オリンピックにかかった経費について考える その1(総合評価落札方式が生まれた経緯となぜ公表義務がないのか)

●問題意識

親爺は例えば、オリエンタルラジオ・中田敦彦さんのYOUTUBEなどを見て、オリンピックの経費の詳細について怪しいなあと思っていても、、オリンピック委員会に情報公開の義務がないために追及の方法がないのはよろしくないと思っていた。 同様に、郷原弁護士の「日本の権力を斬る」という正義感溢れるYOUTUBEを見ながら、東京地検が電通の高橋理事容疑者らを受託収賄罪で捜査、逮捕したことを応援していた。この高橋容疑者の逮捕は、オリンピック組織委員会の理事は「みなし公務員」になるので罪に問われたもので、民間人なら罪に問われないとのことだ。

その事件の背景であるオリンピック組織委員会が発注する契約は実際にどうなっているのか、ネット上にある公開情報を、さらっと、調べてみることにした。これまでのサラリーマン生活の経験で、おそらくオリンピック組織委員会は、様々な調達(契約)に際し、仲間内で仕事を分配していたのではないかという懸念をぬぐえないからである。

その具体的な事例を見る前に、国などの公的機関の調達方法の変遷、《総合評価落札方式》入札という方式が生まれた経緯について、まず触れたい。

2009年から2013年の間続いた民主党政権の直前に、国には埋蔵金があると言い出し、埋蔵金はもちろんなかったのだが、民主党は《随意契約》が無駄の温床だといって、何でも《一般競争入札》にしろといい出した。

なんでも一般競争入札で契約するのは、事務方としては大変な業務であり、応札する側も落札できないとそれまでの努力が無駄になるので、大きな犠牲をはらうことになる。とくに期限が決まっているオリンピックなどの事業の場合は、入札がもし不調になると、工程の遅れに直結する。

ところがこの時、霞が関の官僚たちは、《随意契約》を避けるための知恵を働かせ、「総合評価落札方式一般競争入札」という新手を編み出した。これまで、《一般競争入札》というのは、極めて厳格な仕様書を作成し、価格のみで入札するのが一般競争入札だった。このルールを変えて、《提案書》と《価格》の2本立てで契約できるようにして、これを一般競争入札のカテゴリーに入れた。

この《提案書》は、発注者が提示した案件概要や入札説明書などに従って、応札者がどのように業務を遂行するのかを提案するものだ。この採点には、応札社の過去の類似業務の実績や従事する社員の経歴や経験も評価の対象になる。 同時に、それとは別に《価格》を書いた札も入れる。 この提案書と価格の配点割合は発注者が決め、半々あたりが多いはずだが、価格よりも出来栄えを重視する際には、提案書の評価のウエイトを倍にしたりする。 問題なのは、この提案書の採点を基本、発注者側がすることだ。発注者側の管理職が複数名で当たることが多いだろう。

コンサルタント業務を別に委託している場合や外部の専門家に採点を依頼する場合は、そちらが当たるかもしれないが、コンサルタントは業務を受注している立場であり、外部の専門家の場合は《謝金》を受け取っているはずなので、発注者の意向を働かせることが容易なことが想像される。これらの場合でも、評価者は4名ほどで採点しているはずで、発注者の内部の管理職などが含まれることが多いと思われる。

つまり、受注者を誰かにしようという外圧がもしあった場合、このような定性的な採点では公平性を保った判断ができない。つまり、悪事が背景で働いていても、「信念に従って、正しい判断しました。」と言われれば、それ以上追及のしようがない。

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今回のオリンピックでは、かかった経費が1兆4,200億円と公表されている。見込まれてた1兆6,400億円だったものが、簡素化やコロナによる無観客になったために約2,000億円減ったという。

