救いがたい日本 日本人に生まれて情けない その4「個人情報保護法」 同意さえ取れれば何でもOK マスコミの死

つぎに、「個人情報保護法」であるが、正式名称は「個人情報の保護に関する法律」で、2005年4月に施行され、コンピュータを使ったデータ利用の推進と保護の狭間で、国際動向に伴って何度も改正され、条文も長くなっている。

個人情報保護法のリンク (← 実際の条文が開きます。)

個人情報保護法で規定される個人情報は、幅広く「氏名」「住所」、「生年月日」などに留まらない広い概念である。例えば、ニュースで流される「個人の顔」なども含まれる。テレビの報道のインタビューされている人は、顔を放送する承諾を得ているものの、後ろの人の顔がボカされていたりするのは、基本、この法律があるからだ。また、「音声」や「動作」、「カード番号」、「口座番号」、「位置情報」、「購買情報」、「政治信条」、「病歴」、「犯罪歴」なども個人情報に含まれる。このように広範囲に及ぶため、国は、個人情報保護委員会を設け、規則やガイドラインなどを細かく決めている。

また、個人情報保護の活動主体は地方公共団体で、国は、基本方針を定め、指針の策定等の措置を講ずるとされている。これは、《コロナ特措法》と同じような分担の仕方である。

この法律を見ていくと、国や地方公共団体、特殊法人だけでなく、民間企業も事業遂行で収集した個人情報を、業務以外の目的で出してはならない、出したら罰則ということがこの法律の骨子である。また、この情報を収集する事業者は、第15条第1項に基づきプライバシーポリシー(目的・方針)を作らないとならないとされる。

逆にこの法律は、本人の同意なしに個人情報の収集を許さないかわりに、同意があれば何でもOKと読める。(オプトアウトというのだが、一部、同意なしでも第3者に提供できるというみなし条項もある。)これに反し、個人情報を漏洩した者には、2年以内の懲役または百万円以下の罰金、代表者の場合は1億円以下の罰金が適用される。

この法律の施行で、一番悪影響を受けるのはマスコミだろう。

《映像・画像の利用》というところをクリックしてください

一応、マスコミなど報道機関は、著述、学術研究、宗教団体、政治団体とともにこの法律の適用除外とされているのだが、これらの者は、個人情報を発信しても許されるという意味であり、ニュースソース(リークする側)には、当然、個人情報の保護義務がある。

リークされた情報を元に、報道機関が記事を書けば、リーク元が個人情報保護法の法的責任を負わなければならない。法律以前は、そのような罰則はなかった。社会正義があるといえば、リーク元も許されたはずだが、今やそうはいかない。

個人情報のリークを受けることが、法に違反していると承知しながら、マスコミが記事を書けばほう助罪や教唆罪である。もちろん、マスコミは、ニュースソースを秘匿するのが最高の至上命題なので、口を割らないだろう。しかし、バラす方にとって、バレたら違法という点は大きい。

(個人的なことを言って恐縮だが) 主の隣戸にとある高齢者が一人暮らししており、ある日ボヤを出して消防車がやってきた。それで、最寄りの消防署に火事の模様を問い合わせたところ、「個人情報だから教えられない。」という一点張りで、なんの情報も得られなかった。とほほ。

消防署に問い合わせたが、答えてくれない

一方で、GAFAMという世界的なインターネット企業は、個人情報を集めまくり、それを利用して莫大な利益を上げてきた。 彼らは、顧客がどのような画面を見ているか熟知して、広告を表示するだけでなく、さまざまにデータを活用して儲けている。 もちろん、個人を特定していないという建前なのだが、GAFAMは、どこの誰だか詳細に知っており、個人のコンピューターの内部までアクセスできるし、われわれの趣味嗜好を本人より知っているのかもしれない。

はるか昔から、海外の巨大企業が個人情報を集めまくって儲けてきたのだが、それに伴う弊害の対策は、すなわち《外国にある第三者への提供の制限》の新設は、わずか、2017年の施行である。

結論

マスコミから取材されたときに、個人情報をもっている者(官と民を問わず)は、「個人情報だから出せない」と言える根拠を与えられた。マスコミは情報をリークしてくれる人物をどこからか探すしかない。

そんなこんなで、結局のところ、この法律は、国民には個人情報を守るといいながら、目障りなマスコミを政治家が黙らせ、日本の企業の活力を削ぎ、GAFAMが相変わらずその隙をついている。

日本の企業が活力を削がれたと書いたが、次の例が頭に浮かんだからだ。スマホの通信アプリで有名なLINEの個人データが、中国の委託先からアクセス可能な状態にあることが判明して問題視され、社長が謝罪に追い込まれた。委託した中国企業にパスワードやIDを与えて業務をさせていながら、利用者にその説明が不十分で、情報漏洩につながりかねないという問題意識である。

これは最終的に違法ではないとされたが、中国企業に業務委託するな、情報保護に熱心なEUならいいというのは政治的な問題であり、民間企業が経済合理性を追求するのは自然な成り行きだ。ましてや、行政がLINEをさまざまに利用しているが、そもそも、LINEはプライベートチャットのアプリである。行政側が、セキュリティに守られたアプリを自前で作れという話である。

