MMTを批判する人たちが見ようとしない点 その1 批判派人物紹介

(2022/7/30に3つに分けるため一部修正しました)

ここにあげた人たち成田悠輔さん、ひろゆきさん、高橋洋一さんと中田敦彦さんは、YOUTUBEや、マスコミでの影響力の大きい人たちであり、YOUTUBEの画面を切り抜かさせてもらった。やり方としては、よろしくないかなと思うし、議論をすべて聞いてから判断して欲しいというのもあるだろうから、恐縮だが、議論を簡便にする方法としてお許しいただきたい。

補足したいのだが、ここにあげた4人の方々は、貨幣観をどう捉えるかという点を別にすれば、全員、高く評価させてもらっている。成田さんの政治に対する処方箋は基本的に、「年寄り退場しろ」というもので同感だし、ひろゆき氏は何のトピックでも是々非々で言いたいことを言いながら、どのトピックも的を得ている、高橋洋一氏は、アベノミクスが登場した時に主は、新古典派経済学の一派であるリフレ派の経済理論を勉強していて、高橋氏の本を何冊か読ませてもらった。政府と日銀の《統合政府》の概念を持ち込んだのは氏の功績だと思う。またオリラジ中田氏もいろいろなトピックをよく勉強されていて、よく消化されていて、いつも楽しく見させていただいている。

それだけに、ここに上げさていただいた4名の方はどなたも人気で、それだけに世論に与える影響が大きい。ただし、4名の方と違って、MMTの理論は間違っていないと主は考えている。そのため、3回に分けて、1回目は批判する人で有名人の言説紹介、2回目は新古典派とMMT派の貨幣観と通貨発行益の違い、3回目は供給力と円の海外流出の問題について書きたい。

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まずは、成田悠輔氏。この人は、東大経済学部、東大院経済研究科、MITでPh.D取得、現イェール大学アシスタント・プロフェッサー(助教)で、印象深いメガネとともに、落ち着いた語り口、気の利いた内容の喋りで人気が急激に沸騰した。

しかし、MMTを真っ向から否定する。「MMT論者はバカ」と言い切る。ただ、MMTの貨幣理論のどこが間違っているかという指摘はなく、普通に新古典派経済学を学び、普通に信用乗数で説明する貨幣論をお持ちなのだろうと思う。

心の底からの軽蔑を【成田悠輔】(2022/02/25)

次の動画のキャプションは、成田氏が「この20年以上にわたって、日本が経済成長できないのは何故か」と問われたときに「わからん」と答えたところである。経済学者と言われる人が、日本が経済成長できないことに対して、「わからん」というのはあまりに無責任に過ぎると思う。だが、世間の受け止め方は何故か「正直でよい」と高評価だ。

【成田悠輔】なぜ日本だけ経済成長できないの?・・・わからん(2022/03/01)

次はひろゆき氏。彼はMMT論者を《自称経済評論家》と言い、「日銀がお金をじゃんじゃん刷って国民に配れば、みんなが幸せになる」とMMT信奉者は言うと言う。しかし、MMT論者が言っているのは、日本は欧米に比べると、財政支出の額が少なく経済成長していない、国債の残高は気にすることはない、日本がいい例じゃないか、というのが趣旨で、あまりに雑駁な括り方である。

【ひろゆき】自称経済学者を全員まとめて論破します。MMT論者ってなぜか●●を出さないんですよね(2022/02/14)

次は高橋洋一氏である。キャプションのとおり、「MMT論者が日銀が5,000兆円配っても大丈夫というのを聞いたことがある。」という。そりゃあ、今の日本のGDPが550兆円しかないところに、5,000兆円配ったらハイパーインフレになるだろう。誰が言ったか知らないが、5,000兆円出してもOKと言った人が間違っている。こんなことを根拠にMMTが間違っているというのは、氏こそが間違っている。 

消費増税とコロナの落ち込みが原因で生じた日本のデフレギャップは、政府の発表で20兆円と言われるが、本当はもっと大きいとも言われる。 原油価格高騰などによるコストプッシュインフレなどを加味すると、50兆円以上財政支出しても、欧米並みのインフレ率にならないのではないか。5,000兆円とは常識外れであり、考えられないほど大きすぎる。

第17回 国債は無限に出せる?新経済理論MMTは実は○○○だった(2020/10/24)

次はに中田敦彦氏。中田氏も様々なことをよく勉強されている。だが、彼がMMTを批判するために用いた材料は、太平洋戦争前に高橋是清が国債を乱発し戦争遂行し、戦後ハイパーインフレが起こったとことを説明材料にしている。

