ジャンヌ・ダルク高市早苗で日本再生の希望が見えるか?

親爺は、高市早苗がジャンヌ・ダルクになれるかと思っていた。ジャンヌ・ダルクは、英仏の百年戦争で、フランスを勝利に導いた愛国心に燃えた少女である。しかし、彼女はイギリスに囚われ火刑の刑に処された。 ジャンヌ・ダルクではなくサッチャー元首相を手本にしたいという高市早苗は、苦難の末に総理大臣に就任し、今までの菅、岸田、石破内閣とはまったく違う有能な閣僚を揃え、マスコミの記者たちを寄せ付けないレベルの応答をしており、様相が全く違う。高市自身も、公明党が離脱した後、維新との連立を手早く組み、アメリカ大統領、韓国大統領、中国国家主席との会談を大成功させた。

もちろん、反対勢力も足を掬おうと虎視眈々と狙っている。テレビ、新聞はもとより、裏で手をひく財務省がおり、自民党の内部にも権力闘争に敗れた反高市派がいる。社会にはLGBTや多様性のポリコレを声高に主張するウォークの連中もいる。戦争反対を叫び、対話で紛争を解決できると考える『お花畑の住民』もいる。アンタはガンジーか、キング牧師か。

この後、高市がどの程度の成功するのかわからない。しかし、ガソリン税の暫定税率の年内廃止に目途を立て、外交手腕を見て株価が5万2千円ほどになっているのをみるとマーケットも彼女を肯定的に見ているのがわかる。株価は景気の先行指標の性格もある。実体経済が回復し、国民の懐が温かくなるだろうか?日本は復活するか?その観点で、親爺が考えているところを書いてみる。

1.親爺が期待するプライマリバランスの放棄

 彼女の経済に対する主張は、つまるところプライマリバランスの当面の放棄である。プライマリバランスというのは、毎年度の収支(歳入と歳出)を均衡させるというものだ。この基準が日本の経済成長を妨げてきた。 高市も財務大臣の片山さつきも財源が足りなければ国債を発行する、国債発行で経済成長すれば問題はないと言い切っている。また、財務省は日本のGDPと比べた国債残高が外国より高いと危機感をあおるのだが、高市、片山は「それはグロスの話でしょ。ネット(純負債)で考えると問題ない」と考えている。つまり、財務省は負債の絶対額だけを見ているが、負債から資産を引いた額で考えることができるというのだ。このネットの額で負債を見ると、日本は日本はカナダに次ぐ健全財政の国ということになる。

2.親中政策から転換

公明党の存在が、中国に対する遠慮につながっていた(媚中)と言われる。例えば、ウイグルでの人権侵害、日本人がスパイ容疑で拘束されたり、南京事件の日に駐在員の子弟が惨殺されたりしても満足に抗議できなかった。多くの国会議員や記者がハニートラップに引っかかっているともいわれる。公明党の離脱で、遠慮する必要がなくなった。

3.再生エネルギーからの方向転換 

太陽光パネルが山を切り開き自然破壊をしながら敷き詰められている。東京都の小池知事は住宅の新設に合わせて、屋根に太陽光パネルを設置するよう条例を定めた。この太陽光パネルのほどんどは中国製である。最初のうちは日本のメーカーが先行していたが、中国製が価格で圧倒し日本製は太刀打ちできない。このパネルは経年劣化し、年月が来ると産業廃棄物になる。また、発電コストが高く、再エネを推進するために「再エネ賦課金」として電気料金に上乗せされている。こうしたデメリットだらけの太陽光パネル推進を止めようとしている。こうした中国製パネルで儲けている国会議員の名前がネットでは簡単に出てくる。

4.馬鹿げたトランプのノーベル平和賞推薦

高市が、トランプをノーベル平和賞に推薦すると言ったことは、会談での唯一の失敗だろう。ウクライナ戦争にしろ、ガザのハマスとイスラエルの紛争にしろ、原因はそもそもアメリカにある。ウクライナ戦争は、アメリカが約束を破ってNATOを東方拡大させてきたからロシアが危機感を抱いたのが原因だし、ガザは根本的に、選民思想のイスラエルが度を越した暴力主義で領土拡大に走ったものであり、世界中がイスラエルを非難する中、アメリカだけが資金源のイスラエルを是認しているからだ。自分が起こした戦争を止めて、ノーベル平和賞をもらうというのはあまりに虫が良すぎる。恥を知れというレベルの欺瞞だ。(というか、ノーベル平和賞自体が特定のプロパガンダである。ノーベル経済学賞も、主流派経済学者であるフリードマンの系譜の学者しか受賞できないし、・・・。)

5.最終ゴール 消費税の全廃

高市の経済政策の成功により、次のステップとして消費税の廃止をしてもらいたい。今回の総裁選の公約では、消費税の減免について触れていなかった。だが、高市は消費税の減免も検討すると言っているのだから。

おしまい

「西洋の敗北 日本と世界に何が起きるのか」 エマニュエル・トッド その2

エマニュエル・トッドは、確実に「西洋は敗北」すると予言する。世界は、アメリカがリードする形で、戦後80年が経過した。しかし、アメリカがリードしてきた西洋は、自由と平等、民主主義を価値の中心に置き、この30年間、それを実現する方策はグローバリズムと新自由主義だと言ってきた。しかし、30年が経った今、その価値観は世界のどこでも実現せず、経済格差は以前より激化した。数年前、世界のトップ8人の所得が、地球全体の6割の人口の所得に等しいと言われていたが、格差はさらに拡大している。世界の紛争・戦争は亡くならならない。そうした反省から、グローバリズムが失敗だったという勢力と、相変わらずグローバリズムを続けたい勢力の戦いが、アメリカの大統領選挙だった。 今や、世界全体は、日本、韓国を含む西洋とそれ以外の国々に分かれ、中近東のイスラム国や、インドネシアがBRICSに入るようになっている。

そこで、エマニュエル・トッドは、この西洋の側が敗北するだろうと予言する。トランプ大統領は、果たしてどこまでこの敗北を阻止できるのか、というのが現下の最大の関心事である。 以下は、この本からの引用である。

2-1「ガス抜きをして米国経済の虚飾を正す」

「2023年1月から6月にかけて、ウクライナが必要とする兵器をアメリカが生産できないでいることを多くの研究者が明らかにした。これらの研究は、クレムリンに近い小団体などではなく、アメリカ国防総省や国務省から資金提供を受けているさまざまなシンクタンクが公表したものである。世界一の大国が、なぜこれほど馬鹿げた状態に陥ってしまったのか。・・・・」

「徹底的な批判を始める前に、公平さを保つためにまずアメリカ経済の議論の余地のない強みを指摘しておこう。近年、最も重要な技術革新がシリコンバレーからもたらされたことは論を俟たない。・・・これも近年のことだが、アメリカの石油、特に天然ガスの生産国としての復活も私たちは目の当たりにした。1940年に日量400万バレルだったアメリカの石油生産量は、1970年には960万バレルまで上昇し、2008年には500万バレルに落ち込んだが、戦争直前の2019年には、水圧破砕技術のおかげで1220万バレルまで達している。主要輸出国ではないが、アメリカは石油の純輸入国ではなくなったのである。 ・・天然ガスも同様で、アメリカはロシアに次ぐ天然ガスの輸出国である。・・

「戦争のおかげで、特にロシアからの天然ガス供給を突然遮断されたヨーロッパの同盟諸国に供給できるようになったアメリカは、世界最大の液化天然ガスの輸出国となった。エネルギー分野は、この戦争の明らかな不条理の一つを浮き彫りにしている。アメリカの目的は、ウクライナを守ることなのか。あるいはヨーロッパと東アジアの同盟国を支配し、搾取する事なのか。

「GAFA、天然ガス、シリコンバレー、テキサスというアメリカ経済の強みは、人間の活動範囲の両極端に位置している。プログラミングのコードは「抽象化」に向かうが、エネルギー資源は「原材料」である。この両端の間にこそ、アメリカ経済の弱みと困難さがが存在する。つまり、モノの製造、伝統的な意味での「工業」に当たる部分である。NATOの標準兵器である155ミリ砲弾すら十分に生産できないという極めて陳腐な事態を通じて、この戦争が明らかにしたのは、アメリカに産業基盤が欠落していることである。さらに種類を問わず、いかなるミサイルも十分に生産できなくなっていることが少しずつ明らかになった。」

「物事の正体を暴く戦争は、私たちの(そしてアメリカ自身の)アメリカに対する認識とアメリカの真の実力とのギャップを明らかにしたのである。2022年、ロシアのGDPは、アメリカのGDPの8.8%(ベラルーシと合算すると、西洋陣営のGDPの3.3%)でしかなかった。GDPで見れば、ロシア側をこれほど圧倒していたにもかかわらず、なぜアメリカはウクライナが必要とする砲弾すら生産できなくなってしまったのか。

2-2「米国産業の消滅」

「アメリカ自身によって進められたグローバル化が、アメリカの産業覇権を根底から覆した。1998年、アメリカの工業生産高は世界の44.8%を占めていた。しかし2019年には、16.8%に落ち込んだ。同時期にイギリスは、9.3%から1.8%に減少した。・・・中国は、2020年に28.7%まで増加。ロシアに関する比較可能な統計の少なさを鑑みると、アメリカのある種の航空機が獲得しようとしている「ステルス性能」をこの国の産業が手にしてしまったかのようだ。ロシアはアメリカに対する究極の武器「ステルス産業」なるものを作り上げ、不意打ちを喰らわせたと言えるのではないか。

