今更人に聞けない!「MMT入門講座」藤井聡(京都大学教授)衆議院議員 まつばら仁

安倍首相はアベノミクスを始めるにあたって、周囲のブレーンから多くを教わり、政策をスタートさせた。

ところが、モリカケ問題を財務省にリークされ、消費増税や緊縮財政に走り、腰砕けてしまった。

しかし、財務省と麻生財務相の反対を突破して、ここは再びMMTによる真水100兆円の経済支援(コロナ対策)をやって国民を救ってもらいたい。 

そして、モリカケ事件の責任を詫びて、政権を辞任してもらいたい。
そうする以外に、地に落ちた自身の名誉を回復する方法はない。

おしまい

新型コロナ 国民全員に毎月10万円配っても何の問題もない!

国民は日本が借金まみれで、あまりに借金が多く、1100兆円もあるためにこれ以上、政府を頼るわけにはいかないと思っている。

しかし、これは財務省がマスコミを含めて洗脳をしてきた結果であり、この新型コロナの危機にあたり「国民全員に毎月10万円配っても何の問題もない。」のだ。

その理屈を説明すると、財務省が国民を脅す国債は国の借金であり、この借金は、返す必要があるというが、そうではない。国債は借り換え(償還期限が来れば、新発債を発行して借り換え)ても良いし、本当に償還する場合でも、お札をすればよいだけである。

こうしたお札を刷って借金を返すという技は、国民にも企業にもできない技だ。国民、企業は「入りを量って出ずるを制する」(入ってくるお金以上にお金を使ってはならない)を意識して生活しているが、国の場合には事情が違う。我々は日々、お金を使っているが、これは国が発行したもので、国は経済の成長に合わせてお金を発行している。この国による通貨の発行を「通貨発行権」といい、これは国にだけ認められた権利だ。昔、この通貨発行は、兌換といって、国が所有する「金」の範囲でしか発行できなかった。これを金本位制というのだが、この縛りは昭和の時代になくなっている。

また、国が国債を発行する(国が負債を負う)ということは、国債を買った人や企業ににとっては、資産(債権)の増加になる。

つまり国が負った負債なのだが、これは国には通貨発行権があるので、いつでもチャラにでき、国債を買った側に資産が増えるメリットがある。

ただ、この技が使えない国がある。それは自国通貨で国債を発行できない国、例えば、イタリア、スペインなどはEUに加盟しユーロを使っているので、勝手にユーロを発行できない。同じくギリシャだが、通貨ドラクマを放棄したため、ユーロを使わざるを得なくなって破綻したわけだ。あと、アルゼンチンなどはドル建てで国債を発行しているので、ドルを刷るわけにはいかない。

また、主流派の学者は、終戦直後の日本や、軍事独裁政権時代のブラジルなどをあげ、通貨供給を極端に増やすとハイパーインフレが起こると警鐘をならすのだが、それは政府自体が終戦直後の荒廃した供給力のない時代の話なので、牽強付会(無理なこじつけ)というものだ。

よく大量に国債を発行すると、信認を失い、金利があがるというが、日本は約30年間、1100兆円の国債を発行してきた結果、金利は下がりつづけ今ゼロである。確かにマーケットの信用を失ったギリシャが金利40%をつけて、引き受け手を探したという話があるが、これも日本にとって牽強付会だ。

ただ、お金を配ると言っても限度があるのは当然だ。日本のGDPは530兆円/年ほどだが、ここに毎年200兆円配ればインフレになるだろう。インフレになりそうになった時に初めて、消費税や所得税などをあげれば、経済活動は冷える。今は、経済活動を温めなくてはならない時期だ。

新型コロナの対策で、国民一人当たり10万円を全員に一月配れば12兆円。これを半年やると、72兆円になるが、金持ちに配ると意味がない。ただ、全員に毎月10万円を配って、金持ちも勤労者も確定申告させれば、半分以上は戻ってくるだろう。

低所得者層に30万円を配るという案が当初検討されたたが、このとき負担は20兆円程度とか言われていたので、毎月10万円を6か月配っても、40兆円くらいだろう。当然、家賃や学費などの他の支援も必要である。

GDP530兆円に対し、40兆円を国がだしてもインフレにならないだろう。新型コロナの影響で、日本は20%以上のGDPが減り、間違いなくデフレになるだろう。その状態で、40兆円出しても、デフレだろう。

しかし、当の日本の財務省は、10万円を1回だけ配って終わりにしたいと考えているだろう。そんなことでは、日本で生き延びるのは、議員、地上波のテレビ局と財務省だけだろう。

ちなみに、動画の登場人物をごく簡単に説明すると、藤井教授は最近まで、安倍内閣のブレーンをされていた。安藤議員は、コロナが始まってどんな景気対策をするかという時に、他の議員たちとともに消費税の凍結を首相に進言した人だ。三橋貴明さんは、安倍総理と食事をしながら消費税を上げないようにという話をして、やっと人気が出始めた時に、家庭の夫婦げんかで奥さんにビンタをしてしまい、奥さんが警察に行き、警察に逮捕されたら、その日の夜のニュースに「家庭内DV!!!」という記事がそこら中に載ったという方である。

以上が、2つの動画の内容の主なものだ。

 

おまけ

これらの動画や他の動画を見ると、面白いエピソードがいっぱい出てくる。どうやら、安倍首相も麻生財務大臣も最初は、日本の景気回復にはお札を一杯刷ればよい、消費税は上げない方が良いと思っていたらしい。しかし、徐々に考えが変わっていき、財務省の意向に従っているという。

その原因の一つは、国税庁の存在。また、モリカケ問題の発端は財務省のリークで、泥を財務省が被ることを引き換えにして、政府に消費税を上げさせたのではないかという。

なお、何故、財務省がそれほど財政再建にこだわるかということだが、財務省設置法に「健全な財政の確保」、財政法第四条に、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。」という言葉が入っているからだと分析する人がいるという。これが本当なら、財務省、法律バカですね。さすが、東大法学部出身者の集まり。すぐに条文自体を、現実に即して改正しなければならない。

他によく言われるのは、もし財政規律をゆるめて日本経済が復活したら、財政規律をうるさく長年言ってきた財務省の掛け声は何だったのか、と問われるのが嫌だという説もある。要は、日本経済が復活して困るのは財務省というわけなんですね。

ところで、マイナンバーはすでに導入済みだし、コンピュータの事情も昔と大違いだ。

国はすでに国民全員にマイナンバーを振っているので、全員の所得を把握している。今回の給付のデータを源泉徴収義務者(企業)に伝えるようにすれば、確定申告ではなく、源泉徴収も可能だ。

