(リライト)日本政府の借金は1200兆円。なぜお金を刷って返済しないのか?また、60年国債償還ルールは? その1

——- 2024.11.21 一部書き直しました

これは、いかに世間がひろく誤解しているかという例だ。たまたま、見つけたものだが、立命館大学経済学部が作成したものだが、名のとおった大学の経済学者と言われる立派な人たちの、見事な間違いに驚かされる。

http://www.ritsumei.ac.jp/ec/why/why02.html/

結論のところは書かれていないようだが、書きぶりから、設問自体矛盾していておかしい。負債を負債で返せないからだ。お金を刷ったら、また負債が増えます。たとえ国債が借金だとしても、借金は借金で返せません! 経済学者を名乗る人は、まず簿記を勉強する必要があります。(言っときますが、政府の「負債」が1,200兆円であることは間違いないものの、国民の借金ではありません。国債の残高はどの国も増えていくものです。あたかも、国民のお金を集めて返さないといけないと誘導する意図を感じる設問ですが、政府の「負債」と、民間が持つ「負債」と意味が違うことを理解しなければなりません。)

《結論》

タイトルに対する結論を先に言うと、国債発行は、例え赤字国債の自転車操業をしていても返済する必要はないし、どこの国もやっていない。日本でも、国債の償還期限が来ると借換債を発行して償還を先延ばししている。「永久債」にしようと言われるのは、このためである。ところが、財務省は残高を実際に減らそうとするために、「国債の発行は子孫につけを残す。」というデマを流し、マスコミがこれに追随するので、国債発行が良くないと多くの国民が信じている。

国債発行は、、経済成長するために必要な、政府が供給すべき通貨供給であり、どこの国でも残高が積みあがっていくものだ。日本政府がこれをしないから、日本はパイが増えるような経済の成長ができない。給料も上がらないし、技術革新もできないので、ずっとパイの奪い合いをしている。

なぜこんな事態になったのか。それは、主流派の経済学者が、金本位制を止め、管理通貨制度に貨幣制度が変わった時に、古い貨幣観を改めなかったからだ。

具体的に言えば、1971年、アメリカの財政赤字、経常収支の赤字が増大してインフレが進行、アメリカはドルと金の兌換停止に踏み切り(ニクソン・ショック)、これをもって金と通貨の関係は完全に切り離され、国際的にも管理通貨制度へ移行した。この時には、従来の学説を見直すべきだった。

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まず、市中に出回るお金は、市中銀行が生み出しているという話と、市中銀行は日銀から日銀当座預金というお金を作ってもらっているという話をする。どちらも通貨発行(信用創造=Money Creation)である。

《財務省のウソ》

財務省は、国債の残高が1,200兆円あり、国民一人当たり1,000万円の借金になるというような説明をし、国民に日本が破綻するのではないかという不安をまき散らしている。ところが、この説明は通貨発行の仕組みを正しく理解していないデマだ。おかげで、われわれ国民は政府にお金がないんじゃ仕方がないかと、お金のいることをあきらめてきた。だが、そんなことは決してない!!

《通貨発行のプロセス、経緯》

通貨発行(信用創造)は、次のマネーストックとマネタリーベースの2段階で行われる。

● マネーストック

マネーストックの正体は、市中銀行の貸し出しである。個人が家のローンを借りるときや、民間企業が設備投資のために借り入れを行うが、市中銀行による信用創造(通貨発行)そのものである。この信用創造は、借り手に返済能力さえあれば無限に実行できる。

こうして市中銀行の信用創造(通貨発行)は、借り手が新たに借りると増え、返済されると消滅する。

バブル崩壊時の1993年に、アメリカのウォール街の圧力でBISルール(自己資本比率)が変更され、市中銀行の資本比率が引き上げられた時、「貸しはがし」が大々的に起こった。この貸しはがしなどが起こると、市中で流通する通貨量が急激に減少するので、バブル崩壊をひき起こしたのは当たり前である。

マネーストックは、金融機関(市中銀行)が世の中に供給したお金のことで、具体的には、企業や家計、地方公共団体などの経済主体が保有する現金や預金の残高のことを言う。(ここには、日銀と市中銀行が持つマネタリーベースは含まれていないので注意。)

● マネタリーベース

どこの国でも同じ(銀行制度はユダヤ人たちが作ったから)なのだが、お金が発行されて市中に流通する仕組みは、中央銀行が金融機関に対し、お金を供給する仕組みがあり、これをマネタリーベースという。具体的には、紙幣、コインおよび(日銀)当座預金の合計をいう。