「グローバル化した世界における「物理的」なパワーバランスをよりよく評価するために、「工業の中の工業」としての工作機械の生産を見てみよう。2018年、中国は世界の工作機械の24.8%を製造し、ドイツ語圏は21.1%、日本は15.6%、イタリアは7.8%、アメリカはわずか6.6%、韓国は5.6%、台湾は5.0%、インドは1.4%、ブラジルは1.1%、フランスは0.9%、イギリスは0.8%だった。わたしは統計の中にロシアを探すことは諦めざるを得なかった。「ロシアが見えない」ことは、想像以上の数値を疑わせるのに十分である。

「モノの製造におけるアメリカの衰退は農業にも見られる。メキシコとカナダとの北米自由貿易協定(NAFTA)が1994年に発効されて以降、アメリカの農業は「集中」、「専門化」、「衰退」のプロセスをたどった。第1章では小麦の生産に言及したが、ロシアは2012年に3700万トンだったのが、2022年には8000万トンに達したのに対し、アメリカは1980年に6500万トンだったのが、2022年には4700万トンに減少した。全体としてみれば、かつてアメリカは農産物の一大(純)輸出国だったが、現在はかろうじて輸出入の均衡を保っているにすぎず、むしろ赤字に傾きかけている。今後も人口増加が見込まれることから、10年から20年以内に輸入国に転落するのはほぼ確実だろう。」

2-3 虚飾のGDPという指標(「米国のRDP(国内実質生産)」から)

「アメリカのGDPは、効率性、さらには有用性の不確かな「対人サービス」がその大半を占めている。医者(オピオイド(麻薬)の件では殺人者となる)、法外な高給取りの弁護士、略奪的な金融業者、刑務所の守衛、インテリジェンス関係者などがそこに含まれる。2020年アメリカのGDPは、この国の1万5140人もの経済学者の仕事を付加価値として計上していたが、そのほとんどが虚偽の伝道者であるのに、平均年棒は12万1000ドル(=1900万円)にも達している。真の富の生産にはつながらない。このような寄生集団の活動を取り除いた場合、アメリカのGDPは果たしてどの程度になるのか。」

ここで、トッドは、GDPから生産されない金額を除くRDP(Real Domestic Product)の思考実験をしている。GDPから、なに物も生産しないウォール街の金融業者の報酬、高額な弁護士収入、役に立たない経済学者の給料、アメリカ国民の平均余命が低下しており、過大評価されている医療費などを減じると、一人当たりRDPは、西ヨーロッパ並みの40,000ドルになるという。これは乳幼児死亡率の順位と一致し、ドイツが1位、アメリカが最下位になるという。

トッドの指摘は、つづきます。 

おしまい

これは駄目だろう! アマゾン

「アマゾン、これは駄目だろう」と親爺は思う。レビューが信頼できない。怪しい商品を売っているということを書きたい。

親爺は、最近下の加湿器を2000円ほどで買った。製品登録をすれば、1年間の保証が3年間になると書かれていたので、指示に従ってLINEに製品登録をした。

登録が完了すると、次のメッセージが送られてきた。

「星5レビューで2000円差し上げます。」!!

これはヒドイよね。2000円をもらえるからといって、みんなが星5のレビューをすれば、口コミが歪んで行き、信頼できなくなる。どこの会社の製品か調べてみたら、どうやらやはり中国製らしい。

アマゾンは他にもいい加減な売り方をしている。メルカリなどでも同じような商品を見たことがある。パソコンなどの記録媒体にSSDというものがあるのだが、それが怪しい。下の写真の商品は、正規のメーカー品と比べると数十倍安い。また、メーカー品で、30TBの容量のものが売られているのを親爺は見たことがない。

ちなみに、TBはテラバイトと読み、記憶容量の単位である。1000GB(ギガバイト)が1TBである。ちゃんと動く正規品は、1TBが約1万円というのが現在の相場であり、30TBが5000円で買えるというのは信じがたい。だがレビューを見ると、評価は高く、何千ものレビューがついている。親爺は、この商品が実際にこれだけの記憶容量があるとは思えない。ある程度(数十GB程度)使ったところで、容量が一杯になるインチキ品である。 くれぐれもご用心である。

おしまい

羽田空港 《いいかげんな日本のテレビ》海外の報道と衝突炎上事故の犯人さがし

2024年元日に、北陸で震度7の大地震が起こった。2日には、羽田空港の滑走路上で、海上保安庁のプロペラ機が日航のエアバス機と衝突、爆発炎上した。日航機の乗員乗客は、幸い無事に脱出できたが、どちらも悲惨な大災害、大事故であり、被災者の方や死亡者の方には言葉もない。

このどちらも、海外でも大ニュースとして報道されている。親爺が思うには、海外のニュースの取り上げ方は、日本よりはるかに客観的に事実を見て、詳しい。日本のテレビの報道は、あまりに一部だけを切り取って感傷的で漠然としており、延々と繰り返すばかりである。

元日におこった北陸の地震は、未だに被災状況の詳細が分かっていない。

海外の報道の切り口は、現在の建築基準法の耐震基準を満たしていない古い木造住宅でとりわけ倒壊の被害が大きく、冬の寒い中、多くの人々がホームレスになって、救援の手がとどかず人命の危機ではないかと放送している。つまり、日本という国が、どのように対処するのか注目している。

羽田の衝突事故は、日航機の乗客と乗員は無事だったものの、海上保安庁のプロペラ機は乗員5名が死亡、パイロットが重症になるという痛ましい事故だった。こちらも、海外のメディアは盛大にこれをとりあげている。こちらは、エアバスの乗員の活躍で、乗客乗員全員が奇跡的に助かったと称賛しているのは間違いない。

しかし一方で、このような過密ダイヤで、離着陸が難しい空港で、このような「ヒューマンエラー」が原因と思われる大事故が起こったのか、それも先進国といわれた日本でなぜ起こったのか、かなり懐疑的に報道されている向きがある。日航機には、コックピットに3人の操縦士がおり、海保機には操縦士が2人いた。世界各国は他国のことを露骨に非難しないが、日本がどのように対処するのか、注目しているのは間違いない。(現に正月以来の株価は、軟調である。)

France 24から

この航空機事故では、きょう(1月6日)の段階では、テレビは、海上保安庁の機長が、管制塔から誘導路で待機する指示を、滑走路の中で待機すると勘違いしたのが事故の原因で、警察が業務上過失致死で捜査していると報道されていることが多いようだ。

ところが、深田萌絵さんの動画では次のことを指摘されている。

  • ① 実際に管制塔と海保機で交わされた英語(”Taxi to holding points C5”(誘導路C5で待機しろ)と”Taxi into holding points C5”(C5滑走路で待機しろ)という表現は、紛らわしいので、国際的には変更されて使われてない表現である。最新の言い方は、”Hold short of “(~の手前で待て)をつけて言う。
  • ② 海保機には、最新のトランスポンダー(1秒ごとに自機の位置、高度を発信して周囲の航空機に知らせる装置)が装備されていなかった。これがあれば、着陸してくる日航機も滑走路上の海保機に気付く可能性があった。
  • ③ 管制塔にレーダー監視員がいなかった。管制塔のレーダーには滑走路に入った航空機を識別できた。
  • ④ 空港のストップライト(離陸許可が出た航空機に、地面に設置されたライトの列が航空機を滑走路に誘導する装置)が、昨年暮れから故障していたが、修理されていなかった。

同様なことを指摘しながら堀江貴文氏は、この事故を運輸安全委員会ではなく、警察が取り調べを始めていることに、原因が正しく究明できないのではないかと危惧されている。運輸安全委員会では、発言内容が法的に免責されるので正直に話すが、警察の取り調べは、刑事責任を問われる可能性があるため、正直に話さないだろうという。関係者が正直に話して、事故原因を正しく知るということが、犯人捜しより大事なことは言うまでもない。

おしまい

経済学者も国債買入に日銀当座預金が使われると理解していない 国債を応札しているのは外国企業だ 《森永卓郎×土居丈朗「財政均衡主義」はカルトか》の論争から

東スポの記事から(安藤裕さんの説明をお聞きします。)

1.経済学者にはどんな流派があるか

親爺が理解している経済学の流派はこんな感じである。

ヘリコプターマネーの思考実験で経済の拡大を提唱したミルトン・フリードマンを源流とし、新自由主義を旗印にするのが、新古典派といわれる《主流派経済学者》である。主流派ではないが、他の流派にはケインズの流れを汲む《ポストケインジアン》と、アベノミクスを裏でささえた金融政策を重視する《リフレ派》もほぼ主流派といっていいだろう。最近は、行動経済学という名前もよく聞く。最後が、管理通貨制度へ変わることで、通貨発行(信用創造)のパラダイムが変わったという《MMT派》(現代貨幣理論)である。

MMTは、債権・債務を発生させない通貨の所有権移転はないと考える。よって、ヘリコプターマネーはできないという立場である。もし本当にヘリコプターからお金を撒いたら、撒いた人に損失が発生し、拾った人には利益が発生する。損失は資産を取り崩して埋めたり、処理する必要がある。言い換えると、ヘリマネは、サステナブルではない。

経済学は、もともと学者の数だけ経済学があるともいわれ、混とんとしていると言えるかもしれない。

2.主流派経済学者は、国債の購入が『日銀当座預金』を使って行われることを理解していない。

ここずっと30年にわたる日本のデフレについて、財政拡大派と財政均衡派の意見が衝突し、まったく噛み合わない。このブログに登場しないが、新型コロナウイルス感染症対策分科会メンバーを務めた主流派経済学者の代表格の小林慶一郎さんも、「『オオカミ少年』とずっと言われてきたが、それでも政府債務膨張への警告を発することを止めない。」とおっしゃる。こうした主流派の経済学者たちは、国債発行残高が増えると、国債価格の暴落や金利の暴騰が起こるとなぜ危惧するのか、その理由を親爺も述べたい。

