ブラジル ボアッチの話 その2

ブラジリアにあったボアッチ

「人生の3分の2は嫌らしいことを考えてきた。」とイラストレーターでありエッセイストであるみうらじゅんさんは、かならずこの書き出しで始める。この人に限らず、男はだいたいそうだ。主は、4分の3かもしれない。

アマゾンから

みうらじゅんさんを冒頭に持ってきたが、内容には関りがない。単に、エロから連想しただけなのだが、今回はブラジル、ボアッチネタを取り上げたいと思う。なにしろ、15年前のブラジルの話なので、事情はけっこう変わっているだろうと思うがご容赦を・・。

冒頭の写真が、当時のブラジリアにあったApple Night Clubという昼間のボアッチの写真だ。当然ながら、夜の雰囲気は全く違う。夜には、手前の駐車場が、お客の車で一杯になる。左半分が教会でブラジルらしい。ここのお姉ちゃんと話をしていて、「お客と出かけた後、となりの教会で懺悔するのよ。」という冗談を言っていた。 Googleで検索するとどんな場所でもヒットするので驚く。

こちらは、同じくGoogleで出てきたブラジリアのボアッチの写真。Lago Sul(湖の南)のボアッチの内部写真。夜が更けるにつれて、男女でいっぱいになる。ビートのきいた音楽が大音量で流れている。15年前には、この地域は豪邸の建ち並んだ地域で、ボアッチはなかった。

主がブラジルの首都ブラジリアに赴任した時、日本でボアッチというナイトクラブの存在は聞いていたのだが、どうも風俗系のことを人に聞くのが恥ずかしいタチなので、職場の人に聞けなかった。そのため、ボアッチの存在はかなり長い間よくわからなかった。しかし、さすがに1年を過ぎる辺りから事情が徐々に分かってきた。

ブラジルの法律は、日本の売春防止法のような法律がなく、組織的な売春は違法であるものの、個人が自由恋愛することは禁止されていない。日本も、組織(営業)が絡まない、「援助交際」という名目で個人が自由恋愛している分には問題ないらしいので、細かくは違うだろうが、どちらも似たようなものだと思う。

最近は日本も、途上国化が激しいので、女性の供給は増える一方で、かなりブラジル化していると思うが、ブラジルはやはり何といっても日本以上に格差が大きいので、ボアッチで稼ごうという女性は多い。端的に言ってしまえば、ボアッチ以外でも、道路の特定の場所で、こうした女性が、車のドライバー目当てに客引きをしている場所もある。

また新聞の求人(募集)欄に、こういう種類のお姉ちゃん(お兄ちゃんも?)が、例えば、『混血、美人、大柄。20歳。電話******』とか、広告を載せていた。主は、結構長くブラジルにいたのだが、このことに気づいたのは、かなり時間がたってからだ。ブラジリアの職場の現地スタッフによれば、ブラジルではどんな田舎へ行っても、この種のサービス?、仕事?は必ずあり、お金次第で、超高級なものから長距離トラックの運転手向けのもの、違法な子供が出てくるもの、同性愛向けもあるということだった。

ブラジルの女性は、全般に、日本人のように照れることもなく、フランクだ。ボアッチは、男性が入場料として料金を払うが、女性は無料でやって来ており、お酒を飲みながら、女性と話をすることを目的に来る男性も多い。意気投合すれば、一緒に出ていくこともある。店の女性の管理が厳しくないので、電話番号を教えてもらって、直接電話して、食事に誘ったりすることも可能だ。

おしまい

《カランジル》ブラジルの刑務所 月1の面会日、セックス部屋がある!

(2022/9/18 一部リンクが切れていましたので、リンクを削除しました。)

ゴーンさん逃亡事件で、日本の拘置所の処遇が、人権にもとるという指摘を声高にした。そういえばブラジル映画で見た刑務所には、面会日があって、奥さんや恋人とセックスができる部屋がある。ブラジルの刑務所は、定員の倍以上詰め込まれ最悪だが、日本とは根本的に違う。ひさびさのブラジルネタです。

映画「カランジル」のカバー

ブラジルの刑務所には面会日があり、家族や子供、友人がぞろぞろ刑務所の囚人と会う日がもうけられている。その日には、何と奥さんや愛人とセックスする部屋まで用意されている!!