今回の新型コロナの対応で、日本はコンピューターの活用がいかに遅れているということがバレてしまったが、この機会に、企業による源泉徴収制度を改め、国がコンピューターシステムを作って税額を計算して、その結果に基づいて、企業は納付だけするようにすればよい。コンピューターの進化は、たとえ1億2千万人の納税計算でも、パソコン1台あれば出来るレベルのシンプルなものにしてしまった。大げさなシステムはまったく必要ない。クラウドでちゃちゃっと作ればよい。時代はもうメチャかわっている。

ハンコ文化も止めればいいですね。

テレビの報道などで、政府の助成金などを求めて、中小企業などの事業者が政策投資銀行やら市中銀行へ出向いている様子が写される。このとき、紙の書類の束が画面に映って、これにも驚く。いつまで、紙の束で仕事をするつもりなのか、時代錯誤でしょ。紙で受け付ければ、もう1回コンピューターに入れる手間が必ずあるでしょ。

おしまい

 

エブリバディ・ノウズ【日本病】「国債を刷れ 廣宮孝信」& MMT (現代貨幣理論)

「通貨発行益」のことを知ろうと、よく行く図書館で「国債」をキーワードに検索してみた。そこで、8冊出てきたのだが、そのうちの1冊に「国債を刷れ」(廣宮孝信 彩図社)という本が出てきた。

何を知りたいのかというと、日本では借金の残高1300兆円を超え、財政再建のために税金を集めて、借金返済をしなければならないというのが緊急の課題と、マスコミや政府が言うからだ。

一部であるが、「そうではない、日本の財政は健全だ。国債発行残高が高すぎるということはない。財政再建よりも、景気浮揚が先決だ」という経済学者もいる。具体的気に名前をあげれば、高橋洋一、森永卓郎の名が浮かぶ。

高橋洋一や森永卓郎が、日本はそれほど借金漬けでないという根拠として、政府と日本銀行のバランスシートと統合すると、資産の部の方が大きいという。下の図は、高橋洋一の「99%の日本人がわかっていない国債の真実」(あさ出版)という本から写したものだ。画の上段が、政府だけのB/S(バランスシート)であり、下が日銀を統合したB/Sである。(クリックしていただくと、見やすくなります)

上図からわかることは、政府の資産が900兆円、国債の負債がが1350兆円である。日銀を統合すると下の図になり、日銀の分が赤字で囲ったところだと思われる。日銀が保有する国債が400兆円で資産の部、それに対して日銀券(お札)を400兆円渡しているのが負債の「銀行券等」だ。緑で囲ったのが、徴税権750兆円となっているのだが、残念ながら高橋洋一は詳しくここのことろを説明していない。おそらく、政府には毎年の税収とは別に、徴税する権利を750兆円持っているということだろう。

ここで留意すべきは、下図の統合B/Sの負債の部、「銀行券等400兆円」に矢印のついた線が引かれており、「●実質的に債務でない ●利子負担なし ●償還負担なし」と書かかれている点だ。要するに、資産の部である「国債400兆円」に対し、負債の部に計上されている「銀行券等400兆円」(=国債購入のために刷ったお札)の実態は、返済を意味する性質のものではない、というのだ。

一方、主の危機感として、平成を振り返るトピックのNHKのニュースで、約30年前と現在の平均的家庭の所得を比較したものがあった。内容は、平均的家庭の所得水準は、30年前も今も約600万円で、報道の主眼は、貧困層(300万円以下)と1200万円を超える高所得者層が30年間で増え、中間層が減って格差が拡大しているというものだった。

このニュースを聴きながら、主は、格差のこともさることながら、30年間、平均所得が横ばいだったということの意味をNHKが、報道しないことに驚いた。30年間経過すれば、ほとんどの先進国の平均所得水準は、軽く倍以上になっているはずだ。中国やアジア諸国であれば、何十倍にもなっているだろう。そうしたなか30年間日本は全然変わらない、ここ数年人口減少しているとはいえ、30年前という長いスパンで比べると人口は若干増えているだろうから、その割合だけGDP(=一人当たりのGDP×人口)は微増ということだろう。この現象は、外国と比べると異様だ。

話を元に戻すと、高橋洋一も「国債を刷れ」の廣宮孝信も、言っている内容はほぼ近いものがある。ただ、高橋洋一は東大の理学部数学科を経て、経済学部の出身の元大蔵官僚である。経済を専攻して、言いにくいことをズバッというのがセールスポイントなのだが、数学的な説明を別にすると、やはり歯切れが悪い。逆に、廣宮孝信は、阪大の工学部電子工学科出身で、経済学の学位を持っていない。しかし、よく勉強しているようで、こちらの方が説得力がある。

かれが言うには、政府でも日銀でも、不換紙幣(兌換紙幣の反対で、政府なり日銀が紙幣発行に対し、義務を負わない紙幣)を発行するのは、江戸時代の通貨の改鋳、明治政府の太政官札発行など、普通におこなっていることで、すべて通貨発行益になる。悪性のインフレさえ起こさなければ、不換紙幣を刷って、景気を回復させよ、これがかれの主張だ。日銀や政府、学者は通貨の過剰発行は、第二次大戦敗戦後のハイパーインフレ同様になると、しきりに警告するのだが、その率は、たった300%で、ジンバブエやブラジル、ベネズエラなどの何万%というハイパーインフレと比べると極めて少なく、むしろすぐに日本はデフレ傾向になっているという。要するに、太平洋戦争のあとのインフレ率でさえ、300%で、困ったことになったのは、金持ちと企業が持っている債権の値打ちが1/3になったということで、大衆は、所得が増えればどうということもない。

この本を読んでいると、他の経済学者が書いたような、歯にモノが挟まった物言いではなく、明解だ。「通貨発行益」は、造幣局が発行する硬貨のみだと考える学者と、日銀が所有する国債や株式の利子や配当が国庫納付されるために、国庫納付金が「通貨発行益」と考える学者がメジャーだ。森永卓郎は、はっきりと通貨の発行自体を、「通貨発行益」と言うのだが、経済学者のなかでは、マイノリティーである。

いま日本で行われている国債発行は、政府が国債を発行し、日銀が直接引き受けると「国債発行が際限なくできる」という理由で、直接引き受けは認められていない。このため、政府が発行した国債を市中の金融機関が買い入れし、それを日銀が買い集めている。やっている中身は、日銀が直接引き受けているのと何も変わらない。

