国債発行が国民を豊かにする

(2022/8/3, 2022/8/4 & 2022/9/15 一部、追記しました)

まず最初に、「国債発行が国民を豊にする」という説明の根拠をお伝えする。ここでは、2人のおっしゃっていることをお伝えする。私が書いているのは、お二人がおっしゃっている内容を、表現方法を少し変えて(分かりやすく)伝えているだけである。お二人に感謝申し上げる。

一人目は、どんぶり勘定事務所の神田知宜(かんだとものり)さんである。神田さんは、会計事務所を経営されている方で、こうした通貨発行の旧来の社会通念をひっくり返すような動画もさることながら、中小企業経営相談などの動画も多数アップされていてなかなか楽しい。通貨発行のプロセスについては、日本銀行と、日本銀行金融研究所がそれぞれ、信用創造(通貨発行)の手順を公表しており、そこから会計取引を簿記の仕訳で表したということである。 

二人目は、「目からウロコが落ちる奇跡の経済教室」著者中野剛志さんである。中野さんは、イングランド銀行の記述と、建部正義さんの「国債問題と内生的貨幣供給論」をもとに論述されている。中野剛志さんは、経済学者なのだが現在は経産省に勤めておられるMMTの中心人物のおひとりである。

中野剛志さんの本

お二人が言われる説明の具体的な根拠の部分は、最後に掲げた。読んでみようと思う方は是非、参照してください。

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それでは、国債の発行は通貨発行であり、国民を豊かにするということを説明する。

これを理解し、世間でも理解されるようになると社会の問題のほとんどが改善する。問題のほとんどがお金がらみだから。

日銀は、国債を発行、市中銀行に引き受けさせる際、日銀当座預金を信用創造(通貨発行)により市中銀行に供給し、それを元手にして市中銀行が国債を購入する。市中銀行にとっては、利子のつかない日銀当座預金の形で預金を持っているより、国債の形で資産を持っている方が利子がつくし、国債は元本割れのリスクもないので、市中銀行は国債を買わないという選択肢はない。必ず、国債を買う。こうしたこと、日銀が信用創造により市中銀行に資金を与えることでやっているという事実は、世間では全く知られていないと言っていいほどだ。 この国債発行と購入のプロセスを何故、日銀の人たちは世間に向かって大きな声で言わないのか。それをホームページに書いたり本で出版しているのに、なぜ言わないのだろうか。 おそらく通説と、驚天動地というか、地動説と天動説ほど違う事実を言うのは、その後の世間に与える衝撃の大きさを考えるからだろう。 しかし、この事実が、広く経済学者の間で理解されれば、経済の世界は180度変わる。すでに、欧米はそれを理解して、経済政策に取り入れている。 日銀の実務担当者よ、通貨発行、国債発行の真実を述べてくれ。

なおこの事実は、自民党の参議院議員西田昌司氏が、国会で取り上げ、日銀の担当者も、財務省の担当者も、さらには、鈴木俊一財務大臣も、国債の発行が国民に資産をもたらすということを認めている。ぜひ、皆さんもネットなどで、調べてみてください。


ここから、一連の具体的なプロセスを説明する。まず第1番目に、日銀がB銀行に、「国債」を購入するための「日銀当座預金」を通貨発行(信用創造)する。このとき、日銀は、「日銀当座預金」をB銀行にくれてやるのではなく、「貸付金」という債権の形で「資産」をもち、B銀行は「借入金」という形で「負債」をもつということに注意してください。

次に2番目に、政府が「国債」を発行して、B銀行が「国債」を日銀を経由して購入する。3番目として政府はその代金で、C企業から「スーパーコンピューター」(=「固定資産」)を購入する。「スーパーコンピューター」という例えにしたが、IR施設の建設でも何でも構わない。

なお、一連の取引を終了した後で、左右(借方と貸方)に同じ勘定科目が出てくる場合に相殺すると何が起こっているのかが一目で分かる。そのため、最初の段階から最後に消える勘定科目は、前もって抹線した。しかし、取引の時点では、勘定科目は生きている。最後に消し込んだという前提で見てもらいたい。

