オリンピックにかかった経費について考える その4(法令と規程について)

WIKIPEDIAから

以下は、2022年10月、オリンピック組織委員会の文書公開が都立の図書館で始まったというNHKの報道で、公開される内容は限定的だという内容だ。

https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20221025/1000086148.html ← 記事はこちら

上記の記事に書かれている組織委員会に公表の義務がないという点について、法的な根拠などについて調べてみた。

最初は、「公益財団法人の認定等に関する法律」である。この法律には、役員諸侯の報酬、財産目録の公表義務は謳われているものの、財産目録とは財務諸表などをいい、経営状態を示すもので、個別の契約内容などについては開示義務の定めがない。また、監督官庁の職員には、活動状況の検査権限があると定められているものの、これは情報公開にはつながらない。

下が、「情報公開法」である。情報公開法は、行政機関の情報公開が趣旨なので、「行政機関」に含まれない公益財団法人のオリンピック組織員会は、そもそも対象外である。

では、会計検査院はどうか。税金が投入されているのだから、検査の対象ではないのかと普通は思う。 ネットでググってみたところ、検査院は検査を実施しているようだが、2枚目の図を見ると、国が予算を出したところを検査しているようであり、オリンピック組織委員会の支出分は検査対象でないようだ。組織員会の収支を見ると、補助金や交付金と言った税金が入っていないという建前なのだろう。

ただ会計検査院の「所見」として、「国が負担する経費の総額(見込額)を適時に明らかにするとともに、・・・イベント全体の経費の総額を明らかにする仕組みをあらかじめ整備するなど、・・・情報提供を行う態勢を検討すること」と措置すべき要求を書いている。これも、やはり公益財団法人については何も触れていない。

これは親爺の想像だが、オリンピックの経費は、組織委員会と国と東京都が支出しており、組織員会には税金が入っていない建前になっており、会計検査院の検査対象から除かれているのだろう。しかし、経費の半分は税金で賄われているのは事実なので、検査の対象にするのが、本来の姿のように思える。

次回は、いよいよオリンピック組織委員会の会計処理規定を見てみる。

その5へ つづく

その4 おしまい

救いがたい日本 日本人に生まれて情けない その3「情報公開法」で骨抜きの法の趣旨と官僚のネーミング

日本のマスコミは、昔力を発揮していたが、今ではすっかり力量を失ったと思っている。この理由は、「情報公開法」と「個人情報保護法」のせいが大きいと思っている。

次の写真は、テレビ朝日が、森友事件で大阪航空局へ情報公開請求した結果、出された黒塗りの文書である。みなさん、こういう風に、真っ黒になった文書見られたことがあるでしょう。こんなに黒塗りの文書を出すことが許されること自体、おかしいと思う人は多いはずだ。

これに限らず、森友事件で自殺された赤木さんの奥さんへも財務省は、黒塗りだらけだったし、スリランカ人女性が入管で死亡した書類の公開を求めたときも、やはり真っ黒に塗りつぶされた文書ばかりが出てきて、誰もの不信感はますます募ったはずだ。

森友事件の公開文書
こちらスリランカ人ウィシュマさんの公開文書

そこで、「情報公開法」と「個人情報保護法」とは、一体何なのか、主の独断と偏見が大いに交じるが、思うところを書いてみたい。

まず、今回は「情報公開法」である。

正式名称は、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」で、2001年(平成13年)4月1日に施行され、特殊法人が独立行政法人になったときや、関係法令の改正などに伴って、何度か改正されている。

実際の条文を見てみようと思われる方は、次のリンクをクリックしてください。

情報公開法のリン

この法律を見ると、(目的)第1条には、「行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。」と一見美しいことが書かれている。 ただし、ここでは、国民への説明責任を果たすだけでなく、行政の推進に資するとも書かれており、無条件で説明責任を果たすものではないとも読める。