こうしてみると、日銀はマーケットが必要としている通貨供給しているのか、怪しい。こういう言い方をすると、通貨供給を増やしても、ヘリコプターからばら撒く訳には行かない、お金の借り手がそもそもいないのだ、という議論になる。そうではなく、それでは、この本のように政府が財政支出をもっとすればよいのだ。一部やろうとしているが、子育て、保育所もそうだし、何より、科学研究、社会福祉、ぼろぼろの学校校舎の建て替えなど課題は山積だ。直接の財政政策ではないが、最低賃金の大幅アップをやれば、公務員や、勤労者の給与も上がるだろう。廣宮孝信が言うように、極端なインフレさえ起らない範囲で、国債を刷って、貧困から抜け出さないとマズイ。

この本が書かれたのは2009年で、10年前だが、病状は徐々に悪化している。主が危惧するのは、日本がこのまま、財政再建を念仏のように唱えていると、国債を外人が買うようになる時代がくる。もうかなり来ているだろう。

そうなると、海外でハイパーインフレを起こした、ジンバブエやギリシャ、ブラジルのようになりかねない。バカな経済学者たちは、国債と為替がが暴落して、金利が暴騰するという。日本が、国力を今の調子で失えば、最後の最後はそうなる。その時に、主流派の学者が「それみたことか」となるのが恐ろしい。

単純に国債の残高だけを見て、「1350兆円もあるから、すぐに減らさないと」などといっているようではだめだ。例えば、ソフトバンクの負債が何兆円もあるのに、世間は高い評価を与えている。その理由は、負債の残高だけを見ているのではなく、相手科目の資産と、収益を見ているからに他ならない。負債の残高をグロスで見て、1350兆円と騒ぐのは、財務諸表の見方を知らない議論だ。 国の負債は、国民の資産のはずだ。 おまけに、国の借金は、企業よりさらに条件が良い。すなわち、通貨の発行権を持っているからだ。

こんな「基本のキ」の話、主流派の経済学者も気がついているんだろうが、言わないのだろうと思えて仕方がない。デフレ状況で、持てる者にとっては、資産の保全には何もしないことが一番良い方法だからだ。

廣宮孝信の分析に説得力があるのは、学位がないということが、それが妙な経済学の先入観やしがらみがないというメリットなのだろう。

世の中で幅を利かせているのは、法学部出身者、それも東大法学部出身者だろう。財務省のキャリアには法学部と経済学部出身者で差があり、法学部出身者が出世する。その経済オンチたちが「借金を次の世代に背負わせるな!」と間違った経済を語る。そう語ることで、かれらが握る「予算」のありがたみがまし、誰も逆らえなくなっている。

おしまい 参考:2013年に「国債を刷れ」の新装版が出ていた。

2019/5/25追記

最近の経済学の動向で、MMT(Modern Monetary Theory=現代貨幣理論)をよく耳にするようになった。MMTとは、端的に言えば、通貨を自国で発行している国では、国債の残高がいくらになろうと問題がなく、インフレになる前に、税額をアップさせればよいというドラスティックなものだ。

以下のリンクは、安達誠司がMMTを解説をしているものである。安達誠司は、リフレ派で主は高く評価している人物であり、著作も多いが非常に信用できるものを書いている。このMMTは、従来の経済学の枠組みから逸脱するものであり、当然ながら、安達誠司も懐疑的である。しかし、昨今、消費税を10%に上げるかどうか、政治の世界ではせめぎ合っており、幼稚園、保育園の無料化、低所得者層の大学奨学金の無償化などは、消費税のアップがこれらの財源とされており、消費税を上げずに財政出動する根拠にMMTが急浮上しているらしい。

本当におしまい

エブリバディ・ノウズ【日本病】その3 「『半分、青い。』でわかる日本経済の無策」でわかる平均的経済評論家像


ーーーーーーー Rewrite 2021/7/8 ーーーーーーー

以前は下のように考えていたのだが、MMT(現代貨幣論)を知り、考えが間違っていたと気づいた。

つまり、主は、黒田日銀の金融政策である量的緩和によるアベノミクスを支持していたのだが、これではうまくいかないと思うようになった。 つまり、この量的緩和政策の具体的なことを言えば、政府が大量の国債を発行し、市中銀行が引き受け、これを日銀が買い入れることで国内の通貨供給量を増やし、低金利への誘導と相まって、銀行の貸し出しが増えることで、投資が増え景気が良くなるという考えである。

しかし、MMTを勉強すると、このように通貨の供給量を増やしたところで、投資環境が改善しないと、民間企業は借金して投資しない。通貨が、銀行の残高として「ブタ積み」の状態になって留まるにすぎない。デフレの状態では、手元の現金の価値が自然に上がっていくので、企業は投資しようとしない。投資するより、しない方が得だからだ。

ところが、このMMTでは、実際に国債を使って政府が支出をする。実際に国民の手にお金を渡すことが、肝である。同時に、政府は民間とは違い、インフレにならない限りにおいて、いくら国民にお金を渡しても問題が起こらない。そこが根本的に違うところだ。(細部は、他のMMTの項目を見てください。)

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日本は病気だと、主は確信している。経済評論家が語る経済の内容があまりにも貧弱だ。素人同様の評論家が多すぎる。

MSNニュースに小宮一慶(以下、敬称略)が書いた「「半分、青い。」でわかる日本経済の無策」というプレジデントの記事が転載されている。朝ドラの話でもあり、興味を持ってさっと楽しく読める。

半分青い

このドラマは、高度成長期の終わり1971年に生まれたヒロインのすずめが、少女漫画家を目指す。日本経済は、彼女が高校生の時にバブル期に突入、これは5年ほどで終わり、その後25年間続くデフレの現在へといたる、挫折や波乱を経験しながら成長する物語だ。

小宮一慶は、NHKから経済面の時代考証である『経済考証』を依頼され、内容をチェックしているということで、経験に裏付けられたバブル時のエピソードなどが面白い。また、時代の変遷が要領よくまとめられている。

だが肝心の、結びの部分が駄目だ。多くの経済評論家同様、彼はこう書いている。

  • 現在は、バブル期など比べ物にならないほどの超金融緩和政策アベノミクスでなんとか景気を維持していますが、しょせんはカンフル剤でしかありません。
  • 人口減少や高齢化がますます進み、対名目GDP比での財政赤字が先進国中で最悪という状況下で、「本物の成長戦略」が望まれますが、なかなかこれといった処方がでてきません。
  • またドラマの経済考証担当として、今後、日本が得意とする製造業やおもてなし上手のサービス業などがその技に磨きをかけ、さらには規制緩和により農業などを「強い」産業にしていく、といった施策が必要だ、とつくづく感じています。