しかし、日本の戦後のハイパーインフレは、ジンバブエやブラジルなどのハイパーインフレよりはるかに率が低いこと、また、敗戦で焼土になった日本の供給力はほとんど失われていたので、ハイパーインフレが起こっても当然の状態だった。 現在の日本は、当然ながら、敗戦後の日本ほどひどい状態ではない。ただ、需要不足でデフレが30年続いて、その原因は何なのかというのが問題点である。敗戦後の特殊な状況を説明の材料に使うこと自体が間違っている。

コメ欄荒らしたMMT(現代通貨理論)肯定派に、中田敦彦が猛反論!(2022/01/25)

その1 おしまい

「テレビは核兵器に勝る武器、テレビは国民を洗脳する装置」

こちらは、よく見ているお二人。厚労省医系技官をされていた木村盛代さんと風俗関係のルポを数多く出版されていている中村敦彦さんだ。木村さんは、同じく医師の和田秀樹さんやら、京都大学の藤井聡教授らと、コロナ対策の批判やら、経済政策の批判をする動画も数多くあげられている。 中村敦彦さんは、風俗関係だけではなく、介護施設の経営もされたので、介護労働者の劣悪な労働条件などの動画も多数アップされている。

爺臭い説教をするつもりはないのだが、下の動画は、貧困により、若い女性が今や「パパ活」、風俗系に流れている現実はよく知られているだろう。

ここで、主が言いたいのは、貧困な女子が風俗で身を立てるほど日本が貧しくなったということだけではない。

同じ中村さんは、八王子にあまりに多く大学が集まり、その中の親から仕送りのない貧困女子大生が中央線沿線のピンサロで働いていて、待機所がサークルの部室のようになっているという動画もある。ここで中村さんがおっしゃっていたのは、ピンサロというのは、デリヘル、ソープより劣悪な労働環境なのだが、そこで働くピンサロ嬢たちに情報交換を禁止して、他へ移らないように統制する。4年間ピンサロ嬢する子が出てくる。

これはある種の洗脳だなと思う。オウム真理症や統一教会などいろいろあるが、他の世界をうまく見せないようにして、従順に働かせるという話だ。

ところが、我々自身々は情報統制などされていないと思っているが、そうではない。同じことが我々にも起こっている。つまり、テレビで報道される事件は、検察とテレビが決めて報道している。テレビ、マスコミは視聴率、売上とスポンサーしか気にしていない。視聴率を上げるためには、不安を煽ることだ。スポンサーに都合の悪いことは報道しない。ガーシーは、楽天の三木谷社長をぼろくそに言ったが、氏はアメリカのグーグル社まで行って、YOUTUBEのアカウントをバンさせようとしたと言われる。(実際バンされた。)そうしたことはスルーする。

テレビは、99%の場合、取材して事件を報道しているわけではない。検察なり警察が発表する事件を報道している。NHKは、職員の高給(平均賃金1800万円)、余りに多くの電波(地上波2コ、BS2コ、ラジオ中波2コ、FM1コ。もっとあるかも。)を使っているので、高市政調会長から「NHK、見ていなさい。使っている電波の種類をずっと減らします。」といわれ、NHK党の立花党首には「スクランブル放送しろ」といわれて、スタンスが思いっきり時の政権よりである。たまに、独自に事件を手に入れ、モリカケなどの事件が報道されるが、忖度だらけで肝心なところへマスコミは踏み込まない。

最近NHK党の立花孝志党首が「テレビは核兵器に勝る武器です。テレビは国民を洗脳する装置です。」とテレビ朝日の報道ステーションで発言し、つまみ出されることがあった。まさにこれだと思う。

おしまい

通貨システムに関する考え方の違い 主流派経済学者 vs リフレ派経済学者 vs MMT派経済学者

 下に小黒一正さんの《利上げが日銀財務に与える影響 異次元緩和後に備えより踏み込んだ検討を》をという記事を張り付けさせていただいた。この記事を題材に、主流派の経済学者が考えている日銀や銀行による通貨システムについて、考えてみたい。

この小黒さんなのだが、学部こそ理学部出身のようだが大蔵省で勤務された後、経済学者へと転身された主流派経済学を信奉する学者だと思われる。

この方が書かれた論考(一番下に掲げた。)で、「日銀当座預金に、0.1%の付利をしている、日銀当座預金は庶民から集めたお金だ」という記述が出てくる。ここのところが、主流派経済学者が間違っているところである。 つまり、日銀当座預金というのは、日銀、政府と市中銀行などのための口座であり、基本的に庶民のお金はここには入っていない。

次の《日本銀行当座預金とは何ですか?》は、日銀のHPに書かれた日銀当座預金の説明である。その説明では次のようになっている。

1番目は、金融機関、他の金融機関、日銀と国の間の決済手段と書かれている。これは、A銀行からB銀行へ送金された際、この日銀の中の当座預金をB銀行で増やし、A銀行の残高を減らして決済しているという意味である。つまり、金融機関同士の決済であり、国民に関係ない。

