MMTを批判する人たちが見ようとしない点 その2 反論編 《貨幣理論と通貨発行益の違い》

(2022/7/30 長かったのでこのトピックを分割しました)

《自称経済評論家》の主のコメント

ここから《自称経済評論家》のコメントを述べてみたい。最初は、現在の主流派経済学である新古典派の教科書に載っている、信用創造と通貨発行益を見ていく。

まず、新古典派経済学者たちが間違ったのは、金本位制度から管理通貨制度へ、固定相場から変動相場へ移行したにもかかわらず、貨幣観を改めなかったことにある。

新古典派経済学で説明される信用創造(Money Creation=通貨発行)は、下のように説明される。つまり、銀行が、顧客から預かった預金を連鎖的に貸し出しを繰り返すことで、お金(預金通貨量)が増えていくしくみをいう。 これを管理通貨制度になっても変えなかった。

《まずは、新古典派の貨幣理論、乗数理論と通貨発行益とは》

1.《乗数効果による通貨発行》

以下が、新古典派の乗数理論による信用創造である。出典は、https://www.findai.com/yogow/w00321.html 「金融大学」から引用させてもらった。

(https://www.findai.com/yogow/w00321.html 「金融大学」から引用)

新古典派経済学の信用創造(通貨発行)は、預金者の預金に見合う法定準備金を日銀当座預金に市中銀行が預け、残りの額を連鎖的にいろんな市中銀行が貸出すことで、100円の預金が、1,000円の貸し出しを生むという。これを信用乗数という。この例は、法定準備率が10%の場合なので、現在の準備率は2%で考えると、もっと莫大な貸し出しを理論的には生める状態にある。

参考に付け加えると、今の日本の準備通貨制度は、黒田総裁の異次元の金融緩和により、以前に100兆円程度だった準備預金=日銀当座預金が、500兆円ほどに膨れ上がっており、準備預金制度は有名無実化している

2.《通貨発行益》

もう一つ、通貨発行益(シニョリッジ)という考え方を紹介する。新古典派経済学では、造幣局が発行するコイン(硬貨)と、日銀が保有する国債や貸付金が生む利子のみを、通貨発行益というのが一般的だ。下が、https://gentosha-go.com/articles/-/6487 佐々木 浩二さんの記事から引用したものだ。

https://gentosha-go.com/articles/-/6487 佐々木 浩二さんの記事から引用

この説明によると、日銀のバランスシートの「負債に計上される銀行券と日銀当座預金はほぼ無利子であり,資産に計上される日本国債や貸出金は有利子です。通貨を発行する日本銀行の利益は,無利子の負債の見合いに有利子の資産を持つことから生じます。」と書かれている。

 また、通貨発行益については、造幣局が発行するコインは、政府や日銀の「負債」ではなく、鋳造費用を差し引いた金額が「利益」になる。同様に、日銀が保有する国債は利子を生むので、利子が「発行益」だと説明する

《MMTが考える信用創造と通貨発行益について》

一番端的に違う点は、国債は一般的に「負債」と表現されるが、政府は、民間と機能が根本的に異なっており、「負債」ではなく「資本」的性質と考えられる。つまり、返済の義務がないのである。

実際問題として、償還期限がきた国債は、借換債を発行することで繰り延べている。いつまで経っても償還していないのである。これはどこの国も同様である。経済の主体は、《国》と《民間(企業と国民)》と《海外》といわれるが、とにかく《国》の果たす役目は特殊で、《民間(企業や国民)》とは全く違う。

政府が発行する国債は、「負債」に位置づけられる。しかし、「負債」を消すために、一つの方法として、国民からの徴税額を増やして償還する方法がある。ただし、そうして「負債」を減らすと、消費税を増税した場合のように、市中で流通する通貨量が減り、不況を招く。

国の借金、国債残高という「負債」を、国の通貨発行で返済すれば良いというような発言を聞くことがあるが、これはあり得ない。簿記の考え方では、貸方にある「負債」を通貨発行という「負債」で消すことは出来ない。負債を消すためには、資産を手にしないと負債を消去できない。

金本位制であれば、通貨はそれに見合う金との交換を保証しているので、金の保有量以上に通貨を発行できない。ところが、世の中の技術進歩で経済が成長し、自動車、ロケット、人工衛星など過去になかった財が登場し、従来の貨幣価値では足りなくなった。もし通貨を発行できないのであれば、その財の対価を払えない。そこで金本位制を離脱した。

為替レートも固定相場から、経済の実力に合った市場で決定される変動相場制へ移行した。

この二つの作用で、各国は自由に経済政策をとることができ、しかも、それらの政策が市場で評価され、《見えざる手》が働くという需給理論はここに限っては正しい。国が放漫経営をすると通貨安を招き、輸入物価が上がり国民は苦しむ。ただ長い目で見ると、経済的に弱い国の通貨は、為替レートも弱くなるが、それが貿易面での交易条件を有利にし、時間が経つと経済が成長するベクトルが働く。

ところが、新古典派派経学の貨幣論は相変わらず通貨自体に値打ちがあるという。

新古典派経済学の信用乗数論の貨幣観は、準備預金を一定確保していれば、預金者全員が銀行へ引き下ろしにいかないという経験則を説明のよりどころにしている。

しかしMMTは、中央銀行も市中銀行もどちらもが、貸し手側は、「貸付金」という資産と「預金」という負債を負い、借り手側は、「預金」という資産と「借入金」とういう負債が生じることで、信用創造(通貨発行)しているという。つまり、無から有を生む》のがMMTの通貨発行の考え方だ。MMTの信用創造では、会計学的には違うが、全額が通貨発行益と言えるかもしれない。

具体的な例を挙げる。マイホームのためにAさんが銀行ローン3000万円を借りるときのことを例に挙げて説明する。銀行がAさんにローンを実行するとき、銀行は「貸付金3,000万円」という資産を持つと同時に、「預金3,000万円」という負債が生じる。この「預金3,000万円」という負債は、Aさんに対してではなく、銀行が社会に対して3,000万円の負債を抱えたという意味だ。Aさんが、もしローンを返済しなければ、今度は銀行は3,000万円の負債を処理する必要があるからだ。

この時、銀行など貸付業務を行う主体にとって、「預金3,000万円」は負債になるので要注意である。一方、Aさんは、「預金3,000万円」という資産を手元に得て、同時に「借入金3,000万円」という負債を負う。つまり、Aさんは預金を手にしたかわりに、返済義務を負ったわけだ。 これがMMTの信用創造(通貨発行)である。これは、キーボードマネーとか万年筆マネーと言われるもので、誰か他人の預金を又貸ししているのではなく、キーボードを叩くだけで与信が行われる。すなわち、通貨が発行される。

日銀が行う信用創造(通貨発行)もまったく同様である。「預金」が「日銀当座預金」に代わるだけだ。 つまり、新古典派が考えるように、預金者の預金が連鎖的にぐるぐる回って貸付金が増えたりしない。

