MMTの話 その3 緊縮財政の根拠法、《財政法第4条、財務省設置法第3条》について

財務省の入り口

MMTは、政府が国債を発行して、公共事業をするなり、個人へ給付するなりすると「国民の資産になる。国民が借金するわけではない。」という。しかしながら、財務省はこうした発言には必ず反発し、財政の収支均衡を訴える。2000年ころからの小泉政権と竹中平蔵大臣が、プライマリーバランスを言い始めた。これは、政府の事業支出が税収でどの程度賄えているかの指標である。

ところが日本は景気が一向に回復しないまま、国債を小出しに発行し続け、とうとうGDPの2倍を超えた。太平洋戦争のガダルカナル戦と同じく、財務省は、戦力(国債)の逐次投入を続けた結果、景気は四半世紀のあいだ上向かず、公共事業は無駄だとさえ言われるようになった。

この頑なな財務省の姿勢はどこから来ているのか、考えてみたい。

結論をいうと、これには根拠法がある。財政法第4条と財務省設置法第3条である。ここに、いわゆる建設国債は財源にしてもよいが、赤字国債はダメだと書かれている。(ちなみに、建設国債も赤字国債も同じ国債である。)

こうした記述があるのはなぜか。これは、日本が太平洋戦争で赤字国債を大量に発行して戦費を調達して戦ったことから、敗戦国にやってきたGHQが、そのようなことを二度と起こせないようにしたということだ。

その意図の是非は別にして、このせいで日本が成長できなくなくなったというのは、非常に情けない。その意図を見抜けなくて、あるいは誤解して、妙な足枷を自分で嵌めてしまったという自覚がないのが情けない。とほほ。

下が、その二つの法律の条文である。

《財政法》第四条 国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。 前項但書の規定により公債を発行し又は借入金をなす場合においては、その償還の計画を国会に提出しなければならない。 第一項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければならない。

《財務省設置法》(任務)第三条 財務省は、健全な財政の確保、適正かつ公平な課税の実現、税関業務の適正な運営、国庫の適正な管理、通貨に対する信頼の維持及び外国為替の安定の確保を図ることを任務とする。 前項に定めるもののほか、財務省は、同項の任務に関連する特定の内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けることを任務とする。  財務省は、前項の任務を遂行するに当たり、内閣官房を助けるものとする。

おしまい

河野太郎氏 テレビ・新聞が問題視しない問題点

自民党総裁選は、国会議員を選ぶ衆議院選挙などと違い特定の団体の代表選びなので、マスコミが、各得票数や選挙結果の予測を自由に報道してもOKという。それが、総裁選報道が過熱する理由である。

また、テレビ、新聞などのマスコミ(オールドメディアと言われる)とインターネットメディアでは、伝えている内容に大きな差があり、オールドメディアは河野太郎氏が優勢だと報道するものが多く、ネットメディアは高市早苗氏に高評価を与えるものが多い。

この理由だが、オールドメディアは「勝ち馬に乗りたい」という意思が一番大きい。 

高市早苗氏は、出馬記者会見の席上でNHK記者をにらみながら「NHKさん、来られていると思います。覚悟してください。私が総理になったら、NHK改革断行します。具体的には、衛星放送の受信料撤廃をします。また、たくさんある周波数の放送を減らして、集約してもらいます。」とキッパリ言った。NHKはビビっただろう。

他のマスコミは、首相になる可能性の高い候補にとって都合のよい放送をすることで、前もって今から忖度しているともいえる。分かりやすく、過激な高市早苗氏を応援するようなことをして、彼女が負けてしまうと損をする、抽象的な発言に終始する河野太郎氏を応援して負けても、傷は浅い、もし高市氏が逆転すれば、その段階で持ち上げればよいという計算が働いている気がする。

概して、お昼のバラエティ番組で放送されている内容は、底が浅く、あれだけ時間を割いているのに、同じ内容の繰り返しで、政策の中身を具体的に掘り下げることがほとんどない。