リアルな紙幣とコインは2割弱しかない。残る8割強は、単なる字デジタルデータである。黒田総裁の登場で、日銀は異次元の量的緩和を行い、日銀当座預金を爆増させた。この日銀当座預金は、市中に直接流れず、マーケットに影響を与えないことに注意が必要である。黒田日銀総裁は、量的緩和により民間企業の投資の呼び水なることを考えていた。

この日銀当座預金は、① 日銀と市中銀行の日々の銀行間決済 ② 市中銀行の預金の準備金の積み立て義務(市中銀行は預金残高の2%ほどを日銀当座預金に積み立てる義務がある。) ③ 日銀による信用創造(通貨発行)に使われる。通貨発行は、日銀、市中銀行ともに、負債(借入金)と資産(貸付金)という債権債務の貸借関係により、行われる。

信用創造の大きな目的は、政府が国債を発行する際、日銀は市中銀行に対しあらかじめ、信用創造を行い、市中銀行の日銀当座預金を増やすということをする。こうして増加した財源を使って、市中銀行は国債を買い入れる。 原則的に日銀当座預金は金利ゼロなので、市中銀行は利息が付く国債を必ず引き受けて保有する行動をとる。(現在は余りに低金利で、銀行救済のために一部分付利している。)

マネタリーベースの増加は、市中の通貨流通量を増やさないものの、市中銀行のバランスシート(貸借対照表)を大きくする効果があり、マーケットのマインド(期待)を変え、市中銀行から民間企業への貸し付けの増加(=マネーストックの増加)を狙ったものだった。しかし、デフレマインドが解消されない、少子化が進む、技術革新がなかなか日本でないことなどなどで、民間企業は銀行から借り入れを増やさなかった。

下に張り付けた表が1970年から2020年までのマネーストック、マネタリーベース、GDPの推移である。この表を見ると、黒田日銀総裁が就任した2012年から、『異次元の量的緩和』が行われ、日銀から金融機関へマネタリーベースを爆増させたことが分かる。

また、マネタリーベースを爆増させたにもかかわらず、赤色のマネーストックは、伸び率がぜんぜん変わらないのが分かる。つまり、日銀の異次元の量的緩和にもかかわらず、市中に流通している通貨量の増加分の速度は増えなかった。日銀当座預金が『ブタ積み』になっただけだった。

補足すると、GDPで表される経済の大きさは、年々、大きくなって当たり前だ。毎年同じなんて国は、日本以外にない。テレビは、毎年、「過去最高額の予算が編成されました!」と非難めいたことを言うが、増えるのが自然である。

日銀のホームページから
日銀のホームページから
黒い線が日銀が金融機関へ供給したお金、赤い線が金融機関から世間へ供給されてた通貨の総量。赤線は、黒線ほどには増えていない。

上記の説明を理解していただくために、分かりやすいと思い、日本証券業協会のHPから図を下にコピペさせていただきました。

https://www.jsda.or.jp/gakusyu/edu/web_curriculum/images/mailmagazine/Vol.51_20180201.pdf から

簿記で《通貨発行のプロセス》を説明してみる

1.BさんがマイホームのためにA銀行から3,000万円を借入

A銀行     (借方)貸付金 3,000万円 (借方)預金 3,000万円

Bさん     (借方)預金 3,000万円 (借方)借入金 3,000万円

(説明)Bさんが、A銀行から3,000万円のローンを借りるとき、A銀行は《貸付金》3,000万円という資産をもち、負債である《預金》3,000万円を計上する。この《預金》3,000万円は、A銀行が、Bさんから返済を受けられず負債が焦げ付いたとき、社会に対し、弁済(返済)する責任の意味合いがある。返済されなかった場合には、《損金処理》や《引当金償却》などの処理をA銀行がする必要がある。Bさんは、ローンの実行により、資産である《預金》3,000万円を手にすると同時に、返済義務である《借入金》3,000万円という債務を背負う。 こうしたことは、大企業でも全く同じだ。銀行が通貨発行し、債務者は貸し出しを受け、そのお金が日本中で使われれば、日本の景気は良くなっていく。

これが銀行による通貨発行(信用創造)だ。市中銀行は、預金者から集めた預金を原資に貸付していない。借主の返済能力を審査したうえで、返済能力があると判断すれば貸出実行、すなわち通貨発行する。

2.日銀の通貨発行 (日銀がA銀行に1,000億円通貨を発行する)