結局のところ、通貨自体は、バーチャルで抽象的な約束であり、実態は金銭の貸借関係、債権債務ががあるだけだ。市中銀行と国民の間の貸借は、倒産や破産の場合に返済されないリスクがあり、返済されないときは、市中銀行は「引当金」を償却したり、「損金」を計上して対応しなければならない。

しかし、日銀と市中銀行の関係は、日銀に倒産のリスクがない。そこが決定的に違う。日銀(と政府)が、極端な放漫経営(5000兆円の国債発行して需要を喚起するとか)をせず、程よく通貨を供給し、バランスよく財政支出し、バランスよく徴税と分配政策をとれば、日本国民は幸せな生活を送れる。

「悪貨は良貨を駆逐する」(19世紀にイギリスの貿易・為替・金融業者であるトーマス・グレシャムが提唱した、『グレシャムの法則』)という表現は、通貨自体に値打ちがあると考える分かりやすい商品貨幣論である。新古典派経済学はこのような貨幣観を持ち続けている。

ぼくたちは、昔教科書で、幕府は通貨が足りなくなった時に、改鋳で希少金属の含有量を減らしたと習ったが、あれも嘘だ。改鋳することで、たしかに通貨の供給量が増え、価値が下がり物価が上がったのかもしれないが、金本位制のように通貨自体に値打ちがあるから、希少金属の含有量を減らすインチキをしたと道徳的に非難されるべきとのニュアンスがある

つまり、希少金属の含有量は問題ではない。通貨自体に求められる条件は、擦り減らなくて偽造されないものであれば、貝殻であろうと何でもよい。幕府は、幕府が定めた《何とか通宝》《何両》を年貢として収めろ、納めないと《死罪》だと言えば、、農民も商人も《何両》かを手に入れて幕府へ払おうとする。それが、通貨に対する信認が生じる原因である。現在でも同じで、日本政府は日本円で納税することを求めており、それが《円》が信任される理由である。

ここまでは、通貨発行について述べてきたが、対をなす大きな問題が一つある。つまり、それは供給力の問題と円の海外への流出の問題である。その3へつづく。

おしまい

MMTを批判する人たちが見ようとしない点 その3 反論編 《供給力と日本円海外流出》

(2022/7/30 長かったので、反論の部分を2つに分けました。)

《供給力と日本円海外流出の問題》

田内学さん著 情報工学専攻だが、経済学専攻よりよほど核心をついている

不況が続く日本ではほとんど生産できていないように見える。例えば、100円均一ショップに行けば、ほとんどが中国製などで日本製はほぼない。衣料品もそうだ。スーパーでもユニクロ、GUでも、ゾゾタウンでも、売っているのは日本の会社でも、生産国は中国やバングラデシュ、ベトナム製などで日本製ではない。

もちろん一部で、自動車や工作機械などに国際競争力があって、日本国内で生産しているものがある。しかし、生産拠点が海外にあり、財務諸表上だけ連結決算により、日本企業の利益として計上されている場合には、そうした企業の利益の多くは、生産国の中国などで再投資され、地理的な日本にメリットがほぼないという状況もある。

MMTは、「変動通貨制で、自国通貨建てで国債を発行する場合、供給力を超えなければインフレにならず、なんの問題もない。むしろ、2%のインフレを起こすほどに国債発行して、財政支出をするとほどよく経済成長する。」と言っている。

つまり、日本が供給力や生産力を失ってしまうと、かりに消費税をなくして国民の所得を上げたり、給付金を配って需要を喚起しようとしても、買うものがなければインフレになる。もし、大阪万博の会場を日本のゼネコンが作れなくて、中国企業が建設を請け負えば、国債を発行して資金を調達しても、海外流出してしまうので日本国民には裨益しない。つまり、最初に戻るのだが、日本で売られている多くの財(=商品)は、中国製などの外国製であれば、円が流出する。

最近では、投資信託やREITなどの投資資金も、日本国内のファンドより、過去の利回り実績が海外のファンドの方が大きいので、かなり海外へ流出している。持ち主は日本人とはいえ、そのお金は海外で運用されることになり、少なくとも機会損失は生じている。

こうしたことで、MMTの理論は正しいのだが、供給力に制約があると、その範囲内でしか通貨供給を増やした財政支出はできない制限がある。今のように海外製品をどんどん輸入している状況は、日本の生産力をアップしないし、昔は日本で生産したものを生産しなくなっているので、行きづまる状況が来ようとしている。

つまり、どの国も成長している間は、どんどん通貨供給量を増やしても問題ない。むしろ、ある程度通貨供給量を増やし、マイルドなインフレになっている方が、所得(=需要)も生産(=供給)も伸び、国民は豊かになれる。これをうまくやったのが、何といっても中国であり、年率二桁の成長を続けてきた。そこそこ成長してきたのが、欧米などである。日本は、財政赤字を恐れ、国債発行して通貨供給量を増やさず、ほぼゼロ成長である。

あと1点、《有効需要》と《潜在需要》を混同している人がいる。「良いものを作れば売れる」、「すごく良いものを作れば高くても売れる」とかいう人がいる。しかし、財布にお金の入っていない人が「欲しい」と思うのは需要ではない。《潜在需要》でしか過ぎないので、どんだけよいもので買いたくても売れない。

例えば、日本人の6人に一人が貧困で、生理になってもナプキンを買えない女性が6人に一人いるとする。ナプキンは必需品である。しかし、貧困な女性は買いたいという気持ちを持っていても、財布にお金がなければ、《潜在需要》にしか過ぎない。つまり、この6人に一人の女性の貧困が解消されたときに初めて、必需品のナプキンが《有効需要》になり、購入される。つまり、現状のナプキンの販売は6分の1、需要が減っている状態で、貧困が解消されれば、その分販売が増える性質のものだ。このとき、ナプキンの製造会社に生産余力があれば、単純に販売額が増えるのだが、生産が限界であれば、ナプキンの販売価格は上昇する。

この点も、新古典派は供給重視なので、よいものを安く提供すれば需要を喚起するというような言い方をするが、所詮ない袖は振れないのである。そこを日本人は勘違いして、国民全員が良くて安いものを作ろうと強迫観念にかられ必死であるが、この作戦は間違っている。

《コロナと戦争による最近の高率の欧米のインフレ》

最近の欧米の高いインフレ率が良く報道される。アメリカでは10%近いインフレ率で、ヨーロッパも同じようなものだ。これに対して、日本では2%程度である。

このインフレの原因は、コロナに対する財政支出とウクライナ戦争によるエネルギー価格の上昇が主な原因である。だが、欧米と日本では財政支出の規模がまったく違う。

アメリカでは、コロナが始まってから400兆円とも言われる財政支出をしたとも言われ、失業した労働者に月4,000ドル(その時点のレートで44万円)を支給したという。このため、職に就いている者が職をやめて給付金を貰ったという。その結果、労働者不足が顕著になり、レストランで働く大学生の時給がチップを入れると50ドル(6,500円)、ウォルマートの大卒初任給が年収で20万ドル(2,600万円)、アマゾンの基本給の年収上限が35万ドル(4,000万円)に達したという。

