安倍政権倒壊間近! 河井前法相政治生命回復、逆転の一手

「日本の権力を斬る」ことに執念を燃やす人物に、郷原信郎弁護士がいる。

昨年、日本からレバノンへ逃亡したゴーン事件を題材に、《「深層」カルロス・ゴーンとの対話~起訴されれば99%超が有罪になる国で~》を書いた人物である。

一般に日本人は「外国からやってきた剛腕な非情な経営者が、私腹を肥やした許せない事件」と捉えている節があるが、日産から持ち込まれた社内クーデターに、運用が開始されたばかりの司法取引を使って事件にしたい検察が喰いついた。日本の刑事司法は、世界中から人質司法と言われ、まるで中世のようだと批判される。そうした、司法制度の闇と、日産西川(さいかわ)前社長グループの会社の私物化が詳細に描かれている。

その郷原さんが、広島地検が捜査する前河井法相の選挙違反事件についての、YOUTUBEがめちゃ面白い。まるで、将棋で相手の王を追い詰めていくような緊迫感がある。

要は、この動画、被疑者の前河井法相に向かい、この事件の「お金の流れを洗いざらいしゃべりなさい。それしか、あなたに政治生命を救う道はありません!」とご本人に訴えかける動画である。

洗いざらいしゃべれば情状酌量され、微罪になる。その代わりに、1億5千万円の選挙資金を渡した自民党本部の責任が問われ、政権が倒れ、あなたの政治生命は救われる。すでに安倍政権も風前の灯で、もう守ってくれませんよ、と言うのだ。

背景として、「買収」は公職選挙法で禁止されているものの、公示前に行われる候補者から関係者への金銭の受け渡しは、「地盤培養行為」として考え、検察が立件することはほとんどなかった。しかし、今回の河井陣営の選挙資金は、1億5千万円、対立候補は、15oo万円ということが判明しており、はるかに規模が大きい。

一方、政治資金規正法で、選挙資金の報告については、公示後の選挙活動に要した費用を領収書をつけて詳細に公表することになっているものの、公示前に行われた選挙活動については、従来から検察は透明化を図りたいと考えてきたが、実際は不問にしてきた。

ところが、前の東京都知事の猪瀬直樹氏が、選挙直前に徳洲会グループから5000万円借用したことが問題となり、猪瀬氏は生活費と主張したが、検察は立件し、最終的に猪瀬氏は選挙に使われる可能性もあったと認め、収支報告書に記載すべきだったと認めた事件があった。猪瀬氏は「認めるべきは認めなければならない。けじめをつけるため、処罰を受け入れたい。日々後悔と反省にさいなまれている」と、素直に謝罪した。すなわち、この事件を契機に、政治資金規正法の運用は、公示後の選挙活動費を報告するだけにとどまらず、公示前の選挙活動費も報告するように変わったエポックメイキングな事件だというのだ。

そうなると、河井陣営が選挙前に地元の有力者に配っていた「地盤培養」のためのお金も、政治資金報告書に記載されなくてはならなくなる。これは、明らかに違反、有罪だ。

他人事で申し訳ないが、虚実渦巻く政界のとっても見ごたえのあるドラマに思えてくる。

おしまい