1-1 B銀行が、日銀の通貨発行(信用創造)により、日銀当座預金を手にする。

この部分が、日銀がB銀行に対し「日銀当座預金」を信用創造(通貨発行)する部分である。日銀は、日銀の中にあるB銀行の日銀当座預金口座に、1000億円振込むと同時に、「貸付金」という債権をもつ。B銀行は、1000億円の「日銀当座預金」という資産を手に入れると同時に「借入金」という債務を背負う。

B銀行(対日銀) (日銀当座預金)1,000億円 (借入金)1,000億円

日銀(対B銀行)  (貸付金)1,000億円   (日銀当座預金)1,000億円

これです!右端の部分です。日銀が、市中銀行に国債を買うお金を渡しています!それが国債と交換されています!

1-2 B銀行が国債を購入。代金を政府へ直接払えないので、日銀へ支払い。

B銀行(政府) (国債)1,000億円

B銀行(日銀)             (日銀当座預金)1,000億円

B銀行は、日銀当座預金を使って国債を購入した。日銀当座預金1000億円を手放し、国債1000億円という債権を手にした。(上の説明。以下同じ。)

日銀(B銀行) (日銀当座預金)1,000億円

日銀(政府)               (政府預金)1,000億円

日銀は、B銀行にある負債の日銀当座預金を消し、政府預金の口座に入金した。日銀は、B銀行から振り込まれた1000億円を政府の口座に振り替えた。

政府(日銀)  (政府預金)1,000億円

政府(B銀行)             (国債)1,000億円

政府は、B銀行に対し国債1000億円という負債を負い、政府預金1000億円という財源を手に入れた。

1-3 政府がスパコンを日本のC企業発注。支払いを日銀、B銀行を経由し、C企業へ支払い。

政府(C企業)(スパコン=固定資産)1,000億円

政府(日銀)              (政府預金)1,000億円

政府は、日銀の口座にある政府預金を払い出し、スーパーコンピューターを手に入れる。

日銀(B銀行)             (日銀当座預金)1,000億円

日銀(政府)  (政府預金)1,000億円

日銀は、政府から預金を受け取ったので、政府預金を増やすとともにB銀行の日銀当座預金を増やす。

B銀行(政府) (日銀当座預金)1,000億円

B銀行(C企業)  信用創造 →→→→→→(普通預金)1,000億円

B銀行は、日銀から日銀当座預金を受け取ったので、C企業の普通預金を増やす。つまり、政府が支払ったスパコンの代金1000億円を日銀経由で支払い、B銀行がC企業の口座に1000億円を記帳した。これも、世の中に存在していなかったお金が生み出されたという意味で、信用創造(通貨発行)であることに注意してください。

C企業(B銀行)(普通預金)1,000億円

C企業(固定資産)         →→→(スパコン=固定資産)1,000億円

C企業は有形固定資産であるスーパーコンピューターを国に渡し、対価を受け取った。

1-4 B銀行が、手にした日銀当座預金を元手に、借入金を日銀に返済する。

B銀行(日銀)(借入金)1,000億円    (日銀当座預金)1,000億円

日銀(B銀行)(日銀当座預金)1,000億円 (貸付金)1,000億円

2.これらの取引を相殺消去する。

政府(B銀行)              (国債)1,000億円

政府(C企業)(スパコン=固定資産)1,000億円

B銀行(政府) (国債)1,000億円

B銀行(C企業)             (普通預金)1,000億円

C企業(B銀行)(普通預金)1,000億円


(結論) 

政府は国債を1,000億円発行し、スーパーコンピューターを手に入れた。B銀行は、国債1,000億円の債権を手にし、他方、C企業に対し普通預金1,000億円という負債を手にした。C企業は作ったスーパーコンピューターを政府に売り(その分の固定資産が減少し)、普通預金1,000億円を手にする。政府には、単に、国債を1,000億円発行したという履歴が残るだけだ。

前にも書いたが、この国債の残高は償還する必要はない。時期が来れば、借換債を発行して、償還を繰り延べるだけだ。誰も困らない。国民は豊かになった。この時、日本全体で見ると、国債発行で1,000億円の資産が形成されている。つまり、国債発行は国民に対する通貨発行そのものである。