ところが、日本の場合は、こうした政府の国民に対する真水と言われる一般会計からの財政支出は、安倍政権の時にまずまずやったものの、菅総理、岸田総理と代わるにつれ、ほとんど出していない。そのため、日本の場合は、エネルギーや穀物価格、円安の影響による2%ほどのインフレになっている。

そして、欧米や中国はコロナ前の水準の経済成長に戻っているのだが、日本だけがコロナ前の水準に戻っていない。ところが、日本のマスコミはこうした海外の賃金の上昇は一切報道せず、物価の上昇すなわち、インフレ率だけを取り上げ「海外は10%、日本は2%でよくやっている」報道し、賃金上昇については触れない。その結果、国民は「海外より日本はマシ。」と思っている。

ここで、思うのは欧米などは、コロナや戦争という緊急事態が生じたため財政規律を棚上げにして財政支出をしたということだ。つまり、MMTの政策理論を採用して、実施したその結果、高率のインフレ率をひき起こしたが、今のところ多くの国民の賃金は上昇した。「経済は失速せずにソフトランディングできるか、ハードランディングになるかという事態になっている」というような報道になっているが、これは違う。イエレンさんはそんな見方ではない。

つまり、サンダースやオカシオコルテスが主導するMMTによる社会実験は、やりすぎたかもしれないが、効果は確認された。ドルの信用もユーロ、ポンドの信用も失われていない。今後、やり方を上手に工夫し、勉強する余地は大いにある。

オカシオコルテス

ビビり虫の日本、あるいは、東大法学部出身者が実権を握る経済オンチで石頭の財務省に逆らえない国民は、何もせず沈没を続けている。

おしまい

MMTを批判する人たちが見ようとしない点 その1 批判派人物紹介

(2022/7/30に3つに分けるため一部修正しました)

ここにあげた人たち成田悠輔さん、ひろゆきさん、高橋洋一さんと中田敦彦さんは、YOUTUBEや、マスコミでの影響力の大きい人たちであり、YOUTUBEの画面を切り抜かさせてもらった。やり方としては、よろしくないかなと思うし、議論をすべて聞いてから判断して欲しいというのもあるだろうから、恐縮だが、議論を簡便にする方法としてお許しいただきたい。

補足したいのだが、ここにあげた4人の方々は、貨幣観をどう捉えるかという点を別にすれば、全員、高く評価させてもらっている。成田さんの政治に対する処方箋は基本的に、「年寄り退場しろ」というもので同感だし、ひろゆき氏は何のトピックでも是々非々で言いたいことを言いながら、どのトピックも的を得ている、高橋洋一氏は、アベノミクスが登場した時に主は、新古典派経済学の一派であるリフレ派の経済理論を勉強していて、高橋氏の本を何冊か読ませてもらった。政府と日銀の《統合政府》の概念を持ち込んだのは氏の功績だと思う。またオリラジ中田氏もいろいろなトピックをよく勉強されていて、よく消化されていて、いつも楽しく見させていただいている。

それだけに、ここに上げさていただいた4名の方はどなたも人気で、それだけに世論に与える影響が大きい。ただし、4名の方と違って、MMTの理論は間違っていないと主は考えている。そのため、3回に分けて、1回目は批判する人で有名人の言説紹介、2回目は新古典派とMMT派の貨幣観と通貨発行益の違い、3回目は供給力と円の海外流出の問題について書きたい。

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まずは、成田悠輔氏。この人は、東大経済学部、東大院経済研究科、MITでPh.D取得、現イェール大学アシスタント・プロフェッサー(助教)で、印象深いメガネとともに、落ち着いた語り口、気の利いた内容の喋りで人気が急激に沸騰した。

しかし、MMTを真っ向から否定する。「MMT論者はバカ」と言い切る。ただ、MMTの貨幣理論のどこが間違っているかという指摘はなく、普通に新古典派経済学を学び、普通に信用乗数で説明する貨幣論をお持ちなのだろうと思う。

心の底からの軽蔑を【成田悠輔】(2022/02/25)

次の動画のキャプションは、成田氏が「この20年以上にわたって、日本が経済成長できないのは何故か」と問われたときに「わからん」と答えたところである。経済学者と言われる人が、日本が経済成長できないことに対して、「わからん」というのはあまりに無責任に過ぎると思う。だが、世間の受け止め方は何故か「正直でよい」と高評価だ。

【成田悠輔】なぜ日本だけ経済成長できないの?・・・わからん(2022/03/01)

次はひろゆき氏。彼はMMT論者を《自称経済評論家》と言い、「日銀がお金をじゃんじゃん刷って国民に配れば、みんなが幸せになる」とMMT信奉者は言うと言う。しかし、MMT論者が言っているのは、日本は欧米に比べると、財政支出の額が少なく経済成長していない、国債の残高は気にすることはない、日本がいい例じゃないか、というのが趣旨で、あまりに雑駁な括り方である。

【ひろゆき】自称経済学者を全員まとめて論破します。MMT論者ってなぜか●●を出さないんですよね(2022/02/14)

次は高橋洋一氏である。キャプションのとおり、「MMT論者が日銀が5,000兆円配っても大丈夫というのを聞いたことがある。」という。そりゃあ、今の日本のGDPが550兆円しかないところに、5,000兆円配ったらハイパーインフレになるだろう。誰が言ったか知らないが、5,000兆円出してもOKと言った人が間違っている。こんなことを根拠にMMTが間違っているというのは、氏こそが間違っている。 

消費増税とコロナの落ち込みが原因で生じた日本のデフレギャップは、政府の発表で20兆円と言われるが、本当はもっと大きいとも言われる。 原油価格高騰などによるコストプッシュインフレなどを加味すると、50兆円以上財政支出しても、欧米並みのインフレ率にならないのではないか。5,000兆円とは常識外れであり、考えられないほど大きすぎる。

第17回 国債は無限に出せる?新経済理論MMTは実は○○○だった(2020/10/24)

次はに中田敦彦氏。中田氏も様々なことをよく勉強されている。だが、彼がMMTを批判するために用いた材料は、太平洋戦争前に高橋是清が国債を乱発し戦争遂行し、戦後ハイパーインフレが起こったとことを説明材料にしている。

しかし、日本の戦後のハイパーインフレは、ジンバブエやブラジルなどのハイパーインフレよりはるかに率が低いこと、また、敗戦で焼土になった日本の供給力はほとんど失われていたので、ハイパーインフレが起こっても当然の状態だった。 現在の日本は、当然ながら、敗戦後の日本ほどひどい状態ではない。ただ、需要不足でデフレが30年続いて、その原因は何なのかというのが問題点である。敗戦後の特殊な状況を説明の材料に使うこと自体が間違っている。

コメ欄荒らしたMMT(現代通貨理論)肯定派に、中田敦彦が猛反論!(2022/01/25)