1兆4,200億円の内訳は、オリンピック組織委員会が6,400億円、東京都が6,000億円、国が1,800億円を使ったと公表されている。

東京都オリンピック・パラリンピック調整部のHPから

●公益財団法人には公表義務がない

この6,400億円を使った一般公益財団法人であるオリンピック組織委員会の情報公開すべき義務は、財務諸表などのみである。そのため、どんな契約を結んだのか、つまり、具体的な契約書や契約のプロセスは、国民の目に明らかにされない。それで、冒頭のような新聞記事が出る。

親爺は、公的な資金が投入された世紀の大事業であるオリンピック事業で、マスコミがもっと積極的にどのようにお金が使われたかを追及すべきだと思っている。ところが、マスコミは、政治をチェックするという本来の機能をまったく果たしていないと感じている。

その2へつづく

その1 おしまい

安倍政権倒壊間近! 河井前法相政治生命回復、逆転の一手

「日本の権力を斬る」ことに執念を燃やす人物に、郷原信郎弁護士がいる。

昨年、日本からレバノンへ逃亡したゴーン事件を題材に、《「深層」カルロス・ゴーンとの対話~起訴されれば99%超が有罪になる国で~》を書いた人物である。

一般に日本人は「外国からやってきた剛腕な非情な経営者が、私腹を肥やした許せない事件」と捉えている節があるが、日産から持ち込まれた社内クーデターに、運用が開始されたばかりの司法取引を使って事件にしたい検察が喰いついた。日本の刑事司法は、世界中から人質司法と言われ、まるで中世のようだと批判される。そうした、司法制度の闇と、日産西川(さいかわ)前社長グループの会社の私物化が詳細に描かれている。

その郷原さんが、広島地検が捜査する前河井法相の選挙違反事件についての、YOUTUBEがめちゃ面白い。まるで、将棋で相手の王を追い詰めていくような緊迫感がある。

要は、この動画、被疑者の前河井法相に向かい、この事件の「お金の流れを洗いざらいしゃべりなさい。それしか、あなたに政治生命を救う道はありません!」とご本人に訴えかける動画である。

洗いざらいしゃべれば情状酌量され、微罪になる。その代わりに、1億5千万円の選挙資金を渡した自民党本部の責任が問われ、政権が倒れ、あなたの政治生命は救われる。すでに安倍政権も風前の灯で、もう守ってくれませんよ、と言うのだ。

背景として、「買収」は公職選挙法で禁止されているものの、公示前に行われる候補者から関係者への金銭の受け渡しは、「地盤培養行為」として考え、検察が立件することはほとんどなかった。しかし、今回の河井陣営の選挙資金は、1億5千万円、対立候補は、15oo万円ということが判明しており、はるかに規模が大きい。

一方、政治資金規正法で、選挙資金の報告については、公示後の選挙活動に要した費用を領収書をつけて詳細に公表することになっているものの、公示前に行われた選挙活動については、従来から検察は透明化を図りたいと考えてきたが、実際は不問にしてきた。

ところが、前の東京都知事の猪瀬直樹氏が、選挙直前に徳洲会グループから5000万円借用したことが問題となり、猪瀬氏は生活費と主張したが、検察は立件し、最終的に猪瀬氏は選挙に使われる可能性もあったと認め、収支報告書に記載すべきだったと認めた事件があった。猪瀬氏は「認めるべきは認めなければならない。けじめをつけるため、処罰を受け入れたい。日々後悔と反省にさいなまれている」と、素直に謝罪した。すなわち、この事件を契機に、政治資金規正法の運用は、公示後の選挙活動費を報告するだけにとどまらず、公示前の選挙活動費も報告するように変わったエポックメイキングな事件だというのだ。

そうなると、河井陣営が選挙前に地元の有力者に配っていた「地盤培養」のためのお金も、政治資金報告書に記載されなくてはならなくなる。これは、明らかに違反、有罪だ。

他人事で申し訳ないが、虚実渦巻く政界のとっても見ごたえのあるドラマに思えてくる。

おしまい

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