注意しなければならないのは、国債の発行による通貨発行は、その国の供給力の範囲でしかできない。供給力を超えてやると、インフレになってしまう。(逆に言うと、これまで日本は国債発行が足りなかったから、成長できなかった。国債をもっと発行してい入れば、少なくとも欧米並みに成長していただろう。そうすれば、国債残高のGDP比率が世界最高とはならなかっただろう。)

日本の供給力は、年々怪しくなっている。日本で売られている商品の殆どが、中国製や、その他の途上国で作られてものを輸入して販売している。この状態が今よりひどくなれば、国債を発行するとインフレになるので、この手は使えない。つまり、チャンスは日本に国力のある今しかない。

おしまい

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以下、お二人の根拠となる事項。

最初はどんぶり勘定事務所の神田知宜さんが、根拠として示していただいたものだ。 日銀は、ホームペーの《決済・市場》《日銀当座預金取引・当座貸越取引》《日中当座貸越基本要領》の3.の2同時担保受払の「(2)取引先が、日銀ネットを利用して新規に発行される国債(以下「新規発行国債」という。)を取得する場合において、当該取引先が希望するときは、当該取引先に、新規発行国債の取得と同時に3.に定める根担保として差入れさせる。この場合において、新規発行国債の取得にかかる資金の払込みのために必要なときは、日中当座貸越を行うものとする。」と書いている。また、日本銀行金融研究所が「日本銀行の機能と業務(日本銀行金融研究所編、有斐閣、2011年刊)」の第4章第4節「決済と日本銀行の役割」で、「国債の買い手である金融機関が,売り手から受け取る国債を担保に日本銀行から日中当座貸越を受け,同時にその資金を当該国債の買入代金の支払いにあてることができる仕組みで,流動性の節約に有効であることから広く用いられている。」と書いている。

二人目は、「目からウロコが落ちる奇跡の経済教室」著者中野剛志さんである。中野さんは、イングランド銀行の記述をもとに次のように論述されている。こちらは、とても読みやすい。

   ① 銀行 が 国債( 新規 発行 国債) を 購入 する と、 銀行 保有 の 日銀当座預金 は、 政府 が 開設 する 日銀当座預金 勘定 に 振り替え られる    ② 政府 は、 例えば 公共事業 の 発注 にあたり、 請負 企業 に 政府 小切手 によって その 代金 を 支払う    ③ 企業 は、 政府 小切手 を 自己 の 取引 銀行 に 持ち込み、 代金 の 取立 を 依頼 する    ④ 取立 を 依頼 さ れ た 銀行 は、 それ に 相当 する 金額 を 企業 の 口座 に 記帳 する( ここ で 新た な 民間 預金 が 生まれる) と 同時に、 代金 の 取立 を 日本銀行 に 依頼 する    ⑤ この 結果、 政府 保有 の 日銀当座預金( これ は 国債 の 銀行 への 売却 によって 入手 さ れ た もの で ある) が、 銀行 が 開設 する 日銀当座預金 勘定 に 振り替え られる    ⑥ 銀行 は 戻っ て き た 日銀当座預金 で 再び 新規 発行 国債 を 購入 する こと が できる。