おしまい

 

 

 

 

 

新型コロナ つづき

(2020/4/19)新型コロナ、あまりのお粗末さにいいたいことがたくさんある。

日経新聞から

① 医師の上昌広さんもおっしゃっていることだが、今回の件は、保健所、衛生研、国立感染症研が仕切り、指定感染症に指定して、患者の治療費は、症状に関係なく無料にするとともに、指定病院で治療するという方針を定めたことに端を発する。これは、患者の発生、蔓延に時間の猶予があり、広がりも大きくないだろうと考えていたからだ。また、PCR検査、ワクチン、治療薬開発をこれらの関係者で国内対応するために情報を囲い込もうとした。上記の機関ではPCR検査の能力も不十分で、不足が明らかだったが、PCR検査の精度が高くないことを理由に、広汎に検査をするより、クラスター対策をすれば問題を乗り越えられると考えていた。 

しかし、現実は厳しく、世界各国と全く違う道を行き、感染爆発の段階まで来てしまった。ようやく、市中のクリニックなどを参加させ、民間へPCR検査を依頼するという動きが、外部の医師たちの動きによって始まりつつある。 しかし、根本的な国の方針転換は行われない。相変わらず、この作戦を立てた医師たち(専門家会議の面々)は、テレビでしたり顔をして、今後の推移は、国民生活の自重ぶりにかかっているというような、責任転嫁の発言をしている。 

政府は失敗を認め、責任者を交代させ、方針転換を表明すべきだ。 そもそも、政府の責任者が、厚労相でなく、財政再建担当相というのが、意味が分からない。 また、政策の決定を「専門家」の意見をもとにするという「隠れ蓑作戦」を転換すべきだ。専門家にはいろいろなポジションの専門家がいる。都合のいい専門家を集めて、専門家の意見を斟酌したと言って、責任を転嫁する手法は見苦しい。 

トランプ大統領のように嫌いな部下をズバズバ切り捨てろとは言わないが、ずっとリーダーらしい。他の国のリーダーもそうだ。自分の判断だと言っている。間違っても構わない。人は間違う。大事なのは、間違いを速やかに認めて方針転換することだ。

② 政府は108兆円の経済対策をするというが、この大部分は、返納を要する貸付金や、税金の納税の猶予などで、真水と言われる一般会計からの支出は20兆円程度と言われる。貧困層に30万円を支払うという話も、公明党に協力しないぞと脅かされて、全員に10万円を配ることにかわるようだ。 10万円にしたって、30万円にしたっていずれも足りない。30万円にプラスして10万円を給付すればよいと思うのだが、大仰なことばかりいながら議論ばかりで一向に支払われない。 今日のニュースで、西村経済再生大臣が、総務省のマイナンバーが、住基台帳の氏名と住所とつなげられるのに初めて気がついたらしく、これを使えば「早く支払えることが分かりました。」という意味のことを発言していた。 とにかく支払いが、遅いのだ。 30万円の時も複雑な計算が必要で時間がかかるようなことを言っていたが、マイナンバーを使えば、毎年の所得は補足されており、簡単なプログラムを書いて抽出すれば、あっという間に対象者は確定できる。名前も住所も、家族状況も捕捉されており支払い可能だ。 とにかく、コンピューターの活用がゼロだ。

そう言えば、政府がLINEを使った調査をしているが、LINEの回答に、4日以上熱があるという人が3万人程度いるらしい。そのことについてソフトバンクの孫さんが、その人たちがウイルスをバラまいているのじゃないかと疑問を呈されていた。そのとおりだろう。(因みに、その後調査結果が公表されていないらしい。)

③ 安倍総理のアベノマスクと動画のコラボを見て、感覚のズレにも呆れた(単に下々の生活を知らないのかもしれない)が、財務省をはじめとする官僚の動向が気になる。安倍政権は、モリカケ問題で、悪役をすべて財務省に被ってもらった恩がある。検事の定年延長でも、法務省に被ってもらった。そのしっぺ返しが来ているのだろう。財務省は、1月以来のコロナの騒動で、予算が成立しない限りは石でも動かず、大きな財政赤字を理由に財政拡大には協力したくないという態度をとっているように見える。今回の30万円と10万円のすげ替えでも、補正予算の組み換えに1週間かかるという。国破れて、霞が関が残るのだろう、馬鹿げている。国民へ素早くお金を給付するのに、マイナンバーや住民基本台帳のシステムを繋げれば、素早くいかようにも支払えるということを、財務省が知らなかったはずがない。官僚は、知恵を政権に提供していないとしか思えない。 

また、新型インフルエンザ等対策特別措置法を読んでみたが、これも巧妙だ。この法律は、政府が方針を決め、地方公共団体が対策を実施することになっている。費用負担については、医療にかかる追加費用のことを一部のみ書いてあるが、休業補償などは一切書いていない。 

この法律を盾にして、政府は高い位置から方針だけをだし、地方自治体が右往左往している。最終的な地方自治体がする補償金の類は、政府へ求めることになるのだろうが、それは財務省の権限が増大することを意味する。この法律のおかげで、コロナ対策の責任は地方公共団体に向けられた。究極の責任逃れであり、厚労省も、財務省も責任は軽くなった。このような方策は、あり得ないだろう。 