今回は、下の記事をとりあげた。雑誌、東洋経済にのった森永卓郎さんと土居丈朗さんの討論記事である。森永さんが『ザイム真理教』を発刊し、やはり主流派経済学者の代表格の土居さんと議論されている。

https://toyokeizai.net/articles/-/721495?page=3  ☜ こちら記事のリンク


この主流派の経済学者たちの間違った主張が、次の土居さんの発言に端的に表れている。

  • 「(過去に)財政赤字を出しても、日銀が国債を買えたので国債暴落が起きなかっただけだ。しかし今後はインフレが起きうる状況となっており、これまでと同様にはいかない。日銀も国債をずっと持ち続けることはできなくなる。物価高対策で、いずれは市中に事実上売らざるをえない。・・・インフレ期に、日銀が国債を買って通貨供給を増やせば、インフレをあおることにならないか。」と言われている。

「日銀が国債を買えたので国債暴落が起きなかった」と土居さんはこうおっしゃるが、そもそも日銀が異次元の量的緩和で、日銀当座預金という通貨を生みだし、それを原資に市中銀行が国債を購入していることを理解していない。同じように、日銀が国債を市中銀行から買い入れる時にも、日銀当座預金を使って行う。(とうぜん、債権債務がやりとりされる。)くりかえすが、この原資である日銀当座預金は、日銀が通貨発行して生み出したものだ。そして、この日銀当座預金は日銀の行内だけでの取引であるから、市中に影響がない。ここのところを、主流派経済学者の土居さんは理解していない。市中銀行が新発債の国債を買い入れするときも同様である。

つまり、日銀が既発債である国債を市中銀行から買うのは、《日銀当座預金》という日本銀行の中でしか使われていない通貨で行われていることを理解していないから、市中の取引、マーケットの預金流通量を減らして、金利上昇が起こると考えている。

なお、市中銀行が新発債の国債を必ず買うのも、日銀当座預金である。主流派の経済学者たちは、市中で流通している通貨(個人や企業の預金)で、国債が消化(買い取り)されていると思っている。(これは、最後に述べる。)

これらの取引は、国民生活に影響しない。政府が発行する国債を買うのは市中銀行である。市中銀行は、日銀から通貨発行された資産である日銀当座預金(裏には《借入金》という負債を負っている。)を原資にして、国債を買い入れる。つまり、市中銀行が手にしている日銀当座預金という資産が、国債という資産に振りかわっただけだ。市中銀行は日銀当座預金を持っていても基本的に利子がつかないので、少しでも利子がつく国債を必ず購入する。このように、日銀と市中銀行のあいだで、お互いに日銀当座預金と国債の残高を増やしただけでは、市中、つまり国民生活に直接の影響はない。日銀のなかにある政府口座のお金を、政府が予算執行するまで市中、国民生活になにも影響はない。政府が予算を使ってはじめて、国民の財布は豊かになる。もちろん、民間企業が使っても国民(と政府)の財布は豊かになるのだが、今のデフレ状況では、民間企業にそれを期待できない。

つまり、誰か(政府か企業のどちらか)が負債を負わないと、国民(消費者)の財布は豊かにならない。高度成長期は、企業が莫大な借金を抱えて経済のパイが成長したから、政府支出を増やさずとも、国民の財布は豊かだった。いま企業も政府も負債を負うことをしなかったら、国民の財布は空っぽなままだ。

主流派経済学者の財政均衡を主張する理由のほとんどは、国債がどんどん増発されると、やがて引き受け手が無くなり、国債価格の低下をもたらし金利が上昇し、ついにコントロールできなくなるというものだ。土居さんが、『日銀も国債をずっと持ち続けることはできなくなる。物価高対策で、いずれは市中に事実上売らざるをえない』と言うのは意味不明だが、もし日銀の持っている国債を売って、政府の予算執行に使う日が来るというのであれば、バカかといいたい。通貨を発行しているのは日銀だぞといいたい。 

黒田日銀の異次元の量的緩和(QE)を、何年も続け、日本は、特段の弊害を生じることなく、国債価格も金利も日銀はコントロールできた。成長できなかった理由は、量的緩和の失敗ではなく、財政支出が足りなかったのが明らかだ。欧米諸国は、日本の量的緩和を見て、何の悪影響もなかったと分かって、このコロナの時に追随した。欧米は、量的緩和をするだけでなく、財政支出も急拡大させた。(やりすぎて、烈しいインフレになったが・・。)

下の動画で、前衆議院議員で公認会計士の安藤裕さんが解説をされている。5分15秒のところを、ぜひ見てください。「日銀が国債を買っても市中にお金は回りませんから」「日銀当座預金が積みあがるだけで、日銀当座預金は一般の人が手に入れることができないお金なので、市中の通貨供給量は増えないんです」と言われている。

主流派経済学者の皆様、お願いします。なんとか考えを改めてください。あなた方と財務省の考えが、30年間、日本中を席巻しているから、マスコミもあなた方に忖度し、国民の大多数が、日本は借金で首が回らないと思っています。日銀がやっている実務を見てください!!

冒頭にも写真を掲げた安藤裕さんは、自民党時代に積極財政を訴えていたが、不倫報道があり再出馬を断念された。現在は、YOUTUBEに積極財政の動画を上げ、財政拡大を訴えるため「赤字黒字」というコンビで、漫才師の登竜門であるM1グランプリにも出場されている。

3.国債はどのようなプロセスで発行され、保有されているか

親爺は、以前実際に国債を買っていた時期があった。それでは国債は市中のお金を使って買われているのだろうか? その答えは、ごくごく一部にあるという答えになる。

下がの図が国債を誰が保有しているかというチャートだ。これを見ると、日銀当座預金を使える立場にある、日本銀行、市中銀行、証券会社等の割合は、58.8%である。保険・年金基金と公的年金を足すと23.74%になる。両方足すと82.54%になる。ここにある保険・年金基金と公的年金は、事業の性格上、顧客から得た資金の運用にリスクの最も少ない運用先として国債を選んでいると考えられる。ネットで見ると、これら法人は、証券や銀行などの日銀に口座のある金融機関から購入しているようだ。

つまり、日銀当座預金で国債を購入できる市中銀行(市中銀行と証券会社等)が、国債を引き受け、市中に売っている。それらを買うのは、保険、年金基金、公的年金など消費者保護のために法律で資金運用に制限がある法人である。日本国債は利率も、銀行の定期預金と同じほど現状は低いので、大した魅力はない。つまり、金融機関や保険、年金を扱う会社にとって、国債は安全で、現金で持つよりは、少しは金利が付くから選択されているにすぎない。

外人が13.14%保有しているのだが、昨年あたり、日本国債をカラ売りして暴落したところで買い戻して大儲けしようとしていた外国ファンドの存在が報道された。これは、過去ずっとこのような馬鹿な外国ファンド「未亡人製造機」がいるのが不思議なのだが、変動相場制度を採用しており自国通貨で国債を刷れる国相手にやっても無駄だということが分かっていないとしか思えない。(ジョージ・ソロスが、固定相場を守ろうとする英国相手に、国債のカラ売りをして大儲けしたことがある。)現在は、諸外国の金利がずっと高いので、日本国債は安全だという以外に投資先として魅力がない。

4.なんと!!日本国債の入札参加社の半数以上が外国企業だ!!

ここで親爺は、国債の発行プロセスを調べながら、違うことを知ってしまい驚いた。日銀当座預金を使って日本国債を買っている金融機関の多数が外国企業になっている!!

下の表は、財務省が国債発行の際の手続きを改めた平成16年の「国債市場特別参加者の指定等について」で、国債入札への応札・落札等に関する一定の責任を果たす者を「国債市場特別参加者」として指定した者のリストだ。

こんなことでいいの?外国企業がこんなところで儲けているのよ!!

おしまい

パーティー券裏金事件 《タッグ 麻生副総理・財務省・特捜検察》再度のどんでん返しはあるか? 

パーティ券裏金問題で、政治がこれ以上ないほど面白いことになっている。自民党が解体してもおかしくない。

神戸学院大学の上脇教授が、政治資金収支報告書を地道に調べ上げ、派閥が開催するためのパーティー券を売りさばく際に、議員が集めてきたお金がキックバックされていたり、割り当て分だけを派閥へ納め、上回った額は毎年、ポケットに入れてきたと告発された。これは何十年も前から行われてきた慣行であり、与野党を問わず、どこの派閥でもやってきたらしい。時効が5年のため、その5年間の額が自民党で1億円だと、最初、報道されていた。ところが、この1億円は、裁判で立証できる金額であり、どうやら実際ははるかに多いということらしい。

現在のところ、マスコミが報道しているのは、自民党の二階派もわずかにあるが、安倍派のみで、他の派閥(麻生派、茂木派、岸田派)は、特捜部が調べているにも拘わらず、そちらはほぼマスコミのニュースに取り上げられていない。マスコミへ検察が安倍派に限ってリークしているからだ。

岸田政権は、ずっと人気が低迷してきた。ここへ来て大臣政務官、副大臣が次々辞任へ追い込まれたが、これは岸田政権を見限った財務省が不祥事のネタをマスコミへリークしたからだと言われている。

つまり、今回の岸田総裁追い落とし騒動も、財務省がシナリオを描き、そのシナリオに従って、茂木さんを総理大臣にしたい、石破さんを担ぎたい二階さんを落としたい、最大派閥の安倍派と二階派を潰したい麻生副総理がそれに乗り、その策略に検察も乗っかっていると言われる。