  この プロセス から、 次 の 二つ の こと が 分かり ます。   第一 に、 銀行 は、 日銀 に 設け られ た 日銀当座預金 を通じて、 国債 を 購入 し て い ます。 集め た 民間 預金 を 元手 に し て 購入 し て いる わけ では ない の です。 です から、 銀行 の 国債 購入 は、 民間 預金 の 制約 を いっさい 受け ませ ん。   では、 この 銀行 の「 日銀当座預金」 は、 どこ から 来 た の でしょ う か。 それ は、 もと はと 言え ば、 日銀 が 供給 し た もの なの です。   さて、 そう だ と する と、 銀行 による 国債 購入 という のは、 日銀 が 政府 から 直接 国債を購入し て 当座預金 を 供給 する こと( 日銀 による 政府 への 信用創造)、 いわゆる「 財政 ファイナンス」 と ほぼ 同じ という こと になり ます。 もっとも、 財政 ファイナンス は、 法律( 財政法 第 五条) により 原則 禁止 とさ れ て い ます。 しかし、 銀行 による 国債 購入 も、 結局 の ところ、 日銀 が 供給 し た 当座預金 を通じて 行わ れ て いる の です から、 財政 ファイナンス も 同然 でしょ う。 「財政 ファイナンス は、 ハイパーインフレ に なる から、 絶対 に やっ ては なら ない!」 と よく 言わ れ ます。 しかし、 銀行 の 国債 購入 という 事実 上 の「 財政 ファイナンス」 は、 普通 に 行わ れ て いる の です。 でも、 ハイパーインフレ なんて 起き て い ませ ん ね。   いずれ に し ても、 政府 の 財政赤字 は、 民間 貯蓄( 預金) が ファイナンス し て いる のでは ない の です。   第二 に、 政府 が 国債 を 発行 し て、 財政 支出 を 行っ た 結果、 その 支出 額 と 同額 の「 民間 預金」 が 新た に 生まれ て い ます。 つまり、 政府 の 赤字財政 支出 は、 民間 貯蓄( 預金) を 減らす のでは なく、 逆 に 増やす の です。

中野剛志. 目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】 (ワニの本) (Kindle の位置No.1028-1038). KKベストセラーズ. Kindle 版.

国債は償還されたことがない。償還時期が来ると借り換えている。これは自転車操業か?

これは、いかに世間がひろく誤解しているかという例だ。たまたま、見つけたものだが、立命館大学経済学部が作成したものだが、経済学者と言われる立派な人たちが、見事に間違えている。

http://www.ritsumei.ac.jp/ec/why/why02.html/

結論のところは知らないが、書きぶりから、設問自体矛盾していておかしい。負債を負債で返せないからだ。たとえ国債が借金でも、借金は借金で返せない!(つまり、言っときますが、「国債」は、政府の「負債」というならマシですが、国民の借金ではない。政府の「負債」は、民間の「負債」と意味合いがまったく違います。)

《結論》

タイトルに対する結論を先に言うと、国債発行は、自転車操業でも何でもない。むしろ、経済成長するために必要な、政府が供給すべき通貨供給である。日本政府がこれをしないから、日本はパイが増えるような経済の成長ができない。給料も上がらないし、技術革新もできないので、ずっとパイの奪い合いをしている。

今回書くのは、市中に出回るお金は、市中銀行が生み出しているという話と、市中銀行は日銀から日銀当座預金というお金を作ってもらっているという話をする。どちらも通貨発行(信用創造=Money Creation)である。ただし、国が国債を発行して、例えば公共事業をしたり、給付金を配ったり、科学技術に重点配分したりすると、国民の側は資産が増えて豊かになるのだが、この説明も一緒にすると長くなってしまうので、国債発行で国民が豊かになるという話は次回する

《財務省のウソ》

財務省は、国債の残高が1,200兆円あり、国民一人当たり1,000万円の借金になるというような説明をし、国民に日本が破綻するのではないかという不安をまき散らしている。ところが、この説明は通貨発行の仕組みを正しく理解していないデマだ。おかげで、われわれ国民は政府にお金がないんじゃ仕方がないかと、お金のいることをあきらめてきた。だが、そんなことはない。

《本当の通貨発行のプロセス、暦年の推移、注意点》

まず、どこの国でも同じなのだが、お金が発行されて市中に流通する仕組みは、① 中央銀行が金融機関に対し、お金を供給する仕組みがあり、これをマネタリーベースという。これに対して ② 金融機関(日銀を含む)が世の中に供給するお金のことを、マネーストックという。

この時、日銀が金融機関とやりとりする日銀当座預金は、日銀と金融機関の決済と、金融機関どうしの決済に使われるものなので、国民がダイレクトに日銀当座預金にアクセスすることはない。また、日銀当座預金は、基本的に利子のつかない口座である。(現在は余りに低金利で、銀行救済のために一部付利している。)