アベノミクスの金融政策の処方箋が「カンフル剤」と表現されることは、よくあるものだが、カンフル剤とは、要は一時しのぎなので、早く正常な軌道に戻せということになる。カンフル剤とは、何時までも使えないという認識を示している。異次元の量的緩和は、過去20年間の日銀の無策と比べると異次元ということであって、経済の成長に市中の通貨の流通量が不足すると、経済成長の足を引っ張る。実際に日銀は、金融政策ではずっと無策で、プラザ合意の円高不況後のコントロールに失敗し、バブル崩壊とともに日本経済はハードランディングしてしまい、為替が原因の不況がずっと続いている。その間、政府は”Too small, Too late”と言われる景気対策を何度も打ち出すのだが、効果は上がらず、現在の財政赤字が積みあがった原因である。

2008年のアメリカ発のリーマンショックによる世界的な不況は、世界中を覆ったが、不良債権が一番少なかった日本が、一番遅くまで景気回復できなかった。これはアメリカとヨーロッパがいち早く、市場へ通貨供給量を増やしたのに対し、日本は、安倍政権と黒田日銀が登場する2012年まで、通貨供給量を増やさなかったためだ。金融緩和政策は、アメリカもヨーロッパも日本以上に緩和をしてきたのであって、実際に経済が上向くまで続けなければならない。

下は、日経新聞に載った世界の通貨供給量のグラフだが、日本はこの通貨供給供給競争に乗り遅れたことが読み取れる。このグラフを見ると、世界中の通貨供給<緑線>がGDP<青い部分>を越えてしまいカネ余りが起こりっているのが分かる。リーマンショックの2008年を見ると、GDPが下がったのに対し、世界は通貨供給量を増やしたことが読み取れ、何もしなかった日本が取り残された。

ちなみに2014年の低下は、原油価格の下落によるロシア、ドイツなどの低下が要因だ。

世界の通貨供給量
2017/11/14日経新聞「世界のカネ1京円、10年で7割増 実体経済と乖離鮮明」

量的緩和は「カンフル剤」だからといって、もし量的緩和を急にやめれば、日本は確実に死亡するだろう。日銀は買えるだけの日本国債だけでなく、日本株や不動産投資信託と言われるリートなども大量に引き受けている。この量的緩和により、一定程度の円安が実現できている。日本の景気が十分回復し加熱しはじめる前の段階で、量的緩和を止めると表明したら終わりだ。この政策は、ノーマルだと考えるべきだ。

人口減少や高齢化は間違いなく大問題だ。だが、財政赤字の問題は別次元の問題だ。一つには家計や企業と、政府の借金を同一レベルで考える愚が、世間に蔓延している。しかし、「日本に財政問題はない」と正面からいう学者に高橋洋一もいる。

高橋洋一

高橋洋一はこの本の帯に次のように書いている。

  •  □国債は日本の借金。だから、少なければ少ない方がいい。
  •  □国債は、発行されればされるほど、国民の負担が増える。
  •  □国は出来るだけ「節約」して予算を減らすべき。
  •  この中に、1つでも「そのとおりだ」と思うものがあっただろうか。もし、あったならば、あなたは「一国の経済」というものを間違って理解している。

巨額の財政赤字の原因だが、過去の財政政策(公共事業や減税)は、いずれも小出しで、かつタイミングが遅れ、適切な金融政策(量的緩和)を取らなかったた。このために、一向に経済が上向かずに失敗し、ずるずる借金だけが積みあがった。アベノミクスの開始で、ようやく金融政策の舵取りを変更し、1年目に為替安と株高が起こり大成功した。しかし、生みの親の浜田宏一があれほど反対したにもかかわらず、2年目に消費税を5%から8%に上げた。その結果、低成長が続きデフレ脱却もはっきりしなくなった。いずれの施策も、ドカンと徹底的にやらないとだめだ。

同じ意味あいだが、来年10月に消費税を10%に上げると法律で決まっているが、実際にそうなれば、マイナスの影響は大きく致命的だろう。リフレ派(安倍首相や浜田宏一、高橋洋一などのマイルドインフレ肯定派)に対し、反対派(=財政再建派、多くの政治家、マスコミ)の方が多く、反対派は、アベノミクスを止める出口戦略を語りたがる。アベノミクスは社会のインフレ「期待」へと変化させるところに目的があるのに、出口戦略を語ること自体がベクトルが逆だ。

小宮一慶の話に戻ろう。日本の今後の施策として「日本が得意とする製造業」「おもてなし上手のサービス業」というのは、従来の固定観念に縛られていて陳腐だ。

小宮一慶は、バブル崩壊の端緒としてプラザ合意に触れている。その後の日本の製造業の不振に、エルピーダメモリの倒産、シャープ、東芝、サンヨーなどの白物家電の身売りなどがぱっと頭に浮かぶが、これらはずっと続いている円高の影響が大きい。日本の製造業にとって、国際競争力という観点から為替レートが一番影響が大きい。「日本が得意とする製造業」は、もちろん新しいアイデアや技術革新も重要だが、基本的に円安であることが前提だ。

「おもてなし上手のサービス業」は、日本のどこにあるのかと主は思う。日本には「おもてなし」などない。オリンピックの招致で、滝川クリステルが「オ、モ、テ、ナ、シ。オモテナシ」と言うシーンが何度も流れたが、あれは日本人の自己満足だ。日本にあるのは、せいぜい安全、清潔といったところだ。

コンビニで客が代金を支払った瞬間、店員が客に小銭を渡そうとし、「たいへんお待たせしました!」と心をこめずにイヤイヤ頭を下げる。客は、財布に釣銭を戻すのに大慌てになり、四苦八苦する。この店員のどこが、おもてなし精神なのかと思う。主はブラジルで生活していたが、レジでは、お金のやりとりに急ぐところがなく、女性の店員が、心の底からにっこりと微笑んでくれて気持ちが良かった。これが本当のおもてなしだ。

デービット・アトキンソンが、日本人の多くが、温泉旅館の接遇をおもてなしだと誤解していると書いている。日本旅館で女将が正座して頭を下げ、女中が運んだ懐石料理を食べて日本人は満足しているかもしれないが、欧米人は違う。彼らは、1か所に何泊もしたい。また、家族全員が一部屋に泊まる風習はない。何日も同じ懐石料理を食べたくない。また日本の温泉地は、夜に出かける魅力的な場所がない。料理を食べて温泉に入ったら、寝るしかない。これをおもてなしと思えと言うのでは、外国人理解が足りていない。

新観光立国論

最後だが、「規制緩和により農業などを『強い』産業に」と書かれているが、これ自体には異論がない。しかし、『強い』産業というからには、国際競争力があることが前提であり、一定の円安基調が必須だ。日本はプラザ合意後の円高を、涙ぐましい努力で乗り越えようとしてきたが、その努力には限度がある。むしろ、その努力(節約志向)はデフレマインドを招く。このためにも金融政策が必須である。