もちろん、財務省が裏で糸を引くそのようなシナリオを描き、東京地検特捜部が、マスコミにニュースネタを限定的に流しているとまるで小説のようなことが行われていると確信を持って言えることではない。

しかし、自民党の安倍派には、積極財政を唱える議員が多い。安倍派潰しとは、積極財政潰しでもある。財務省は、国債は将来償還しなければならないので子孫にツケを残すというが、実際のところ、国債は償還せずに借り換えているし、このような不景気を脱出するには、積極財政が必須である。

国民も財務省の長年の宣伝を信じているので、一人当たり約1千万円の借金を背負っていると思う人が大半だろう。国会議員の中でも正しい経済観を持っている議員は、数少ない。

親爺が知っている範囲で、現職の国会議員では、国民民主党の玉木雄一郎、立憲民主党の原口一博、自民党の高市早苗、西田昌司、「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の代表中村裕之や顧問の城内実ら100人ほどいる。議員連盟に名前がある自民党の議員は安倍派に限らないが、安倍派が多いのは間違いがないだろう。

親爺は思っている。財務省は、警察(検察)権力と密接なだけではなく国税当局とも密接である。国会議員や財界人などの多くの世間で上に立つ人に限らず、多くの庶民も秘密を抱えている。財務省は、気に入らない人物は、警察を使って身辺を調べたり、国税当局を差し向けて税務調査に入るという。

麻生副総理もきっと脛に傷があるだろう。表立って財務省に反旗を翻すことは出来ないかもしれない。だが、こうして日本を鍋をひっくり返すように、有象無象の代議士たちを地獄の底へ落して、芥川龍之介のクモの糸を登ろうとする国会議員が、結局は地獄の底に全員落ちてはじめて、《じつは、麻生副総理は、他力本願ではあるが、日本を新しい社会へ作り変えられるかもしれないと思っている》ことを期待して止まない。

おしまい

次の動画は、国民民主党の玉木雄一郎の動画です。この人の言うことは正常です。正しい経済観をお持ちだと思います。

こちらは、元朝日新聞記者の鮫島浩さん。正しい経済観を持たれているようには思えないので親爺はあまり好きではないのですが、政治分析は大したものだと思います。

こちらは、山口敬之さん。伊藤詩織さんレイプ事件で損害賠償を命じられたので、この人の話は信じられないという人は多いでしょう。親爺もそうです。しかし、鮫島さん同様政治の分析に説得力があります。

日本経団連十倉会長 財務省に踏み絵を踏まされ宗旨変え

(2023/9/17 夜) 一部表現を修正しました。

消費税反対映画「君たちはまだ長いトンネルの中」ぜひ見てください!
踏み絵を踏んで転んだ十倉会長

親爺は、経団連の会長が変わった時、結構まともなおじさんが会長になったと喜んでいたのだが、会長になったのが2021年6月なので15カ月。すっかり、変身してしまわれた。残念である。

会長になられた当初は、政府は積極財政へと舵を切り、勤労者の賃金を上げて日本全体の需要の喚起が重要だという趣旨のことを言っておられた。

ところが時間が経つにつれ、財務省のレクチャーなどで、宗旨変えを余儀なくされたということだと思う。というのは、経団連の会長というのは、《日本株式会社の総本山》、《重厚長大株式会社連合の元締め》のようなものであり、《日本の屋台骨を支える会社連合》のトップである。そこが、財務省から「法人税を下げてやる。その代わり消費税増税に賛成しろ。消費税を増税しても、価格に税を100%転嫁できる大企業は、何も困らないぞ。困るのは、100%転嫁できない中小企業らだ。あいつらはもし赤字でも、消費税を借金してでも納税しないとならないんだ。ところがお前らは、何も困らないぞ。それどころか、外国と違って社会保険料に消費税を使える日本は、社会保険料の労使折半でやっている事業主負担がこれ以上、上がらなくてすむぞ。だから、消費税増税に賛成しろ。日本全体の景気が悪くなってもいいだろ、お前のところは得するんだから。」と説得されたにちがいない。

消費税は、もともとフランスで導入されたのが起源だ。消費税(つまり、売上税、付加価値税と一緒と考えて良い。)は、《輸出企業への奨励金》を与える方策として考え出された。つまり、消費税の納税額は、売り上げに含まれる消費税と事業をするために支払った消費税の差額を納税する仕組みである。一般の企業は、黒字なので売り上げで入ってくる消費税より、その事業をするために支払った消費税の方が小さいので、この差額を納税することになる。

この仕組みでは、海外に輸出する製品の場合に、売り上げに伴う消費税はゼロなのに対し、事業をするために支払った消費税は当然あるので、この額を税務署が還付してくれる。この還付額が、自動車業界だけで年間6兆円(日本政府が受け取る消費税の税収の合計は20数兆円/年である。)ほどになるとか聞いたと思う。

つまり、消費税の導入自体の大きな目的が、海外貿易でWTOが禁止する各国政府による輸出奨励金を払うことが禁じられていることへの抜け道をつくることにある。

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ここで、ずっと増え続けている非正規社員が企業にとって消費税法上も有利で、正社員より非正規社員を増やす動機になっているということを書きたい。消費税の別の問題点を具体的に見たい。納税額の計算方法は、次の式で表される。

(売り上げー事業に支払った経費の合計)×消費税率=消費税の納税額・・・①

粗利 × 消費税率=消費税の納税額・・・②

①式のカッコの中は、『粗利』と同じ内容である。このため①は、②と同じである。

さらに『粗利』の構成要素は、『利益』と『人件費』であるので、次の③の式で表せる。

(利益+人件費)× 消費税率=消費税の納税額・・・③

③の式の意味するところは、企業は利益に対して「法人税」を払うことに加え、粗利=(利益+人件費)に対して、消費税率を掛けたものを納税しなければならない。つまり、企業は、法人税と消費税の2種類の納税義務がある。

具体的な数字を入れて考えてみると・・

利益が220万円、人件費が440万円だった企業を例に考えてみる。

法人税の納税額は、税率を仮に30%とすれば、220×30%=66万円

消費税の納税額は、税率10%なので、(220+440)×10%=66万円

となる。2つの税の納税額は、合計132万円で、最終的な利益は、88万円(220万円ー132万円=88万円)へと減る。

これを赤字企業と、大企業、中小企業の場合で考えてみる。

まず、赤字企業は、利益ゼロなので法人税はかからない。しかし、人件費440万円を支払った事実はあるので、消費税440万円×10%=44万円の納税は免れない。つまり、赤字で儲かっていないのに、どこかで借金するか、資産を取り崩して消費税を払わなければならない。

中小企業の中には、消費税を売価に転嫁できないところがたくさんある。こうした企業は、売り上げのうち実際に、消費税分として価格に上乗せできていないのに、売り上げに対し10/110の比率で計算された額が、消費税として自動的に受け取ったと計算され、納税の対象になる。

あと、従業員を雇用すると、社会保険料の事業主負担分と消費税の両方を、企業は負担しなければならない。ところが派遣社員などの非正規社員の場合は、雇用ではなく、外注費を支払ったという扱いになる。そうすると社会保険料の事業主負担がいらなくなるだけでなく、おまけに外注費は消費税計算で仕入れ控除できる。つまり、消費税を負担する必要がなくなる。この2つのメリットがあるので、正社員を雇わず派遣労働者として外注する傾向が、ここ何十年間も増え続けている。

要約すると、経団連は消費税を増税し法人税を下げてもらえば、損することがない。強い立場にある大企業は、消費税分を消費者に100%転嫁できるし、社会保険料の負担も増えずにすむ。たとえ、日本全体が不況になっても自分は助かる。おまけに前述したように、輸出企業はウハウハと丸儲けである。

だから、うしろに同業者が大勢いる経団連の会長の十倉さんは、法人税を上げるな、消費税を上げろと言い出したわけだ。長いものに巻かれたわけだが、こういう自分は困らないから、他人が困ることに目をつむる御仁が日本中にいっぱいいる。相対的に有利な立場にある人達は、皆そうだと親爺には思える。

芥川龍之介の小説に「蜘蛛の糸」があり、地獄の底で、上からぶら下がっている蜘蛛の糸へ我さきと殺到し、糸が切れてしまうアレだ。今の日本は、そんな風にしか見えない。 ああ、情けない、情けない!!