ブラジルの刑務所は、収容定員の倍以上の囚人が詰め込まれていて、最低だ囚人同士の暴力やレイプも茶飯事だ。一方で、なにより、刑務所の中で何でも買える。お金で寝床を買えるのみならず、テレビや携帯電話、趣味の道具、何でも揃う。とりわけ、ドラッグが蔓延しており、刑務所で薬物中毒になって売人になる者がいる。そんな刑務所なのだが、刑務所の中でサッカー大会があったり、人気歌手が慰問に来て、壇上からコンドームをばらまいたりするし、ゲイの囚人同士が結婚式をあげたり、それなりに自由に過ごしているといえなくもない。

「映画感想 * FRAGILE」から

「映画感想 * FRAGILE」から 右が主人公のドクター、エイズの専門医だ

そうした刑務所を舞台にした映画《カランジル》がある。カランジル刑務所は実在し、1992 年にはサンパウロのこのカランジル刑務所内で暴動が発生し、鎮圧のため刑務所内に警察が突入した。クライマックスが、囚人 111 名が死亡した事件であり、それまでの人間ドラマが描かれている。

映画のDVDのカバー写真は、暴動を起こした囚人を真っ裸にして、運動場に集め、座らせている場面である。暴動の鎮圧に警官たちは、気違いのように銃や機関銃を乱射する。その囚人たちを無差別に虐殺する様は、普通の人間(警官)が、恐怖とともに圧倒的な権力を握ると、何を始めるのか思い知らされる。(このときの警察の行動に関した裁判が、2016年末まで行われ、警察の無罪が確定している。)ブラジル映画、なかなかいいす。切ないっす。

下は、何か所かネットで見つけた、関連情報です。

① 刑務所で確かめ合う愛=女囚との特別面会は少数

こちらは、ブログ「おもしろランキングの広場」から。その冒頭部分の抜粋。ソースはブラジルに住む日系人向けの日本語新聞である「ニッケイ新聞」に掲載されたものらしい。

「【Revista da Folha 2005.11.27 ←ブラジルの現地紙】ブラジル国内の刑務所では世界でも稀にみるセックス面会日が設けられ、夫婦や愛人との愛を確かめ合うことができる。面会日は毎月最後の土曜日で、刑務所内の特別面会室で二時間甘い時間を過ごす。ただし時間切れを知らせるけたたましいサイレンで現実の厳しい世界に引き戻されるのが玉に傷だが・・・。」

② Mais ou Menos(まあまあ)の世界 ブラジル

こちらは、「ブラジル、アマゾナス州とマナウス市、ZFM(マナウス・フリーゾーン地域)に関する情報サイト」のPDFからである。こちらは、長く詳しい情報を読むことができる。

ちなみにMais ou Menos(マイゾウ・メーノス=まあまあ)と言うのは、英語でいえば、plus or minus と考えてもらえばよい。ブラジル人に限らず外人は、面と向かってBad! とは言わないので、否定的な表現をするときに手のひらを上に向け、肩をすくめてよくこういう。

「《第32章 刑務所は楽園》 法律の世界でいえば、極端なのが刑務所の中での囚人の扱い、ここにも“マイゾウ・メーノスの世界”があり、金で扱いが変わってしまう。金があれば、テレビ、ステレオ、冷蔵庫なんでも不自由しない程度の物を持ち込み、優雅に刑務所生活をしている囚人がおり、拳銃や麻薬まで手に入れている囚人もいる、女性は面会時に性器内に携帯電話や薬物を忍ばせて入ることが頻繁にニュースで報道されている。リオ・デ・ジャネイロでは刑務所内に豪華なベッド、バス付寝室、大型 TV、ステレオ付きの囚人の部屋が発見され全国ニュース大騒ぎ、即刻解体されたニュースが TV で放映された、いったいどうやって改築したのか想像を絶する。さらに刑務所内に事務所を設けて携帯電話で麻薬組織を操っている者までいる刑務所内には犯罪組織のグループが出来ており、護身料を払ってグループに入り命を守ってもらっている、いずれかのグループに属さないと拷問、性的暴力を受け何時殺されるかわからないことになる。・・・・」