また、アベノミクスで雇用改善の効果を上げた安倍政権だが、ブレーンたちが求める消費税の減税ができないのは、自民党の主流派(麻生財務相、二階堂幹事長など)だけでなく、財務官僚をコントロールできないからだろう。抜本的な救済策をとれないと、確実に自殺者が、救命した死者数より多くなるだろう。

官僚の件については、今国会が開かれているが、会期中は特に官僚の幹部クラスは、国会議員に想定問答を作ったり、レクチャーをしたりで、エネルギーの大部分が注がれる。実際の業務の大部分を担っているノンキャリだが、キャリアの許可なしで仕事はできない。それが原因で、この危機でも効率が大きく落ちているだろう。そもそも、霞が関、地方の出先機関のヒエラルキーのあり方が、時代錯誤だ。成功している企業は、必ずフラットで、実力主義が徹底しているはずだ。

④ 普段、説得力のあることを言われている橋下徹さんだが、今回は怪しい。彼は、重要な指標は死者数で、日本の死者数は少ないというのだが、主は発表されている死者数自体が怪しいと思っている。毎月肺炎の死者数だけで、1万人ほどあるのだが、PCR検査をせずに亡くなっている。これらのうちには、かなりの感染者が含まれている可能性がある。 

ただ、日本の広がりは、どうも欧米よりは少ないというのは、間違いなさそうだ。下は、BLOGOSのリンクだが、悲観的シナリオで、日本の感染者数のピークは4月26日前後になり、日本全体の累計感染者総数は5万人に達する。楽観的シナリオによれば、日本の感染のピークは4月16日となり、累計の感染者数は2万人以上に達するという。

台湾の研究者が日本の新型コロナ感染拡大を試算、5万人感染で「第二の湖北省になる」と警告 – 野嶋 剛 (ジャーナリスト)

WEDGE Infinityから

厚生労働省の新型コロナウイルス感染症のクラスター対策班、西浦博北海道大学大学院教授が、このまま何の対策もとらなければ日本で約42万人の死者が出ると警鐘を鳴らされているが、実際には、台湾の研究者がいう数字、感染者数が2~5万人となるものの、欧米の死者数ほどにはならないというのが、第1波の感染としては、体感的に当たっていると思える。

つまり、42万人の死者(現時点の世界中の死者数より多い)というのは、どうなのか。前提条件の何かが間違っていないのか。根拠を詳しく公開して、大勢で検証すべきだ。なにしろ、これが国民に求められている「自粛」の根拠である。西浦教授は無報酬で働いているという記事を目にするが、十分な手当てをもらって、正しい方針を立ててもらいたい。

橋下徹さんに戻ると、国会議員の待遇を批判して、給与返上せよと言った。これはまさしく正当で、ほとんどの国民の所得が下がる中、国会議員、地方議員とも好待遇がバブルのままだ。こんなふざけた話はない。威張りながら、名誉もあり、好待遇が補償される職業は他にない。国民と同程度か、低いぐらい(500万円くらい)が、私心を抱かずにすみちょうど良いのではないかと思う。

⑤ 韓国の選挙で与党が圧勝した。コロナが追い風になったらしい。日本は明らかに反面教師であり、情けない。誰が指導者かと、うんざりである。

⑥ NHKのETV特集でコロナに対する「世界の知性」がどう見るかという番組をやっていた。(下にその映像を貼りました。)出てきたのは、イアン・ブレマー、ユヴァル・ノア・ハラリ、ジャック・アタリの3人である。

印象的だったのは、世界の様相を変えるぐらいのインパクトがあるだろうと3人全員がいうことだった。安倍総理が言う「V字回復」するというような甘い話は全くない。イアン・ブレマーは、格差がこれ以上に拡大し、何のイニシアティブも取らないトランプ大統領が、中国とケンカをしてさらに世界は分断するだろうという。対策には「犬を飼ったら心安らかになる。」といい、対策は何もないと言いたげだった。

ユヴァル・ノア・ハラリは、コロナを利用して独裁へ向かうハンガリーを上げていたが、主は日本も独裁国家と変わらないと思って聞いていた。(日本のマスコミは忖度し過ぎだ。間違ったことに、《揶揄するような小さな声で》警鐘を鳴らすだけではなく、具体的な証拠を出して、自分の意見をはっきり表明すべきだ。確かに強い政権に盾ついて、干される恐怖は働くだろうが、存在意義を自ら放棄しているとしか思えない。マスコミがつよいのは、芸能人の不倫問題だけだ。) 

10年前にパンデミックを予想していたジャック・アタリは、この危機が、市場と民主主義の危機であり、やはり分断を危惧している。 そもそも、トランプ大統領の登場とともに、グローバリズムは終焉を始めたのだが、日本の安倍政権や、マスコミは相変わらず「自由貿易」を旗印にして、グローバリズム(格差の拡大)を積極的に否定しようとしない。

https://www.dailymotion.com/video/x7t9vvs

おしまい