おしまい

われわれは、もっと豊かに暮らせるはずだ!! 通貨発行は普通の商取引だ。国債は返済する必要がない。

はじめに

「無から有を生み出す」というような形容をすることのある通貨発行(信用創造)ですが、おそらく多くの人に理解されていないと思います。というのは、日銀(または政府)がお金を発行(印刷)しても問題ないと言うと、「そんな夢みたいなことがあるわけない!わたしは信用しない。」「トンデモない!ウソを言うな!」と返されるのがオチだからです。

日本銀行(ダイヤモンド・オンラインから)

では、世間の誤解がどのようなものかを説明するために、まず、《通貨》(お金)がどのような仕組みで発行されているか、生み出されているかについて説明することからはじめます。

1.2種類の通貨発行(信用創造)

通貨発行には2種類あります。上の図のように日銀が銀行(日銀に口座をもつ市中の銀行などの金融機関をいいます。)に行うもの(黄色い円の部分です。)と、下の図にある銀行が家計や企業に行うものの2種類があります。最初が、日銀が三菱UFJ銀行に行うもので、次が、貴方が三菱UFJ銀行から住宅ローンを借りるのをイメージしてもらうと分かりやすいと思います。なお、『市中』という言葉がよく出てきますが、『世間』とか『世の中』、『マーケット』くらいの意味で使っています。

ちょっと難しい言葉になりますが、この2種類を《マネタリーベース》と《マネーストック》というのですが、マネタリーベースは日本銀行の中で行われるものなので、我々国民は関与できません。

(1)日銀の通貨発行

まず、『日銀が市中の銀行に対する信用創造』(以下、通貨発行といいます。)するプロセスを説明します。

この通貨発行は、日銀による日銀の行内に口座を持つ銀行との取引です。日銀と三菱UFJ銀行とかです。もちろん、これは何の義務もなくタダで、銀行が通貨を手にするものではありません。日銀と銀行の間の賃貸借なので、見たことはないですが、最初に賃貸借の約定(契約書)を交わしているはずです。

簿記を知らない人でも理解できると思いますが、その契約書に基づき、日銀は相手の銀行との取引に、「貸付金」という資産と「日銀当座預金」という負債を入力します。相手の銀行側は「日銀当座預金」という資産と「借入金」という負債を入力し、お互いのコンピュータ上の残高を変更します。 これをもう少し詳しく説明します。まず、一般の方には馴染みのない「日銀当座預金」を説明します。商売をしていたり会計を担当している人なら「当座預金」は、よくご存じでしょう。事業用の決済のための口座で、手形や小切手の決済に使われ、金利がつかず、預金保護制度で全額が保護されています。この「日銀当座預金」は、日銀の行内に口座を持つ金融機関が、日銀や他の金融機関との間の決済に使う口座です。その性質は日銀の外(市中)で使われる「当座預金」と似た性格だと考えてよいと思います。

またこれも補足になりますが、銀行にとっての顧客に対するお金は、顧客の場合と立場が逆になります。つまり、家計や企業などと違って、日本銀行にとって「日銀当座預金」は、お金を貸し付けるのが日銀本来の業務であり、それは日銀が貸し出したお金は将来回収されなくてはならないので「負債」になります。つまり、日銀は銀行へ貸したお金をちゃんと返してもらわないとならない責任を社会に対して背負ったと、宣言したのと同義です。

借りる側の銀行にとっては、「日銀当座預金」は日銀が発行した負債であり、他人から受け取ったお金なので「資産」になります。しかし、そのお金は貰ったものでなく、借りたものですので、同時に「借入金」という負債にもなります。つまり、銀行のほうも返済義務を負ったわけです。

これら両方のセットが日銀の行内で行われる通貨発行です。繰り返しになりますが、この取引の意味は、日銀は銀行に「日銀当座預金」を貸し付けることで、権利を意味する「貸付金」という資産を得ます。銀行は「日銀当座預金」を借り、「日銀当座預金」を自由に使う権利と、「借入金」という負債の返済責任を負ったわけです。

ここで注意すべき点があります。まだこの段階では、企業、家計へお金が渡っていません。お金が生まれただけです。お金が国民に行き渡るためにはどうしなければならないかということは後ほど説明します。

(2)銀行の通貨発行

次に、『銀行が家計や企業に対する信用創造』をするプロセスを説明します。

通貨発行は、日銀の外すなわち市中でも起こり、むしろ、国民の生活により直結する性質のものです。銀行も、家計や企業に対し日銀と同じように通貨発行することが出来ます。三菱UFJ銀行から住宅ローンを借りると考えてもらえばいいです。この場合も、日銀と銀行の場合と同様、借用証書などの書面による契約が先です。コンピューターへの記帳は、先ほどの日銀の場合と同様で、銀行は「貸付金」という資産と「(普通)預金」という負債を入力します。銀行のお金を貸し出すという行為は、もし焦げ付いた場合に社会に対し経済的責任を取らないとならないので、「(普通)預金」の貸出しは負債になります。資金を借りた側は「(普通)預金」という資産を手にすると同時に自由に使う権利を手にし、「借入金」という借金返済の義務である負債を負います。

つまり、通貨発行というものの、日銀の場合も銀行の場合も、借り手との合意に基づきお金の貸し借りが行われ、貸した側は、利息を取りながら(日銀当座預金は利息が原則付きませんが・)、定められた期限で返済してもらう権利を有し(日銀当座預金はおそらく期限がないと思われますが・)、借りた側は、借りたお金を自由に使える代わりに、約定どおりに金利を払いながら返済する義務を負っています。 

「日銀と銀行」、「銀行と企業または家計」のどちらの通貨発行も、結局のところ、契約に基づく通常の商取引と同じです。債権債務が同時に発生し、リスクもありますが、家計や企業が手元にあるお金より大きなお金を動かすことで、金額に見合う大きな成功も得られます。(失敗することもあります。)そうした活動が社会を活性化します。ある意味、資本主義の仕組みともいえるでしょう。

2.日本が貧しくなった理由

次に、今日の日本がなぜ成長できていないかを考えます。成長できない理由は、答えを言えば《需要不足》が起こっているからです。上で説明した通貨発行をしたとはいうものの、国民の懐(ふところ)に届いている絶対額が足りていないのです。

ここで、「需要」を少し説明します。「需要」とは「有効需要」のことで、お金を持っている人が買いたいと思うことです。お金を持っていない人が買いたいと思うのは「需要」に入らず、「潜在需要」です。国民が、十分にお金を持っていないから満足にモノを買えない、生産者が作っても満足な値段で売れないということが起こっているのです。これが「需要」不足です。

日本は高度成長期を経てバブルが崩壊するまで、ざっくり言えば経済はうまく行っていました。ところが、政府はこの30年間経済政策を誤ってきたので、経済は低迷しました。どこで間違えたのかなるべく簡潔に書きたいと思います。

3.「国債は《借金》であり返さないとならない」というのは間違いである

(1)高度成長期は過ぎバブルは弾けた。では、誰が経済をけん引しないとならないのか。

戦後の高度成長期には、企業が莫大な借金をして投資をしました。すなわち、銀行が莫大な通貨発行(信用創造)した結果、家計にもそのおすそ分けが十分に行っていました。企業の設備投資のための銀行からの借り入れが巨額で経済成長できたので、家計にも潤沢にお金が回っていました。このために、政府は懐(ふところ)からお金を出す必要がなく、国債もほとんど発行する必要がありませんでした。

ところが、バブル崩壊とともに歯車が逆回転し、企業はお金を使わなくなりました。企業がお金を使わない、加えて政府もお金を使わないという状況になると、家計へいよいよお金が行かなくなったというのが現状です。企業が借金をしてバカバカ投資をする時代が終わった以上、企業が昔果たしていた役目を再び果たすときまで、政府が代わりを務めなければならないのです。

(2)日銀の狙いは外れた。このあとどうすればよいのか。

最初の説明のとおり、日銀が銀行と賃貸借契約を結び通貨発行することで、日銀当座預金を銀行に渡しました。ところが、銀行の日銀当座預金の口座の残高が増えたとはいえ、国民の口座は増えていなません。お金が行き渡るとは、企業や国民一人一人の口座が増えたり減ったりしないとなりません。

日銀は当初、次のように狙っていました。日銀当座預金を増やし、銀行が貸し出しを増やしやすい環境を作るとともに、金利を低い水準に誘導することで、民間企業がお金を借りやすい環境になることを期待していました。しかし、思惑に反して企業が一向に銀行から借金をして投資をしなくなったので、景気が良くならなかったのです。(同時に、家計へお金が行きませんでした。)

どうしたら国民に行き渡るかという点を次に説明したいと思います。結論をいいますと、政府が国債を発行して、国民にお金を使うしかありません。このプロセスをなるべく簡潔に説明します。

(3)税収は、景気の調整弁だ。国債は返済する必要がない。ただし、発行額には限度がある。

経済を考えるとき、政府、企業、家計、海外の4つに収支に分割して考えることが一般的です。日本の場合、海外は原油価格の高騰などで貿易収支が悪化しているというものの、過去の投資の配当・利子などによる所得収支がプラスなので、全体の経常収支は今のところ、プラスであり問題がありません。そのため、政府、企業、家計の3つで考えます。

家計の収入と支出は、政府と企業のお金の使いっぷりに影響されます。この両方から家計へと流れる(あるいは、政府に吸い上げられた残りの)お金が個人の収入となるからです。企業は、自己資金か、銀行から借金して投資や事業を行い、利益を大きくすることで家計(従業員)の給与も増やします。

政府は、お金(予算)を使うことで必要な事業(政策)を行い、企業と家計から税金を取ることで、市中(世間)に流れているお金を回収します。こうして、税収を増やせば景気を冷やし、税収を減らせば景気を後押しします。税で景気を調整するのです。

こう書くと、きっと、ここは多くの方の反論があるところだと思います。ですが、説明を続けさせてください。世間では、政府が税金を集めて、それを財源にして予算執行しており、すでに国債残高が大きくなったために日本は積極財政が出来ないと言われますが、これは間違っています。

というのは、今世間全体を覆っているこの考えの背後には、政府が発行する国債も、企業が発行する社債と同様に、どこかで儲けを出すなりして、負債は借金であり、返さないとならないという考えが隠れています。

しかし、政府は、企業や家計とは違います。政府は、この二つと違い、現在の変動相場制1と管理通貨制度2の下では、スーパーマンやジョーカーというべき特別な存在で、前述したように通貨を生み出せます。すなわち、税収は予算を使う際の制約条件ではなく、景気の調整弁であり、国民の間の格差是正の手段なのです。

この時に、見落としてはならない非常に重要な注意点があります。それは、日本の国力である国内の生産力に見合った範囲で供給すべきであり、多くても少なくてもダメです。30年来の不況は、政府が国民に対し使う絶対額が足りていなかったからです。