日銀(A銀行に対し)(借方)貸付金1,000億円 (借方)日銀当座預金1,000億円

A銀行(日銀に対し)  (借方)日銀当座預金1,000億円 (借方)借入金1,000億円

(説明)日本が、A銀行に1,000億円の通貨発行をする場合を考える。

このとき、当たり前なのだが、通貨発行を無から有を生む打ち出の小槌のように言うことがあるが、日銀が市中銀行にお金をくれてやるのだはなく、お金の賃貸借である。市中銀行は(日銀)当座預金という「資産」を手にする代わりに、「借入金」という負債を負う。日銀は「貸付金」という資産と、(日銀)当座預金という「負債」が計上される。(貸出し銀行にとって、お金の貸付は負債になる。)

日銀は、《負債》である《日銀当座預金》1,000億円計上することで、A銀行の《日銀当座預金》1,000億円という《資産》を与える。その時、無条件に《資産》を与えるのではなく、日銀には《貸付金》という債権、A銀行は、《借入金》という借金返済の債務を負う。

黒田総裁は、異次元の量的緩和と称し、強力にマネタリーベースという日銀と市中銀行の資金量を爆増した。このマネタリーベースを増やすことが、市中銀行の民間への貸し出しを増やすと考えたからだ。もちろん、これは成功しなかった。民間企業は市中銀行から借金をせず、景気は良くならなかった。

国債を発行するとき、日銀が銀行にお金を用立て(貸付け)ている!!

長くなったが、国債発行は、民間の借金とは性格がまったく違う。償還時期が来たら借り換えている。政府と日銀は、個人や民間企業とは全く違う。市中銀行や金融機関に対し日銀が通貨発行し、その市中の金融機関がマネーストックという形でさらに通貨発行し、それが血液のように循環することで、景気は正常に回る。

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今、防衛費の増額を契機に、増税議論が激しくなっているが、財政拡大派の議員たちは、日本にしかやっていない「国債60年償還ルール」を止めろと財務省に要求している。

日本には、国債発行して60年経ったらそれを予算を使って消去するという実際にはやっていない、今年度の予算であれば16兆円を償還のための予算を計上している。このために、当然、予算編成が苦しくなり、その結果として増税議論が出てくるのだが、実際に諸外国と同様にやっていない償還費を毎年計上しているのが、そもそもおかしい。有名無実で害しかないこの措置を止めろと財務省に要求するのだが、財務省は「国債の信任が下がらないよう・・・」ともごもご言い、譲らない。

このあたりは、また後日書きます。

財務省のHPから

おしまい

われわれは、もっと豊かに暮らせるはずだ!! 通貨発行は普通の商取引だ。国債は返済する必要がない。

はじめに

「無から有を生み出す」というような形容をすることのある通貨発行(信用創造)ですが、おそらく多くの人に理解されていないと思います。というのは、日銀(または政府)がお金を発行(印刷)しても問題ないと言うと、「そんな夢みたいなことがあるわけない!わたしは信用しない。」「トンデモない!ウソを言うな!」と返されるのがオチだからです。

日本銀行(ダイヤモンド・オンラインから)

では、世間の誤解がどのようなものかを説明するために、まず、《通貨》(お金)がどのような仕組みで発行されているか、生み出されているかについて説明することからはじめます。

1.2種類の通貨発行(信用創造)

通貨発行には2種類あります。上の図のように日銀が銀行(日銀に口座をもつ市中の銀行などの金融機関をいいます。)に行うもの(黄色い円の部分です。)と、下の図にある銀行が家計や企業に行うものの2種類があります。最初が、日銀が三菱UFJ銀行に行うもので、次が、貴方が三菱UFJ銀行から住宅ローンを借りるのをイメージしてもらうと分かりやすいと思います。なお、『市中』という言葉がよく出てきますが、『世間』とか『世の中』、『マーケット』くらいの意味で使っています。

ちょっと難しい言葉になりますが、この2種類を《マネタリーベース》と《マネーストック》というのですが、マネタリーベースは日本銀行の中で行われるものなので、我々国民は関与できません。

(1)日銀の通貨発行

まず、『日銀が市中の銀行に対する信用創造』(以下、通貨発行といいます。)するプロセスを説明します。

この通貨発行は、日銀による日銀の行内に口座を持つ銀行との取引です。日銀と三菱UFJ銀行とかです。もちろん、これは何の義務もなくタダで、銀行が通貨を手にするものではありません。日銀と銀行の間の賃貸借なので、見たことはないですが、最初に賃貸借の約定(契約書)を交わしているはずです。