その1 おしまい

漫画のタダ読みと AVのタダ見と ブロックチェーン

漫画にしろ、AVにしろ、デジタルなものはいくらコピーしても劣化しないし、オリジナルと区別がつかないというメリットとともに、誰の所有物かわからないという大きなデメリットがある。

これは、誰か1名が有料会員になって、コンテンツをダウンロードすると、それを別のサイトへアップすれば、広告収入を財源に新しいサイトを立ち上げるビジネスが出来たり、発信者が特定できなかったり、たとえ見つかって罰金が科されても罰金の額が少額なら、新たに会費を取って別のサイトを運営することすら得策になる可能になる。

このコピーかオリジナルか区別できないという問題は、ブロックチェーンという技術が解決するということを最後に述べる。

まず、漫画タダ読みの実情

最近、漫画のタダ見サイトが摘発されたというニュースが流れた。要約すると、海賊版サイト「漫画BANK」が、日本のマンガを無料で見れるようにしていて、講談社、集英社、小学館の被害額は2000億円以上になる。今回、中国の発信者を特定、サイトは閉鎖され、罰金60万円が課され、日本の関係者は「画期的なこと」「今後、賠償請求する。」というものだ。

https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/blog/bl/pkEldmVQ6R/bp/pqdob79X0P/

NHKのクローズアップ現代から

この著作権侵害事件は、以前にもあった。こちらは「漫画村」という日本人がサイトを運営していた事件で、懲役3年、罰金1千万円、追徴金約6200万円の判決を地裁が言い渡している。

https://www.asahi.com/articles/ASP5054N2P5ZTIPE00H.html

朝日新聞デジタルから

この二つの事件を取り上げたが、いまだにマンガの海賊版サイトはあり、それを紹介するサイトがいくらでもネット上にある。

次に、AVタダ見の実

こちらもとんでもないことが起こっている。日本のAVは、昔レンタルビデオ屋でテープやDVDを借りということが中心だったが、今はネットで会費を払ってみるという方法も一般化している。このとき、日本のAVは法律により性器が映っていてはダメなので、ぼかし(モザイク)が入っている。しかし、これも運営会社が海外にある場合は、ぼかしのないものが配信されている。このぼかしのないものを、日本で売るのは違法なのだが、個人で見る分には違法でない。

現在起こっていることは、マンガと同じ構図で、これらの有料のコンテンツが無料で見れる状態になっている。それも日本だけでなく、世界中で見れるようになっており、儲けているのは海外の海賊サイトである。

前述したように、日本にはぼかしのあるもの、海外の有料サイトが配信するぼかしのないものの両方のサイトが、10社以上は確実にあるのだが、それらが配信するコンテンツが、またたく間に、ほぼ同日のうちに海賊版サイトに流出してアップされている。

バブルの頃は女性が1本AVビデオに出演すれば、100万円ほどにもなったというが、今はすっかりデフレ化し、それよりはるかに安い金額の出演料で、パパ活でAV出演する場合は、もっと安かったりする(数万円)ようである。

そうして安い出演料で撮られたAVが、世界中でタダで見られるということを出演者が知っていれば、生きるのが優先するから、仕方ないかなと思う。しかし、大半がそのような実情を知らないのではないか。いや、今ではスマホで手軽に中高生あたりであれば何でも見ているだろうから、子供たちの方が実情をよく知っているのかもしれない。

大人たち、とくにスマホもろくに使いこなせない大人たちは、AVをダシにして日本人全員がカモにされていることを知るべきだ。インバウンドで多くの外国人が来るようになったが、こうした安い日本の風俗が背景にあり、リスペクトされる国ではなくなったことを知るべきだろう。むかし、高度成長の時代には、日本のサラリーマンが大挙して、東南アジアへ買春に出かけていた。この立場が、長引く低成長で逆転している。

マンガと違って、AVの場合は、日本の警察は著作権侵害の取り締まりに力を入れていないように見える。マンガの供給元は、基本的に大手の出版社であり、告訴する力がある。

ところが、AVの海外の違法サイトはすでに星の数ほどある。中国人やら欧米人が、サイトを運営しており儲けはそっちに行っている。 これらの被害を訴えるには、被害者が、被害を与えた者を特定して訴える必要がある「親告罪」になっていることがあり、これが対策のハードルを上げている。また、AV自体が日陰者の存在の面があり、なかなか撮影者も訴えるということをしないので、これらの現象は、表立って言われることは少ない。

前に、ストーカー小説を読んで驚いたことがあった。驚いたのは、内容よりも、どうやら警察やら司法関係者が、どうもペーパーベースで仕事をしているのではないかとという疑念だった。というのは、この小説では被害者がどこへ行っても最初からプライベートで言いたくない説明を始めからしないとならないのだった。要するに、これらの機関は、手書きが中心だった。今は多少改善しているのかもしれないが、そもそも、日本のデジタルに対する力が貧弱で、この方面の警察の捜査能力も国際水準といえないだろう。情報流出を恐れるあまり、県をまたいで、アナログな情報共有しかしていないような気がする。(これは余分でした。)

ブロックチェーンの話

ブロックチェーンという言葉は、ビットコインなどの仮想通貨の世界で語られることが多いが、インターネットの世界で暗号化され、所有権がしっかりしているため、改ざんされたりせず履歴がしっかり残るという特徴があるらしい。

「らしい」という表現で、弱気で恐縮だが、詳しく語るほど知らない。ただ、今はやりは、WEB3とかである。WEB1.0がインターネットの黎明期であり、WEB2.0が、アメリカの巨大企業であるGAFAMが、個人データ集めまくって儲けた時代という意味で、WEB3になると、データがGAFAMに集中することなく、我々個人ベースでも容易にプロジェクト遂行できる時代が来る「らしい」。

結局、ブロックチェーン技術によれば、誰が作ったAVファイルなのか所有権が明確になる。マンガも、どこの出版社に著作権があるのか、明確になる。そうなると、違法海賊版サイトの運営は難しくなるだろう。

おなじようにSNSなどで、誹謗中傷しても誰の責任なのかすぐにわかる時代がくるかも知れない。

最後は知らないことだらけになってしまった。ひらにお詫び申し上げる。m(__)m

おしまい

「テレビは核兵器に勝る武器、テレビは国民を洗脳する装置」

こちらは、よく見ているお二人。厚労省医系技官をされていた木村盛代さんと風俗関係のルポを数多く出版されていている中村敦彦さんだ。木村さんは、同じく医師の和田秀樹さんやら、京都大学の藤井聡教授らと、コロナ対策の批判やら、経済政策の批判をする動画も数多くあげられている。 中村敦彦さんは、風俗関係だけではなく、介護施設の経営もされたので、介護労働者の劣悪な労働条件などの動画も多数アップされている。

