MMTの話 その2 《自国通貨建てで国債を発行できる国はどこ?》

「個人向け国債」があるゆえ、国の借金と誤解されやすい。

MMTの主張に、変動相場制を採用する国で、自国通貨建てで国債発行できる国は、いくら国債を発行しても、デフォルトしないというのがある。

つまり、自国通貨建てで、じゃんじゃん国債を発行して、通貨安になったりの影響はあるにしても、その返済期限がきたときに、その国の政府は自国通貨を増刷すれ良いだけなので、デフォルトしないという理屈はわかりやすい。実際にその趣旨のことが、日本銀行のホームページも書かれているということだ。

じゃあ、じっさいにどういう国が該当し、どういう国が該当しないのか調べてみた。

朝日デジタルから

結論を言うと、このように自国通貨建てで国債を発行できる国は、アメリカ(ドル)、日本(円)、イギリス(ポンド)、中国(元)、スイス(フラン)、オーストラリア(豪ドル)あたりで、国ではないがEU(ユーロ)までらしい。これらの国や地域の通貨であれば、準基軸通貨国通貨ということで、信用もあり、広く流通もしているのでOKである。

逆にダメなのが、残りの国ということになる。例えば、アルゼンチンは、何度もデフォルトしているはずだが、こちらもペソ建てで借金するのではなく、ドル建てで借金するからこのような事態になる。現在のアルゼンチンもまた、デフォルトの危機である。

同様に、お隣の韓国の通貨であるウォンは、世界で見ると流通量が少ないため、準基軸通貨ではない。また、韓国は、民間企業がドル建てて借金することが多いらしく、アメリカが金融引き締め(テーパリング)を表明しただけで、ウォン安になり、ドルの外貨準備も少なく、東アジアの通貨危機の再現になるかと危惧されている。

また、ドル以外のペソやウォンといった現地通貨で発行する際には、その国の政府が、簡単に通貨を増刷して返済できるメリットがある。しかし、信用力が落ちるので、その分金利を上げて発行する必要があり、不利になる。

ギリシャは、昔ドラクマという通貨を持っていたのだが、EUに加入した結果、通貨発行権を奪われた。このため、経済危機に陥った時に、EUがなかなか助けてくれず、ギリシャ国民は窮乏生活せざるを得なくなった。

このあたりの事情は、イタリアやスペインでも同じ事情がある。

国債の発行とは関係がないが、逆に、EUでいわれていることは、ドイツだけが一人勝ちしているということだ。ドイツはもともとマルクを使っていた。ところが、EUができて、ユーロを使うようになると、域内で競争力のある自動車をいくら売っても、マルクであればやがてマルク高になって輸出競争力が削がれるのだが、ユーロの場合は、いつまでたってもそのような現象が起こらないので、ドイツの一人勝ちになる。 このような事態が起こっているので、EU全体を見たとき、EUの困難を予想する人は多い。

ただ、注意しなければならないのは、日本が順基軸通貨国の地位にあるのは、過去の経済や、海外に対して最も債権をもっているという結果であり、今のような低成長を四半世紀も続けていると、その地位を失う日は近いだろう。そういう意味で、緊縮財政を止め、財政支出をするという経済政策の転換をただちにすべきだ。

おしまい

政府の債務は返さなくてもよい (三菱UFJビジネススクエアSQUET 情報スクエア「五十嵐敬喜の『経済をみる眼』」2015年1月15日より転載)

(三菱UFJビジネススクエアSQUET 情報スクエア「五十嵐敬喜の『経済をみる眼』」2015年1月15日より転載)

◆国債は返済できるのか?
政府の債務残高が1000兆円を超えてしまっており、もはやこの膨大な借金を返済することは不可能ではないかと言われたりすることが多い。その疑問には、自信(?)を持って答えることができる。返済が不可能であるどころか、借金の残高を削減することすらできない。つまり、債務残高が今後も増え続けるのは確実である。

考えてみれば、それは驚くことでも何でもない。一般に借金残高を減らそうとすればフローの収支を黒字にする必要があるから、政府の債務残高を削減するためには、毎年の財政収支を黒字化させなければならない。しかし、それを実現するのはおよそ不可能である。

例えば2015年度の予算は、歳出総額が96.3兆円であるのに対し、税収と税外収入の合計は59.5兆円だ。差額の36.9兆円の赤字を国債の発行で埋める。この国債発行のうち10兆円余りは事実上の借換債なので(満期を迎えた国債を償還する財源。発行して償還に充てるから残高は不変)、国債残高(債務残高)は25兆円程度増えることになる。

したがって債務残高を減らそうとすれば、15年度の予算については25兆円以上収支を改善することが必要である。これを歳入の増加で賄うなら、54.5兆円(14年度比45兆円増)と見込まれる税収を80兆円程度に5割近く増加させる必要がある。歳出の削減だけで実現させようとすれば、72.9兆円の一般歳出(国債費以外の歳出総額)を48兆円程度にまで3分の1強も削減する必要がある。現実には、例えば税収を2割以上増やすとともに、歳出を10兆円以上カットするといったことになろうが、そんなことが実現するとは到底考えられない。

◆国債累増することの問題点
そもそも過去を振り返ってみても、日本の国債は返済されたことがない。満期を迎えた国債は確かに償還されるのだが、その償還原資は借換債の発行だ。満期債が借換債で置き換えられるだけで、国債の発行残高は減らない。借り換えるのに資金は不要だが、借換債では資金調達ができないので、新規債が発行される。結局その分だけ発行残高が増えることになる。これまで国債の発行残高は、一度も減少することなく増加し続けてきた。つまり実質的には返済されたことがないのだ。

しかし、だから問題だとまでは言えない。将来にわたって、ひたすら借り換えし続ければ、今後も返済しなくて済むから、誰の負担にもならない。国債の発行が必ずしも次の世代への負担つけ回しにはならないということだ。

もっとも、・・・・(省略)

◆プライマリーバランスを黒字化する意味
(省略)

◆欠かせない社会保障の改革
(省略)

《三菱UFJビジネススクエアSQUET 情報スクエア「五十嵐敬喜の『経済をみる眼』」2015年1月15日より転載》

おしまい

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