新CPU Kaby Lake トラブル乗り越え パソコン組み立て

 パソコンは、記録媒体に書かれたプログラムを読み込むことで起動を始める。ハードディスクの場合、転送スピードは大体速いもので100MB/sほどなのだが、Windowsを立ち上げるとけっこう時間がかかり、待たされる。ハードディスクは中で円盤が回り、ヘッドが円盤の磁性体を読む仕組みになっているので高速化には限度がある。これに代わるものとして、メモリーを使ったSSDというものがあり、こちらは転送スピードが500MB/sほどだ。主は、SSDを2枚使いRAID0(レイド・ゼロ)という方式で起動させていた。これだと800MB/sほど出ていた。ところが、ここへ1年ほど前からNVMeというまったく新しい転送方式のSSDが発売され、転送スピードが3,000MB/s以上のものが出た。下がそのNVMeタイプのSSDだ。非常に小さく、マザーボードにパチンとはめて使えるので、省スペースなうえケーブルでつなぐ必要もない。ちなみに、インテルCPUロードマップを見ると、少し待つと、Kaby Lakeという名前のCPUも発売されるということを知る。前に作ったPCから結構時間が経っており、これを機会に更新しようと考えた。

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ASCIIのホームページからSAMSUNG 960 EVO  美人の女性にどうも目が行く

 パソコン心臓部の演算装置であるCPUは、大体1年に1回、性能が上がった新製品が発売される。これにあわせてマザーボードのチップセットの規格が新しくなり、新しいハードウエアが使えるようになる。今回は、1月の初めにインテルがKaby LakeというコードネームのCPUを発売し、 チップセット(Z200シリーズ)も新しくなったマザーボードがベンダーから発売された。主はこの発売を半年ほど首を長くして待っていた。

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主が購入した全部入りASROCK社のマザーボードFatal1ty Z270 ITX/ac

主がこれまで使っていたパソコンは、2012年のIvy Bridgeと呼ばれるものだったが、今年1月発売のKaby Lakeとの違いは次のようなものだ。

  • ① メモリーが高速化(DDR3→DDR4) 
  • ② CPUからの転送速度アップ(PCI EXPRESS2.0→PCI EXPRESS3.0) 
  • ③ CPUからの転送速度アップ(DMI2.0→DMI3.0) 
  • ④ USB3.0→USB3.1 
  • ⑤ 4Kビデオ @60Hz対応
  • ⑥ CPUビデオ性能アップ
  • ⑦ NVMe SSDの起動サポート

さて、行った作業と遭遇したトラブルなどを書いてみよう。

① PCの移行にあたり、まず、昔のPCから起動ディスクの内容をNVMe SSDにコピーする必要がある。ところが、NVMe SSDは古いPCにはそのような端子がないので、写真のような変換基盤を2000円ほどで購入した。これは玄人志向というメーカーの製品だ。この場合、USB3.0を使うアダプターもあるが、こちらはSATAという従来型の規格向けで別物なので注意が必要だ。m-2-pcie

主は、SSDにSAMSUNG 960 EVOを使ったので、データ移行にData Migrationというソフトをダウンロードした。このソフトは、コピー元の使用容量よりコピー先の容量が少ない場合でも、移行するデータ量を減らしたうえでコピーできる。主は、RAID0という記録ドライブを2台使うことで高速化する方法をとっていた。BIOS(UEFI)はバージョンアップをするたび、このRAIDの値をリセットするため、これまでPCの交換をする際、ずっとデータ移行に失敗し、毎回クリーンインストールを余儀なくされてきた。クリーンインストールすると、ソフトを入れなおさないとならないのでなにかと面倒だ。しかし、このソフトでは問題なく起動ディスクをまるごとコピーできた。