爺臭い説教をするつもりはないのだが、下の動画は、貧困により、若い女性が今や「パパ活」、風俗系に流れている現実はよく知られているだろう。

ここで、主が言いたいのは、貧困な女子が風俗で身を立てるほど日本が貧しくなったということだけではない。

同じ中村さんは、八王子にあまりに多く大学が集まり、その中の親から仕送りのない貧困女子大生が中央線沿線のピンサロで働いていて、待機所がサークルの部室のようになっているという動画もある。ここで中村さんがおっしゃっていたのは、ピンサロというのは、デリヘル、ソープより劣悪な労働環境なのだが、そこで働くピンサロ嬢たちに情報交換を禁止して、他へ移らないように統制する。4年間ピンサロ嬢する子が出てくる。

これはある種の洗脳だなと思う。オウム真理症や統一教会などいろいろあるが、他の世界をうまく見せないようにして、従順に働かせるという話だ。

ところが、我々自身々は情報統制などされていないと思っているが、そうではない。同じことが我々にも起こっている。つまり、テレビで報道される事件は、検察とテレビが決めて報道している。テレビ、マスコミは視聴率、売上とスポンサーしか気にしていない。視聴率を上げるためには、不安を煽ることだ。スポンサーに都合の悪いことは報道しない。ガーシーは、楽天の三木谷社長をぼろくそに言ったが、氏はアメリカのグーグル社まで行って、YOUTUBEのアカウントをバンさせようとしたと言われる。(実際バンされた。)そうしたことはスルーする。

テレビは、99%の場合、取材して事件を報道しているわけではない。検察なり警察が発表する事件を報道している。NHKは、職員の高給(平均賃金1800万円)、余りに多くの電波(地上波2コ、BS2コ、ラジオ中波2コ、FM1コ。もっとあるかも。)を使っているので、高市政調会長から「NHK、見ていなさい。使っている電波の種類をずっと減らします。」といわれ、NHK党の立花党首には「スクランブル放送しろ」といわれて、スタンスが思いっきり時の政権よりである。たまに、独自に事件を手に入れ、モリカケなどの事件が報道されるが、忖度だらけで肝心なところへマスコミは踏み込まない。

最近NHK党の立花孝志党首が「テレビは核兵器に勝る武器です。テレビは国民を洗脳する装置です。」とテレビ朝日の報道ステーションで発言し、つまみ出されることがあった。まさにこれだと思う。

おしまい

国債発行で国民は豊かになる 信用創造の仕組み

今回は、国債発行で国民が豊かになる、子孫に借金を残すものではないということを説明する。他人のふんどしで相撲を取る的で恐縮だが、分かりやすいYOUTUBEを3点紹介させてもらうことにした。

1番最初の動画は、どんぶり勘定事務所の神田知宜(かんだとものり)さんの動画である。神田さんは、会計事務所を経営されている公認会計士である。MMTの説明は、簿記を使って、取引を会計学的に説明するところに特徴がある。この動画は、信用創造(通貨発行)、国債発行、財政支出までを簿記を使って検証しながら伝えてくれる。その根拠は、日銀の資料を使っており、日銀も認めているものだ。こちらは、簿記さえ分かっていれば、通貨発行とはこういう風にされるのかとか、国債の発行で、誰も損せずにみんなが豊かになる仕組みはこうだったんだと分かる。

主流派経済学者の皆さんに、ここを一番理解して欲しいのだが、彼らは「簿記」自体を軽んじているので、一向に理解しようとしない。そのくせ、間違ったことを堂々と主張するので、30年かけて日本は沈没しようとしている。

その下の2番目は、簿記はわからんという人のために上げた動画である。作られたのは、南青山にてFP会社経営をされているファイナンシャルプランナーのまさとさんである。こちらもおっしゃっている内容は、どんぶり勘定事務所の神田知宜と同じなのだが、簿記を使わずざっくり説明されているのと、逆に日本の経済の現状を広い視点で説明されているので、簿記の知識のない方にはこちらをお勧めする。

どちらも経済学を学んだというより、会計学、特に簿記の勉強をされてきた方々である。これは、いかに簿記という学問がお金の取引の説明に有効か、逆に一、般に言われる経済学者という人たちが、机上の空論を振りかざしとんでもない説明をする原因になっている。

(例えば、簿記を知らない人は、簿記で成り立たない表眼をしてしまいがちだ。例えば、「銀行が国民の預金で国債を買う」という発言は「借金を100万円やるから、その100万円の車を売ってくれ」というのと同じ内容だとおっしゃっている別の動画がある。タネあかしをすると、銀行にある預金は《負債》なので《負債》で、国債という《資産》を買うという意味になり、どちらも、《借方》に上がるので、あり得ない。成立しない。)

さて、最後の3番目の動画は、自民党の中で、消費税の廃止やコロナ禍で企業の粗利補償、個人補償の旗を振っておられる参議院議員の西田昌司さんである。このひとも、めっちゃいいことをおっしゃっているのだが、オールドメディアや財務省などの壁は非常に高く、ぜんぜん受け入れてもらえない。この動画の最後の部分では、敗戦後の日本にGHQが財政法の目的に、《健全経営》、《赤字国債の発行の禁止》を盛り込み、それが日本の成長を阻んできたということが説明される。財政の健全というと「聞こえがいい」が、実はこれが時限爆弾だったという話である

自民党参議院議員の西田昌司氏は、この信用創造の仕組みを踏まえ、財政支出の旗を振っておられる方である。氏は、現在、自民党の『財政政策検討本部本部長』をして、積極財政を主張するのだが、最高顧問だった安倍元首相が亡くなり、高市早苗政調会長は腰砕け(維新の大石議員に、消費税が法人税の穴埋めに使われていると指摘され、ほぼ逆ギレし、消費税法で消費税の使途は法律で定められていると強弁し、炎上した。)で、四面楚歌の状態で、いつ葬り去られてもおかしくない状態だ。

現に、もう一人の財政積極論者である自民党の前衆議院議員の安藤裕氏がおられたのだが、こちらも衆議院選挙前に週刊誌に不倫疑惑が出て、立候補を断念するという事件があった。

ただ、西田氏の言われていることは、正しい!!だが、彼の意見は広がらない。誰か、助けてくれー!!

おしまい

通貨システムに関する考え方の違い 主流派経済学者 vs リフレ派経済学者 vs MMT派経済学者

 下に小黒一正さんの《利上げが日銀財務に与える影響 異次元緩和後に備えより踏み込んだ検討を》をという記事を張り付けさせていただいた。この記事を題材に、主流派の経済学者が考えている日銀や銀行による通貨システムについて、考えてみたい。

この小黒さんなのだが、学部こそ理学部出身のようだが大蔵省で勤務された後、経済学者へと転身された主流派経済学を信奉する学者だと思われる。

この方が書かれた論考(一番下に掲げた。)で、「日銀当座預金に、0.1%の付利をしている、日銀当座預金は庶民から集めたお金だ」という記述が出てくる。ここのところが、主流派経済学者が間違っているところである。 つまり、日銀当座預金というのは、日銀、政府と市中銀行などのための口座であり、基本的に庶民のお金はここには入っていない。

