秋が取材してきたものだ。今このブログを書いているのが、8月下旬だが、戦争は長期戦の様相を呈し、EUは支援疲れしてきたとか言われ、トッドが3月に話した内容と齟齬がないだけでも、凄いことだ。

というわけで、この本の内容から、じじいが刮目したトピックを何回かに分けて、備忘的に取り上げたい。


まずはアマゾン・文春新書のコピーは下のとおりである。コピーの次にじじいがそうだな、面白いなと思ったトピックを書きたい。

ロシアによるウクライナ侵攻を受けての緊急出版。
戦争を仕掛けたのは、プーチンでなく、米国とNATOだ。
「プーチンは、かつてのソ連やロシア帝国の復活を目論んでいて、東欧全体を支配しようとしている。ウクライナで終わりではない。その後は、ポーランドやバルト三国に侵攻する。ゆえにウクライナ問題でプーチンと交渉し、妥協することは、融和的態度で結局ヒトラーの暴走を許した1938年のミュンヘン会議の二の舞になる」――西側メディアでは、日々こう語られているが、「ウクライナのNATO入りは絶対に許さない」とロシアは明確な警告を発してきたのにもかかわらず、西側がこれを無視したことが、今回の戦争の要因だ。
ウクライナは正式にはNATOに加盟していないが、ロシアの侵攻が始まる前の段階で、ウクライナは「NATOの〝事実上〟の加盟国」になっていた。米英が、高性能の兵器を大量に送り、軍事顧問団も派遣して、ウクライナを「武装化」していたからだ。現在、ロシア軍の攻勢を止めるほどの力を見せているのは、米英によって効果的に増強されていたからだ。
ロシアが看過できなかったのは、この「武装化」がクリミアとドンバス地方の奪還を目指すものだったからだ。「我々はスターリンの誤りを繰り返してはいけない。手遅れになる前に行動しなければならない」とプーチンは発言していた。つまり、軍事上、今回のロシアの侵攻の目的は、何よりも日増しに強くなるウクライナ軍を手遅れになる前に破壊することにあった。
ウクライナ問題は、元来は、国境の修正という「ローカルな問題」だったが、米国はウクライナを「武装化」して「NATOの事実上の加盟国」としていたわけで、この米国の政策によって、ウクライナ問題は「グローバル化=世界戦争化」した。
いま人々は「世界は第三次世界大戦に向かっている」と話しているが、むしろ「すでに第三次世界大戦は始まった」。ウクライナ軍は米英によってつくられ、米国の軍事衛星に支えられた軍隊で、その意味で、ロシアと米国はすでに軍事的に衝突しているからだ。ただ、米国は、自国民の死者を出したくないだけだ。
ウクライナ人は、「米国や英国が自分たちを守ってくれる」と思っていたのに、そこまでではなかったことに驚いているはずだ。ロシアの侵攻が始まると、米英の軍事顧問団は、大量の武器だけ置いてポーランドに逃げてしまった。米国はウクライナ人を〝人間の盾〟にしてロシアと戦っているのだ。


1.「共産主義が、アメリカの『社会民主主義』を崩壊させる前に、その誕生に貢献していたというパラドクス」

まず、アメリカとロシアの価値観がどこから生まれたのかという問いに、トッドは家族制度の違いが、資本主義と共産主義の違いをもたらしたと説明する。つまり、アメリカは、絶対的核家族で「自由」と「非平等」なシステムであり、ロシアは、「兄弟間の平等」と「ほぼ無制限の父親の強い権威」を併せ持ち、かつての農村の家族構造(外婚制共同体家族)から生まれたという。この違いが、アメリカをはじめとする西側陣営に競争社会といえる資本主義を生み、ロシアと中国(中国もロシアと同じ家族制度である)に平等を重視する共産主義を生んだ。

この両大国のアメリカとソ連は第二次世界大戦後、左右の陣営に分かれて覇権を争う冷戦が続き、ソ連崩壊で西側の資本主義陣営が完全勝利したと思われている。しかし、トッドは、米ソは補完し合っていて、アメリカはロシアを「成長」へ向かわせ、ロシアはアメリカを「平等」へと向かわせた。つまり、両陣営は、相手に打ち克つために最大の努力をし、1950年から1960年にかけて、西側の先進諸国は「福祉国家」へと進んだという。共産主義に打ち勝とうとする意志が、完全雇用をはじめとする福祉国家化を促し、ヨーロッパを復興させるマーシャルプランを始めとする帝国主義的であると同時に責任あるアメリカの対外政策を促したという。