② 今回の更新では、古いパーツを流用したのは、データが入っている3.5インチのハードディスクとCPUファンレスクーラー、電源ユニットだけだ。CPU、メモリー、マザーボード、ケース、起動用のNVMe SSDは新しく購入した。  これらすべてを接続して電気を入れたら、ピーピーピーという音がして起動しない。これは過去に経験したことだなと思い、メモリーがソケットにしっかり差し込まれていないことに気付く。力いっぱい差し込むと起動し、音は消えたが、ディスプレイに何も映らない。「まいったなあ」と困っていたが、旧PCは2枚のディスプレイを接続していたことを思い出し、古いビデオカードを差し込み、ディスプレイをつないでみた。そうすると、UEFIの画面が出てきた。やった!!  やがて、ビデオカードを使わず内蔵グラフィックで映像が映るようになる。次に、マザーボードにバンドルされていたドライバーをインストールしたところ、全く昔のままのソフト環境で使えることがわかった。

③ ところが、WINDOWSのライセンスが認証されていない! WINDOWSのライセンスはハードウエアに紐づけされていて、ハードウエアを入れ替えると再度認証が必要になることがある。今回はほとんどハードウエア全部が入れ替わっている。昔はこのようなときに、電話で認証ができた。電話をすることで、ハードウエアが入れ替わってもライセンスの認証が出来たのだ。それができなくなっているようだ。  これをネットで調べるとWindows 10のバージョン1511まで電話認証ができたのだが、それ以降のバージョンではなくなったとあった。この代替策としては、古いPCでログオンする際にあらかじめMicrosoft Accountでログオンし、更新後のPCでもMicrosoft Accountでログオンすると認証を引き継げるという記事を見つけた。  このため、パーツを戻して古いPCを現状回復しようとした。しかしながら、RAIDがすでに崩れていて、旧パソコンの復旧を簡単には出来なかった。旧パソコンにWindows10を新規インストールし、認証をしたうえで、Microsoft Accountでログオンすればよい理屈だが、かなりエネルギーを要すると考えた。

③ 本来ならハードウエアが変わってもライセンスの権利はあり、これを使えないのは残念だが、Windows10のライセンスを買いなおすことにした。  正規版のライセンスはWIN10 Proの場合、3万円弱もする。このためDSP版(OEM版の一種で、自作パソコンの部品と一緒の場合だけ買うことができる。製品版より値段が安い)というものにした。ネットで調べると、アマゾンが安く、アマゾンの中にもいろいろありインチキ品も混じっているということで、販売元がアマゾンになっているものを選択した。

話が脱線するが、いまどき殆どの製品の価格はアマゾンが一番安い。おそらく大量に販売できるので、販売元に圧力をかけているのだろう。海外の会社に多額の利益が集まり、販売力の弱い日本の中小の販売店の利益が削られる状態は、何かが間違っていると思うが、消費者は安い方からつい購入してしまう。

送られてきたDSP版Windws 10は、封筒に下のシールが貼ってあるだけで、プロダクトキーが書かれていない。OEM版ということで果たして自作パソコンに使えるのか、主は疑問に思ってしまった。このため一旦アマゾンに返品しようと考え、手続きをした。アマゾンのHPの作りはよくできており、返品の手続きは超簡単だ。非常に使い勝手が良い。

ところがやはりネットでググると、下のMicrosoftと書かれた非常に小さなスクラッチシールを硬貨で擦るとプロダクトキーが出てくることがわかった。どうやら主が買ったものでも問題がなさそうだ。案の定、スクラッチを削るとキーが出てきた。  同時に、アマゾンの購入取り消しを取り消した。こちらも簡単だ。HPはうまく作られている。認証は、間違った番号を入れたのか、3回目にやっと認証出来た。ほっ。

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パソコン工房のHPから

④ これまでと同じようにPCを使えるようになった。オフィスやウイルスソフト、お気に入り、普段使っているアプリケーションも再インストールする必要はない。ところが、ご機嫌で、UEFIをいじり、うっかり、Load Optimized Defaults を押したら、PCが全く起動しなくなった。こういう時のためにCMOS CLEARという方法がある。マザーボードの種類によっても違うが、スイッチを押したり、ジャンパピンをショートしたりしてCMOSというメモリの内容を消去しリセットするのだ。ところがこれをしても、事態は一向に改善せずブラックアウトのままだ。これはマザーボードの故障かと思い、購入したショップのドスパラへ連絡し修理の手配をした。この店のサポートも素晴らしくて、宅配便が自宅までマザーボードを取りに来てくれるという。