③ ブラジル・刑務所面会お作法

「あめでぃお」さんのブログ「これでいいのだ!★サンパウロ」から。

「さて。
マリアちゃんからブラジルの刑務所についていろんな事を教えてもらいましたよ。
まず、びっくりしたのが
面会の前のチェックでございます。
荷物検査はもちろん、刑務官の前で真っ裸になってスクワットをするというのです。
前を向いて3回、後ろ向いて3回。
この試練に耐えなければ、愛する元銀行強盗の夫に会えないので
うら若きマリアちゃんも1・2・3、1・2・3と毎回行うそうです。」

「驚くべきブラジルの刑務所、なんと
二人きりになれるベッドのサービスまであるというのです。
コンクリート製の2段ベッド、目隠しに白いカーテンはあるけれど
マットレスのようなものはございません。
ついでに時間制限もございません。
更に驚くは、なんと希望すれば避妊具まで刑務所からもらえるそうです。
なんと心憎いサービスでしょう。
ここでの注意点はただ一つ。
「声を出すな。」
そんなことまで、このマリアちゃんは頬を赤らめ教えて下さったそうです。」

④ カランジル/実録!囚人虐殺事件

「ナイトウミノワ」さんのブログ「映画感想 * FRAGILE」の「カランジル/実録!囚人虐殺事件」から。

このブログの写真は、ここから張りつけさせてもらった。とても詳しく、分かりやすく書かれています。この映画をよく知りたい人におすすめです。「・・・囚人が鎮圧部隊バンザイと叫ばせられたり、・・」「刑務所内で暴動が起こり警察が鎮圧したと聞けば、それは囚人が悪いのだと思われてもしかたないでしょう。
でも実際はそうではない、政治家と警察の問題について斬り込んでいき、囚人の目線で事件を描き、隠された真実を暴こうとする熱意に感銘を受けました。」と結ばれています。

おしまい

ブラジル ボアッチ(出会い系バー)の話

————-2022.8.24追記しました————

第2弾は、ボアッチ(出会い系バー)の話。

いきなり最近の政治ネタになってしまうが、獣医学部設置をめぐる加計特区問題で、文部省の前川前事務次官が出会い系バーに出入りしていたと、読売新聞が報道し、ソースが官邸のリークだと他のマスコミが叩き、三面記事的な話題なこともあり、菅官房長官も入って両サイドから盛大に報道された。

出会い系バーは、ボアッチの日本版だと考えてもらえばよい。とうとう日本も、ブラジル化したもんだと思った。ブラジルの方は少し明るいかもしれない。下は、ググったら出てきた前川前事務次官が行ったという、出会いバーの紹介ムービー(YOU TUBE)だ。

出会い系バーもボアッチも、女性のところへ客の男性が行き、交渉次第でお持ち帰りができるというところは一緒だ。下の写真の1枚目は、ボアッチの感じが出ている。ソファが並べられ、派手な照明とロックなどのうるさい音楽が大音響で流れている。繁盛する時間帯になると、下の写真のようになる。入場料は女性無料、男性5000円くらいか。(昔の話なので、今は違うかもしれない)銀座や大阪・北新地のクラブのように専属の女性がいて、ママやホステスが話し上手で接待するというシステムではない。キャバクラ同様、女の子が客にドリンクをおごってくれとか言ってくる。ブラジル人はこだわりがないので、断っても何の問題もない。

昔は、南米の美人が多い国を、ABCとか、3Cとか表現した。ABCは、アルゼンチン、ブラジル、チリに美人が多いという意味で、3Cというのは、チリ、コスタリカ、コロンビアだと思う。間違っているかもしれないが、ブラジルを除いて、これらの国はみな、欧米が出自の国の女性たちだろうと思う。

