ずっと良い音で音楽を聴きたいと格闘してきた。スピーカーを初め、オーディオにお金をかけてきた。しかし、最後まで満足できなかったのが、クラシックのオーケストラである。アンサンブル(合奏曲)であっても、大人しい曲は、比較的スピーカーなどでもOKなのだが、例えばマーラー、オーケストラのスケールが行くところまで大きくなったと言われるマーラーは、微かな弱音で何をやっているのか分からず、フォルテッシモの強奏では、何の楽器が鳴っているのか区別がつかない。オーケストラの団員の多くが、聴力をやられるというのも分かる。ホールで半分寝ながら聞いていると、突然の轟音で眠りを破られる、あれである。
だが、主は、コンサートホールに近い音場を実現する方法をとうとう見つけた!結論をいうと、オーケストラ曲のハイレゾを手に入れ、デジタル・オ―ディオ・プレイヤー(DAP)とカナル型イヤホンを使って再生することだ。このカナル型イヤホンもバランス型でなければならない。そこまで投資すれば、まるでコンサートホールで座って聴いているのと同じように聴こえる。
具体的に聴き比べをしたのは、マーラーの交響曲第1番「巨人」で、バーンスタイン指揮(1987年)のCDと、上岡敏之指揮/新日本フィル(2016年)のDSDである。これをソニーのカナル型イヤホン IER-M7を使い、バランス接続とアンバランス接続で聴き比べた。
結論だけを書くが、CDよりもハイレゾDSDが音が良く、イヤホンはアンバランス接続よりもバランス接続の方が音が良い。スピーカーで再生するのに比べると、CDの場合であっても、イヤホンで聴くほうが遥かに明晰で、再生装置を選べばこれほど再現性があるのかと驚く。しかし、DSDになると、ファイルを再生しているのを忘れ、奥行きや立体感もありホールで聴いていると思うほどリアルである。ただし、ティンパニ、シンバル、弦楽器も管楽器も全奏(トッティ)で強奏するとき、「?」がない場合がないわけではない。しかし、ホールで実際に聴いているわけでないのだから、許容範囲である。
ただ、今回マーラーを聴いて、表のメロディーの裏で、諧謔的で、狂気的な裏のメロディー、崩れるような不調和なリズムの魅力を堪能した。マーラーの不思議な魅力はきっとここにあるのだろう。予定調和で狂気のないクラシックは、クラシックではないと思っている。


こちら、カナル型イヤホンIER-M7である。この製品は、バランス接続用とアンバランス接続用のケーブルが同梱されている。従来のアンバランス接続のイヤホンは1本の線を共用し、3本で構成される。ところが、バランス接続では高音化をはかるために、左右それぞれ独立させ、4本使っている。
ちょっと辛口批評になるが、このソニー NW-ZX507だが、なかなか良い音がするものの、基本、OSがAndroidなので、Androidスマホから、電話と写真機能を除いた使い勝手である。加わった機能は、高音質音楽再生ということになる。つまり、音質を問題にしなければ、スマホで十分であり、DAPは、常にスマホを上回る音質が求められる宿命にある。
主は500枚程度のCDと、音楽映画DVDなどが音楽リスニングの主要コンテンツである。CDは、パソコンなどで聞けるように、FLACという劣化のない形式のファイルにし、音楽DVDもコピーソフトを使ってコピーができるので、そうしている。
ただし、CDより音質が良いSACDという規格で録音されたものが市販されており、ピアニストのグレン・グールドを中心に10数枚持っているのだが、SACDはプロテクトがかかっておりCDのようにファイルとしてコピーできない。つまり、SACDが再生できるプレイヤーで聴くしかなく、NW-ZX507で再生できない。
一方、インターネット経由でハイレゾといわれるコンテンツが販売されており、これらも若干所有している。こちらは、SDXCというカードに入れて、聞ける。
ただ、ソニーがカセットテープが入ったウォークマンで一世風靡したころと違い、すべてがデジタルに変わり、OSはAndroid、ファイル形式も様々な形式があり、カーオーディオにも接続できる。その接続方式も、USB、Bluetoothなどがあり、様々な機能を安価に提供できなければ、中国製や韓国製に簡単に負ける。実際、スマホではAndroid10がリリースされているが、NW-ZX507のバージョンは9であり、何時対応するのかさえ、発表がされていない。カーナビに接続する場合は、USBでは接続できず、Bluetoothになるが、音質は劣る。DAC機能がある中国製では、USB接続ができるはずだ。テザリングの機能を使えば、近くにスマホがあれば、カーナビを使って、Youtubeなどをストリーミング再生できるはずだ。
しかし、日本製の製品はハードばかりに目が向き、アプリの開発が下手というしかない。ソニーのアプリ(Music Center For PC)も知らぬ間に再起動を繰り返すし、日本語の説明文も分かりにくいことがある。ソニーにはmoraという音楽配信サイトがあるのだが、ここも何時まで経っても、ポップスやクラシックやごちゃ混ぜに表示され、せめてログインしたら、過去の履歴から好みの曲を勧めてほしい。海外発の企業なら簡単にやっていることが、日本企業は、全然昔から改善しようとしていない。
おしまい
価格コムのリンクからお邪魔しました。貴兄の幅広い分野の知識や好奇心に感服いたしました。ピアノは好きなのですが、グールドは、ベートーヴェンの後期ソナタが最初で、以降、食わず嫌いのまま今日に至っております。貴兄のコメントを参考にこれから真面目に聴いていきます。
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コメントいただきありがとうございました。とても励みになります。グールドは、ピアノが余り好きじゃないとか、音色には関心がないというような意味のことを言っていますが、音色はとても美しく、ピアノを選ぶことで有名です。どの曲も、曲本来の最高の良さを出すことに腐心しており、内声部に音符を加えて、声部の掛け合いを作ることもしているようです。非難する人も多いでしょうが、聴いてみるとお陰でチョー刺激的で、楽しめると思います。 私が言うものなんですが、ぜひグールド聴いてください。映画ものも、いろんな人がいろいろグールドのことを言っており、新発見できるのではないでしょうか。
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