次の《日本銀行当座預金とは何ですか?》は、日銀のHPに書かれた日銀当座預金の説明である。その説明では次のようになっている。

1番目は、金融機関、他の金融機関、日銀と国の間の決済手段と書かれている。これは、A銀行からB銀行へ送金された際、この日銀の中の当座預金をB銀行で増やし、A銀行の残高を減らして決済しているという意味である。つまり、金融機関同士の決済であり、国民に関係ない。

2番目は、金融機関の現金通貨の支払い準備と書かれている。これは、金融機関が現金紙幣(1万円札)が必要になり、日銀に用立ててもらうためのものである。金融機関が紙幣を必要な時に、日銀へ渡すためにのお金である。

3番目は、準備預金制度の対象となっている金融機関の準備預金と書かれている。この意味は、金融機関が預金者から預金を集めた際、その額の1%程度(2022年4月の率は、0.8%)を準備預金として、日銀当座預金に積む義務がある。この準備金は、黒田日銀が異次元の量的緩和を行う前までは、ずっと少なく100兆円以下で推移してきたのだが、日銀が国債を大量に買うので、これが金融機関の当座預金の残高を過去にないほど増やした。このため、準備制度の意味が有名無実化したと言われる。(下の《マネーと名目GDPの推移》表の黒破線参照。)

つまり、日銀当座預金は、庶民のお金が出入りするところではない。

おそらく、小黒さんはこの0.8%のことを預金者からのお金だと、言っているのではなく、銀行預金の原資自体が国民からで、当座預金もそうだと考えているように思える。 もしそうであれば、銀行制度や貨幣制度の理解がMMTの考えと違っているという話である。

日銀のHPから

また、この論では、「563兆円もの日銀当座預金が存在している。この日銀当座預金は民間銀行などがお互いの決済を行うために日銀に預けている口座で、その一部に「付利」と呼ばれる金利を付け、一定の利子を金融機関に支払っている。いま市場金利は概ねゼロのため、この付利は0.1%という低い金利だが、市場金利が上昇してくれば、日銀もそれ相応の付利をつけないといけない状況に追い込まれるシナリオもある。」と書かれているが、これもおかしい。

そもそも、この日銀当座預金の0.1%の付利は、金融機関へのゼロ金利に対する救済策として日銀が始めたことで、当座預金は本来が利子をつけない口座である。現状ゼロ金利のため、金融機関を経営支援するために一部に利子をつけているが、金利が上がってくれば、もとのように利子をつけるのを止める性質の口座である。

黒の破線が日銀の通貨供給、マネタリーベース

付利のことについては、昨日(7月21日)に配信された次の動画でトピックになっている。かなり長いのだが、元日銀の審議委員をされていた原田泰氏(リフレ派の経済学者)、ひろゆき氏が、本音で語っているのでけっこう面白い。

この動画の中身を要約すると、「付利は止めればよかった。」という原田氏の思いのほかに、日銀はこのアベノミクス以来やれることはすべてやってきたが、それ以前の時代に比べるとほんのわずかしか経済が改善しなかった。ただ、この状態で、金融政策を元に戻すと、元のもっと悪い不況へ戻ってしまうだろう。ひろゆき氏が挑発的な言い方をするので、原田氏が本音を言い始めるという感じで、結構盛り上がる。

これまでの失敗の原因は、原田氏は消費増税だと考えている。日銀にできることはもうない。後は、財政の出番だということになる。さらに、話は欧米のインフレ率が10%に近いところまで行っているという話になり、欧米では金融緩和も財政出動も日本以上にやったからで、効果はあった、やりすぎたという分析である。

長いし、原田氏が最初のうちはモゴモゴ分かりにくい表現をされ「じれったい感」があったが、ひろゆき氏のいうことももっともで、最後はベーシックインカムの話になる。これを聞いていると、つくづく日本経済もいよいよ終わりを実感する。誰か経助けてくれーー-!!

次回、何とか、MMT貨幣論のスタートである国債による通貨発行のところを説明したい。

おしまい

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以下は、引用した小黒さんの論考です。

《利上げが日銀財務に与える影響 異次元緩和後に備えより踏み込んだ検討を 小黒 一正》

月刊金融ジャーナル(2022年6月号)から

https://cigs.canon/article/20220624_6806.html ← こちら記事へのリンクです。

  • 「この日銀当座預金は民間銀行などがお互いの決済を行うために日銀に預けている口座で、その一部に「付利」と呼ばれる金利を付け、一定の利子を金融機関に支払っている。いま市場金利は概ねゼロのため、この付利は0.1%という低い金利だが、市場金利が上昇してくれば、日銀もそれ相応の付利をつけないといけない状況に追い込まれるシナリオもある。
  • 「仮にそれ相応の付利をつけない場合、何が起こるのか。そもそも、民間銀行などが日銀に預ける当座預金の原資は、我々が民間銀行に預けている預金であり、日銀が市場金利との見合いで付利を引き上げない場合、理論的に我々の預金金利の一部がカットされることを意味する。」

救いがたい日本 こんな日本に生まれて情けない その5 財務省に勝てるわけがない財政拡大派 財務省のアリバイの財政法と財務省設置法

財務省が緊縮財政をつづけるのには、法律の裏付けがあるからだ。つまり、財務省設置法には、「健全な財政の確保を図る」と書かれているし、財政法には、「公共事業を国債で賄う建設国債は良いが、一般財源を補填する赤字国債はダメだ。」「国債は日銀が引き受けてはならない。」と書かれている。

バブルがはじけた1990年代以降、日本は30年にわたって不況がつづき、いよいよ崖っぷちまで来た。

この原因には、プラザ合意による円高で輸出競争力を失ったこと、その後のデフレで企業が投資をせずにGDPが成長しなくなった。この30年間で、GDPが成長していない国は日本だけなのだが、その原因は何より、政府が財政再建を優先させ、「国民の借金は一人当たり1000万円になった。」と不安をあおり続け、あらゆる予算を削り(増やさないことを)続けたことにある。

そのせいで、企業や自治体は、正社員を減らして、コストの安い非正規職員に置きかえ、科学技術に予算をつけないので、技術革新をすることができず、大学院を出た研究者が生活できない。道路の白線は消えたままだし、公立学校の校舎は、建設以来何十年も経ってボロボロである。親からの仕送りの少ない地方から上京する女子大生は、風俗やパパ活せざるを得ない。男子学生は犯罪に走る。結婚した主婦も風俗で夫との家計を支え、未婚女性も風俗で生計を立てる。風俗で稼げない、犯罪もできない男が、結婚できずホームレスになっていると言われる。

コロナの前は、インバウントという名で、外国人が日本へ何千万人も押し寄せてきたが、彼らのうちの何割かは、日本女性を買いに来ていた。日本の高度成長期に、日本男性がタイや韓国で女性を買っていた逆の現象が今、日本で起こっている。ビックマック指数というのがあるのだが、ドル換算したビックマックが世界中の先進国の中で一番日本が安い。途上国を入れても、日本はかなり下の方だ。