2番目は、金融機関の現金通貨の支払い準備と書かれている。これは、金融機関が現金紙幣(1万円札)が必要になり、日銀に用立ててもらうためのものである。金融機関が紙幣を必要な時に、日銀へ渡すためにのお金である。

3番目は、準備預金制度の対象となっている金融機関の準備預金と書かれている。この意味は、金融機関が預金者から預金を集めた際、その額の1%程度(2022年4月の率は、0.8%)を準備預金として、日銀当座預金に積む義務がある。この準備金は、黒田日銀が異次元の量的緩和を行う前までは、ずっと少なく100兆円以下で推移してきたのだが、日銀が国債を大量に買うので、これが金融機関の当座預金の残高を過去にないほど増やした。このため、準備制度の意味が有名無実化したと言われる。(下の《マネーと名目GDPの推移》表の黒破線参照。)

つまり、日銀当座預金は、庶民のお金が出入りするところではない。

おそらく、小黒さんはこの0.8%のことを預金者からのお金だと、言っているのではなく、銀行預金の原資自体が国民からで、当座預金もそうだと考えているように思える。 もしそうであれば、銀行制度や貨幣制度の理解がMMTの考えと違っているという話である。

日銀のHPから

また、この論では、「563兆円もの日銀当座預金が存在している。この日銀当座預金は民間銀行などがお互いの決済を行うために日銀に預けている口座で、その一部に「付利」と呼ばれる金利を付け、一定の利子を金融機関に支払っている。いま市場金利は概ねゼロのため、この付利は0.1%という低い金利だが、市場金利が上昇してくれば、日銀もそれ相応の付利をつけないといけない状況に追い込まれるシナリオもある。」と書かれているが、これもおかしい。

そもそも、この日銀当座預金の0.1%の付利は、金融機関へのゼロ金利に対する救済策として日銀が始めたことで、当座預金は本来が利子をつけない口座である。現状ゼロ金利のため、金融機関を経営支援するために一部に利子をつけているが、金利が上がってくれば、もとのように利子をつけるのを止める性質の口座である。

黒の破線が日銀の通貨供給、マネタリーベース

付利のことについては、昨日(7月21日)に配信された次の動画でトピックになっている。かなり長いのだが、元日銀の審議委員をされていた原田泰氏(リフレ派の経済学者)、ひろゆき氏が、本音で語っているのでけっこう面白い。

この動画の中身を要約すると、「付利は止めればよかった。」という原田氏の思いのほかに、日銀はこのアベノミクス以来やれることはすべてやってきたが、それ以前の時代に比べるとほんのわずかしか経済が改善しなかった。ただ、この状態で、金融政策を元に戻すと、元のもっと悪い不況へ戻ってしまうだろう。ひろゆき氏が挑発的な言い方をするので、原田氏が本音を言い始めるという感じで、結構盛り上がる。

これまでの失敗の原因は、原田氏は消費増税だと考えている。日銀にできることはもうない。後は、財政の出番だということになる。さらに、話は欧米のインフレ率が10%に近いところまで行っているという話になり、欧米では金融緩和も財政出動も日本以上にやったからで、効果はあった、やりすぎたという分析である。

長いし、原田氏が最初のうちはモゴモゴ分かりにくい表現をされ「じれったい感」があったが、ひろゆき氏のいうことももっともで、最後はベーシックインカムの話になる。これを聞いていると、つくづく日本経済もいよいよ終わりを実感する。誰か経助けてくれーー-!!

次回、何とか、MMT貨幣論のスタートである国債による通貨発行のところを説明したい。

おしまい

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以下は、引用した小黒さんの論考です。

《利上げが日銀財務に与える影響 異次元緩和後に備えより踏み込んだ検討を 小黒 一正》

月刊金融ジャーナル(2022年6月号)から

https://cigs.canon/article/20220624_6806.html ← こちら記事へのリンクです。

  • 「この日銀当座預金は民間銀行などがお互いの決済を行うために日銀に預けている口座で、その一部に「付利」と呼ばれる金利を付け、一定の利子を金融機関に支払っている。いま市場金利は概ねゼロのため、この付利は0.1%という低い金利だが、市場金利が上昇してくれば、日銀もそれ相応の付利をつけないといけない状況に追い込まれるシナリオもある。
  • 「仮にそれ相応の付利をつけない場合、何が起こるのか。そもそも、民間銀行などが日銀に預ける当座預金の原資は、我々が民間銀行に預けている預金であり、日銀が市場金利との見合いで付利を引き上げない場合、理論的に我々の預金金利の一部がカットされることを意味する。」
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