結局のところ、小宮一慶は法学部出身であることもあり、その後も金融機関を経て経営学や会計学の畑を歩んできている。このため、従来の一般常識や固定観念の域を出ていないと思う。もちろん悪いことではないが、マクロ経済を語るのであれば、その後にしっかり勉強すべきだ。

ちなみに、もし主が日本の処方箋を書けと言われたら、こう書くだろう。

 

  • ① 40代、50代の経営層の一掃(不況をいつまでも脱せないのは、この層が投資をしないからだ。儲けを新規投資ではなく、楽なM&Aにつぎ込み失敗する例が多い) 
  • ② 財務省の財政赤字キャンペーンの公式訂正(これは国民全体で真剣に議論すべきだ。あらゆるところで足枷になっている) 
  • ③ 消費税の5%への減税。同時に、高所得者、企業への累進税率のアップ 
  • ④ ベーシックインカムの国民的議論 
  • ⑤ 医療の見直し(あまりにも日本の医療が島国化し、めちゃくちゃ無駄遣いされている。介護費の増加にもつながっている) 

そんなところかな。

つづく

電通・女性社員過労死–社会の反応 残業割増率を上げることが先決ではないのか

昨年12月25日、電通の女性新入社員(当時24歳)が過労により自殺し、三田労働基準監督署はこの社員が月105時間の残業をし、うつ病を発症していたと判断、労災が認定された。

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NHK News WEBから

日本の名だたる一流企業で、東大を卒業したばかりの社員に起こった事件ということもあるのだろう、大きなインパクトを与え、さまざまな報道がされている。しかし、そのほとんどは日本人のメンタリティや、外国との文化の違いを理由に上げ、日本(人)は独特で、会社に対する忠誠心が高いという風に分析される。また、ブラック企業では、違法なサービス残業が横行しており残業代がまともに払われていないのに、これが当然とされる社風もあると指摘されている。

しかし、このような過労死が起こるのは日本に限られ、諸外国と比べると超過勤務に対する割増率が低いことが大きな原因であるとはほとんど指摘されていない。

以下のリンクの表を見てもらうと、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国いずれも超過勤務の割増率は50%であるが、日本は25%である。それにヨーロッパのイギリス、フランス、ドイツでは、年間の労働時間数にほとんど残業が含まれておらず、残業自体を許さない社会風土があると考えられる。(日本とドイツは年間の平均労働時間が20%も違う。ただし、大企業で1か月あたり60時間を超えると50%の割増となる)

割増賃金の状況等について

日本の割増率25%というのは、業務量が増えた時、新たな労働者を雇用するより、既存の労働者に残業させることの方が得だというインセンティブが働くことを意味している。ましてや違法なサービス残業が蔓延しており、経営者にしてみれば、既存の従業員をこき使い病気に追い込もうと、あるいは病気にならずとも離職されても、タダ働きをさせることができる期間があれば儲けものだ。ブラック企業には、異常な長時間労働をさせながら残業手当を払わず、社員の定着率が異様に低いところがある。これは社員に残業手当を出さずに使い捨てにしても、それでも働く労働者の「歩留まり」を見込んで(労働者の善意や無知を利用して)不当な労働環境で働かせている。最近はあまり聞かなくなったが、「名ばかり管理職」は明らかに残業手当を支払わないための方便だった。この二つ(割増率が低いこととサービス残業という違法状態が見逃されていること)が、他国にはない日本の長時間労働の原因だろう。

大企業の場合、月あたり60時間を超えると確かに50%の割増となるが、60時間までは25%の割増率であり外国へ向けたポーズにしか思えない。多くは25%の割増率が適用されるだろうし、それでは残業を減らすインセンティブにはならないだろう。

この一連の報道では、問題のすり替えが起こっている、もしくは、現象面にだけ囚われた分析が行われている。何故、企業が新規に労働者を雇用するより、既存の従業員に長時間労働をさせる行動をとるのか、この原因をはっきり言わなければならない。

政府が取るべき対策は、まず、1週間の労働時間の上限である40時間をヨーロッパのように守り、残業は原則として認めない社会風土を目指すことだ。当然、残業をさせる場合は割増率をすべて50%にすることだ。当たり前だが、残業の事実があるのに残業代を支払わない企業は、厳しく処罰することだ。

しかし、いったい誰に遠慮して、このようなぬるま湯的な分析ばかりがまかり通るのか不思議なところだ。

ここからはちょっと内容を変え、マクロ経済的な話をしたい。

上のリンクの「割増賃金の状況等について」は、経産省の「経済の好循環実現検討専門チーム事務局提出資料」となっているのだが、どうも政府は踏み込み不足という感じがしてならない。資料の中で割増賃金率を変えた場合に、新規雇用と超過勤務の相関関係がどうなるかを示しているが、分岐点となる割増賃金率がいくらかなのかは明らかにしていない。これでは、政府が現状維持を許すためのアリバイ作りに過ぎないのではないか。

主は、アベノミクスを高く評価している。だが、アベノミクスの第1の矢=金融政策、第2の矢=財政政策、第3の矢=構造改革のうち、第3の矢は掛け声だけだ。そのせいでマーケットの信頼を失い、アベノミクスの最初の成功の先が見えない。

政府は、真っ先にこの残業に対する割増率25%から50%への改定をやればよい。経済界は反対するだろうが、世界水準に持っていくだけだ。

同時に、マスコミでしょっちゅう取り上げられる待機児童の解消(保育所の充足)も大事だが、フランスのように子どもの養育費を政府が面倒を見るというような大胆な政策をすべきだ。

昔、池田内閣が「所得倍増計画」を掲げたが、「所得5割増し計画」「所得3割増し計画」のようなプランを表明すべきだ。高額所得者の所得を増やす必要はないが、低所得者の所得は大幅に増やす政策を取るべきだ。

財源について財務省が脅しをいつもながらかけるが、日銀がお札を刷りヘリコプターマネーをばらまくということで問題ない。現に今やっている補正予算にもヘリコプターマネーの要素がある。

こうすれば通貨の流通量が増え、為替レートに対し円安効果が出てくる。為替レートが110円より下がると、工場を海外移転させるよりも、日本国内で生産することが有利になり、生産が国内回帰へとシフトする。そうすると地方も潤い、人口減少に歯止めもかかるだろう。いいことずくめだ。