主は、これらの国でブラジル以外で行ったことのあるのはアルゼンチンだけだ。だが、アルゼンチン女性は、日本人のことを黄色の洗濯屋くらいに考えており、おそらく、黄色人種は一段下に見られている。(洗濯屋さん、すみませんm(__)m)その点、ブラジルは混血が進んでいることもあって、多民族、多人種なため、日本人に対してもフレンドリー、むしろ、日系移民のこれまでの貢献により、明らかにリスペクトしてくれる。

主が説明するのは難しいが、何故、ブラジルに混血が多いのか。その混血のせいで、人種へのこだわりが少ないように思える。聞いたところだが、遥か昔、アフリカからつれて来られた奴隷を乳母にしたり、子供の面倒を見させたりして、欧米系の子供たちが黒人を身近に感じて育ち、偏見を持たずに育ったからだという。結果、混血の比率が非常に多い。(外務省のHPによると、欧米系48%、混血43%、アフリカ系8%、東洋系1%、先住民0.4%とある)

ポルトガル人がブラジルを植民地にしようと先住民と戦った16世紀、先住民を奴隷にし、先住民同士を戦わせようとしたのだが、彼らは奴隷にされ、いくら酷い仕打ちをされても働こうとしなかったという。それで仕方なく、黒人奴隷をわざわざアフリカから連れてきたとのことだ。

主が好きな文化人類学者のジャレド・ダイヤモンド*の著作「銃・病原菌・鉄」のなかに、南米の先住民たちは、欧米人が持ち込んだチフス、ペストなどの病原菌に対し、免疫が全くないためバタバタ死んだとか、欧米人の銃に打倒され根絶やしにされたとか書かれている。結局、ブラジルの場合、先住民はほとんど絶滅に近く、アマゾンの奥地くらいにしか生き延びることができなかった。

* ジャレド・ダイアモンドは進化生物学、生物地理学等の幅広い知見を持つアメリカ人で、UCLAの教授。著作の「銃・病原菌・鉄」「文明の崩壊」などオススメだ。パプア・ニューギニアでもフィールドワークをしている。壮大なスケールで「人間とは何か」を問い続ける。彼のおかげで、主のぼんやりしていた文明観がかなりはっきりしたと本人は思っている。

泣ける映画だ。(アマゾンから)

前にも書いたが、ブラジルは格差が大きく、お金に困っている人が多い。男が体を売るケースは少ないが、女性は簡単で多い。金に恵まれない男に多い職業で、最初に思いつくのは靴磨きだ。客の靴を乗せる台を肩に担ぎながら、酒場などを回って客の靴を磨く。主が愛するブラジル映画「フランシスコの二人の息子」は、貧乏な息子たちが、苦労しながらセルタネージョ(カントリーミュージック)で大成功を収めるサクセスストーリーだが、子供時代の主人公は、学校へ通いながら靴磨きをしていた。ブラジル映画なかなか、いいっす! 切ないっす!

ブラジリア当時唯一のゴルフ場と湖に架かる自慢の斜張橋。センスの良さが窺える

主がプレーしたゴルフ場のキャディーも、金に恵まれない男の職業だろう。主のキャディーをよくしてくれた男は、「公務員試験を受けるが、倍率が凄いんだ。会場の周りに何百人も受験者がいるんだ」と言っていた。明るい顔をしているがみんな大変なのだ。

最初に戻って、ボアッチネタに戻りたい。主が日本から赴任する直前、周囲のブラジル通からボアッチのことを教えてもらった。現地へ行き、タウン誌に書かれていた広告を見つけ、期待をふくらませながら実際に行ってみた。だが、お店が回転してしばらくすると、どうもカップルがソファなどで抱き合ったりキスしたりしているのだが、男同士に見える。目を凝らすと、男同士だった。店員に確認したら、やっぱり、ここはホモセクシュアル専用のボアッチだった! とほほ(涙)ブラジルは広い!