下に張り付けた表が1970年から2020年までのマネタリーベース、マネーストック、GDPの推移である。この表を見ると、黒田日銀総裁が就任した2012年から、『異次元の量的緩和』が行われ、日銀から金融機関へマネタリーベースを爆増させたことが分かる。

また、マネタリーベースを爆増させたにもかかわらず、赤色のマネーストックは、伸び率はほぼ変わらないのが分かる。つまり、日銀の異次元の量的緩和にもかかわらず、市中に流通している通貨量は増えなかった。日銀当座預金が『ブタ積み』になっただけだった。

日銀のホームページから
日銀のホームページから
黒い線が日銀が金融機関へ供給したお金、赤い線が金融機関から世間へ供給されてた通貨の総量。赤線は、黒線ほどには増えていない。

《通貨発行のプロセス》

1.日銀の通貨発行 (日銀がA銀行に1,000億円通貨を発行する)

日銀(A銀行に対し)(借方)貸付金1,000億円 (借方)日銀当座預金1,000億円

A銀行(日銀に対し)  (借方)日銀当座預金1,000億円 (借方)借入金1,000億円

(説明)日本が、A銀行に1,000億円の通貨発行をする場合を考える。日銀は、《負債》である《日銀当座預金》1,000億円計上することで、A銀行の《日銀当座預金》1,000億円という《資産》を与える。その時、無条件に《資産》を与えるのではなく、日銀には《貸付金》という債権、A銀行は、《借入金》という借金返済の債務を負う。

これが、黒線の動きである。黒田総裁は、異次元の量的緩和と称し、強力にマネタリーベースという日銀と市中銀行の資金量を爆増した。このマネタリーベースを増やすことが、市中銀行の民間への貸し出しを増やすと考えたからだ。もちろん、これは成功しなかった。民間企業は市中銀行から借金をせず、景気は良くならなかった。

国債を発行するとき、日銀が銀行にお金を用立てている!!

2.BさんがマイホームのためにA銀行から3,000万円を借入

A銀行     (借方)貸付金 3,000万円 (借方)預金 3,000万円

Bさん     (借方)預金 3,000万円 (借方)借入金 3,000万円

(説明)Bさんが、A銀行から3,000万円のローンを借りるとき、A銀行は《貸付金》3,000万円という資産をもち、負債である《預金》3,000万円を計上する。この《預金》3,000万円は、A銀行が返済をしなかった場合の社会に対する責任の意味合いがある。返済されなかった場合には、《損金処理》や《引当金償却》などの処理をするの必要がある。Bさんは、ローンの実行により、資産である《預金》3,000万円を手にすると同時に、返済義務である《借入金》3,000万円を背負う。

これが通貨発行(信用創造)だ。市中銀行は、預金者から集めた預金を原資に貸付していない。借主の返済能力を審査したうえで、返済能力があると考えれば、キーボードを叩いて、お金を作り出す。これがマネーストックの正体だ。このマネーストックの数字は、マネタリーベースの数字を含むので、赤線は急こう配で増えているように見えるが、マネーストックは黒線の異次元の量的緩和を含むので、それを差し引いて考えると、日本の近年のマネーストックのうち、純粋に市中銀行が通貨発行(信用創造)した額は、減っている。ー--日銀当座預金は、日銀を含む金融機関のためのもので、国民には関係ないから。

おしまい

MMTを批判する人たちが見ようとしない点 その2 反論編 《貨幣理論と通貨発行益の違い》

(2022/7/30 長かったのでこのトピックを分割しました)

《自称経済評論家》の主のコメント

ここから《自称経済評論家》のコメントを述べてみたい。最初は、現在の主流派経済学である新古典派の教科書に載っている、信用創造と通貨発行益を見ていく。

まず、新古典派経済学者たちが間違ったのは、金本位制度から管理通貨制度へ、固定相場から変動相場へ移行したにもかかわらず、貨幣観を改めなかったことにある。

新古典派経済学で説明される信用創造(Money Creation=通貨発行)は、下のように説明される。つまり、銀行が、顧客から預かった預金を連鎖的に貸し出しを繰り返すことで、お金(預金通貨量)が増えていくしくみをいう。 これを管理通貨制度になっても変えなかった。