簿記を知らない人でも理解できると思いますが、その契約書に基づき、日銀は相手の銀行との取引に、「貸付金」という資産と「日銀当座預金」という負債を入力します。相手の銀行側は「日銀当座預金」という資産と「借入金」という負債を入力し、お互いのコンピュータ上の残高を変更します。 これをもう少し詳しく説明します。まず、一般の方には馴染みのない「日銀当座預金」を説明します。商売をしていたり会計を担当している人なら「当座預金」は、よくご存じでしょう。事業用の決済のための口座で、手形や小切手の決済に使われ、金利がつかず、預金保護制度で全額が保護されています。この「日銀当座預金」は、日銀の行内に口座を持つ金融機関が、日銀や他の金融機関との間の決済に使う口座です。その性質は日銀の外(市中)で使われる「当座預金」と似た性格だと考えてよいと思います。

またこれも補足になりますが、銀行にとっての顧客に対するお金は、顧客の場合と立場が逆になります。つまり、家計や企業などと違って、日本銀行にとって「日銀当座預金」は、お金を貸し付けるのが日銀本来の業務であり、それは日銀が貸し出したお金は将来回収されなくてはならないので「負債」になります。つまり、日銀は銀行へ貸したお金をちゃんと返してもらわないとならない責任を社会に対して背負ったと、宣言したのと同義です。

借りる側の銀行にとっては、「日銀当座預金」は日銀が発行した負債であり、他人から受け取ったお金なので「資産」になります。しかし、そのお金は貰ったものでなく、借りたものですので、同時に「借入金」という負債にもなります。つまり、銀行のほうも返済義務を負ったわけです。

これら両方のセットが日銀の行内で行われる通貨発行です。繰り返しになりますが、この取引の意味は、日銀は銀行に「日銀当座預金」を貸し付けることで、権利を意味する「貸付金」という資産を得ます。銀行は「日銀当座預金」を借り、「日銀当座預金」を自由に使う権利と、「借入金」という負債の返済責任を負ったわけです。

ここで注意すべき点があります。まだこの段階では、企業、家計へお金が渡っていません。お金が生まれただけです。お金が国民に行き渡るためにはどうしなければならないかということは後ほど説明します。

(2)銀行の通貨発行

次に、『銀行が家計や企業に対する信用創造』をするプロセスを説明します。

通貨発行は、日銀の外すなわち市中でも起こり、むしろ、国民の生活により直結する性質のものです。銀行も、家計や企業に対し日銀と同じように通貨発行することが出来ます。三菱UFJ銀行から住宅ローンを借りると考えてもらえばいいです。この場合も、日銀と銀行の場合と同様、借用証書などの書面による契約が先です。コンピューターへの記帳は、先ほどの日銀の場合と同様で、銀行は「貸付金」という資産と「(普通)預金」という負債を入力します。銀行のお金を貸し出すという行為は、もし焦げ付いた場合に社会に対し経済的責任を取らないとならないので、「(普通)預金」の貸出しは負債になります。資金を借りた側は「(普通)預金」という資産を手にすると同時に自由に使う権利を手にし、「借入金」という借金返済の義務である負債を負います。

つまり、通貨発行というものの、日銀の場合も銀行の場合も、借り手との合意に基づきお金の貸し借りが行われ、貸した側は、利息を取りながら(日銀当座預金は利息が原則付きませんが・)、定められた期限で返済してもらう権利を有し(日銀当座預金はおそらく期限がないと思われますが・)、借りた側は、借りたお金を自由に使える代わりに、約定どおりに金利を払いながら返済する義務を負っています。 

「日銀と銀行」、「銀行と企業または家計」のどちらの通貨発行も、結局のところ、契約に基づく通常の商取引と同じです。債権債務が同時に発生し、リスクもありますが、家計や企業が手元にあるお金より大きなお金を動かすことで、金額に見合う大きな成功も得られます。(失敗することもあります。)そうした活動が社会を活性化します。ある意味、資本主義の仕組みともいえるでしょう。

2.日本が貧しくなった理由

次に、今日の日本がなぜ成長できていないかを考えます。成長できない理由は、答えを言えば《需要不足》が起こっているからです。上で説明した通貨発行をしたとはいうものの、国民の懐(ふところ)に届いている絶対額が足りていないのです。

ここで、「需要」を少し説明します。「需要」とは「有効需要」のことで、お金を持っている人が買いたいと思うことです。お金を持っていない人が買いたいと思うのは「需要」に入らず、「潜在需要」です。国民が、十分にお金を持っていないから満足にモノを買えない、生産者が作っても満足な値段で売れないということが起こっているのです。これが「需要」不足です。