「行政機関」(=省庁などに加え諮問機関や審議会などが入る)の定義を書いた第1条の次には、(行政文書の開示義務)第5条が置かれて、何を開示して、何を開示しないか規定されている。これが、26条しかない、この短い法律の肝である。

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具体的に開示しない 第5条「不開示情報」 を列挙していく。

  • 1.行政機関の情報について
  • イ.法律、慣行で公になっている、または公になる予定以外の個人に関する情報不開示
  • ロ.生命、健康、生活や財産を保護するために、公にすること必要と認められる以外の情報は不開示
  • ハ.情報のうち、当該公務員の職と職務遂行の内容にかかる部分以外不開示
  • 「非識別加工情報」*であっても、他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものは不開示 

*注:非識別加工情報とは、行政機関等が保有する個人情報について、特定の個人を識別することができな いように個人情報を加工し、当該個人情報を復元できないようにした情報をいう。ここでは、情報を分解して個人を特定できないものであっても、他の情報と照らし合わせることで、個人を特定できるものは、公開不可だと言っている。

  • 2.法人(=民間など)その他の団体の情報について
  • イ.法人、個人の権利など正当な利益を害する恐れがあるものは、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除き不開示
  • ロ.行政機関の要請を受けて任意に提供されたもの、通例公にしないもの、合理的と認められるものは、健康、生活又は財産を保護するため、公にすること必要であると認められる情報を除き不開示
  • .外国、国際機関との信頼関係が害されるおそれ、交渉上不利益があると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があるときは、不開示
  • 4.犯罪、捜査その他公共の安全と秩序の維持に行政機関の長が認めることにつき相当の理由があるときは、不開示
  • 5.国、独立行政法人、地方公共団体等の情報で、公にすると、国民の間に混乱を生じさせる、不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるものは、不開示
  • ・6.国、独立行政法人、地方公共団体等の情報で、公にすることにより、事業の遂行に支障を及ぼすおそれがあるもので、次に掲げるもの不開示
  • ・イ.監督、検査、取締り、試験、租税賦課、徴収に係る事務の遂行に支障があるおそれ
  • ・ロ.契約、交渉、訴訟の事務に関し、行政機関の財産上の利益、地位を害するおそれ
  • ・ハ.調査研究の事務の遂行を害するおそれ
  • ・ニ.人事管理の事務の遂行を害するおそれ
  • ・ホ.行政機関の事業に関し、利益を害するおそれ

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なんだこれは!! なにも開示しないのと同じだ!!

開示するも、しないも決めるのは、お役人だ。よくこんなのを法律にしたものだ! どこが 情報公開法」 だ!!! これじゃ黒塗りの文書しか出てこないはずだ!

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(結論)

マスコミは、この法律の制定の当初、結構情報公開請求をしていたが、成果が上がらないので最近ではあまりしていないように思える。やっても、埒が明かないからだ。

結局のところ、情報公開法により、行政機関、独立行政法人等、地方公共団体は、その長が、自分の裁量で公開する範囲を決められる、という根拠を持った。

そのため、マスコミはポチと蔑まれながらも、手もみしながらご官公署のご役人のご機嫌をうかがい、床に落ちている情報を拾うしかなくなった。

もちろん被害者は、マスコミだけではない。国民が被害者だ。森友事件で自殺した赤木さんの奥さんが典型だ。被告の国は認諾という手法を使い、民事裁判で、賠償請求額の1億円全額を認めて、裁判を終わらせた。情報公開に応じないということ、認諾で真実を明かさない姿勢、どちらも一体誰を庇っているんだ?

あと、おわかりだと思うが、「情報公開法」というネーミングが絶妙で、国民は情報公開するんだとと気楽に思っているが、実際のところは、説明したとおり、情報公開しない条件が羅列された法律であり、情報公開とは真逆の代物だ。

次回は、「個人情報保護法」を取り上げようと思う。

おしまい

 

 

 

 

 

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