一方で、日本の医療費や介護保険など高齢者に対する必要経費は増え続けるので、若者や働き盛りの人たちへの予算はまったく増えることがない。

なぜ、こうした政策を財務省は続けるのかというのは、最初に書いたとおりだ。彼らは、忠実に法律を守ろうとしている。

最初の二つの法律があるかぎり、財務省は緊縮財政を変えない。長引く不況の原因が、政府の緊縮財政にあると主張する財政拡大派が、いくら財政拡大を叫んでも、財務省にとっては、「蛙の面に小便!」である。いくら非難されても、法律を守っていましたと云えば済むからだ。

では、この二つの法律がどうして出来たのか。

これは、日本が太平洋戦争に敗戦した時にやってきたGHQが、日本が太平洋戦争の時に戦時公債を大量に発行して戦費調達したことが再度起こらないか懸念し、再び戦争をしないように足枷をはめたと一般的にいわれる。これは、憲法も同様である。

「戦争しないように足枷を嵌めた」と聞いて、「そりゃあいい!」と思った人は、お目出たい。経済に足枷を嵌めると、平時でも経済は委縮する。それが30年間の日本で起こったことである。

つまり、どこの国でも緊急時には、国債を大量に発行している。収支均衡など考えないということだ。(これを賢く実践したと言われるのが、中国である。中国は政府がじゃぶじゃぶ資金を供給し、毎年二桁の経済成長してきた。)

日本は主権国家なのだから、法律を改正すれば良いのだが、アメリは民主主義を持ってきたありがたい存在だと主張する自民党の守旧派、リベラルと言われれながら昔の考えを脱却出来ない左派勢力(立憲民主がよい例だ)、マスコミ、経済界の陣営も、国債発行は借金で悪だと考えている勢力がも強く、いつまでも改正しようとしない。

念のために、誤解のない様に書くと、国債発行は国民の借金ではない。国の「負債」であることは間違いないが、「資本金」のような性質のものであり、政府が支出することで、国民の側に「資産」を増やす。国債の償還は、今までも借換債を発行してきたし、これからもそうするだけだ。どこの国でもやっている。

このGHQの制定した法律は、時限爆弾だという人もいる。日本が経済復興し、アメリカ経済を脅かしたとしても、ある時、この法律の縛りが発動し、日本経済を徐々にシュリンクさせ、そのとおりになったという。

20世紀、世界は大きな飛躍を遂げたのだが、その契機は戦争だった。第1次世界大戦、第2次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争など、どの戦争でも、戦費調達のために、均衡財政の看板の看板を下ろし、金本位制を止め、国債を刷りまくって戦費を調達した。これは、景気拡大の良い処方箋だった。

結論としては、今はコロナという戦争だった。早急に、二つの法律を書き換えることだ。

以下は、実際ある、財政法と財務省設置法の条文である。

財政法 第四条 国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行又は借入金をなすことができる 前項但書の規定により公債を発行し又は借入金をなす場合においては、その償還の計画を国会に提出しなければならない。 第一項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければならない。

第五条 すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。

財務省設置法(任務)

第三条 財務省は、健全な財政の確保、適正かつ公平な課税の実現、税関業務の適正な運営、国庫の適正な管理、通貨に対する信頼の維持及び外国為替の安定の確保を図ることを任務とする。 前項に定めるもののほか、財務省は、同項の任務に関連する特定の内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けることを任務とする。  財務省は、前項の任務を遂行するに当たり、内閣官房を助けるものとする。

おしまい

救いがたい日本 日本人に生まれて情けない その4「個人情報保護法」 同意さえ取れれば何でもOK マスコミの死

つぎに、「個人情報保護法」であるが、正式名称は「個人情報の保護に関する法律」で、2005年4月に施行され、コンピュータを使ったデータ利用の推進と保護の狭間で、国際動向に伴って何度も改正され、条文も長くなっている。

個人情報保護法のリンク (← 実際の条文が開きます。)

個人情報保護法で規定される個人情報は、幅広く「氏名」「住所」、「生年月日」などに留まらない広い概念である。例えば、ニュースで流される「個人の顔」なども含まれる。テレビの報道のインタビューされている人は、顔を放送する承諾を得ているものの、後ろの人の顔がボカされていたりするのは、基本、この法律があるからだ。また、「音声」や「動作」、「カード番号」、「口座番号」、「位置情報」、「購買情報」、「政治信条」、「病歴」、「犯罪歴」なども個人情報に含まれる。このように広範囲に及ぶため、国は、個人情報保護委員会を設け、規則やガイドラインなどを細かく決めている。

また、個人情報保護の活動主体は地方公共団体で、国は、基本方針を定め、指針の策定等の措置を講ずるとされている。これは、《コロナ特措法》と同じような分担の仕方である。

この法律を見ていくと、国や地方公共団体、特殊法人だけでなく、民間企業も事業遂行で収集した個人情報を、業務以外の目的で出してはならない、出したら罰則ということがこの法律の骨子である。また、この情報を収集する事業者は、第15条第1項に基づきプライバシーポリシー(目的・方針)を作らないとならないとされる。

逆にこの法律は、本人の同意なしに個人情報の収集を許さないかわりに、同意があれば何でもOKと読める。(オプトアウトというのだが、一部、同意なしでも第3者に提供できるというみなし条項もある。)これに反し、個人情報を漏洩した者には、2年以内の懲役または百万円以下の罰金、代表者の場合は1億円以下の罰金が適用される。

この法律の施行で、一番悪影響を受けるのはマスコミだろう。

《映像・画像の利用》というところをクリックしてください

一応、マスコミなど報道機関は、著述、学術研究、宗教団体、政治団体とともにこの法律の適用除外とされているのだが、これらの者は、個人情報を発信しても許されるという意味であり、ニュースソース(リークする側)には、当然、個人情報の保護義務がある。

リークされた情報を元に、報道機関が記事を書けば、リーク元が個人情報保護法の法的責任を負わなければならない。法律以前は、そのような罰則はなかった。社会正義があるといえば、リーク元も許されたはずだが、今やそうはいかない。

個人情報のリークを受けることが、法に違反していると承知しながら、マスコミが記事を書けばほう助罪や教唆罪である。もちろん、マスコミは、ニュースソースを秘匿するのが最高の至上命題なので、口を割らないだろう。しかし、バラす方にとって、バレたら違法という点は大きい。

(個人的なことを言って恐縮だが) 主の隣戸にとある高齢者が一人暮らししており、ある日ボヤを出して消防車がやってきた。それで、最寄りの消防署に火事の模様を問い合わせたところ、「個人情報だから教えられない。」という一点張りで、なんの情報も得られなかった。とほほ。

消防署に問い合わせたが、答えてくれない

一方で、GAFAMという世界的なインターネット企業は、個人情報を集めまくり、それを利用して莫大な利益を上げてきた。 彼らは、顧客がどのような画面を見ているか熟知して、広告を表示するだけでなく、さまざまにデータを活用して儲けている。 もちろん、個人を特定していないという建前なのだが、GAFAMは、どこの誰だか詳細に知っており、個人のコンピューターの内部までアクセスできるし、われわれの趣味嗜好を本人より知っているのかもしれない。