日本は高度成長期を経てバブルが崩壊するまで、ざっくり言えば経済はうまく行っていました。ところが、政府はこの30年間経済政策を誤ってきたので、経済は低迷しました。どこで間違えたのかなるべく簡潔に書きたいと思います。

3.「国債は《借金》であり返さないとならない」というのは間違いである

(1)高度成長期は過ぎバブルは弾けた。では、誰が経済をけん引しないとならないのか。

戦後の高度成長期には、企業が莫大な借金をして投資をしました。すなわち、銀行が莫大な通貨発行(信用創造)した結果、家計にもそのおすそ分けが十分に行っていました。企業の設備投資のための銀行からの借り入れが巨額で経済成長できたので、家計にも潤沢にお金が回っていました。このために、政府は懐(ふところ)からお金を出す必要がなく、国債もほとんど発行する必要がありませんでした。

ところが、バブル崩壊とともに歯車が逆回転し、企業はお金を使わなくなりました。企業がお金を使わない、加えて政府もお金を使わないという状況になると、家計へいよいよお金が行かなくなったというのが現状です。企業が借金をしてバカバカ投資をする時代が終わった以上、企業が昔果たしていた役目を再び果たすときまで、政府が代わりを務めなければならないのです。

(2)日銀の狙いは外れた。このあとどうすればよいのか。

最初の説明のとおり、日銀が銀行と賃貸借契約を結び通貨発行することで、日銀当座預金を銀行に渡しました。ところが、銀行の日銀当座預金の口座の残高が増えたとはいえ、国民の口座は増えていなません。お金が行き渡るとは、企業や国民一人一人の口座が増えたり減ったりしないとなりません。

日銀は当初、次のように狙っていました。日銀当座預金を増やし、銀行が貸し出しを増やしやすい環境を作るとともに、金利を低い水準に誘導することで、民間企業がお金を借りやすい環境になることを期待していました。しかし、思惑に反して企業が一向に銀行から借金をして投資をしなくなったので、景気が良くならなかったのです。(同時に、家計へお金が行きませんでした。)

どうしたら国民に行き渡るかという点を次に説明したいと思います。結論をいいますと、政府が国債を発行して、国民にお金を使うしかありません。このプロセスをなるべく簡潔に説明します。

(3)税収は、景気の調整弁だ。国債は返済する必要がない。ただし、発行額には限度がある。

経済を考えるとき、政府、企業、家計、海外の4つに収支に分割して考えることが一般的です。日本の場合、海外は原油価格の高騰などで貿易収支が悪化しているというものの、過去の投資の配当・利子などによる所得収支がプラスなので、全体の経常収支は今のところ、プラスであり問題がありません。そのため、政府、企業、家計の3つで考えます。

家計の収入と支出は、政府と企業のお金の使いっぷりに影響されます。この両方から家計へと流れる(あるいは、政府に吸い上げられた残りの)お金が個人の収入となるからです。企業は、自己資金か、銀行から借金して投資や事業を行い、利益を大きくすることで家計(従業員)の給与も増やします。

政府は、お金(予算)を使うことで必要な事業(政策)を行い、企業と家計から税金を取ることで、市中(世間)に流れているお金を回収します。こうして、税収を増やせば景気を冷やし、税収を減らせば景気を後押しします。税で景気を調整するのです。

こう書くと、きっと、ここは多くの方の反論があるところだと思います。ですが、説明を続けさせてください。世間では、政府が税金を集めて、それを財源にして予算執行しており、すでに国債残高が大きくなったために日本は積極財政が出来ないと言われますが、これは間違っています。

というのは、今世間全体を覆っているこの考えの背後には、政府が発行する国債も、企業が発行する社債と同様に、どこかで儲けを出すなりして、負債は借金であり、返さないとならないという考えが隠れています。

しかし、政府は、企業や家計とは違います。政府は、この二つと違い、現在の変動相場制1と管理通貨制度2の下では、スーパーマンやジョーカーというべき特別な存在で、前述したように通貨を生み出せます。すなわち、税収は予算を使う際の制約条件ではなく、景気の調整弁であり、国民の間の格差是正の手段なのです。

この時に、見落としてはならない非常に重要な注意点があります。それは、日本の国力である国内の生産力に見合った範囲で供給すべきであり、多くても少なくてもダメです。30年来の不況は、政府が国民に対し使う絶対額が足りていなかったからです。

  1. 変動相場制とは、現在のように為替レートがマーケットの需給(買い手と売り手のバランス)で決まり、1ドル140円、明日は145円というように日々変動する制度をいいます。これに対し、戦後しばらくは1ドル360円で固定されていました。これを固定相場といいます。 ↩︎
  2. 管理通貨制度とは、通貨当局が通貨発行量を決めれる制度をいいます。過去は、通貨は「金」と交換を保証する金本位制度でしたが、金兌換(交換)をやめ、管理通貨制度に移行しました。 ↩︎