VICTORIA HAUSという名のLGBT向けのボアッチ

そういう失敗を重ねて、やがて、ブラジリアにも何件も普通の、今風に言えばストレート向けのボアッチがあるのが分かった。どうやら、ブラジルという国どんな小さな田舎でもボアッチはあるらしい。店の扉のところには、屈強な大男がガードしており、(たいていは警官OBらしい)、中には女性たちがいる。男は入場料がいるのだが、女性は無料だ。ブラジル人たちは、お酒を飲みながら何を話しているんだか、ゆったりとだべっている。もう記憶が定かではないが、彼女たちを連れ出すときにお店に料金を別に払うシステムだったと思う。

下記のリンクにボアッチ噺の続編を書きましたので、よろしければご覧ください。

ブラジル ボアッチの話 その2

おしまい

ブラジル 人生観が変わるプライア(海岸)の話

ブラジルの話は帰国して10年以上がたち、ライブな話題を提供できないこともあって、ほとんど書かなかった。だが、トピックが全然ないわけではないので、なるべく軽くて、面白い話をしたい。

ブラジルに住んでいたのは、2002年から2006年までの4年間だ。主が住んでいたのは、首都ブラジリアだった。ブラジルと言えば、サンパウロ、リオデジャネイロ(リオ)が有名だが、ブラジリアは人工的に建設された首都で、当時建都45年くらいだった。そのため、人工的に設計された都市も、かなり老朽化が目立ち、近代的なのか、廃れているのか両方がミックスされた雰囲気があった。人口は、サンパウロ2,000万人、リオ500万人に対し、ブラジリアは周囲の衛星都市を合わせて当時200万人くらいだったように思う。他の都市には、立派な教会のある広場を中心としたセントロがあるが、ブラジリアにはこれといったセントロがなく、商業地域しかない。

ブラジリアの写真(WIKIPEDIAから)
ブラジリア(WIKIPEDIAから)

赴任当初の2002年5月に日韓共催でサッカーのワールドカップが開かれ、ブラジルが5度目の優勝した。ブラジル国内は大騒ぎとなり、セレソン(ナショナルチーム)が凱旋パレードをした記憶が少し残っている。このセレソンは、ブラジリアを含むブラジル国内の主要都市を何か所か飛行機で巡ったのだが、パレードの予定時間が大幅に遅れ、最後のリオだかサンパウロでは、明け方、夜が白々と明けるころ行進し、「(時間にルーズな)ブラジルらしいなあ!?」と思ったのが懐かしい。

下の写真の1枚目は、リオのコルコバードの丘の有名なキリスト像。2枚目は、イパネマ海岸かコパカバーナ海岸といった有名な海岸をビキニ姿で歩く女性たちだ。このビキニは、タンガ(ブラジルビキニ)というのだが、上半身、下半身とも最小限の三角形で体を隠している。女性は年齢を問わず、このタイプの水着を着ている。

このような美しい海岸は、リオだけかと思うかもしれないが、ブラジルのこのような真っ白い砂、真っ青な空の美しい海岸は、赤道のあたりから温帯に入るアルゼンチンの手前までの数千キロにわたっている。

女性の服の話をすると、体の線を隠すのはダサく、体の線をはっきり出すのが恰好いいとみんな思っている。したがって、日本で一般的に着られる、体のラインを隠すゆったりした服は好まれない。スカートは、よっぽどでないかぎり普段は履かない。フォーマルなドレスの時には思い切り着飾り、スカートを着てハリウッド女優みたいな姿になるが、普段はGパンが一般的だ。

親爺らしく日本の説教臭い話題へ。外国から日本へ帰国する時にいつも思うのだが、女子高生が短いスカートを履き、化粧をしていると売春婦に見える。アニメの影響らしいが、どうかと思う。外国では、特にブラジルでは、前述したように女性は老いも若きも、体の線がはっきり出る服を好むが、TシャツにGパンという地味な格好が普段の姿だ。日本女性は、衣服と化粧品に対する嗜好やこだわりが非常に強いと思う。しかし、広告が成功しており、ある種の洗脳状態、強迫観念にかられているのだと思う。日本女性の支出の大きな部分はこの二つだろうが、ブラジルでは全体で見れば所得の高くない人が多いので、服装や化粧にかける金額はわずかだろう。