  1. 変動相場制とは、現在のように為替レートがマーケットの需給(買い手と売り手のバランス)で決まり、1ドル140円、明日は145円というように日々変動する制度をいいます。これに対し、戦後しばらくは1ドル360円で固定されていました。これを固定相場といいます。 ↩︎
  2. 管理通貨制度とは、通貨当局が通貨発行量を決めれる制度をいいます。過去は、通貨は「金」と交換を保証する金本位制度でしたが、金兌換(交換)をやめ、管理通貨制度に移行しました。 ↩︎

(4)国債という負債の返済を永久に先延ばしにする。どこの国もやっているし弊害もない。

すなわち、国民にお金を行き渡らせるためには、政府か企業のどちらか、あるいは両方が、しっかりお金を使うことです。しかし、企業がお金を使わないときには、政府が日本国内でお金を使って事業や政策を実行して、企業と家計に払うしかありません。政府が、企業と家計の口座にお金を振り込むことです。減税も同じです。政府には、お金が必要ですが、それは国債を発行することで手に入れることが出来ます。

企業や家計がお金を手にするルートは、銀行から借金をして商売をして儲けたり、給料をもらったりする以外に、政府から給付されるお金を貰うというルートもあります。これには、10万円の給付金をもらうというようなものや、消費税減税、所得減税、コロナの補助金を貰うということなども該当します。日本の不況は30年間続ているといわれます。これは企業の投資が減り、従業員に支払う賃金が増えず、十分にお金が家計に渡っていないことを意味し、その不足分を政府が支出するべきなのに、これをしていないが故の不況です。

「政府の借金は、家計と企業の借金で、子孫がツケを払わなければならない。」ということをテレビやマスコミがよく言いますが、これは間違っています。日本の国力、すなわち供給力の範囲でお金を出しても問題ない。むしろ出して経済をけん引しないとデフレになります。実際にデフレが何年も続きました。

この「政府の国債は借金であり、国民の借金であり、子孫にツケを押し付けている。」という言い方は、最初の通貨発行のプロセスをよく考えると間違いだということが分かります。つまり、通貨発行権を持つ日銀と国債を発行する政府を一体だと考えると、国債を発行して返済時期が来て、買った人にお金を返してくれと言われたら、新たな国債を発行して負債を返せば良いのです。つまり、国債の借り換えをすれば良いのです。

この借り換えは、どこの国もやっていますし、日本もやっています。また、これは現実に民間の取引でも普通に行われていることです。民間の会社でも会社の借金である社債の返還時期が来たら、新たな借金をして返済を繰り延べる(先延ばしにする)ことが行われており、これを《ジャンプ》と言います。

闇金が顧客を生殺しにする方法として、利息だけ受け取り元金を返させない《ジャンプ》のあくどい手法もあるようですが、これとは違います。

こちらは正常な取引で、民間企業が一般にやっている取引とまったく同じです。違う点は、通貨発行権のある日銀をバックにした政府の場合は、民間と違って倒産をする心配がない、絶対の信用力があるということです。

財務省が好きな二宮尊徳(テンミニッツTVから)

先に書いたように、一応、今も政府は、国債を発行して支出に充てています。しかし、絶対額が足りないのです。額が増えない理由は、財務省が、税収と支出の額を一致させる《入るを量りて出を制する》という二宮尊徳!?流の考えを後生大事に持ち、国債を発行することを思いっきり嫌がっているからです。時代錯誤だと言っていいと思います。

政府が国債を発行して、日銀が直接買うことは法律で禁止されています。しかし、これは現実には骨抜きになっています。政府が国債を発行し、銀行が日銀当座預金を使って国債を買っているのですが、その国債を日銀が買っているので、直接ではないだけで同じことなのです。

日銀の購入額は、発行額の半分といわれます。また、金利を下げるためも日銀は市中から無制限に国債を買っています。日銀が国債の買い手になっているのとなんら変わらないのです。しかし、低金利ではもうからないので金融関係者とこれに便乗するマスコミは「正常化しろ。」とうるさくいいます。もちろん、金融関係者が儲けを出しにくいというのは事実ですが、何の弊害もありません。

4.結論

したがって、政府は国債を財源にして、今やっている方式を拡大し、子育て、防衛、教育、科学技術、防災対策、インフラ整備、農牧業・漁業支援、消費税減税、社会保険料低減、年金増額、奨学金返済免除などあらゆることをやれるのです。

ただし、日本の国力である日本の生産力(供給力)の範囲までです。それ以上にやると(アメリカやヨーロッパのように)インフレになります。日本は、景気が回復している、今期は前期と比べて6%成長したと言われますが、これは曲がりなりにもコロナで結構、国債を使ってお金をバラまいたからです。しかし、企業をカバーする日本の政府の支出は、30年間不足していました。コロナでお金を多い目に国民に振舞ったのはわずか2年間ほどの間だけです。残り28年間の不足分が、今なお足りていないのです。

ちょっと難しいですが、《需給ギャップ》という指標があります。大雑把に言うと、生産できる能力と国民全員が手にした所得の差です。コロナで結構いい線の財政支出をしたので幾分戻したというものの、もし普通に、外国のような成長の経過を辿っていれば、日本は2倍額成長していたはずだと言われています。つまり、政府が正しい経済政策を取っていれば、いまごろ、われわれの所得は倍だったはずです。そして、世界中から「日本の物価は異常なほど安い。」などど思われることはなかったのです。

もう一度言います。政府は供給力を増やしながら、国民の所得を増やさないとならない。つまり、企業が元気を取り戻すまでの間、積極財政をして、政府の支出を増やして国民の生活を支える他ないのです。

おしまい

もうギャンブルしたくないシニア向け 米国債券について

—– 2023.8.15 Rewrite —–

その後、いろいろYOUTUBEを見ているのですが、アメリカの状況は非常に悪いようです。日本ではあいかわらず、こういう種類の報道はまったくありませんが、例えば、950ドル(13万円)までの万引きは捕まらないとか法律が制定され、ウォルマートのような巨大な小売店が撤退し始めたりしているそうです。他にも信じられないほど悪い状況もたくさんあるようです。アメリカは既に危ういです。 米国債券を購入しようともしお考えであれば、再検討してください。親爺は、お勧めしません、

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日本の金利が低く、有利なところで運用したいと思うが、株や投資信託を買って「今更大損をこきたくない!」というシニアは結構いるのではないかと思う。

ここで断っておくが、親爺は証券会社で勤務した経験があったり、ファイナンシャルプランナーの資格を持っているわけでもない。何より、外国債券には為替リスクがある。円安で買って、円高になると、その分損をする。米ドル換算で儲かっても、日本円に換金したら損をしたということは十分考えられる。米ドルも基軸通貨の地位を、いつ元に奪われるかも知れない。大きな民間会社ももちろん安泰ではない。

そういうさまざまな要素もあり、実際に投資先に債権を選ぶという時には、どうぞご自身でご判断ください。

では前提条件をご理解いただいたうえで、「今更大損をこくのはなるべく避けたい」と思うご仁向きに、米国債券を紹介しようと思う。ところが、この米国債券を扱っている会社は非常に少ない。その理由は、外国債権を売っても、債券の性質上なかなか売買されず保有期間中に手数料がかからないために、儲けが出にくいと考えられているそうだ。下がそれを解説した動画である。

【636】ほうっておいても安心!毎年利息収入!債券(米国債・ドル建て社債)が販売されない理由とは!! 能登清文【お金の学校】のとチャン

何故今が買い時なのかという理由は、ご承知の方も多いと思うが、米国金利はかなりの年数ぶりの高水準にある。金利が高いということは、債券の場合は、(既発債の)債券価格が低下しているということを意味し、買う側にとって有利な状況で、既に低金利の時期に買われた債券であれば、額面の金利が変わらないままに時価評価額が下がっていることを意味する。

今年の春に、シリコンバレー銀行などが破綻した。これは、FRBが金利を何度も上げ、そのたびに銀行が保有する債券価格が下落し、そのまま満期まで保有するわけにいかず、安い価格で売らざるを得なくなり最終的に破綻した。そのニュースを覚えておられる方も多いと思う。 

同じようなことを日本の地銀でやっているところがあるらしい。つまり、日本国内では低金利であることに加え、貸出先もなかなか見つからない。そういう銀行は、米ドルの短期資金を借り入れ、長期の米国債を購入して利益(利息)をとるという運用している。ところが、今は不景気の前触れで《逆イールド》というのだが、長期金利より短期金利の方が利率が高い。すなわち、この日本の地銀は、調達金利が上がっただけでなく、昔仕入れた債券の価格は下落しているはずで、非常に苦しいと思う。

そのFRBの利上げだが、今年の春にはほぼ終了し、年末辺りから利下げが始まるだろうと言われていた。ところが、マーケットの指標が相変わらず改善しないということだろうが、つい最近0.25%の利上げがあり、さらにもう1回利上げがあるかもしれないと言われている。債券購入の時期は、(米国債を)最も高い金利のときにその後の金利低下を見こして買えば、値上がりが期待できるのでチャンスが続いているわけだ。利息だけでなく、キャピタルゲインも期待できるということだ。

そもそも債券は、購入時に利率が確定しており、満期まで持てば必ず額面で償還される。期中の債券価格は変動するものの、金利が高いときに買った債券は、下がった時に発行された債券より人気があるので、業績などが同じであれば、債券価格も不利にはならないだろう。

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下が、2023年8月13日現在のSBI証券で売られている既発債の一部をコピペしたものだ。

債券についての詳しい知識を持っておられる方は、おそらく少ないと思うので少し補足したい。

まず、利率。 これは最初の欄に書かれたとおりで、上の三井住友は年5.766%で確定である。税引き前と書かれているのは、日本で利息を受け取ると約20%の税金がかかるが、この利息支払い前の利率を示している。