並行してネットをググっていたら、このCMOS CLEARは、30分ほど完全に放電したのちに行わないとうまく行かないという記述を見つけた。それでその通りに、コンセントを抜いてから30分後に電気を入れたら、そのとおりUEFIが再び出てきた!ようやく解決。ドスパラへ連絡し、修理が不要になった旨を伝える。

⑤ というわけで、ようやくPCの更新が完了した。この結果、だいたい10万円程度の投資に対して性能アップが体感できたか?この答えとしては、残念ながらあまり体感できたとは言えない。

ただ、利点としては、これではWIFIの子機をUSBスロットに差し込んでいたが、不要になった。BLUETOOTHが使えるようになった。内蔵グラフィックの性能が上がったので、外付けのグラフィックボードが不要になった。今は使っていないが、将来的に4Kのディスプレイを60Hzで見れる。Thunderboltが使える。

最後に、SAMSUNG 960 EVOのベンチマークをのせる。3089MB/Sとなっており250GBと小容量のSSDなので、ほぼ性能どおりの数字が出ていると思う。

 

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EU・ユーロ危機 スティグリッツとエマニュエル・トッドから

written on 4th /February /2017

イギリスのBrexit(EU離脱)以降、EU危機があちこちで言われるようになってきた。NHKに登場する批評家も、EUの今後に懸念を表明し始めている。アメリカのトランプは大統領就任を目前の今年1月、「イギリス以外にもEUを今後離脱する国があるだろう」と発言し、フランスオランド大統領、ドイツメルケル首相が余分なことは言うなと反発していた。記事は、こちら→ http://www.jiji.com/jc/article?k=2017011700079&g=int

もう一つ、記事があった。「トランプ政権が貿易不均衡でドイツに宣戦布告、狙いはEU潰しか」→ http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/02/eu-56_3.php

何が背景にあるのかを書いてみたい。

 EUの歴史は古く、欧州統合のアイデアは第2次世界大戦以前からあり、戦後実際に欧州統合が今日に至るまで徐々に拡大してきた。度重なる過去の戦争の反省からヨーロッパを政治統合し、戦争のない繫栄した世界を目指そうとした。ここでは、素晴らしい理念を掲げてスタートしている。この統合のプロセスにおいて、政治統合だけではなく、経済統合もしようとするのは自然な流れだろう。EUは高く掲げた理念へ向け、政治、経済を統合し理想的な社会を作ろうとした。

 加盟各国の中には経済だけではなく、教育、文化、福祉制度などあらゆる面で当然ながら、実際には違いがあり、起こった現実は理想ともちろん違っていた。EUが掲げる理想は、時間の経過とともに、各国の差が収斂していくだろうという淡い期待しかなかった。しかし、この期待は実現しないことが、壮大な実験の結果はっきりした。すなわち、EUの首脳たちは、国境をなくし、政策、経済を統合するプロセスにより、各国の経済的な格差は時間とともに平準化し、よい状態へと収斂していくと考えていた。それは間違っていたのだ。

 2002年に単一通貨のユーロを導入するのだが、これはなにより、参加各国が金融政策を放棄することを意味する。通貨を発行できるのは欧州中央銀行(ECB/ドイツのフランクフルトにある)だけだ。例えば、日本は長引くデフレから抜け出すためにアベノミクスを行っているが、これは日銀が通貨の供給量をかつてないレベルに増やし、金利もマイナス金利になるほど低下させ、需要や投資を喚起しようとしている。このような経済刺激策や、逆に景気が加熱した場合には、現在のアメリカがやっているように、金利を少しづつ上げ、金融引き締めを行うのであるが、参加国はこのような金融政策を独自に行えない事態が起こっている。