(4)国債という負債の返済を永久に先延ばしにする。どこの国もやっているし弊害もない。

すなわち、国民にお金を行き渡らせるためには、政府か企業のどちらか、あるいは両方が、しっかりお金を使うことです。しかし、企業がお金を使わないときには、政府が日本国内でお金を使って事業や政策を実行して、企業と家計に払うしかありません。政府が、企業と家計の口座にお金を振り込むことです。減税も同じです。政府には、お金が必要ですが、それは国債を発行することで手に入れることが出来ます。

企業や家計がお金を手にするルートは、銀行から借金をして商売をして儲けたり、給料をもらったりする以外に、政府から給付されるお金を貰うというルートもあります。これには、10万円の給付金をもらうというようなものや、消費税減税、所得減税、コロナの補助金を貰うということなども該当します。日本の不況は30年間続ているといわれます。これは企業の投資が減り、従業員に支払う賃金が増えず、十分にお金が家計に渡っていないことを意味し、その不足分を政府が支出するべきなのに、これをしていないが故の不況です。

「政府の借金は、家計と企業の借金で、子孫がツケを払わなければならない。」ということをテレビやマスコミがよく言いますが、これは間違っています。日本の国力、すなわち供給力の範囲でお金を出しても問題ない。むしろ出して経済をけん引しないとデフレになります。実際にデフレが何年も続きました。

この「政府の国債は借金であり、国民の借金であり、子孫にツケを押し付けている。」という言い方は、最初の通貨発行のプロセスをよく考えると間違いだということが分かります。つまり、通貨発行権を持つ日銀と国債を発行する政府を一体だと考えると、国債を発行して返済時期が来て、買った人にお金を返してくれと言われたら、新たな国債を発行して負債を返せば良いのです。つまり、国債の借り換えをすれば良いのです。

この借り換えは、どこの国もやっていますし、日本もやっています。また、これは現実に民間の取引でも普通に行われていることです。民間の会社でも会社の借金である社債の返還時期が来たら、新たな借金をして返済を繰り延べる(先延ばしにする)ことが行われており、これを《ジャンプ》と言います。

闇金が顧客を生殺しにする方法として、利息だけ受け取り元金を返させない《ジャンプ》のあくどい手法もあるようですが、これとは違います。

こちらは正常な取引で、民間企業が一般にやっている取引とまったく同じです。違う点は、通貨発行権のある日銀をバックにした政府の場合は、民間と違って倒産をする心配がない、絶対の信用力があるということです。

財務省が好きな二宮尊徳(テンミニッツTVから)

先に書いたように、一応、今も政府は、国債を発行して支出に充てています。しかし、絶対額が足りないのです。額が増えない理由は、財務省が、税収と支出の額を一致させる《入るを量りて出を制する》という二宮尊徳!?流の考えを後生大事に持ち、国債を発行することを思いっきり嫌がっているからです。時代錯誤だと言っていいと思います。

政府が国債を発行して、日銀が直接買うことは法律で禁止されています。しかし、これは現実には骨抜きになっています。政府が国債を発行し、銀行が日銀当座預金を使って国債を買っているのですが、その国債を日銀が買っているので、直接ではないだけで同じことなのです。

日銀の購入額は、発行額の半分といわれます。また、金利を下げるためも日銀は市中から無制限に国債を買っています。日銀が国債の買い手になっているのとなんら変わらないのです。しかし、低金利ではもうからないので金融関係者とこれに便乗するマスコミは「正常化しろ。」とうるさくいいます。もちろん、金融関係者が儲けを出しにくいというのは事実ですが、何の弊害もありません。

4.結論

したがって、政府は国債を財源にして、今やっている方式を拡大し、子育て、防衛、教育、科学技術、防災対策、インフラ整備、農牧業・漁業支援、消費税減税、社会保険料低減、年金増額、奨学金返済免除などあらゆることをやれるのです。

ただし、日本の国力である日本の生産力(供給力)の範囲までです。それ以上にやると(アメリカやヨーロッパのように)インフレになります。日本は、景気が回復している、今期は前期と比べて6%成長したと言われますが、これは曲がりなりにもコロナで結構、国債を使ってお金をバラまいたからです。しかし、企業をカバーする日本の政府の支出は、30年間不足していました。コロナでお金を多い目に国民に振舞ったのはわずか2年間ほどの間だけです。残り28年間の不足分が、今なお足りていないのです。