単価は104.81%とある。これは100ドルの額面を買うのに104.81ドルかかるという意味だ。つまり、利率は5.766%なのに100ドルのものを104.81ドルで買っているので、利回りは3番目に書かれている5.114%になる。 この「単価」と書かれている部分が毎日変動する。しかし、満期日には100ドルになって戻ってくる。

3番目の米ドル債には、「ゼロクーポン」と書かれている。これは、債券をもっている間、利払いが行われないことを意味する。しかし、その分当初の購入額が、この例では81.58%と安く、現在の単価81.58%で償還まで5.3年あれば、利回りは3.917%になるという意味だ。この「ゼロクーポン」債は、期中の利子が払われないので、複利で元本が増えるイメージらしい。

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なお、今月、フィッチという格付け会社が米国債をAAAから、AA+へ格付けを下げた。そのため国債の価格も下がったのだが、親爺が思うに、この格付けはちゃんちゃら可笑しい。日本もそうだが、アメリカも為替レートの変動を気にしなければ、自国通貨を必要に応じて発行できる。つまり、デフォルトは起こらない。

それに、親爺が今回書いたように、米国債は大勢の世界中の市民に買われているが、発行額に比べてその割合は非常に少なく、そのうちの多くは、金融機関が利息の付かない当座預金を持っているより国債で持っている方が有利だからもっている、というのが実情だと思う。

話が脱線するが、このことは日本のような低金利の国では考えられないことだ。日本は不況なので、低金利を続ける(YCC[1]を止めない)選択肢しかないのだが、米国のような金利を上げた国であれば、市民も金融機関も、もし不急の資金で国債を保有しているのであれば、それだけで利息分を確実に手にすることが出来る。それを日本の金融機関は10年以上ずっと(ねた)んでいて、「利下げを止めて、金融政策を正常に戻せ!」と大合唱をしているわけだ。もちろん、この不景気の状況で利上げをすることは、投資意欲を減退させ住宅ローン金利も上がり、自殺行為である。景気さえ回復すれば問題ないのだが、一向に回復しないので日銀総裁は板ばさみに陥り、世間のバッシングにさらされ続けてきた。この非難は、本来政府が受けるべきものだ。

話を戻す。つまり、変動相場制で管理通貨制度のもとで自国通貨建ての国債発行をするのであれば、金融当局がデフォルトを起こすリスクはない。しかし、国債発行が通常の経済行為の範疇で行われているかのようなフリをしているのは、世間に対し、(米国が)放漫運営をしていないという印象を与える必要があることに加え、他の諸外国もあまりに過度な金融の膨張をさせると世界全体の通貨供給量が増えすぎ、経済が不安定になるという事態を引き起こさないためのポーズだと思う。

おしまい

[1] YCC:YCC(イールド・カーブ・コントロール)とは、日銀の長短金利の操作を言う。つまり、短期金利は日銀当座預金の一定の残高に対し、マイナス金利を定めている。長期金利は、10年国債を無制限に買い入れることによって金利水準が0%になるように誘導してきたが、植田総裁になってから日銀は、この上限を0.5%に引き上げた後、7月28日に1%の範囲で柔軟に運用すると表明した。

『ブラックアウト』(キャンディス・オーウェンズ)から《ポリコレ》と《構造主義》を考える

親爺が「今の世の中、何か変だな。」と思うようになって、しばらく経つ。ヨーロッパでは、アフリカの旧植民地だった国から貧しいイスラム系の移民が押し寄せ、受け入れた国で少女をレイプしたり、その国の文化に溶け込むことなく移民同士が住む地域を作り治安が悪化し、元々の住民は歓迎していないのに、政府やマスコミは、差別主義者と呼ばれることを恐れ、多様性やヒューマニズムの看板をいつまでも下ろすことなく、移民対策に本腰を入れようとしない。そのせいで、移民受け入れに反対する右派が勢力を拡大し、国家が分裂しそうな様相を呈している。そのとこについては、前に「西洋の自死」という本を読みブログに書いた。以下をクリックすると出てきます。

クリックしてもらうと、ジャンプします

どうやら、これはアメリカでも同様で、元祖はアメリカなのかもしれないと親爺は思うようになった。

例えば、アメリカ各地の大学などにある建国の英雄たちの像が引き倒されり、真偽のほどを詳しく知らないが、白人が衆人環境の下で、「白人で悪うございました。」と自己批判を迫られたりすることがあるという。実際問題として、国連代表や広報官は黒人だし、政府の広報官もそうだ。勿論人種を理由にした差別は許されないというのは正しいが、「ポリコレ」[1]とも言えそうだ。

人種によって《下駄を履かせて》入試の合格点などを変える制度を『アファーマティブ・アクション』(affirmative action=積極的差別是正措置)というのだが、先日、アメリカの連邦最高裁で、これが憲法違反だという判決が下りた。バイデン大統領は、直ちに反対を表明した。つまり、「逆差別」政策が公然とこれまで取られてきたわけだが、こうした「逆差別」は、正しいのかどうか。公平性をゆがめたり、当事者の能力向上に逆効果だったり、社会の合理性を欠くのではないかという疑問が当然ある。

他方で、LGBTQがアメリカではブームになっているという。アメリカの小学生の子どもたちの多くが、「ぼく(わたし)は、本当に男(女)なんだろうか?」と疑問を持ちながら暮らしているという。

ワシントンに住む国際政治アナリストの伊藤貫さんという方がYOUTUBEで言われているが、第二次大戦前には、LG(レズビアンとゲイ)の比率は1.7%、1945年から1965年のベビーブーマー世代の時期は、2.7%だった。ところが、その比率は8~9%になり、ここ5,6年で2倍になったという。特にひどいのが、UCLA法学部の調査で40%に達すると言われ、CDC(アメリカ疾病予防センター)の調査では、高校生の24%(男約10%、女40%)がLGBTQの問題を抱えていると言われるようになっている。 ここまで《性自認》に対する疑問が高率になると、何かのバイアス(世間の宣伝操作とか)が働いた流行が広がっているとしか思えない。

方やで、学校教育も腐敗しており、アメリカの公立学校では、差別を助長するとして、学生たちの成績をつける試験をしなくなっていると伊藤貫さんは言う。

[1] 「ポリコレ」というのは、”Political Correctness”から来たもので、直訳すると「政治的正しさ」という意味だが、これが行き過ぎている。つまり、アメリカでは「Black(黒人)」と表現していたものを差別感があるので、「African American(アフリカ出身のアメリカ人)」に変えたが、アフリカから来た人たちばかりではないという問題が残っている。他の例として、女性を表す冠詞「Mrs.」と「Miss」が統一され「Ms.」になったり、「看護婦」が「看護士」、「スチュワーデス」が「キャビンアテンダント」になったり、「痴呆症」から「認知症」への用語変更などもそうである。問題は、この「ポリコレ」が行き過ぎ、些細なことや本質と関係ないところを批判され、炎上させる手段として使われることだ。

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さて、ここからはこの『ブラックアウト』(キャンディス・オーウェンズ)の内容を見ながら、考えたい。東京女子大学学長の森本あんりさんの記事がこの本の内容をうまく要約されている。

https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/review/20220620-OYT8T50059/ ☜ 読売新聞(森本あんり(神学者・東京女子大学長))の記事から

  1. 「ブラックアウト」の題名は、普通なら「停電」という意味だが、本書では黒人にリベラルメディアという偽りの灯からの脱出を呼びかける言葉になっている。
  2.  著者によると、アメリカの黒人が直面している問題は、人種差別ではなく家庭の父親不在であり、それを奨励する大きな政府であり、自立と勤勉さを阻害する福祉制度である。
  3.  2016年にトランプが勝利すると、リベラルは投票に行かなかった黒人たちをなじった。ジョンソン政権以来、黒人を便利な無言の票田としか見ていなかったからである。リベラルが黒人を自律的な能力主体とみなさなかったため、格差は増大し、失敗を社会や差別のせいにする安易な被害者意識だけが積み上がった。
  4.  著者は昨今のBLM運動にも手厳しい。黒人が警察官に殺されるより、警察官が黒人に射殺される方がよほど多く、シカゴでは殺人事件の7割が黒人同士によるものという。#MeToo運動も、男らしさや夫への依存を 蔑さげす むリベラルな白人女性のもので、家族と信仰と教会を大切にする黒人の友にはならない。
  5.  今日、父親不在で育つ黒人は75%に上るが、この数字は家族がバラバラに売られた奴隷制時代よりも悪い。政府も、父親のいない家庭だけに貧困給付金を配る。かくて国家予算最大項目の福祉は、父親の役割を期待されない無責任男性を生産し続ける。これが黒人「再奴隷化」の仕組みである、と著者は解説する。
  6.  こんな主張をするのは目立ちたがり屋の例外だ、と言うのは容易である。だが、現在の比率で黒人票が共和党に流れ続ければ、今秋の中間選挙だけでなく、次の大統領選挙も民主党に勝ち目はない。その帰結を、全世界の人々が 否応いやおう なく受け取ることになるのである。我那覇真子訳。

上の文章で、「リベラル」と書かれているのは、民主党あるいは民主党支持者と読んで差し支えない。つまり、民主党の福祉政策によって、長年、黒人が民主党へ投票するシステムが出来上がっているが、これが黒人の置かれている問題の大前提としてある。

その上で、キャンディス・オーウェンズが支持するトランプ前大統領が演台で、過去60年以上にわたる大きな問題の黒人社会における貧困、教育の欠如、家庭崩壊について、次のように語っているという。