 この結果、EUでは何が起こったか? ユーロは域内では固定相場(域外に対しては変動相場)のため、ドイツにとっての為替レートは国力に比べるとEU域内で有利な比率のまま、その比率は固定される。もしEU各国が独自の通貨を使い続けていれば、仮にドイツのように貿易黒字をため込む国があると、ドイツの為替レートは自動的に切り上げり、やがて国際競争力を失い、黒字が減るという調整が市場を通じて行われる。しかし、単一通貨のユーロを使っているとEU域内の為替レートはいつも変わらない。この結果、EU域内でドイツだけが貿易黒字をため込み、周辺国が貿易赤字に苦しむ、ドイツ独り勝ちの状況になっている。

 ちょっと長いが、トッドの著書からドイツの特殊性について引用すると

「ドイツはグローバリゼーションに対して特殊なやり方で適応しました。部品製造を部分的にユーロ圏の外の東ヨーロッパへ移転して、非常に安い労働力を利用したのです。  国内では、競争的なディスインフレ政策を採り、給与総額を抑制しました。ドイツの平均給与はこの10年で4.2%低下したのですよ。  ドイツはこうして、社会文化的要因ゆえに賃金抑制策など考えられないユーロ圏の他の国々に対して、競争上有利な立場を獲得しました。  ユーロのせいでスペイン、フランス、イタリアその他のEU諸国は平価切下げを構造的に妨げられ、ユーロ圏はドイツからの輸出だけが一方的に伸びる空間となりました。こうしてユーロ創設以来、ドイツとそのパートナーの国々との間の貿易不均衡が顕在化してきたのです。  よく吹聴されていることに反して、ヨーロッパのリアルな問題はユーロ圏の内部の貿易赤字です。貿易赤字を遠因とする現象にすぎない歳出超過予算ではないのです。」「ドイツについて語るのを控え続けることは、とりもなおさず、ユーロの危機についての良い診断書を提出すること自ら禁じることです・・・」

 また、トッドは自由貿易に対し否定的だ。「自由貿易は諸国民間の穏やかな商取引であるかのように語られますが、実際にはすべての国に対する経済戦争の布告なのです。自由貿易はあのジャングル状態、今ヨーロッパを破壊しつつある力関係を生み出します」「私の選択はヨーロッパ保護主義によるユーロの救出ということになります。必要なことはしたがって、フランスがこの解決策を提示してドイツと交渉する勇気を持つことです。」

 この本の最終盤は次のように締めくくっている。

「しかし今日、経済問題の討議がわれわれの周辺に欠落しています。オルタナティブはない、この道しかない、と吹聴されています。あり得る解決策に対するこのような否定の態度は、我らが旧大陸のメンタルな化石化を露見させるものです。エキスパートたちが、老人コーラスさながらに声も枯れんばかりに歌っている。『そんなことは不可能だ!』とね。  このありさまは本当に、生命、現実、歴史、物事をじわりと動かす人間の能力などの否定を押しつける全体主義的言説さながらにおぞましい。われわれはかつて、ナチズムというかたちで人種への服従を経験しました。人民民主主義というかたちで自称社会主義の教義への服従を経験しました。  今は、緊縮財政プランへの服従の時代になっています。そのプランは自動的に不況を招来してしまうのに。  以上に述べたところが、かつて全体主義へと行き着いた精神病理にも匹敵する、現代の精神病理です。全体主義は、若さがまだリソースであり続けていた社会に依拠していました。高齢化の今日、われわれはそれの耄碌バージョンを生み出しているのです。ユーロ(の通貨的意味における)全体主義と言えましょう!」

ところで、「オルタナティブはない、この道しかない」という表現は、TINA(There in no alternative)というメルケル首相がギリシャ危機の際に使った高圧的な言葉だ。

トッドがこの本を書いたのは、Brexit の前なのも驚くが、これらのことをトランプ大統領の登場、EUから Hard Brexit したイギリスメイ首相とトランプの会談などを考えると、興味が尽きない。はたして世界に変化がはじまったのだろうか。

 

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写真はアマゾンから(上下とも)

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