ゴーンさん逃亡 検察の情報リークとマスコミ報道 & 郷原信郎弁護士「検察の大失態」

昔から問題になっているのだが、主が、今回のゴーンさんの会見で初めて気づいたことがある。それは、日本の報道機関の報道の姿勢と内容についてである。

彼は会見で、検察が守秘義務違反をしながら、捜査情報を意図的、大量にマスコミにリークし、マスコミはその情報を無批判に報道する結果、一方的に「悪者」にされたという。一方の弁護側は、被告を守る立場から情報をマスコミに流すことは少ないので、世間は「ゴーン=悪者」と思っている。主の周囲でも、この事件が話題になることがあるが、「国外逃亡しておいて、日本の司法制度を批判するのは何事か!」というのが、多数派である。ただ、これは検察の持っている捜査情報が大量に、一方的にリークされ続けた結果に他ならない。多くの国民が、検察の情報操作を受け入れているのだ。もちろん、なぜ検察がそのような情報操作をしたがるのかというのは、最終的に「有罪」の判断をしたときに、世論の反発を受けたくないからだ。

国家公務員法第100条で国家公務員に対していわゆる守秘義務を課しており、検察が捜査情報を流すのは法律違反なのだ。

ところが、日本の事件報道では、事件直後から犯人とされる人物が歩く防犯カメラ映像などが流されたり、認否情報が流されるのが、ごく一般的な報道である。殺人などの粗暴犯に限らず、経済事件などでも、事件発生時から、マスコミは被疑者の映像や背景などをじゃんじゃん流す。われわれも、それが当たり前だと思っている。事件が起こったら、犯人と思しき人物を速やかに特定し、いかにその人物が悪いかをマスコミに断じてもらいたいという我々の願望のような長年の「刷り込み」が底流にある。

しかし、ここで考えなければならないのは、逮捕され、起訴され、有罪判決が下されて初めて犯罪者となるわけで、事件が起こった直後は、単なる被疑者または被告人だ。刑が確定するまでは、「推定無罪」であり、人権が守られなければならない。事件直後、捜査もしていない段階で、被疑者の情報が報道されること自体が、オカシイのだ。 ところが、日本の事件報道ではそうなっていない。 逮捕される前でも、ただちに犯人扱いした報道がはじまる。

主は、約10年前になるが4年間ブラジルで暮らしたことがある。ブラジルで、ニュース番組の事件の報道が、「日本より簡単だな、短時間だな」と思っていた。外国の事件報道では、事件直後から被疑者を犯人扱いせず、刑が確定するまでは、掘り下げた報道をしないのだと思う。

この日本の事件報道のあり方は、被告の人権が守られていないという観点で、弁護士会でも問題にしていたり、過去に国会でもとりあげられている。

マスコミ側も取材に必死で、事件が起こるたび、検察官や警察に張り付き、捜査情報をもらうことに必死で、批判的な記事を書こうものなら、次に情報をもらえないので、捜査機関に追従的な記事にならざるを得ない構図がある。マスコミにとって、大事件は、ホリエモンの言う視聴率を稼げる「メシウマ」であり、情報源は、検察サマサマだ。

マスコミも妙な(というか「間違った」)正義感を振りかざし、被疑者をバッシングする記事を書けば、読者に読んでもらえると思う姿勢そのものが、間違っている。

ところで、このゴーンさん事件、もう一つ説得力のある人の動画を見つけた。東大の理学部を出て弁護士になった、異色の郷原信郎弁護士で、東京地検特捜部の勤務経験もある。この動画の中で、「ある日本人が北朝鮮で裁判にかけられ、北朝鮮から逃げ出す機会があるときに、あなたは北朝鮮で身の潔白を証明しろと言えますか?」というくだりがある。北朝鮮に失礼?かもしれないが、とても理解しやすい。 また、裁判の争点整理手続きの中で、弁護人側が提出した書類にゴーンさんが会見で明かさなかった政府関係者を、「官房長官」と書かれていると述べておられる。

 

おしまい