photo by AllPosters.co.jp

photo by YOSHIOKA Noriaki _ 旅いつまでも・・

話を元に戻そう。ポルトガル語では海岸のことをプライアというのだが、このプライア抜きにブラジルを語れない。ブラジリアは内陸の首都のため、プライアがないことに住民は嘆く。だが、人造湖(ラゴ)があり、この水辺がプライアの雰囲気を少しだけ醸し出している。大西洋に面した本当の海岸線は、実に美しい。日本で有名な海岸は江之島だろうが、あんなに砂が黒くない。真っ白なのだ。空も、雲一つない真っ青な快晴のことがほとんどだ。気温もちょうどいい。日本人は赤道の近くは猛暑だと思っている節があるが、アマゾンの河口の州都ベレンであっても、ずっと日本より快適だ。ちょっと緯度が下がったバイア州の州都サルバドール(日本語にすると『救世主』になる)などでは、ブラジル全土でいえることだが、昔ながらのヨーロッパの風情のある建物が立ち並び、プライアで過ごす時間は何物にも代えがたい。

salvador
APPLEWORLDからサルバドールの街

ブラジル人は、日本人のように海で泳ぐというケチなことはしない。プライアではビーチバレーをしたり、家族や仲間とお喋りをしながら、浜に寝そべって体を焼くのだ。パラソルの影の下のリクライニングチェアで、ビールやココナツジュースを飲むこともできる。このリクライニングチェアとビーチパラソルはレンタルなのだが、当時、1回100円くらいの金額で借りることだ出来た。お兄ちゃんが、スコップで砂を掘り、パラソルを立て、リクライニングチェアを設置してくれる。ブラジルは格差の大きな国なので、リクライニングチェアで寝そべっていると、さまざまな商品を売りに来るお兄ちゃんたちが、目の前を左右に行きかう。売られているのは、サングラス、サンオイル、つまみ類、雑貨など何でもありだ。

そのリクライニングチェアに寝そべり、サングラスの奥から、タンガ(ビキニ)姿の女性を何をするともなく、ビールなどを飲みながら半日くらい眺めていると、日本の満員電車で培われた人生観が変わっていくのが実感できる。脳みその構造が、プライアへ行って半日くらいすると組替わる。ケセラセラ、なるようになる、あくせくしても始まらない! と人生観が変わる。

ちなみに、ブラジル人に限らず一般に外国人が海で泳がないのは、一般の公立学校にはプールがないことが多く、水泳を習っていないからだ。ちゃん、ちゃん。

おしまい

映画「ヴィニシウス」「オルガ」

(2022/8/25追記しました) Brasileiro365という名のブログなのに、ブラジルの話題がないのはどうかと思いブラジルの映画の話などを書いてみる。

「ヴィニシウス」

ブログの主は、2002年から2006年までブラジルの首都ブラジリアに住んでいた。「ヴィニシウス」は2005年に現地の映画館で見た。ポルトガル語が十分にできなかったので映画館ではあまりわからなかったが、2010年に日本でDVDが発売された。http://www.cinematoday.jp/movie/T0007338

「イパネマの娘」の作詞で有名なヴィニシウス・モライス(1913-1980)のドキュメンタリー映画。ヴィニシウスは、ボサノバの創始者、作詞家だけではなく、詩人、作家、作曲家、翻訳家、外交官、歌手、ジャーナリストと多彩でいずれもが一流だ。リオデジャネイロで恵まれた境遇に生まれ、詩人、外交官として活躍するが、次第に黒人の音楽に魅せられ、「一番黒人に近い白人」を名乗り、アフリカ音楽からボサノバを生む。その生き様は、詩、恋、酒と縦横無尽・自由奔放ながら常に時代を先取りした。