ちょっと難しいですが、《需給ギャップ》という指標があります。大雑把に言うと、生産できる能力と国民全員が手にした所得の差です。コロナで結構いい線の財政支出をしたので幾分戻したというものの、もし普通に、外国のような成長の経過を辿っていれば、日本は2倍額成長していたはずだと言われています。つまり、政府が正しい経済政策を取っていれば、いまごろ、われわれの所得は倍だったはずです。そして、世界中から「日本の物価は異常なほど安い。」などど思われることはなかったのです。

もう一度言います。政府は供給力を増やしながら、国民の所得を増やさないとならない。つまり、企業が元気を取り戻すまでの間、積極財政をして、政府の支出を増やして国民の生活を支える他ないのです。

おしまい

信用創造(通貨発行)の仕組みを全然理解していない 日本の主流派経済学者、小林慶一郎氏

新型コロナの政府諮問委員会の委員でもある日本の主流派経済学者の小林慶一郎氏が評論家の加谷珪一と、文芸春秋の「MMTは理論的に破綻している?」というタイトルで、YOUTUBEで対談されている。 小林慶一郎氏は「オオカミ少年と言われても毎年1冊は財政危機の本を出していくつもりです」と、自分の経済予測が的中してこなかったことを自虐的に日経新聞に語る正直な経済学者である。

小林慶一郎氏 コロナの政府諮問委員会委員 東京財団政策研究所研究主幹/慶應義塾大学客員教授

この番組はMMTの理論がどのように正しくないのかを考察する内容である。しかし、あまりにも誤解されている。ちゃんとMMTを理解しないで、批判している。 こんなにちゃんとMMTを理解しないで偉い学者の先生がしゃべっているかと思うと情けなくなってくる。 あんたら主流派の経済学者が、MMTを知りもしないで批判するから、いつまでたっても財政支出が増えず、日本は世界で一番成長できず先進国から途上国に転落しそうなところまでなっている。この責任がどれだけ重いか肝に銘じながら、発言をしてもらいたいところだ。

是非、小林慶一郎氏、(他の主流派の経済学者のみなさんも)エゴサーチするなりしてこの親父の説明に耳を傾けてくれ。


テーマは、《ハイパーインフレは絶対に起きない!?『MMT』を検証する》となっている。

冒頭の部分でMC役の加谷氏から、MMT理論にどのような印象をお持ちでしょうかと問われて、小林氏はこう答える。

「MMTはテクニカルに正しいところもある。貨幣を発行して、政府が債務を発行したらそれは誰が持つことになるのかと言う様なことを、バランスシートの行き先が誰になるのかということを説明していることは決して間違いではないですが、ただ、その結果として、一般の物価水準にどういう影響を与えるだろうかという経済理論の部分はあまり考えられていないような印象ですね。表面的な数字のやり取りだけを考えているという印象をもちましたですね。」

これを親父が聞いて思った。この小林先生、簿記のことをまったく勉強することなくしゃべっている。これでは、ふわーとした感想にしかすぎない。とらえどころがないので、反論のしようがない。また、物価水準にどういう影響を与えるかということは、供給力の範囲内で、通貨発行してもインフレにならないとMMTは通貨発行とは別のところで語っている。 もし、親父ならこう言う。

「MMTの通貨発行理論は正しい。日銀が日銀の中にあるA市中銀行の日銀当座預金口座に対し、100億円という通貨発行(信用創造)をするという取引を考えると、日銀は、100億円の「貸付金」という「資産」と、同額の「日銀当座預金」という「負債」を持つ。A市中銀行は、100億円の「日銀当座預金」という「資産」と、同額の「借入金」という「負債」をもつ。つまり、通貨発行と言いながら、A銀行に対し、100億円をくれてやるのではなく、A銀行は、日銀に返済の義務がある。ただし、この段階では、A銀行にベースマネーである「日銀当座預金」が《ブタ積み》になっている状態に過ぎない。 つぎに、政府が「国債」を100億円発行しするケースを考えると、A銀行は、「日銀当座預金」を使って「国債」を購入する。政府の国債発行の消化はこのように「日銀当座預金」を使って行われる。このため、市中の通貨の流通量、マネーストックには影響を及ぼさない。したがって、金利が上がるクラウディングアウトはない。 なお、変動相場制で自国建て通貨による国債発行は、供給力の範囲であればインフレを引き起こさない。むしろ、国債発行による財政支出が不足すると、日本のようなデフレをひき起こす。」

