オリンピックにかかった経費について考える その5 (組織委員会・会計処理規程から考える)おしまい

JBPRESSから バッハIOC会長と森組織委員会長

次に掲げたのが、「オリンピック組織委員会会計処理規程」である。

組織委員会の内規である「会計処規程」を見ると、冒頭に、書類の保存年限は7年で、伝票や証拠書類は10年間の保存期間と書かれている。

ここで、再び調達結果の総合計の表を見ると、随意契約の中に「パートナー供給」として1,939億円と書かれている。これは詳しいことが割らなかったのだが、どうやらスポンサー契約を結んだ企業へ発注した額のようである。他方、2枚目の収支を表した表では、スポンサー料を約4,300億円受け取っている。

中身がまったく分からないのが、「特別契約」である。規程を読むと、「特別契約」は《緊急時》、《他に供給先がない独占》、《事務総長が特に必要と認めるとき》などとなっているのだが、「特別契約」は2,897件と数も多く、金額も2,791億円ともっとも多額なのだが、多少なりとも詳しい説明は、入札があった案件だけしか公表しておらず、「特別契約」の案件ごとについては、契約金額、契約日、選定理由すら公表されていない。よって、詳しいことは闇の中である。

もちろん、契約書や評価のプロセスなども、実際の書類にアクセス(情報公開請求)することが出来ない。

つまり、「特別契約」2,897件、金額2,791億円について、分かるのは件名と契約相手名だけである。件名と契約社名から、どんなことがどんな風に契約がされたのか想像するしかない訳だ。

2021年度の調達案件一覧 (PDF 1.8MB)から

また、「競争契約」では、価格で契約相手を選定する《一般競争入札》と、《提案書と価格》の両方で契約相手を選定する《総合評価落札方式》があるのだが、ひとくくりに「競争契約」とされている。

前にも記述したが、この総合評価落札方式入札は、入札結果を見ると、どの案件も「技術点及び価格点を総合的に評価した結果、他社より優位であると認められた」と書かれており、本当に1社入札ではなかったのか疑問に感じるところだ。また、技術点と価格点をどのような割合で評価したのか明らかにされていない。選定者(採点した人物)が、身内なのか利害関係者なのかどうかも明らかにされていない。

総合評価落札方式は、運用の仕方次第で恣意的に落札者を決めることが可能であり、どのような体制で運用していたのかを示し、恣意的で不公平なことをしていないと、発注者は社会の疑念を晴らす責務がある。

そもそも「プロポーザル」方式は、提案書の審査・評点のみで契約相手を決めるので、そうであれば競争契約にカテゴライズするのではなく、随意契約に入れるべきではないか。

●結論

オリンピックの契約について、組織委員会に契約情報の開示義務がないというのは考えられない。国や東京都は、税金で箱モノを作って情報公開の対象だったり、会計検査の対象になるが、オリンピック組織委員会は、直接に税金を使わずに運営されているので、対象から除外されているというのであれば、オリンピック自体が多額の税金を投入した国家事業であり、国民感情からすると到底受け入れられない。

公益財団法人であるオリンピック組織委員会が情報公開の義務がないことを盾に、不正があっても明るみに出ないというのであれば先進国とは言えない。

東京地検が受託収賄罪や談合などの容疑で取り調べをしているが、それ以外にも仲間内で不労所得を得て、おいしい汁を吸っている連中が裏で生き延びているのではないか。それは望ましい姿でないことは明らかだ。

札幌オリンピックの誘致をするという動きもあるようだ。大阪では、万博とIRも計画されているようだ。これらの開催でも今回と同じロジックの法律や規程によって、公益財団法人を作り、非開示が許されるというシステムを作ることがないようにすべきだ。

ビッグイベントに際し、これを例外規定にする特別法なりを一つ作れば、簡単に国民の目が届く制度をつくることができる。 さもなければ、設立された公益財団法人とスポンサーたちは、いくらでも身内で仕事を分配し、国民はチェックすらできないという事態が続くだろう。

おしまい

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