「日本の権力を斬る!」消費税は預り金ではない 郷原信郎弁護士と安藤裕元衆議院議員

日本は不景気が30年続き、賃金が上がらず、とうとう日本「円」の値打ちが世界で下がってしまった。

世界の物価を測るものさしとしてビッグマック指数がある。下が、今年2022年8月に産経新聞が掲載したものだ。ビッグマック1個をドル換算して、各国の値段を調べるのだが、日本は先進国では最下位あたりになっている。 このことは、為替が20%~30%下落しているにしても、明らかに為替以上に差が開いている。つまり、このコロナの3年間の間に、世界の物価はかなり上昇しているのに対し、日本は相変わらず低空飛行を続け、為替以上に差が開いた、つまり、購買力を失ったということに他ならない。 外国と比べると手持ちのお金の値打ちが相当減ったんですね。(涙)

そうした、日本の地位低下の原因に、「消費税」が明らかにある。消費に対する「罰金」である消費税が、税率が上がるにつれて悪影響も大きくなってきた。

これをテーマに、親父が普段楽しみに見ているお二方、郷原信郎弁護士と、安藤裕元衆議院議員が、おなじYOUTUBEで対談されている。

郷原弁護士は、カルロス・ゴーンが逃亡した時に、「『深層』カルロス・ゴーンとの対話」という本を書かれた。この本では、いかに日本の検察が予断を持ち、人質司法といわれる、自白偏重の取り調べをするかが書かれている。 この郷原さんは「日本の権力を斬る!」というYOUTUBEのシリーズをずっと続けられており、親父は楽しみに見ている。

おなじく、安藤裕元衆議院議員は、自民党の中で、西田昌司参議院議員とともに財政拡大派の旗振り役をされて来た方である。当選3回の安藤議員は、残念ながら、週刊誌に事実ではない不倫記事?を書かれ、それがために前回の衆議院議員選挙には出馬されなかった。

その安藤さんは、議員を止めてからも、YOUTUBEで財政拡大を求める活動を続けておられ、「安藤裕チャンネル ひろしの視点」をされている。

最近では、「政府に赤字は、みんなの黒字!」という安藤さんのキャッチフレーズを世間に広めるために、漫才コンクールのM1の予選にも出場されており、信念に圧倒される。

安藤さんも西田さんも、議員の前は公認会計士をされており、簿記の考えがスラスラ解るため、MMT(現代貨幣理論)という通貨発行の仕組みに精通しておられる。財務省の刷り込みがあるために、「国債の発行は、国民の借金である」と一般に信じられているが、大きな間違いである。

実際は、管理通貨制度の下、変動相場制で自国通貨建てによる国債の発行、それによる政府支出は、インフレを起こさない範囲でするならば、何の問題もない。それどころか、逆に経済の成長に見合う国債発行をして、お金を国民に手渡さないと成長を阻害する。

この30年間、経済成長をしなかった日本であるが、その原因はデフレの環境の中で、経済を冷やす政策を続けてきたところにある。最大の問題は、消費税の導入と何度も税率アップを繰り返したことである。

他にも、空港施設の運営や図書館の運営などを外注化するコンセッション、道路公団、住宅公団の民営化、郵政民営化などを繰り返して来たが、デフレ時にこうした政策は逆効果である。

おしまい

SINKING 沈む国 《日本経済が「コロナ危機」にこれほど弱い根因》

2010.5.14 ——————-

当初以下のように書いていた。しかし、アトキンソンさんいう日本の生産性が上がらないのは中小企業が原因だとしても、いきなり中小企業に廃業を求め、その従業員を生産性の高い企業で働くように集約するのが良いとしても、労働者の流動性には時間がかかるので、負の影響(例えば、自殺者が出るとか)が大きいと思うようになった。

つまり、現下のコロナのような問題を抱えているときに、この機会を捉えて、中小企業を切り捨てる政策をとると、労働者が新しい職場をすぐに見つけられるとは思えない。多くの生活ができない人が生じるのは確実な情勢で、まずはその人たちを救うことが最優先だと思う。

そのためには、まず財政拡大をして、人々を救い、経済を回復させる必要がある。そして、経済再生を果たしたときに、中小企業の生産性を高める方策をとるべきだ。

2020.4.26 ——————-

デービッド・アトキンソンさんが、意味深長なことを書かれている。

今回の新型コロナの件で、国力のない国が大きなダメージを受けているという話なのだが、国力のない国には、中小企業が多すぎるという。

《各国とも多少の違いはありますが、小規模事業者が多いという共通点があります。それが原因で生産性は低迷し、女性の活躍は進まず、貧困率が上昇し、GINI指数で見た格差が拡大し、財政も悪化、さらには少子化も進行するという諸問題を抱えています》

日本経済が「コロナ危機」にこれほど弱い根因   ←クリックして下さいね。

その国の頭文字を並べると、SINKINGになるという。つまり、・・・

  • S スペイン
  • I イタリア
  • N 日本
  • K 韓国
  • I イギリス
  • N ニュージーランド
  • G ギリシャ

わかりますよね。つづきは、東洋経済に書かれたアトキンソンさんの文章を読んでください。アトキンソンさんは、財政赤字に対する評価や、為替レートの影響などについて、触れられないのが残念ですが、彼の主張はとても的を得ていると思います。

なお、主は、財政の悪化が、財政支出ができない原因の全てだと考えているわけではありませんが、《財務省》のいう巨額の財政赤字が足枷になっているということが、広く日本社会でコンセンサスを得ているのは間違いありません。

