高市首相は「責任ある積極財政」を旗印に、来年度予算を作ったりスケジュールを進めています。これが成功するかどうかは、国民の支持や、オールドメディアが両論を報道することが必要です。しかし、それ以上に大事なのは、政府だけではない民間の設備投資がどれだけ追随するかが重要です。政権が目指しているのは、政府投資が民間の設備投資の呼び水となり、日本全体の供給力のアップを目指しています。その民間の設備投資のためには金利が低いことが非常に重要です。
植田総裁の前任者の黒田総裁は、失敗しましたが、アベノミクスで量的緩和*1をすることで、低金利へ誘導し、企業が借金して投資しやすいように仕向けたのです。
ところが、植田総裁は、まるで金融機関の収益構造を過度に保護しているとの批判があるように、ここのところ金利をどんどん上げ、オールドメディアの論調も加わって、長期金利(10年国債の金利)も3%の水準になっています。メディアは30年ぶりの高水準と強調しますが、実際はその直前(高度成長期)には、5~6%ありましたが、メディアはそのことには触れません。
この長期金利が3%という水準は、企業家にとって実際に行動を変える水準です。生命保険会社、かんぽ生命、ゆうちょ銀行は、アメリカ国債を売り、日本の国債に乗り換えています。他にもGPIF、農林中金は、運用の国内比率を上げると表明しています。為替リスクをヘッジする手数料を加えると、日本国債のほうが運用益が出るという判断ですが、アメリカにはアメリカ国債売りという実害が生じます。
この金利に対するベクトルの違い(政権は低金利を望んでいるのに対し、日銀はインフレ退治で金利を上げたい。)は、現下のインフレをどう解釈しているかにあります。日銀はインフレが目標の2%を超え、物価水準を下げる時期だと考えています。
ところが、高市政権はインフレの原因は、良性のインフレである需要が拡大して価格が上がるデマンドプル*2はわずかで、石油や輸入農産品の価格上昇が原因で起こるコストプッシュ*3が大半だと考えていることにあります。
皆さんは景気が回復したと思いますか。大半の人は、所得の増加より物価上昇の方が大きく景気回復を実感していないのではないかと思います。
高金利になることで銀行は貸出金利が上がるので、儲けが出やすくなります。
それに加えて、ほとんどの人が知らない、銀行が儲かることを植田さんはやっています。それは日銀内における日銀当座預金と言われる預金の利息を優遇しています。普通の民間企業が銀行に預ける当座預金は、銀行の倒産のときに保証がつくのですが、金利がぜんぜんつきません。銀行に対する日銀当座預金ははげしい高金利をつけています。おかげで何もしていないのに金融機関の儲けは爆上がりしています。
具体的には、日銀当座預金へ利息をつけるということは、黒田総裁の前任者である白川総裁が2008年に0.1%で始め、黒田総裁のときには一部にマイナス0.1%を適用していました。この金利体系を植田総裁は、2024年3月に一律0.1%にあらため、2024年7月に0.25%、2025年1月に0.5%、2025年12月に0.75%、そして2026年6月16日に1.00%まで引き上げてきた。*4 これは、銀行への「実質的な補助金」と言われても仕方ありません。
さらに今度は、1.25%に上げると言われており、日銀当座預金に対する金利も1.25%にするでしょう。
この日銀当座預金に利子をつけること(付利といいます)で、金融機関が受け取った利息は黒田総裁の末期に年1800億円だったものが、年5兆円ほどになります。
おしまい
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*1 「量的緩和」
日銀が通貨発行量を増やし通貨供給(信用創造)することで金利安を実現し、投資が増えるようにしました。
*2 *3 「デマンドプル」「コストプッシュ」
インフレになる原因には二通りあり、需要(所得)が増え、物価が上がるものを良性のインフレで「デマンドプル・インフレ」と言い、需要が原因ではなく、海外から輸入する石油や農産品の値段が上がり、日本の物価に上乗せされて起こる悪性のインフレを「コストプッシュ・インフレ」と言います。
*4 「日銀当座預金の金利上昇」
日銀当座預金の残高はおおむね500〜560兆円程度で推移しています。ここに現在の政策金利1.00%が一律付利されると仮定すると、単純計算で年間5兆円前後の利払いになる可能性があり、黒田時代末期(年間約1,800億円)と比べると実に約30倍近い規模に膨らむ計算です。