ヘリコプターマネーの解説は次のリンクが分かりやすい。

http://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2016_0728.html

ちなみに、経済に興味がない人にはわかりにくいかもしれないが、為替レートの表現は、1ドルが何円分になるかで表しており、数字が小さい方が高い(値打ちがある)。

この為替レートの最近の推移のおさらいをすると、民主党政権時代は超円高で80円/1ドルほどの水準だったこともある。企業収益は悪化し、企業の生産拠点の海外移転が進んだ。その後、民主党が自民党に敗北し、アベノミクス、量的緩和が始まると、125円ほどの円安へと進んだ。この水準は、リーマンショックの前のレベルである。この段階で雇用情勢、企業の業績も好転し、アベノミクスの成功が囃し立てられた。ところがその後の経済が上向かないことに対し、日本政府の政策に目立った処方箋が見当たらない、第3の矢に具体策がないと海外投資家に判断された。そして、今年のマイナス金利の導入で、もはやアベノミクスには量的緩和の手段がないと投資家に見透かされると、現在は105円程度の水準の円高になっている。直近では、アメリカ大統領選挙でトランプに勝利の可能性が出てきたが、彼がどんな経済政策をするのか不明なため、ドルが売られ円が買われて102円ほどの円高へと振れている。

 

 

日経新聞 財務省ちょうちん記事でっち上げ 浜田宏一/高橋洋一対談

written on 21.10.2016

ラジオ・ニッポン放送に「ザ・ボイス そこまで言うか」という番組があり、経済学者の高橋洋一氏が隔週で出演している。

この高橋氏はリフレ派(マイルドなインフレにより経済成長を果たすのが経済運営に効果的だと考える人のことをいう)の旗頭の一人で、財務省が主導する財政再建キャンペーンを激しく批判している人物だ。財務省、マスコミは「日本の借金が1000兆円」で「GDPの2倍」と盛んに宣伝している。これに対して、高橋氏は、1000兆円は債務の総額(グロス)であり、一方で日本には資産が650兆円あり、正味債務(ネット)は差し引き350兆円になる、このため、財務省の宣伝は恣意的に危機を煽っているとあちこちで主張している。この主張は、どこかで知った人も多いだろう。

この番組の10月18日の放送で、国際電話で登場した安倍首相のアベノミクスのブレーンである内閣官房参与の浜田宏一氏が、メディアに言っていないことを書かれるとめずらしく、激しく憤慨していた。浜田氏は、イェール大学名誉教授でアメリカを本拠地にしている経済学者で、国際金融論やゲーム理論などが専門だ。

憤慨している内容のリンクと簡単な要約を記すと

(次がラジオ・ニッポン放送のYOUTUBEのリンクだ)

https://www.youtube.com/watch?v=pOwrlDff9sA

(次が問題の日経新聞の記事である)

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 1) 浜田宏一氏が「アメリカのFOMC(連邦公開市場委員会)と日銀金融政策決定会合の開催時期が近くて微妙だ」と発言したところ、外国報道社に「日銀金融政策決定会合をFOMCの前に開催するのはやめるべきだ。」と発言したと書かれて困っている。 

2) 浜田宏一氏が安倍首相に「今がロシアと経済で手を結ぶ最大のチャンスです」と熱弁をふるったと日経新聞に書かれているが、このような(ロシアの発言)ことは全くない。

3) 浜田宏一、高橋洋一両氏などのリフレ派経済学者は、主流の経済学者ではなく異端と読める表現になっている。しかし、日本の経済学の状況が世界とかけ離れている(日本の経済学者は、理論と実証が分離しタコツボにいる)のであり、世界的にはリフレ派が主流である

4) 記事でリフレ派のアベノミクスが敗北したかのように書かれているが、現実を見ていない。雇用状況は大幅に改善しており、極めて低い金利のもとで金融政策(量的緩和)の効果が出にくくなっている状況はあるが、敗北ではない。金融政策と財政政策を合わせ、デフレから脱却し、経済成長するしか進む道はない。

といったところだ。(もっと、中身のあることもたくさん話題に出てくるので、是非YOUTUBEを再生してください)

それよりも何も、主が記事を読んで気づくのは、日経新聞の財務省へのヨイショであろう。消費増税時の関係者として浜田宏一氏をキャプションしているが、浜田氏は消費増税をずっと批判してきた立場だ。知らずに記事を読むと、増税に賛成したのかと思う。

また、(財務省が)『「呼吸がわかってきた」。政府が28.1兆円の大型経済対策を詰めた今年7月。規模は財政投融資で大きく膨らませて見せ、赤字国債は新たに出さない――。財務省の演出を首相も採用した。』と書いている。しかし、これに対し、「私も言いたいことがある」と高橋氏が言っている。すなわち、「財政投融資を使うのは、私が昔の大蔵省で初めて採用した政策(財投債はプライマリーバランスに影響しないルール)で、このアイデアを官邸に伝えたのは自分だ。財務省ではない。記事は全く嘘だ。取材しているのか。」と述べている。

最後の部分もひどい。記事の最後は「本田、浜田両氏ら側近のベスト・アンド・ブライテストたちと首相の協議はあくまでも 非公式な場。長期安定政権には「主流」の力を引き出す懐の深さも求められる。」とある。ここでいう本田悦朗氏、浜田宏一氏は「異端」「傍流」の扱いになっており、それ以外の「主流」を使う「懐の深さ」と言っている。

いったい日経新聞の言う「主流」の経済学とは何なのか。ラジオ放送にも出てくるが、この書きぶりに記者のインテリジェンスを疑う。

ちなみに、誰が書いたか記事の署名がない。書名がなければ、これだけ根拠がないことでもすらすら書けるのだろう。

 

 

 

 

 

これだけ予測が外れても 浜矩子

written on 12.12.2015

経済学者たちの世界ほど、混沌としている分野は少ないだろう。人文科学は科学ではないのだろうか。

エコノミストと言われる人の中に浜矩子がいる。ウィキペディアによると一橋大学を卒業後、三菱総研に入社、今では同志社大学大学院教授である。次が、毎年の経済予測をした著作の題名である。(ウィキペディアには、「世界恐慌の予言を毎年行っている」と書かれている!)