やがて、冷戦はソ連の崩壊で西側の勝利に終わったかのように言われるが、西側も実は内部崩壊をしていたというのがトッドの見立てである。 この内部崩壊とは何かと説明するとこうなる。

アメリカは、冷戦時代を通じて「万人の平等」を目指したが、これは核家族制度のなかにそもそも欠落する思想である。アメリカ型の個人主義的家族制度は、兄弟間の不平等を許すシステムだからである。

アメリカは、黒人差別に目をつぶり、「白人間の平等」を掲げてきた歴史を持つ。しかし、「黒人も平等」という思想が、「白人間の平等」という共同意識を壊した。(「自由」と「平等」は、制限を加えず、野放しにしていると両立しがたい。)また、強力な労働組合のもとで、アメリカの労働者階級が解放され、彼らは中産階級になったが、企業の利益率は劇的に低下した。「黒人は(白人より)劣る」という思想が禁じられ「黒人も平等」となれば、「白人同士の平等」という感情が崩れ、経済的な不平等が許容されはじめた。

さらに、アメリカの文化的危機に関わる要因として、ベトナム戦争での敗北の屈辱がある。アメリカは、アフガニスタンやイラクで不誠実で残虐な戦争を起こしているので忘れがちだが、ベトナムでは正真正銘、共産主義に敗北し、モラルの崩壊を招いた。

次の点は、ロシアとは無関係だが、トッドは普遍的なこととして高等教育の普及を上げている。識字率の向上で形成された平等主義的な文化は、大学進学率が25%を超えたところで、「平等」の意識が失われ、上層部の人は自らを「新たなエリート」と認識するようになるという。アメリカで大学進学率が25%を超えたのは1960年から1965年であり、この時期は黒人運動まっさかりで、「白人の平等」は、大学進学率と「黒人も平等」という両輪でつぶされ、消えてなくなる。

これが、冷戦で負ったアメリカの代償(=アメリカも敗北した)であり、この共産主義の重しがなくなった後、その反動で核家族を中心に据えた、「非平等」を内在するアメリカ型の「自由」の世界へ回帰し、「平等」がない「自由」だけが尊重される「新自由主義」がはじまったわけだ。

トッドは言う。「『黒人の解放』が『白人の集団感情』を打ち砕いたのです。『新自由主義』という革命は、人種主義の圧力から誕生しました。私に言わせれば、人類学的な無意識にずっと潜んでいた『非平等』への衝動が抑えられなくなった結果に他なりません。」

人種問題はアメリカに付きまとっており、この白人の集団感情の崩壊が、効率的な集団行動を阻んでいる。共和党と民主党の二極化は、人種的な分離に根差し、これを永続化させている。黒人の90%の票は、高学歴層、超富裕層と連動し、民主党の「傭兵」のような存在になっている。これが政治システムの「寡頭制」を生き永らえさせている。一方、共和党は、優位性を失いつつある白人アイデンティティから逃れることが出来ずにいる。

人種主義、「人種」へのこだわりがアメリカの白人の民主主義を可能にしたわけだが、オバマ以降は、「多人種」を夢見ながら「寡頭制」を持続させている。「民主制」から「寡頭制」への移行は、ロシアとの対立によって形づくられ、「黒人の解放」を迫ったのもロシアだ。

加えると、家族構造の歴史から見ると、西洋社会は「もっとも原始的」で、父権性が強く権威主義的社会を形づくっている共同体家族こそ「もっとも新しい」ということだ。

ほぼほぼ、トッドの言うことをコピーしてきた。他にも、おもしろいトピックはいくつかあるのでまた紹介するつもりだ。

おしまい

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出版の話 《YOUTUBE》青汁王子・三崎雄太と幻冬舎・箕輪厚介の対談

じじいの《紹介》欄にも書いたが、地上波のテレビに見るところはないが、YOUTUBEやニコニコ動画などを見ていると知らなかったことがたくさんあり、時間がいくらあっても足りず、見飽きない。

今回は、青汁王子と呼ばれる三崎雄太さんのチャンネルから、箕輪厚介さんとの対談を紹介する。

この対談を通じて思うのは、三崎雄太氏、箕輪厚介氏どちらも、こせこせしたサラリーマンと比べると、振り切れていて雑念がない。人へ責任転嫁することなく、目的地へわき目も振らず疾走する人物の潔さがある。