しかし、国が自国通貨でいくら借金してもインフレにならなければOKというMMT理論(現代貨幣理論)も言われています。現実に、MMT理論の登場以前の何十年間も、日本は財政赤字を続けていますが、インフレになるどころか、デフレを脱却できていません。

これは、財務省やマスコミが信奉するクラシックな経済学が間違っており、今回のコロナによる各国が積み上げる財政支出によって、インフレになるのかならないのか、壮大な社会実験を意味すると思います。

おしまい

 

「最貧困女子」鈴木大介

「最貧困女子」(鈴木大介・幻冬舎新書)を読んだ。

主は、バブルがはじけて20年、長く続くデフレで普通の所得層が貧困層へと低下を余儀なくされ、普通の子たちがセックスワーク(売春や性風俗)をし始めているのかなと思いながらこの本を読み始めた。だが、全く違うのだ。事態はそのような気楽なものではない。どこから手を付ければよいかわからないほど、大きく深刻な問題がある。しかも、なかなか可視化されない。

いやあ、凄い! 日本の現状はこうまで酷いのだと知る。格差の拡大が世界中で問題になっているが、日本は格差の広がりが小さく、比較的まだ平等が保たれていると思っていた。だが、そんな生易しい認識はまったく間違っていると思い知らされた。どうしようもなく、救いがたい「最貧困女子」がいるのだ。

まずは、この本の裏表紙コピーは次のように書かれている。

「働く単身女性の3分の1が年収114万円未満。中でも10~20代女性を特に『貧困女子』と呼んでいる。しかし、さらに目も当てられないような地獄でもがき苦しむ女性たちがいる。それが、家族・地域・制度(社会保障制度)という三つの縁をなくし、セックスワークで日銭を稼ぐしかない『最貧困女子』だ。可視化されにくい彼女らの抱えた苦しみや痛みを最底辺フィールドワーカーが活写、問題をえぐり出す!」

高度成長を経てバブルが終わるころ(20年前)を境に、日本の社会の構造が大きく変容した。爺さん、婆さん、父ちゃん、母ちゃんが居て子供がいるというスタイルから、家族は核家族化した。グローバル競争の掛け声の下、広汎に規制緩和が行なわれ、過当競争が起こり、終身雇用制度は崩れ、非正規雇用を余儀なくされる。従来の父ちゃんが働いて家族を養うスタイルは、父ちゃんの所得の低下で不可能となり、共稼ぎが当たり前となる。当然、子供の出生率も低下する。デフレスパイラルのはじまりだ。

デフレは物価が下がるものの、購買力が上がるため望ましいとするバカな学者もいるが、間違いだ。既得権益を持つ者、金持ちはデフレで購買力が増すことで確かにメリットがあるが、持たざる者にとってさらなる所得の低下は、限界的な生活を強いられることを意味する。社会全体で見ても、社会の持つ潜在成長率を達成できず、資源の遊休が生じる。

こうした不況のなかで、格差は、均等に生じるわけではない。子供を抱えて離婚する女性などが、絶望的な貧困に陥りやすい。社会が変わり、家族の縁が切れ、地域の助けもなく、無知や教育の欠如などが原因で、生活保護などの社会保障を受けることもない。こうした環境で育つ子供は、貧困の連鎖に陥り、学校へ行かない、満足に教育を受けていないため簡単な知識や概念すら理解できない。家を借りたり、就職したり、銀行口座を開いたり、生活保護の申請をしたりと言った事務手続きをすることを思い浮かべることすらできない

人間が十全に成長するためには、衣食住が足りたうえで、なおかつ、親から十分な愛情をもって育てられる子供時代を過ごすことが必要だ。満足な子供時代を過ごすことができないということは、三つの障害(精神障害・発達障害・知的障害)を抱えることにもなりかねない。そうした障害は、職業に就く際やその後の人生で不利に働く。仮にパートナーと共同生活を始めるようになった場合でも、例えば、愛着障害がある場合には普通の関係を築けないことにもなる。対人関係はぎこちないものとなるだろう。

こうした「最貧困女子」は、三つの縁(家族・地域・制度(社会保障制度))がない状態に加えて、三つの障害(精神障害・発達障害・知的障害)を抱え社会の底辺で生きることになりがちなのだが、養護施設、民生委員、ケースワーカーや生活保護など社会保障制度へのアクセスを忌避しがちなためにその存在が社会からなかなか見えない。貧困を抱えながら、たった一人で生きることを選択してしまい、それにより周囲から見えなくなってしまう。

同時に、田舎を捨てて生活費に困ったり、ノーマルな給与だけでは足りない普通の女子たちがセックスワークに参入することにより、障害を持つ「最貧困女子」はパージされ、居場所が狭められる。結果、三大NGの現場(ハードSM、アナル、スカトロ)しか残っていないことになる。歌舞伎町のスカウトに「犬とやったら30万円だって!」といわれた発達障害があるA子の話が哀しい。

これは、「自己責任」なんかじゃない。教育が保障されていない子供が存在するということだと思う。子供の6人に1人は貧困家庭ということだが、社会のポテンシャルを確保する意味からも、機会均等を確保し、社会でその子の面倒を見る仕組みを十分に機能させることが必要だと思う。子供の時に落ちこぼれてしまうと、ハンディキャップを一生背負うことになる、これは本人にとっても社会にとっても不幸だし損失だ。

なお、この本は非常にインパクトがあり、問題の大きさに圧倒される。そのせいだろう、アマゾンのこの本のカスタマーレビューには、他に例を見ないほど多勢の書き込みがある。どれも興味深い力作ぞろいであり、読んでみることをお勧めする。