主は、厚生年金を受給する年齢となり、何度か年金事務所へ足を運び受給額をシミュレーションしてもらっていたのだが、実際にエクセルをつかって細部を計算してみた。計算方法などは、年金機構のホームページで知った。
サラリーマンの年金である厚生年金は、老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金(厚生年金保険)の2種類が支給される。
まず、老齢基礎年金(国民年金)分はシンプルで、20歳から60歳まで480か月分掛けた場合の満額(年額)が、780,100円である。22歳の4月から働き始めた主は、60歳の誕生月まででは、446か月だ。この場合だと、支給額は、780,100×446/480を計算すればよい。(この式では、満額支給されないように思われるのだが、差額は、次の老齢厚生年金の「経過的加算」により支給される)
65歳から支給される老齢厚生年金(厚生年金保険)は、「報酬比例年金額」、「経過的加算」、「加給年金額」の3要素からなる。経過的加算は、前述の国民年金額の不足分に相当し、加給年金額は配偶者手当のようなものなので、説明を省略し、報酬比例年金額だけを書いてみる。
報酬比例年金額を求めるには、働き始めた(保険料を納付しはじめた)時から、現在に至るまでの標準報酬を知る必要がある。これは、年金定期便の詳細バージョンに書かれている。このあたりの詳しい仕組みや経緯を主は知らないが、年期定期便は、ラフなものと根拠が分かる細かいものがあり、ラフなものは計算結果しか表示されていない。年金事務所で、本部へ電話で依頼すると詳細バージョンの最新のものを作ってくれると教えてもらった。ネットのマイページでも、詳細データを見ることはできるが、まとめてデータを書きだすような機能はないようなので、出力依頼する方が確実である。(ただし、3か月ほど待たされるが)
平成15年4月以降、年金保険の掛け金は、ボーナスに対しても納めるように制度が変更になった。また、給料がいくら多くとも、最高の標準報酬月額は62万円に設定されており、それ以上の給与をもらっていても62万円に見合う掛け金しか納付しない。やはり、ボーナスにも上限額があり、一月あたり150万円の設定である。このようなことから、仮に1000万円以上の年収を得ていても、掛け金を納められる上限が決まっているため、支給額は一定のところで頭打ちになる。(もちろん、上限に満たない場合は、報酬に比例して支給額が少なくなる)
実際にエクセルで計算するには、支払い月の標準報酬額に「再評価率」を乗じる必要がある。つまり、過去の給与には、物価の変動や金利の動向などの影響があり、年度ごとの「再評価率」が決められており、これを乗じる必要がある。これを見ていると、世相を反映しているなと思うのだが、昭和の時代を昔へ遡るほど数字は大きくなり、昭和32年の掛け率は14倍である。これは、昭和32年に10万円の給与をもらった場合、140万円として計算することを意味する。この率は、徐々に下がり、平成元年には1.2倍、それ以降はデフレを反映して、掛け率は1を下回る0.9台になっている。
つまり、報酬比例年金額は、過去に働いて納めた掛け金に相応する標準報酬額に再評価率を乗じて求めた加重平均に、さらに被保険者期間の月数を乗じて求める。 ところがこの再評価率は、前述したように、高度成長期に貰った給与は掛け率が高く、平成以降のデフレ期の給与は掛け率が低いので、世代間格差が出てくるのはここに原因がある。トータルで、同じ金額の給与をもらっていたとしても、働いた時期が古いほどもらえるが額が多くなる。

現在のトピックとして、厚生年金で生活しようとすると、生涯で2000万円が不足し、その分の貯金が必要という金融庁の報告に対し、野党などが年金は「100年安心!」と言っていたのではないかと、世間を騒がせている。ほとんどの人は、漠然とにしろ、そのような状態になるだろうと思っていると思われる。実際に主が計算した例でも、昔の世代の勤労者であれば、月額給与上限の62万円に達していたことが多いはずだが、現在では、非正規で働いている人を含め、昔ほどの高給を貰っていない人の比率が高いだろう。その場合、当然ながら、将来もらえる年金額は比例して下がる。
金融庁の思惑は、そのような事態に備えて、個人に投資を進めるところにあったが、これまた、元本自体を目減りさせるリスクが大きい。
無責任な発言かもしれないが、ここは、国民全体でコンセンサスの転換をして、ベーシックインカムの導入を本気で考えるしかないと思う。3000年紀に入り、2000年紀と社会自体が変わってしまっているのだから。また、消費税を計画通り上げそうな気配だが、さらなる不況に陥る可能性が高い。
おしまい