  • 2011年 日本経済 ―ソブリン恐慌の年になる!
    • 2012年 資本主義経済大清算の年になる!
    • 2013年 世界経済総崩れの年になる!
    • 2014年 戦後最大級の経済危機がやって来る!
    • 2015年 日本経済 景気大失速の年になる!
    • 2016年 日本経済複合危機襲来の年になる!
浜矩子3年

以下は、2015年11月21日(土)浜矩子がゲスト出演した『田勢康弘の週刊ニュース新書』(テレビ東京)から。安倍晋三総理の経済政策「アベノミクス」を「アホノミクス」と批判し続ける“ブレない経済学者”である。

1万円

2016年の株価予想では、「1万円割れ」とボードを出しているが、去年も同じことを書いていた! 参考までに、今週末の株価は19,000円あたりである。この状況で、来年の株価を1万円割れとテレビで予想するのは、その根性に感服する。世界大戦が起こると考えているのかもしれない。

50yen

持論の「1ドル=50円」! この1ドル50円は、民主党政権の時に1ドル80円を切る円高が起こっており、大センセイは円高はさらに進行し50円になると予想していた。実際のマーケットは、2012年11月の衆議院解散後に安倍政権が登場し、金融緩和が行われ円安が進んだ。現在の水準は、1ドル122円ほどである。一時は、125円ほどの円安になっていたのだが、中国経済の懸念などで、リスクヘッジのために少し円が買われている。

アホノミクス(本)

この大センセイ、マスコミで結構もてはやされている。アホノミクスは、毎日新聞の連載記事だし、朝日系列、東洋経済などにも記事が載っている。

こういうことって、ありなのか?と正直思う。書いている本を実際に読んだわけではないのだが、おそらく経済を数学的に説明せずに、主観的な議論を展開しているだけだろう。マスコミが、こういう主張を喜んで取り上げるのは見識を疑う。

マスコミは、売れて読まれ(見られ)なければ始まらないということかも知れないが、何でも出せばいいというものではないだろう。受け手の側の多くが、その気になるのだから。

安達誠司 VS 池上彰

安達誠司さんの「ユーロの正体」(2012年11月幻冬舎新書)と「円高の正体」(2012年1月光文社新書)、池上彰さんの「池上彰のやさしい経済学2ニュースがわかる」(2013年11月日経ビジネス人文庫)の3冊を読んだ。池上彰さんの本は、読了したわけではなくざっと目を通したというところだ。

安達誠司さんの「ユーロの正体」はちょうどリーマンショック後のユーロ危機(PIGSと言われるポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペインの通貨危機)のあと出版された。それは、アメリカ発のサブプライムローンに端を発したリーマンショックにより、好調だったユーロが変調し、ギリシャは粉飾決算していたことがばれ、スペインなどでは住宅バブルがはじけ、経済が急速に悪化した。

EUは政治状況、経済状況や雇用環境などさまざまに違う国々が、そうした諸条件が揃わない状況にもかかわらず、理念を性急に追求し、各国の通貨を捨てユーロに通貨統合してしまった。このことにより、金融政策は欧州中央銀行(ECB)のみが行い、各国ごとの政策が採れなくなった。こうなることは、国ごとの不況や景気過熱に対する対処方法が致命的になくなったことを意味する。すなわち、共通通貨ユーロを使うということは、域内の各国にとって為替レートを固定するということと同義になる。ドイツは生産性の向上の儲けがマルク高になることで相殺されていたが、ユーロに代わるとどんどん競争力を増した。一方で、農業と観光を除けば取り柄のないギリシャのような国が、レートを固定してドイツなどの優等生と同じ土俵で共存するのは無理がある。

イギリスはユーロに入っていない。これは、ユーロの前身であるEMS(European Monetary System)時代に、為替安を見越したジョージ・ソロスが率いるファンドにポンドを売り浴びせられ、ポンドは暴落、変動相場へ移行せざるを得なくなったものだ。

今年、再びギリシャ危機は起こった。なんとか、EUはギリシャに借金を貸し続けることを決め、ギリシャはEUに残っている。しかし、主のブログで紹介したとおり、ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツが、EUを出るべきはドイツだと言うほど矛盾は大きい。金融政策をとる余地のないギリシャにとって、EUから強制される緊縮策は出口がないとわかってくる。

一方「円高の正体」は、「円安」の今何を言うのかと感じるかもしれないが、現在でもこれまでの円高とアベノミクス以降の円安を理解するうえで、格好の書籍である。

この本では、話を単純化するために、為替レートを流通する貨幣量の比率だと説明している。普通、為替レートの説明では、購買力平価説を紹介し、二国間のマクドナルドのハンバーガーの値段の比率や、金利差などを根拠にあげることが多いのだが、単純化することで非常にわかりやすくなっている。また、バブル崩壊後ずっと、いかに人為的に円高誘導され、不況を克服するために行った財政出動が効果を上げずに、日本の借金を増やしたということが理解できる。不況下で行う消費増税が如何に逆効果か、ということもわかる。

この安達誠司さんの2冊は、経済をわかりやすく理解させ、同時に時代を超える普遍性があるので、今でも読む値打ちがある。

ところで主は、最近日経新聞を取り始めた。このおまけとして、3冊の書籍のうちから1冊を選ぶことが出来た。それで池上彰さんの「池上彰のやさしい経済学2ニュースがわかる」を選択した。池上彰さんは、テレビにしばしば登場し、書店には大量のベストセラーが並んでいる。非常にわかりやすく物事を掘り下げて説明してくれるので主もファンである。

しかし、この本は経済の主だったトピックをわかりやすく説明しているのだが、現在行われている「量的緩和」には触れていない。「流動性の罠」(金利はゼロ以下にできないため、その状態では金融政策が効かなくなること)というやや専門的なことについて触れているのだから、浜田宏一、安達誠司さんなどリフレ派の「量的緩和」により市中の貨幣流通量を増やし、その貨幣が国債や株式などの投資市場に流れることで資産効果を上げ、インフレ期待をを生み出そうという主張を紹介しないというのは、残念で公平でないような気がする。

 

「世界が日本経済をうらやむ日」浜田宏一

written on 2015年6月21日

結構時間がたってしまったが、2015年1月にタイトルの本「世界が日本経済をうらやむ日」が浜田宏一・安達誠司さんの共著で出された。この本を読んで数か月たってしまったが、感想などを書いておきたい。

2012年11月の衆議院解散から一気に、円安・株高が起こった。その選挙で安倍首相がアベノミクスを声高に表明、マーケットは経済政策の転換を予想、すぐさま反応したのだ。

それから2年半が経過し、日経平均株価は2万円を超え、失業率は3.5%を下回り、企業収益の改善から2年続きの賃上げが春闘で行われ、実質賃金が物価上昇率をわずかだが上回るほど改善するようになった。氷河期と言われていた若者の就職事情は劇的に改善し、数十年ぶりの売り手市場に変貌した。為替レートが円安をキープしていることで、生産拠点を海外に移していた企業が国内回帰する現象もはっきりしてきた。

これほど明確に浜田さんたちリフレ派が進めた金融政策は成功しているのだが、他の既存の経済学者たちが宗旨替えするということは全くない。町の書店で経済関係の本の見出しを眺めてみると、あいかわらずほとんどが現在の金融政策に警鐘を鳴らすものばかりなのだ。

