《COMPLETE INSANITY》なピアノ演奏 Yuja Wang(ユジャ・ワン)

YOUTUBEのリコメンド機能で、ピアノの演奏INSANITY(狂気)という字が目に入ってきた。親爺はかねがね、音楽はどこか狂気がないと面白くないと思っているので興味をそそられてしまった。

実際に見たのは、Yuja Wang(ユジャ・ワン)が弾くリムスキーコルサコフの《熊蜂の飛行》で確かに刺激的で狂気があふれていた。

親爺は、「演奏家が客にお金を払って見てもらえと言われる演奏」と「お客が、お金を払って演奏家に演奏をしてもらう演奏」の2種類[1]があると思っている。これはお金を取れる演奏に入るだろう。

WIKIPEDIAで見ると、このYuja Wang(ユジャ・ワン)は、1987年生まれの中国人で、北京の中央音楽学院、フィラデルフィアのカーティス音楽院で学んだとある。

ラフマニノフ、プロコフィエフやスクリャービンなどのロシアの近代音楽をよく演奏している。ベートーヴェン、モーツァルトやバッハなどのドイツ古典派以前の音楽は、これから長い時間をかけて取り組みたいとイギリス版のヴォーグで語っていると書かれている。 なかなかのポリシーである。

こちらがそのYOUTUBEだ。

こちらが、アンコールで演奏されたトルコ行進曲である。彼女自身の編曲かと思ったが、残念ながらヴィロドスという人の編曲のようだった。それでも、アンコールでこのような曲を披露するという根性は大したものだし、お客もきっと楽しいに違いない。

こうしてみるとクラシック音楽の世界も、昔とは様変わりしているのだろう。

一昨年のショパンコンクールで、反田恭平さんと小林愛実さんを抑えてブルース・リウというカナダ人が優勝した。ブルース・リウは正統的な演奏ではなく、《自分で考えた事を表現する》危険な賭けをして勝ったと言われる。つまり審査員たちではなく、観客の圧倒的な支持を得た彼が優勝した。

https://www.hongkong-ouchi.com/bruce-interview/ ←こちら記事です

おしまい

[1] 海外で活躍されている車田和寿さんというオペラ歌手のYOUTUBE《車田和寿‐音楽に寄せて》に、日常的で平凡な表現をすると、先生が生徒を叱責するときにこのような表現を使われるという話が出てきます。

バッハ ピアノ協奏曲第5番 第2楽章 ラルゴ(アリオーソ) グールドとブーニン聴き比べ

2013年、病気で左手が動かなくなったスタにスラフ・ブーニンがリハビリを経て、今年の6月、八ヶ岳高原音楽堂で復帰演奏するまでを特集したNHKの番組があった。この番組の冒頭で、ブーニンが弾く、バッハピアノ協奏曲第5番第2楽章アリオーソが少し流れたのだが、「狂気が感じられる」とても良い演奏だと思った。親父は、クラシック音楽に、楽譜どおりのありきたりの演奏を聴きたいとはぜんぜん思っていない。どこか突き抜けた、日常の世界とは違う世界を見せてほしいとつねづね思っている。

https://tower.jp/article/campaign/2022/10/26/03 ← NHK放送の記事(タワレコより)

ブーニンが弾いたのはアリオーゾという音楽記号で、「歌うように」ということらしい。彼の演奏は、オーケストラが入らないリサイタルのもので、ピアノ単独なので低音の伴奏部もはっきり弾いている。一方、グールドの方は、オーケストラとの協演(1957年放送、CBC交響楽団、ジェフリー・ウォデントン指揮)から第2楽章だけを取り出したものだ。つまり、低音部は弦楽器群が担当し、グールドの左手はほとんど音を出していないようで、右手だけでこの間弾いているように見える。グールドの音楽記号は、ラルゴとなっていて、「幅広く、ゆるやかに、のんびり」というような意味である。

実際に、ブーニンの方がかなりゆっくりと、最大限のアーティキュレーションでレガートで、切なくより歌うように弾いている。

グールドは、この楽章だけを弾いているわけではなくて、抒情的で美しい第2楽章の後に、フィナーレの第3楽章が控えているので、第2楽章で完結してしてしまうわけにはいかない。そのために、余韻を持って次の楽章への準備をしている。

グールドは、ポリフォニー(多声)の演奏がうまいと評価されるのが一般的だが、この曲の演奏を聴いていると、右手一本で弾くメロディーも抒情的でありながらも穏やかで静謐な世界を見せてくれる。彼の演奏には、押しつけがましいところがない様に思う。そのため、真剣に聴いても、BGMのように聞いていも邪魔することがない。

この曲は非常に美しい曲で、映画などにも多数使われている。このためきっとどこかで耳にしたことがあるだろう。3分程と非常に短く、聴きやすいと思います。

おしまい

追記:

親父が好きでよく見ているYOUTUBEに、車田和寿さんという、海外で活躍されているバリトン歌手がおられる。下がそうなのだが、音楽の入門にふさわしいさまざまなトピック、専門的な話題だけではなく、音楽界への批判も同時にあり、納得することが多い。

YOUTUBEのなかで、「芸術とは誇張のことです!」「演奏は、日常的であってはならない」「舞台に出たら、オーラで空間を支配する」「そんな演奏は死ぬほど退屈だ。そんな演奏なんて、オマエがお金を払って聴いてもらうレベルだ」と恩師が言うところは、本当にそうだと思ってしまいます。(苦笑)

本当におしまい

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