エマニュエル・トッド「共産主義崩壊のような西側諸国の瓦解が始まっている」

グリーンランド情勢に見る西洋の“迷走”

トッドは、著書「西洋の敗北」以降も目覚ましい、目からうろこの落ちるような発言をしている。それが、タイトルの「共産主義崩壊のような西側諸国の瓦解が始まっている」である。

トランプ大統領は、関税で世界の貿易体制を打ち壊し、ベネズエラの大統領を誘拐し、グリーンランドまで欲しいと言い出している、同盟国のヨーロッパと対立して帝国主義を始めている、といった表現で伝えるのが日本のメディアでは一般的だ。トランプは平和で世界をリードする西洋社会に現れた、横暴で暴力的な専制主義者だと捉えられている。

これをトッドがどう見ているのかと言えば、西側諸国が、かつてのソ連中心の共産諸国が崩壊したように、西側諸国も崩壊しようとしている!と分析している。西洋諸国は何も見えていないという。

この記事は、2026.1.26のもので、フランスの新聞・フィガロがトッドにインタビューしたものをクーリエが掲載したものだ。

記事の背景を簡単に書くと、2026年1月、トランプ大統領が、中国とロシアの脅威を防ぐため、NATOのアメリカ軍基地があるグリーンランドの領有と、反対する西欧諸国には10%の関税を課すと表明した。グリーンランドは、人口がわずか6万人弱、面積が216万平米(日本の約6倍)の島で、デンマークの自治領であり、政治経済の根幹的な部分はデンマークに依存している。この広大で人口の空白な島にも中国資本は進出しているが、アメリカのビッグテックにとって様々な実験ができるフロンティアと考えられている。有料記事なので、概略の紹介と親爺の思うところを述べたい。


トランプ発言のあと、ここへ欧州諸国は自国の兵士を派遣した。この事態をトッドは、「西洋諸国は完全に冷静さを失っている。」「『ロシアが攻めてくる!』と恐れを煽っていた西欧諸国が、兵士数十人を送り込んで同盟国の米国からグリーンランドを守ろうとするのは、まるでコメディ映画だ。」という。

西欧諸国の中で、ドイツの前首相ショルツは軍事行動に出るアメリカを抑える役目をしていた。しかし、今のメルツ首相は好戦的な姿勢を示している。

とりわけ深刻なのがアメリカである。アメリカは退化している。若年層で十分に読み書きできない層が増え、識字率が下がっている。農産物が貿易赤字で、工業製品を関税で保護し、国内製造業の回帰を目論んでいたが、有能な技術者やエンジニアが足りず、トランプもそのことを自覚し始め、「生産」するよりも「収奪」することに軸足を移した。トランプは2025年5月ころロシアに軍事で負けたこと、中国にも経済で負けたことを認めざるを得なくなった。その敗北の怒りを同盟国にぶつけている、今は、敗戦を先延ばしにするためウクライナ軍にロシアの石油関連施設をゲリラ攻撃させている。

トッドは、もはや米国が帝国だといっても名ばかりになりつつあると指摘する。「ロシアに対してゲリラ戦を仕掛けて時間稼ぎをするしかできなくなっているわけですからね」と。

トッドは、解釈の困難な将来の政治の行方について結論を出すために、様々な要素の分析を行う。宗教の変遷、とりわけ信仰心の希薄化が及ぼす影響、歴史、人口の様々な指標、家族形態などである。このうちの一つにGDPという指標がある。

GDPは、国家の富や規模を表す指標ととして、その国の生産と消費の規模を貨幣金額であらわすものだ。これがトッドはインチキだという。つまり、アメリカのGDPで言えば、異常に高額な弁護士費用、何万人もいる経済学者の給料、ウォール街で働く金融関係者の給料など、これらはその国の生産力をまったく反映、貢献していないし、豊かさの指標ではないという。そうした実際に生産に関与していない金額は、世間にも貢献していない。そう勘案すると、真のアメリカのGDPははるかに減少する。

中身を吟味すると、アメリカよりもロシアの方が地に足をつけているのかもしれない。

おしまい

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投稿者: brasileiro365

 ジジイ(時事)ネタも取り上げています。ここ数年、YOUTUBEをよく見るようになって、世の中の見方がすっかり変わってしまいました。   好きな音楽:完全にカナダ人クラシック・ピアニスト、グレン・グールドのおたくです。他はあまり聴かないのですが、クラシック全般とジャズ、ブラジル音楽を聴きます。  2002年から4年間ブラジルに住み、2013年から2年間パプア・ニューギニアに住んでいました。これがブログ名の由来です。  アイコンの写真は、パプア・ニューギニアにいた時、ゴロカという県都で行われた部族の踊りを意味する≪シンシン(Sing Sing)≫のショーで、マッドマン(Mad Man)のお面を被っているところです。  

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