「超」整理法で有名で時々マスコミにも登場する野口悠紀雄は、日銀の異次元緩和を批判(「金融政策の死」)し、現在の金融緩和を続けることはやがて国債価格が暴落、ハイパーインフレに陥ると主張する。日刊ゲンダイで1ドル=1万円という円安になるとまで言っている。

民主党政権時代で円高であった2011年1月に『1ドル50円時代を生き抜く日本経済』を出版した浜矩子は、アベノミクスを「アホノミクス」と批判してはばからない。民主党政権の時代の円高を見て、1ドル50円時代をまじめに予想しただけでも信頼性が疑われ、その後も相変わらず物事が見えないようだが、マスコミから干されるということはない。

昔から書店で多くの書籍を目にする藤巻健史(維新の党所属の参議院議員でもある)は、現在の金融政策を批判、ハイパーインフレが起こり1ドル=10万円になりかねない、財政悪化が太平洋戦争前と同じ状態だとまで言っている。書店には、読者の不安をあおるキャッチーなタイトルの本が多く並べられている。

アベノミクスが万能だというつもりはないが、こうした考えとは全く違う経済学者が幅を利かせて存在するという事実はやはりよくない。第一に「経済学」というからには、科学であってほしいと思うし、訳知り顔の素人の強弁と変わらない状況は、余分な不安を社会にまき散らす。第二にアベノミクスが成功するかどうかは、これが最後のチャンスだろう。日本は15年とも20年ともいわれる長い不況に手をこまねいてきた。その長いデフレの間に、賃金は下がり、共稼ぎをせざるを得なくなり、出生率が下がり、地方は存続の危機にある。こうした最悪の状況から、再び日本が復活できるかどうかという瀬戸際だ。財務省は財政赤字を強調し、マスコミも同調する。いま大事なのは財政赤字の解消ではない。まずは、経済成長が先だ。経済が成長するのにともなって財政赤字は自然に軽減される。消費増税で経済の腰を折っては何もならない。第三に短期の問題と長期の問題が混同されている。短期の問題は、金融の量的緩和とインフレ期待により実質成長力と潜在成長力のギャップを埋めることだ。これまでの日本はヒト・モノ・カネが十分に働いていなかった。その遊休を解消することが先決だ。第三の矢である成長戦略はこのギャップが埋まった時に、さらに成長力の限界そのものを高めるための方策であり、長期の問題だ。

アベノミクスを批判する側は、これまで国債の暴落、金利の急上昇が起こらず、経済の好循環が生まれつつある事実を客観的に見なければならないだろう。円安で輸入価格が上がり、価格転嫁をできない中小企業が困っているとか、格差が拡大したと言われることがあるが、民主党政権時代と比べてみるがよい。長く続いた自民党時代のデフレはもちろん悪いが、3年間の民主党政権時代はどうだったか。デフレスパイラルの深みにどっぷりはまり、極端な円高で日本の製造業は競争力を失い空洞化、雇用も長期の悪化(リストラの嵐)、非正規雇用の切り捨てなどが起こる。リーマンショックはアメリカ発なのに、いち早くアメリカは経済を立て直し、一番被害が少なかったはずの日本がいつまでも不況から脱することが出来なかった。(リーマンショックが起きた際アメリカは、日本が何も対策を取らず長い期間デフレに陥ったことを反面教師にし、すぐさま金融の量的緩和を行ったといわれている)

アベノミクスが始まってから事態は、これまでと比べずっと改善しているのだ。焦ってはいけないし、楽観はできないが、少なくとも間違ったデマで国民をミスリードする愚は犯してもらいたくない。

思わず主の強い主観の表明となった。しかし、この本を読めばいかに経済学の世界が、とりわけ日本の主流派といわれる人たちの経済学の世界が、間違ったバイアスから抜け出せていないと理解することができる。

ちなみに、最後の章で世界の経済を見る目を養って株で儲けを出せるかどうかということがトピックになっているところもあり、それだけを読んでみても値打ちがあるだろう。

 

 

 

 

上げるのか上げないのか 消費税

written on 2014年11月12日

「消費税を上げるのは既定路線だ」いう感じだったマスコミの報道が、1週間ほど前から「上げるべきではないとの声がある」と両方の意見を言うようになってきた。

そして、急に「阿部首相が、来年10月の消費税アップはしないという判断をして、衆議院を解散する」という声が数日前から出てきた。最初に言い出したのは「週刊文春」のようだ。

中国にいる首相がインタビューで質問を受けた際にも「解散についてコメントしたことはない」と言ったが、「解散しない」とは言わなかったことで、その報道は急激に大きくなった。

各報道機関がこれだけこぞって言うのだから、実際に消費税上げを見送って、解散になるのだろう。主のブログでも消費税を今上げるのは間違った判断だと書いた。安倍首相は「嗅覚が優れている」といった知人がいるが、そのとおりだと思う。財務省の宣伝に踊らされ、自分の頭で考えない人たちの多さを考えると違いは際立つ。

先日、アメリカが金融緩和を止めると発表した翌日(前からすでにアメリカの金融引き締めは知られていたので、誰も驚かなかった)日銀がサプライズの追加金融緩和を発表し、円安が進行、株価が急上昇した。

ただ、円安、株価の上昇は長期的には日本の経済には望ましいのだが、短期的な円安は、消費者や一般の人にとっては所得が増えない段階において、購買力の低下を招くため、NHKなどマスコミはむしろマイナス面を強調した。

今日(11月12日)の株価の動きは、興味深かった。「阿部首相は消費税を上げないで解散する」という発言と「消費税を上げない選択はあり得ない」を言う発言を、立場の違う代議士たちが発言するたび株価が上下した。もちろん消費税上げを見送るという有力者の発言があると株価が上がり、消費税は上がるという発言があると下がったのだ。

このようにたちどころに上下するのは外国のファンドが多額のマネーを日本株につぎ込んだり引き上げたりすることが理由だろう。この株価の動きを見ていると、首相が実際に消費税を上げないと決断すれば株価がさらに上がることが見えてくる。

もちろん、そうした資産効果は一般の消費者に恩恵が直ちに行くものではないし、しばらくは我慢をする時間は必要だろう。もし民主党が言うように「アベノミクスは間違っており、今の金融政策をやめる」とすると、不況を脱することができず、庶民は苦しむだけだ。今の不況を抜け出す道はアベノミクス以外にない。

話は別だが、代議士たちの戦(選挙)好きは傍目に興味深い。彼らは国民のことを考えているということより、勢力争いが好きなだけのように映る。

 

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