《まずは、新古典派の貨幣理論、乗数理論と通貨発行益とは》

1.《乗数効果による通貨発行》

以下が、新古典派の乗数理論による信用創造である。出典は、https://www.findai.com/yogow/w00321.html 「金融大学」から引用させてもらった。

(https://www.findai.com/yogow/w00321.html 「金融大学」から引用)

新古典派経済学の信用創造(通貨発行)は、預金者の預金に見合う法定準備金を日銀当座預金に市中銀行が預け、残りの額を連鎖的にいろんな市中銀行が貸出すことで、100円の預金が、1,000円の貸し出しを生むという。これを信用乗数という。この例は、法定準備率が10%の場合なので、現在の準備率は2%で考えると、もっと莫大な貸し出しを理論的には生める状態にある。

参考に付け加えると、今の日本の準備通貨制度は、黒田総裁の異次元の金融緩和により、以前に100兆円程度だった準備預金=日銀当座預金が、500兆円ほどに膨れ上がっており、準備預金制度は有名無実化している

2.《通貨発行益》

もう一つ、通貨発行益(シニョリッジ)という考え方を紹介する。新古典派経済学では、造幣局が発行するコイン(硬貨)と、日銀が保有する国債や貸付金が生む利子のみを、通貨発行益というのが一般的だ。下が、https://gentosha-go.com/articles/-/6487 佐々木 浩二さんの記事から引用したものだ。

https://gentosha-go.com/articles/-/6487 佐々木 浩二さんの記事から引用

この説明によると、日銀のバランスシートの「負債に計上される銀行券と日銀当座預金はほぼ無利子であり,資産に計上される日本国債や貸出金は有利子です。通貨を発行する日本銀行の利益は,無利子の負債の見合いに有利子の資産を持つことから生じます。」と書かれている。

 また、通貨発行益については、造幣局が発行するコインは、政府や日銀の「負債」ではなく、鋳造費用を差し引いた金額が「利益」になる。同様に、日銀が保有する国債は利子を生むので、利子が「発行益」だと説明する

《MMTが考える信用創造と通貨発行益について》

一番端的に違う点は、国債は一般的に「負債」と表現されるが、政府は、民間と機能が根本的に異なっており、「負債」ではなく「資本」的性質と考えられる。つまり、返済の義務がないのである。

実際問題として、償還期限がきた国債は、借換債を発行することで繰り延べている。いつまで経っても償還していないのである。これはどこの国も同様である。経済の主体は、《国》と《民間(企業と国民)》と《海外》といわれるが、とにかく《国》の果たす役目は特殊で、《民間(企業や国民)》とは全く違う。

政府が発行する国債は、「負債」に位置づけられる。しかし、「負債」を消すために、一つの方法として、国民からの徴税額を増やして償還する方法がある。ただし、そうして「負債」を減らすと、消費税を増税した場合のように、市中で流通する通貨量が減り、不況を招く。

国の借金、国債残高という「負債」を、国の通貨発行で返済すれば良いというような発言を聞くことがあるが、これはあり得ない。簿記の考え方では、貸方にある「負債」を通貨発行という「負債」で消すことは出来ない。負債を消すためには、資産を手にしないと負債を消去できない。

金本位制であれば、通貨はそれに見合う金との交換を保証しているので、金の保有量以上に通貨を発行できない。ところが、世の中の技術進歩で経済が成長し、自動車、ロケット、人工衛星など過去になかった財が登場し、従来の貨幣価値では足りなくなった。もし通貨を発行できないのであれば、その財の対価を払えない。そこで金本位制を離脱した。

為替レートも固定相場から、経済の実力に合った市場で決定される変動相場制へ移行した。

この二つの作用で、各国は自由に経済政策をとることができ、しかも、それらの政策が市場で評価され、《見えざる手》が働くという需給理論はここに限っては正しい。国が放漫経営をすると通貨安を招き、輸入物価が上がり国民は苦しむ。ただ長い目で見ると、経済的に弱い国の通貨は、為替レートも弱くなるが、それが貿易面での交易条件を有利にし、時間が経つと経済が成長するベクトルが働く。