はるか昔から、海外の巨大企業が個人情報を集めまくって儲けてきたのだが、それに伴う弊害の対策は、すなわち《外国にある第三者への提供の制限》の新設は、わずか、2017年の施行である。

結論

マスコミから取材されたときに、個人情報をもっている者(官と民を問わず)は、「個人情報だから出せない」と言える根拠を与えられた。マスコミは情報をリークしてくれる人物をどこからか探すしかない。

そんなこんなで、結局のところ、この法律は、国民には個人情報を守るといいながら、目障りなマスコミを政治家が黙らせ、日本の企業の活力を削ぎ、GAFAMが相変わらずその隙をついている。

日本の企業が活力を削がれたと書いたが、次の例が頭に浮かんだからだ。スマホの通信アプリで有名なLINEの個人データが、中国の委託先からアクセス可能な状態にあることが判明して問題視され、社長が謝罪に追い込まれた。委託した中国企業にパスワードやIDを与えて業務をさせていながら、利用者にその説明が不十分で、情報漏洩につながりかねないという問題意識である。

これは最終的に違法ではないとされたが、中国企業に業務委託するな、情報保護に熱心なEUならいいというのは政治的な問題であり、民間企業が経済合理性を追求するのは自然な成り行きだ。ましてや、行政がLINEをさまざまに利用しているが、そもそも、LINEはプライベートチャットのアプリである。行政側が、セキュリティに守られたアプリを自前で作れという話である。

おしまい

 

 

 

 

 

救いがたい日本 日本人に生まれて情けない その3「情報公開法」で骨抜きの法の趣旨と官僚のネーミング

日本のマスコミは、昔力を発揮していたが、今ではすっかり力量を失ったと思っている。この理由は、「情報公開法」と「個人情報保護法」のせいが大きいと思っている。

次の写真は、テレビ朝日が、森友事件で大阪航空局へ情報公開請求した結果、出された黒塗りの文書である。みなさん、こういう風に、真っ黒になった文書見られたことがあるでしょう。こんなに黒塗りの文書を出すことが許されること自体、おかしいと思う人は多いはずだ。

これに限らず、森友事件で自殺された赤木さんの奥さんへも財務省は、黒塗りだらけだったし、スリランカ人女性が入管で死亡した書類の公開を求めたときも、やはり真っ黒に塗りつぶされた文書ばかりが出てきて、誰もの不信感はますます募ったはずだ。

森友事件の公開文書
こちらスリランカ人ウィシュマさんの公開文書

そこで、「情報公開法」と「個人情報保護法」とは、一体何なのか、主の独断と偏見が大いに交じるが、思うところを書いてみたい。

まず、今回は「情報公開法」である。

正式名称は、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」で、2001年(平成13年)4月1日に施行され、特殊法人が独立行政法人になったときや、関係法令の改正などに伴って、何度か改正されている。

実際の条文を見てみようと思われる方は、次のリンクをクリックしてください。

情報公開法のリン

この法律を見ると、(目的)第1条には、「行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。」と一見美しいことが書かれている。 ただし、ここでは、国民への説明責任を果たすだけでなく、行政の推進に資するとも書かれており、無条件で説明責任を果たすものではないとも読める。

「行政機関」(=省庁などに加え諮問機関や審議会などが入る)の定義を書いた第1条の次には、(行政文書の開示義務)第5条が置かれて、何を開示して、何を開示しないか規定されている。これが、26条しかない、この短い法律の肝である。

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具体的に開示しない 第5条「不開示情報」 を列挙していく。

  • 1.行政機関の情報について
  • イ.法律、慣行で公になっている、または公になる予定以外の個人に関する情報不開示
  • ロ.生命、健康、生活や財産を保護するために、公にすること必要と認められる以外の情報は不開示
  • ハ.情報のうち、当該公務員の職と職務遂行の内容にかかる部分以外不開示
  • 「非識別加工情報」*であっても、他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものは不開示 

*注:非識別加工情報とは、行政機関等が保有する個人情報について、特定の個人を識別することができな いように個人情報を加工し、当該個人情報を復元できないようにした情報をいう。ここでは、情報を分解して個人を特定できないものであっても、他の情報と照らし合わせることで、個人を特定できるものは、公開不可だと言っている。

  • 2.法人(=民間など)その他の団体の情報について
  • イ.法人、個人の権利など正当な利益を害する恐れがあるものは、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除き不開示
  • ロ.行政機関の要請を受けて任意に提供されたもの、通例公にしないもの、合理的と認められるものは、健康、生活又は財産を保護するため、公にすること必要であると認められる情報を除き不開示
  • .外国、国際機関との信頼関係が害されるおそれ、交渉上不利益があると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があるときは、不開示
  • 4.犯罪、捜査その他公共の安全と秩序の維持に行政機関の長が認めることにつき相当の理由があるときは、不開示
  • 5.国、独立行政法人、地方公共団体等の情報で、公にすると、国民の間に混乱を生じさせる、不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるものは、不開示
  • ・6.国、独立行政法人、地方公共団体等の情報で、公にすることにより、事業の遂行に支障を及ぼすおそれがあるもので、次に掲げるもの不開示
  • ・イ.監督、検査、取締り、試験、租税賦課、徴収に係る事務の遂行に支障があるおそれ
  • ・ロ.契約、交渉、訴訟の事務に関し、行政機関の財産上の利益、地位を害するおそれ
  • ・ハ.調査研究の事務の遂行を害するおそれ
  • ・ニ.人事管理の事務の遂行を害するおそれ
  • ・ホ.行政機関の事業に関し、利益を害するおそれ

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なんだこれは!! なにも開示しないのと同じだ!!

開示するも、しないも決めるのは、お役人だ。よくこんなのを法律にしたものだ! どこが 情報公開法」 だ!!! これじゃ黒塗りの文書しか出てこないはずだ!

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(結論)

マスコミは、この法律の制定の当初、結構情報公開請求をしていたが、成果が上がらないので最近ではあまりしていないように思える。やっても、埒が明かないからだ。

結局のところ、情報公開法により、行政機関、独立行政法人等、地方公共団体は、その長が、自分の裁量で公開する範囲を決められる、という根拠を持った。

そのため、マスコミはポチと蔑まれながらも、手もみしながらご官公署のご役人のご機嫌をうかがい、床に落ちている情報を拾うしかなくなった。

もちろん被害者は、マスコミだけではない。国民が被害者だ。森友事件で自殺した赤木さんの奥さんが典型だ。被告の国は認諾という手法を使い、民事裁判で、賠償請求額の1億円全額を認めて、裁判を終わらせた。情報公開に応じないということ、認諾で真実を明かさない姿勢、どちらも一体誰を庇っているんだ?

あと、おわかりだと思うが、「情報公開法」というネーミングが絶妙で、国民は情報公開するんだとと気楽に思っているが、実際のところは、説明したとおり、情報公開しない条件が羅列された法律であり、情報公開とは真逆の代物だ。

次回は、「個人情報保護法」を取り上げようと思う。

おしまい