「アメリカの黒人が直面している最悪の問題は、白人至上主義ではなく、《堕落してしまった学校制度》であり、警察による人種差別ではなく、《家庭での父親不在》であり、人種差別的な雇用市場ではなく、《勤勉さと自立への道を阻害する福祉制度》である。」

彼女が言うには、黒人は本来、「黒人はお行儀のいい、悪いなんてことに反応しないのです。私たち黒人は、アメリカでも最も《ポリコレ》の真逆をいく集団です。ヒップホップを生み出し、アメリカ文化を堅苦しいものから遠ざけた集団なのです。」

ところが、長年の民主党の政策によって、黒人はずっと被害者の立場に置かれて来たし、黒人は甘んじてきた。おかげで、「黒人社会は、《ポリコレ》によってゆっくりと死を迎えようとしていました。長い間、私たちはオープンで正直な対話よりも、事なかれと見かけを気にした対話をしてきました。私たちは、真実を見つめることによって勝者になることを学ぶよりも、都合のいい噓や被害者であり続けることを受け入れることのほうを学んだのです。・・」

だから、この本の結論は、「黒人は民主党が作った奴隷農場から抜け出さないとならない(ブラックアウト)。」となる。

親爺の結論

この《ポリコレ》の正体を考えるには、現代の思想である哲学の発展があるのではないかと親爺は思っている。つまり、現代哲学をテコにして導き出された《ポリコレ》を使い、発言者を徹底的に批判して社会的生命を奪うことで、対立する勢力を打倒しようする別の勢力があり、彼らは現在主流の哲学を上手に利用しているのではないかと感じている。

この哲学の流れのことは、ごく最近親爺が知ったことで、YOUTUBEはかなり見たが、実際の本を読んだのはごくわずかで、ほぼほぼ親爺の感想というか、想像の域を出ない。あらかじめ断っておきます。

近代へ至る世界史を考えると、西洋人は自分たちだけが世界の中心にいることが許される人種で、黒人や黄色人種は人間ですらないと考えてきた。だから、先住民を皆殺しにして、世界中を植民地にして、アフリカの黒人奴隷を人間のカテゴリーに入れずに西洋諸国は発展したが、反省せずに済ましてきた。 この思想の背景には、西洋思想が他の思想よりも優れ、西洋思想がもたらした科学技術の進歩が、世界の発展をもたらし、西洋人が頂点に立つ資格があるという様なものだ。この考えは、キリスト教(カトリックとプロテスタント)の考えと非常に密接だった。

西洋人は資本主義を作り、フランス革命では、自由、平等と博愛をスローガンに掲げると同時に、ユダヤ人を虐待しながら発展してきた。果たして、自由、平等を謳う民主主義は普遍的価値なのか。資本主義の歴史も長くない。資本主義で商取引をするためにはグローバリズムが必要で、世界が同じ金融のルールに従わなければならない。グローバリズムは格差を生むだけでなく、環境を破壊し、競争が心の平和を失わせるエンジンである。

ところが、こうした西洋を中心とした進歩主義の考えはひっくり返る。否定し「止揚」(=矛盾する諸要素を、対立と闘争の過程を通じて発展的に統一)することで高次の段階へ進むという弁証法を唱えたヘーゲル(1770-1831)。キリスト教を否定し、「神はいない。自分に従って生きよ。」と言ったニーチェ(1844-1900)。「実存は本質に先立つ。」、「社会へ積極的に参加し、自由を自ら拘束していくことが、自由を最も生かす方法だ」という実存主義を唱えた共産主義者のサルトル(1905-1980)がいた。サルトルはベトナム戦争でも反戦を訴え、世界中で非常に大きな影響力があった。ところが、彼の主張は否定された。

レヴィ・ストロースは、「近親相姦のタブー」について、ブラジルの先住民族のフィールド調査を行い、このタブーが人類共通のものであり、それが「弱い遺伝子を持った子供が生まれるから」という従来の説を覆し、人類は、生来、いろんな部族と交流することで知識を獲得する性質を持っており、その具体的な方法として、《娘》の嫁入りにはどの種族にもタブーがあり、この《娘》の嫁入りは、極めて高いレベルの知識を使って行われていることを明らかにした。

構造主義と言われるレヴィ・ストロースらは、これまでのサルトルたちの《主体》を中心にする哲学に対し反駁し論争になる。しかし、サルトルは有効な反論が出来なかった。 文化人類学者で哲学者であるレヴィ・ストロースが、「近親相姦のタブー」[2]を研究し、この新たな発見によって主張したのは、世界を席巻している西洋の進歩主義は、正解ではないということだ。西洋文明も、世界中にある少数民族の文化と同一のレベルに過ぎない。人類の知恵のレベルは、《いわゆる未開》の民族も西洋人のレベルと同じで、彼らはサステナブルで発展可能な世界をつくる知恵を持っていると明らかにした。

その後構造主義は、ポスト構造主義といわれる主張へと変わっていくのだが、根底には、西洋思想が正解ではないといだけにとどまらず。絶対的な正解はないとか、言語や社会構造が、人間の思考そのものや、その人間の責任に帰すことが出来ないさまざまな制約条件になっているといい、既存の価値観をひっくり返した。

西洋が手に入れた『ダーウィンの進化論』を含む科学技術に対する信仰は、西洋を唯一無二の優れた文明だと考える思想から、西洋と他の少数民族の文明の間に優劣はないという構造主義にたどり着いた。それがキリスト教を否定し、先住民虐殺、植民地支配や黒人奴隷への西洋諸国の原罪意識を遅ればせながら生み出した。 そして同じく西洋中心の進歩主義の過ちに気づいた《ポリコレ》は、これを利用した。

テニスフリークの親爺は大坂なおみを批判する気は全くない。

しかし、現状で、実際に起こっていることは、『行き過ぎ』である。この本で言うように、アメリカで起こる殺人事件の7割は、黒人同士の間で起こり、白人警官が黒人に射殺される方が圧倒的に多いにもかかわらず、黒人が白人警官に殺されたという極めて少ない事件がクローズアップされ、過剰に報道される。それがBLM(ブラック・ライブス・マター)の報道であり、LGBTQの報道である。

また、アメリカで強く主張されるのが、《批判的人種理論[3]》(Critical Race Theory)というものである。これは、社会の仕組みが悪いから、黒人が貧困で社会的地位が低いままだというような単純化された理論である。この理論をもとに、小学校で偏向教育が行われ、南部の白人の多い州では「まるで白人が悪者になったような」教育が行われていたりする。こうした批判的人種理論に則った政策は、民主党が推進し、共和党が反対するという構図になっているが、親爺も行き過ぎだろうと思う。

そして、最初に戻って考えると、同じエルサレムで生まれ、同じ神を崇めるユダヤ教もイスラム教も変わらない(ように見える)が、さんざん他民族に暴虐を働いたキリスト教(カトリック、プロテスタント)は大いに変質した。

親爺は思う。《ポリコレ》派は、人間が言語と社会構造から逃れられないという構造主義の思想を使って、差別に苦しむごく少数者の苦しみを大きく取り上げて騒ぐことで、無関係の大多数を巻き込み、社会を分断・対立させ、あげくに多くの人(とくに一般の庶民であるキリスト教徒)を黙らせようとしていると思えてきた。

長くなってすいません。😨

おしまい

[2] 「近親相姦のタブー」 レヴィ=ストロースは、20歳を過ぎほどなく、ブラジルの新設サンパウロ大学で教授となる。休暇を利用して、カデュヴェオ族、ボロロ族の地に足を踏み入れるようになり、その後、ブラジルのナンビクワラ族やトゥピ諸族の現地調査を行うようになった。近親の女性と性交渉(結婚)の禁止は、女性の他集団への移動を促進する。

男性から見て、母方交叉イトコという結婚規則が存在する場合、女性は、A→B→Cという順に、循環的に交換される。(説明省略)

こうした縁組ルールは、女性を他集団へ送りだし、自集団に他集団の女性を迎え入れるという交換である。自集団だけで性交渉(結婚)していたのでは、やがて、集団は閉じてしまう(社会環境は成立しなくなる)。別の集団の間で性交渉(結婚)を行うことは、人類にとって、最も重要な次世代を生み出す女性の確保と交換を行う社会環境を成立させる。「結婚は女性の交換である」。インセスト・タブーは、社会を閉じて消滅させる不利な行為を禁止し、社会環境を人類社会にまで発展させることを可能にした。いいかえれば、インセスト・タブーの原理こそが、人類社会を成立させたのである。家族とは;はじめから交換する主体として家族があるのではない。禁止することによって、交換する主体としての家族がつくり出される。婚姻規則によって組織化されたその出自集団は、近隣の家族・親族集団と友好な関係を結んで、経済的資源の獲得をめぐって起きる争いを未然に回避し、平和的な秩序を維持しようと努める。(立教大学の【第8回】レヴィ=ストロースの縁組理論から)

[3] 批判的人種理論 人種差別は差別的な考え方を持つ個人の「心の問題」以上に、「社会そのものにある」と考え、長年の公民権運動やその後の諸改革にもかかわらず、人種的な差別や格差が根強く残っているのは、制度や構造が生み出しているという見方である。ところが、この理論が授業に持ち込まれ、白人が数的に圧倒的に多い南部や中西部の多くの州の人々は「自分たちがいつの間にか悪者になっている」「白人差別だ」と感じる。保守派のフロリダ州のデサンティス知事の言葉を借りれば「国家公認の白人に対する人種差別」「子供たちに読み方を教えるよりも、お互いを憎むことを教えたがっている」ということになる。(Yahooの上智大教授、前嶋和弘さんの記事から抜粋)