ところが、新古典派派経学の貨幣論は相変わらず通貨自体に値打ちがあるという。

新古典派経済学の信用乗数論の貨幣観は、準備預金を一定確保していれば、預金者全員が銀行へ引き下ろしにいかないという経験則を説明のよりどころにしている。

しかしMMTは、中央銀行も市中銀行もどちらもが、貸し手側は、「貸付金」という資産と「預金」という負債を負い、借り手側は、「預金」という資産と「借入金」とういう負債が生じることで、信用創造(通貨発行)しているという。つまり、無から有を生む》のがMMTの通貨発行の考え方だ。MMTの信用創造では、会計学的には違うが、全額が通貨発行益と言えるかもしれない。

具体的な例を挙げる。マイホームのためにAさんが銀行ローン3000万円を借りるときのことを例に挙げて説明する。銀行がAさんにローンを実行するとき、銀行は「貸付金3,000万円」という資産を持つと同時に、「預金3,000万円」という負債が生じる。この「預金3,000万円」という負債は、Aさんに対してではなく、銀行が社会に対して3,000万円の負債を抱えたという意味だ。Aさんが、もしローンを返済しなければ、今度は銀行は3,000万円の負債を処理する必要があるからだ。

この時、銀行など貸付業務を行う主体にとって、「預金3,000万円」は負債になるので要注意である。一方、Aさんは、「預金3,000万円」という資産を手元に得て、同時に「借入金3,000万円」という負債を負う。つまり、Aさんは預金を手にしたかわりに、返済義務を負ったわけだ。 これがMMTの信用創造(通貨発行)である。これは、キーボードマネーとか万年筆マネーと言われるもので、誰か他人の預金を又貸ししているのではなく、キーボードを叩くだけで与信が行われる。すなわち、通貨が発行される。

日銀が行う信用創造(通貨発行)もまったく同様である。「預金」が「日銀当座預金」に代わるだけだ。 つまり、新古典派が考えるように、預金者の預金が連鎖的にぐるぐる回って貸付金が増えたりしない。

結局のところ、通貨自体は、バーチャルで抽象的な約束であり、実態は金銭の貸借関係、債権債務ががあるだけだ。市中銀行と国民の間の貸借は、倒産や破産の場合に返済されないリスクがあり、返済されないときは、市中銀行は「引当金」を償却したり、「損金」を計上して対応しなければならない。

しかし、日銀と市中銀行の関係は、日銀に倒産のリスクがない。そこが決定的に違う。日銀(と政府)が、極端な放漫経営(5000兆円の国債発行して需要を喚起するとか)をせず、程よく通貨を供給し、バランスよく財政支出し、バランスよく徴税と分配政策をとれば、日本国民は幸せな生活を送れる。

「悪貨は良貨を駆逐する」(19世紀にイギリスの貿易・為替・金融業者であるトーマス・グレシャムが提唱した、『グレシャムの法則』)という表現は、通貨自体に値打ちがあると考える分かりやすい商品貨幣論である。新古典派経済学はこのような貨幣観を持ち続けている。

ぼくたちは、昔教科書で、幕府は通貨が足りなくなった時に、改鋳で希少金属の含有量を減らしたと習ったが、あれも嘘だ。改鋳することで、たしかに通貨の供給量が増え、価値が下がり物価が上がったのかもしれないが、金本位制のように通貨自体に値打ちがあるから、希少金属の含有量を減らすインチキをしたと道徳的に非難されるべきとのニュアンスがある

つまり、希少金属の含有量は問題ではない。通貨自体に求められる条件は、擦り減らなくて偽造されないものであれば、貝殻であろうと何でもよい。幕府は、幕府が定めた《何とか通宝》《何両》を年貢として収めろ、納めないと《死罪》だと言えば、、農民も商人も《何両》かを手に入れて幕府へ払おうとする。それが、通貨に対する信認が生じる原因である。現在でも同じで、日本政府は日本円で納税することを求めており、それが《円》が信任される理由である。

ここまでは、通貨発行について述べてきたが、対をなす大きな問題が一つある。つまり、それは供給力の問題と円の海外への流出の問題である。その3へつづく。

おしまい

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