ネットでは、中国寄りの二階幹事長、菅首相、石破茂氏側と、アメリカ寄りの安倍前首相、麻生太郎財務大臣側の戦いという説もある。

候補者のうち、河野太郎氏については、いろいろと問題点があるのだが、ネットではいろいろ言われているものの、テレビ、新聞などのマスコミで報道されることはほとんどない。

そこで、マスコミが取り上げない問題点を二つリストアップしてみる。

① 河野太郎防衛大臣は、イージスアショアの配備計画を廃止したが、その後どうするか宙ぶらりんになっている。

政府は、海外からミサイル攻撃を受けた時の防衛システムとして、2018年、秋田県と山口県の二か所にイージスアショアと言う迎撃ミサイルシステムを設置する計画を立てていた。

ところがこの計画の地元説明会で、防衛省はGoogleEarthなどを使った数値をもとにしていたのだが、山の高さの計算などが間違っているのが発覚した。地元の懸念は、迎撃ミサイルを収納する外部の筐体(ブースター)が地元に降ってくる可能性があることだったが、アメリカ軍に照会したところ、地元に落ちる可能性はあるという回答が返ってきた。

それがもとで紛糾し、河野太郎防衛大臣(当時)は、この計画の白紙撤回を素早く決めた。素早く決めたのはいいのだが、その後どうするかの代替案が出せすに迷走している。一応、イージス艦に乗せるという案が決まっているのだが、恒常的に、防衛のための迎撃システムを日本の周囲をめぐっているイージス艦に乗せるというのは現実的でない(予算が倍かかる)、というのは素人でもわかる。

また、アメリカ政府も、このイージスアショアを迷走させている河野太郎氏が総裁になるのを問題視しているらしい。

イージス・アショア代替策
結局はイージス艦なの?

https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/47546.html

② 河野太郎氏は、「最低限の原発は稼働させる」と自身の方向転換を言いながら、一方で、「巨額の費用がかかる核燃料サイクル政策はきちんと止めるべきだ」とも発言している。

つまり、河野太郎氏は、脱原発、クリーンエネルギーを推進派だが、産業界は、これを進めると電力料金が上がり、競争力が失われると反発している。このため、河野太郎氏は、出馬表明で「原発の稼働は当面認める。」とトーンダウンしたのだが、いっぽうで、燃料サイクルの廃止を口にしている。

これは、原子力発電所でできる廃材を処理する場所がなくなることを意味し、原発廃止を言うのと同じことであり、矛盾している。 電力料金の高騰は、日本で製鉄業が立ち行かなくなった原因でもあり、製造業の国際競争力を失う。クリーンエネルギーと言えば聞こえがいいが、コストをしっかり考え、不利益を被る部門への目配りが必要である。。

高市早苗氏は、核融合炉を進めると言っており、これは、「ウランなどが必要ないので、最も安全な発電方法だと思います。ものすごく大きな発電量も可能です。」「実は京都大学発のスタートアップ「京都フュージョニアリング」(京都府宇治市)が技術を持っていますが、お金が集まらず、資金調達額は5億円程度にとどまっています。」と具体的な提言をしている。

核燃料サイクル維持を 電事連が声明

https://www.iza.ne.jp/article/20210914-Z7Y7DBWGHJM3PGZZIEZPYCJXYE/

おしまい

余談 日本は、東日本大地震の福島原発爆発事故で、原子力発電所の売り込みができなくなった。このために、火力発電所の燃費効率を上げた発電システムをベトナムなどの途上国に売り込もうとした。しかし、いくら燃費効率が上がったとはいえ、化石燃料を使うシステムへ力を入れる姿勢は、2019年の気候変動会議COP25で世界中からバッシングされた。化石燃料をやめると言わなかった小泉純一郎環境大臣には、たっぷりと皮肉を込めて「化石賞」が贈られた。

本当におしまい

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