結婚生活では9回!結婚する。67歳で亡くなるのだが、60を過ぎて結婚をするのは自分の孫のような娘。その18歳の娘にはフィアンセがいた!常に真剣に恋をした男だ。9回の結婚・離婚を繰り返す。それも10代の娘と真剣な恋をする。そして、何年か連れ添ったら、やはり、娘か孫のような女と激しい恋に落ちる。無限のエネルギーで放蕩としか言えないような人生である。

映画の中で、確かイパネマの娘の作曲をしたトン・ジョビンたち男で酒盛りをしているときに「やっぱり、ナニはでかい方がいいよなあ!」とか大声で磊落に言うシーンが出てくる。やっぱり、大物だ。

 この映画「ヴィニシウス」で、案内役をブラジルの有名な女優カミラ・モルガドがやっている。なかなか落ち着いていて、いい感じだ。次は、このカミラ・モルガドの「オルガ」を紹介する。

「イパネマの娘」の作詞で有名なヴィニシウス・モライス

「オルガ」

カミラ・モルガドは、2004年に公開された映画「オルガ」のヒロインをしている。「オルガ」は、ドイツとユダヤの実在の女性で、ブラジルで共産党活動をし、軍事政権にとらえられドイツ・ナチスのガス室でなくなったという実話に基づく。ブラジルでも、共産党活動があったんですね。 

ブラジルの美しい風景をバックに同じ共産党員同志との幸せなロマンスで映画はスタートする。活動では、プロペラ飛行機でブラジルを移動するシーンが出てくるのだが、眼下の風景が実に美しい。

大衆の前で堂々と演説をしたりするのもつかの間、オルガと恋人は石造りのヨーロッパのようなリオ(だと思われる)の街を、ファシストで反共産主義の官憲から逃げ回る。しかし、二人は追い詰められていく。捕まったオルガは、頭の髪の毛を剃られ、妊娠してナチスが政権を握るドイツへと輸送船で送り返される。あまりに安っぽいテレビドラマの定石のようなお決まりの進行。だけど、悲しく切なく、ロマンチック。やはり、堂々としたカミラ・モルガドの魅力だ。

ブラジルでは、ノベラと言われるテレビドラマが18時、19時、20時と1時間単位で3本の放送される。ノベラは非常に国民に受け入れられていて、とても人気がある。どれもベタで臭い。だが、そこがいいのだ。グローボと言うブラジル一の放送局がやっており、「オルガ」もグローボの作品で、いかにもグローボという感じがする。

映画「ヴィニシウス」と「オルガ」のカミラ・モルガドhttp://www.interfilmes.com/filme_14874_Olga-(Olga).html

以下は、原作本の解説である。

ドイツ人とユダヤ人のオルガ・ベナリオは、20世紀で最も傑出した共産主義活動家の一人であった。組織作りの才能に恵まれ、美しく、意志の強いオルガは、ナチズムとファシズムという世界的な疫病に対抗するために、世界中を駆け巡り、教育し、軍団を活性化させた。19歳のとき、彼女は当時の恋人であった共産主義者の知識人、オットー・ブラウンを釈放するため、大胆な刑務所襲撃の首謀者となった。二人はモスクワに逃れ、国際的な共産主義運動の中で急速に地位を高めていった。26歳のとき、ブラジルの伝説的な共産主義ゲリラのリーダー、ルイス・カルロス・プレステスの護衛に抜擢された。彼は訓練のためにモスクワに連れて来られ、まもなく彼女の恋人となる。二人は偽名でブラジルに渡り、プレステはファシスト政権に反抗する革命を起こした。しかし、数ヵ月後には、二人は警察に捕まってしまった。ブラジルの刑務所で6カ月間、精力的に活動を続けた後、妊娠7カ月のオルガは、危険人物としてナチス・ドイツに強制送還されることになった。1942年2月、彼女はベルンブルクのガス室で死亡した。本書は、『シティ・オブ・ゴッド』の製作陣による新たな映画化に合わせて再版されたものである。(英語版解説のDeepL訳)

しかしながら、パプアニューギニアと比べてずいぶん違うと実感する。(涙;;)

ブラジル映画には他にもとても素晴らしい映画がいくつもあるので、また紹介したい。

おしまい