ウィキペディアによると、青汁王子は高校卒業後、アフィリエイト(ブログなどで商品を紹介し販売した時に一定の報酬をもらったりする仕組み)で儲け、アプリを作ったりする会社を経営したりして、インターネットで美容通信販売の後に青汁を売って大成功する。ところが、脱税により逮捕され、世間からバッシングを受け転落。その転落を契機に、焼き鳥屋になったり、彼女に振られたりの一部始終を公開し反響を呼んだ。また、NO1ホストになったり紆余曲折をへて、単に会社経営で金儲けするより、世間に言いたいことを言うほうが楽しいと言って、ユーチューバーをして成功。ガーシーやホリエモン、ヒカルなどと活動している。

一方の箕輪厚介氏は、幻冬舎のカリスマ編集者で、幻冬舎自体が見城社長という強烈な個性のもとで、わずかな時間で大成長した会社である。氏はその幻冬舎で、何冊もベストセラーを生み出した。その本を売ることに関しての彼の語り口は、極めて明快だ。ただ話を聞いていると、例えばホリエモンであれば、ホリエモン自身は1文字も書いていないらしく、氏がゴーストライターの役目をしている場合もありそうだ。

そんなで、青汁王子こと三崎裕太氏が、角川から出版した「時を稼ぐ男」が重版されたのを機に、10万部を越え、さらにもっと売るための戦略を箕輪厚介氏に相談するというのが内容だ。

これに対する箕輪厚介さんの回答の要約はおおむねこんな感じである。

  • ジャンルごとに「池」の大きさが決まっていて、《健康》なら100万部、《神社》なら7000部、《お金のビジネス書》は30万部。本の中身の良し悪しに関係なく、これが上限。
  • 売り上げを増やそうとすれば、著者のコミュニティ(三崎雄太氏であれば、ホリエモンやヒカルなどの著名人)とコラボし、対談したり帯に推薦文を書いてもらう。そうすることで、対談した人のフォロワーにもリーチできる。
  • 本屋さんへドブ板営業する。イベントやったりサイン会やったりする。
  • 広告を異常なレベルでやる。中途半端では効果がない。 新聞広告の大きなものをやる。電車の中づり広告のジャックをする。電車の動画広告を1日中流す。タクシー広告をやる。広告は、ユーチューバーの三崎雄太には、認知を上げるのでムダ金にはならない。
三崎優太 青汁王子

箕輪厚介氏がいうのは、最初に火をつけられる(1~2万部売れる)のは実力があるからこそという。火がついたものを大きくする方法はある。火がつかない本を売ろうとしても、お金の力で本は売れない。

さらに興味深い、納得するようなことをビシバシいろいろ言われている。

  • 頭おかしい人、ネジがぶっ飛んでいる人でないと本は売れない。
  • 本を出したいと思っている時点でダメ。側から「本を出してください」と頼まれるほど、新しい考えなどがないとダメ。
  • SNSでバズっている。バズる兆しがある。SNSで話題にならないものが本で売れるわけがない。
  • アナログの本屋で売れるのは奇跡。ほとんどの人が本屋へ行かない。それほど難しい。いいタネを持っていないとダメ。

ここからは、おまけである。

前提条件として、YOUTUBEにしろTWITTERにしろ、SNSのプラットフォームというものは本来、誰に対しても平等に開かれているからこそ、プラットフォームと呼ばれるのだが、現実は違っていて特定の権力に反発するようなものは、バン(禁止、アカウント停止)され、公表の機会は奪われている。 具体的に説明すると、コロナで反ワクチンの主張やWHOや政府に異議を唱えるとBANされる。小林よしのり氏や尼崎の長尾医師などが該当する。また、参議院議員に当選したガーシーチャンネルは、楽天の社長や官房副長官を名指しで批判していたのだが、選挙の終盤戦にいつアカウントがバンされるか、投票日まで見れるか競争になってスリリングだった。また、もう一つ上げると、トランプ元大統領はそこらじゅうのSNSでバンされて、対抗措置として自分でSNS、《TRUTH SOCIAL》というものを立ち上げて発信している。

つまり、既存のSNSは、政治的に無色透明なプラットフォームではなくかなりなバイアスがかかっている。

とはいえ、いまのところYOUTUBEは、操作性もいいし、ユーチューバーにとって多くの視聴者を稼げるので、誰もが力を入れておりさまざまな新発見ができる。

おしまい

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