MCの加屋氏が、主流派の経済学の教科書は、信用創造を説明する際に本源預金のうち、流動性を準備率を10%とすれば、残りの額を貸し付けることで10倍の乗数効果が働くと説明されるとしたうえで、再び小林氏にコメントを求めた。小林氏はこう答えている。

「ぼくは実は説明の仕方を変えただけで、MMTが言っている信用創造のメカニズムと普通の経済学の教科書に書いてあるメカニズムと本質的には実はそんなに違いはないと思っています。 手順が違うだけです。普通の教科書に書いてあるように、銀行が預金をまず預かって集めました。貸し出します。それがまた返ってくる。ということの繰り返しでマネーが創造されていくことなんですけど。 MMTが言っている信用通貨論はまず銀行が貸し出しをします。貸し出しをすると貸し出したお金を、企業の預金口座に記帳すると。それは全然、現金は入ってない訳ですよね。単に貸し出しが100万円、その企業の預金口座に100万円入金したと記帳されるだけ。それがいくらでも増やせるじゃないか、とおっしゃるんですが、ただ最後には何が起きるかというと貸した企業の預金口座から企業が現金を引き出すかも知れない。現金を何らかの形で用意しなければならないということは同じなんですよね。だから結局、信用乗数が10倍位だとすると預金1万円に対し、10万円の信用創造ができるということは、結果として預金を集めて貸し出すというやり方であっても、先に貸し出しがあってその後支払いの準備に1万円を調達するというやり方であっても、結果として起きている信用創造は同じなんです。 だから、信用創造の仕方が違うというだけであって、言っている内容は、本質的な革命的な違いはある訳ではない、という風に理解した方がいいと思いますね。」

これはまったくMMT理論を正しく理解されていない。根本的に《金本位制度》の時代の説明が変わっていない。今は、通貨発行に際し、《金》の保有高という制約はない。小林氏は、順番を変えたら同じだと言うのだが、ここまでMMTを理解しないで批判するとは、無責任極まりないと親父は思う。 まず、信用創造には2種類ある。1つ目は、日銀が日銀の中で、日銀当座預金を市中銀行をあてにする信用創造がある。2つ目は、市中銀行が国民や企業に対し、貸付実行による信用創造をする。 なお、日銀の中にある日銀当座預金は、市中の流通通貨の決済には用いられない。日々の日銀・市中銀行間の決済、現金の融通、準備預金に使われる。小林氏は、現金を要求されたら、準備金を現金で用意する必要性を言われているが、この必要な現金は、日銀当座預金残高を使って、市中銀行は調達できる。 また、マネーが乗数効果で増えるみたいな言い方をされているが、当然ながら銀行の通貨発行は、借り手に与信力があるとき、かつ、借り手が借金をしようとするときにしか、マネーは生み出されない。日本のようなデフレの状態では、多くの企業や個人は借り手になろうとしない。なお、準備預金制度は、異次元の量的緩和により、日銀当座預金残高が何百兆円と莫大になり有名無実化している。 親父なら、こう言うだろう。

経済学の教科書に書いてある信用創造とMMTの信用創造はまったく違います。教科書に書いてあるメカニズムで、どの国も通貨発行していません。MMTは、現実に行われている取引を説明しているだけです。中央銀行の通貨発行は、「貸付金」という資産を得ると同時に、「通貨(=日銀当座預金)」という負債を抱えることと、中央銀行の中に口座を持つ市中の金融機関は、発行された「通貨(=日銀当座預金)」という資産と「借入金」という負債を抱えることが、同時に起こる取引である。 同じように、市中の金融機関は、取引相手の企業や個人の与信力を判定し、返済能力があると判断すれば、通貨発行(信用創造)できる。政府と市中の金融機関との関係と同様に、貸し手である市中の金融機関は、「貸付金」という資産を得ると同時に、「銀行預金」という負債を抱えることと、取引相手の企業や個人は、発行された「銀行預金」という資産と「借入金」という負債を抱える取引を同時におこなう。 政府と市中の金融機関の間で使われる「日銀当座預金」は、日銀のフリーハンドで増やし減らしたりできる。これに対し、市中の金融機関と取引相手である企業や個人との信用創造で生み出された預金は、返済されるとこの世界から消える。また、債権債務は、義務を伴うので、返済が滞ると、金融機関が返済の肩代わりをする必要がある。」

うっかりする人がいるかもしれませんが、「預金」は、普通は資産科目ですが、銀行にとっては立場が逆なので負債科目になります。

また、この動画は全編を見ようとすると有料のようでした。親父はお金を払っていませんので、無料で見れる20分ほどの範囲でこのブログを書いています。

おしまい